Inevitable Romance?

天乃 彗

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Dating and Happening

02

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 元来た道を戻ってみても、未来の姿はなかった。その間にあるお店も覗いてみたが、いない。どこに行ったのか皆目検討も付かない。何せ俺は未来のことをほとんど知らないんだ。どんな店に入りそう、とか、どんな食べ物が好きそう、とか。

「あーもうどこに行ったんだよ……!」

 目を離した俺にも責任はあるんだけど、そんなことを言っていられるほど余裕はなかった。土曜日のショッピングモールはとても混雑している。それはもう腹が立つくらいに混んでいる。
 どうしよう。とにかく、行った店の店員さんに、未来が戻ってこなかったか聞いて回るか。俺は走り回って疲れてきた足を奮い立たせながら走りだした。

「──さぁ、見てないですね……」
「そうですか……ありがとうございます」

 結果は全滅だった。手がかりは「黒髪ロングの可愛い子」だから、まぁ望みは薄かったけど。……いっそ、迷子センターにでも……。そう考えたとき、トンッと背中に重みを感じた。

「んっ……?」

 恐る恐る、後ろを振り返る。見覚えのある長い黒髪が、視界に映った。

「未来っ……! どこにいたの!」

 未来は少しぐったりした様子で、俺の背中にもたれ掛かっていた。少し息も切れている。

「ちょ……未来?」
「……座り、たい」
「えっ……座……? わ、わかった、待って」

 俺は辺りを見渡して、一番近くのベンチへ未来を連れていった。未来は一緒に座った俺の肩に身を委ねた。少し汗ばんだ肌が、俺の腕に触れた。こんなときに何言ってんだって感じだけど、額にまとわりつく前髪が、その様子が色っぽくて、ドキドキしてしまう。俺はしばらく未来が落ち着くのを待ちながら、余計なことを考えまいと、思い出せるだけ円周率を思い出していた。


 * * *


 やっと未来が落ち着いたところで、俺は未来がそんなふうになってしまった理由を聞いた。

「で、どうしてそんな疲れちゃったの?」
「……目を離した隙に、朝霧晃太が、いなくなって」
「うん」
「探してもいなかったから、すれ違う人みんな手当たり次第にぶつかっていって、記憶を見たの」
「……うん。うん?」
「波長が合わない人の記憶を、少し触れただけで見るのは、すごく体力を消耗するから……なおかつ、たくさんの人を見たから」
「……そうなんだ」
「やっと、見つけて。……よかった」

 そう言って、未来はまた頭を俺の肩に寄せた。振り払うわけにもいかず、俺はそれを受けとめる。
 つまり……俺を探すために力を使いまくっちゃった、ってことだもんな。申し訳なく思って、そっと未来の頭を撫でた。

「……ごめんね。疲れさせちゃったね」

 未来は黙って頭を撫でられている。

「俺も未来から目を離しちゃったから。えと、ごめん」
「……おあいこ」
「……そうだね、おあいこ」

 そう言って微笑んで、ふと、ポケットの膨らみを思い出した。未来が迷子になった原因とも言えるブレスレット。まぁ、話のネタにはなるな……。
 俺はポケットのブレスレットを袋から取り出して、未来の左手にするりと通した。未来は目を白黒させて俺とブレスレットを見る。

「あのワンピースに似合うかなと思って、買っちゃった。勝手に、ごめんね。気に入らなかった別に捨ててもいいし。安物だし」
「うれしい!」

 未来は目をキラキラさせて言った。その勢いに俺は面食らう。

「……それはよかった」
「ほんとに、うれしい! ありがとう、朝霧晃太!」

 いつも無表情な未来が、恍惚とした表情でブレスレットを眺めている。そんな反応が返ってくるとは思ってなくて、こっちもなんだか嬉しくて、でもなんだか恥ずかしかった。どうせなら、もっと高いやつ買ってあげればよかったかな、とか。そんな可愛い顔するんなら、なんかもっとかっこいい渡し方すればよかったな、とか。言っても仕方ないけど。未来が喜んでくれたならまぁいいか。迷子になったことも、結果オーライ。

 さて。

「また迷子になっても困るし、そろそろ帰りますか?」

 俺がそう言うと、未来は大きく頷いた。一歩歩きだして、足を止める。土曜日のショッピングモールは、まだまだ人並みは途絶えない。未来もまだ少し疲れてるみたいだし。少し考えて、俺は後ろにいる未来に手を差し出した。

「ん」
「……何?」

 きょとんと首を傾げる未来。いやいや「何?」ってアナタ。

「だから、手! はぐれないように!」

 言わせないで欲しい。恥ずかしいんだから。
 未来は俺の手をじっと見つめて、恐る恐る手をつないだ。未来の小さな手。今まで何度となく(勝手に)手をつながれてきたけど、今日のこれは何か違った。何でだろうと思ったけど、いつもは未来が俺の手を握っていたのが、今日は逆になったからだと気付いた。変な感じだ。胸の辺りがこそばゆい。
 未来を見ると、自然と上目遣いになった瞳で俺を見つめたあと、はにかんだように笑った。

──……ッ! 

 完全に不意討ちだったその笑みに、俺は動揺を隠せない。

「……あ! 勝手に心読むなよな!? 手つないでるからって!」
「……わかってるもん」

 悟られないように、わざと強めに言った。でも、声が裏返った。逆効果だよこれじゃ。未来はやはりどこか上機嫌で、時折ブレスレットを眺めながらニコニコしていた。
 いくら心を読むなと言っても、て言うか相手が未来じゃなくても。手にじっとりかいた汗のせいで、俺の焦りと動揺は、この気持ちは、きっとだだ漏れなんだろう。そう思うと、苦笑するしかなかった。
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