17 / 27
ラブドール
03
しおりを挟む
「まぁ、仕方ないんじゃないかしら? 仕事だし」
──仕事?
サラは首を傾げた。仕事とは何のことだろうか。看板人形のマツリカは、自身の仕事──笑ってお客さんを迎えることを不満に思いながらも頑張っていた。それと同じようなものか。しかし、ペパベールの仕事の内容がわからない。そこで、壁の絵を思い出した。そういうことか、と納得する。
「なるほど……絵のモデルってことですね。裸のモデルも、ありますもんね」
一人でこくこくと頷いていると、ペパベールはしばらく黙ったあと、吹き出すようにして笑った。何かおかしなことを言ったつもりはなかったサラは、わけがわからずペパベールを見つめた。
「思ったよりも純真なのかしら。それとも、無知なのかしらね」
「あ、あの……?」
「ご免なさい。少し可笑しくって」
「えと……?」
「そうよね、女の子には馴染みないかしら。ねぇ、もう一度、布団をめくって、わたしの肌に触れてみて」
話の流れが読めない。とりあえず、サラは言われた通りに、布団を少しだけめくり上げて、ペパベールの肩を露わにした。そして、そこに触れる。ツヤツヤとした感触。少し力を込めると、まるで人間の肌と同じように、ペパベールの身体はその指を押し返した。
──本当に、人間そっくりなのね。
顔の作りや、肌の感触。今まで会った人形の中で、ペパベールは一番人間に近いと思った。
「どう?」
「どうって……えっと、柔らかい、です……?」
どう答えて欲しかったのかわからなかったサラは、とりあえずそう告げた。それが正解だったようで、ペパベールは「そうでしょう?」と呟いた。
「これ、抱き心地がいいようになのよ」
「……抱き心地……?」
「あら、まだわからない? あなたくらいの歳ならわかると思ったのだけれど」
うーん、と困ったように唸ると、ペパベールは小さくため息をついた。それは、何かを諦めたように、一区切りをつけるようにつかれたため息だった。
「つまりね、わたしの仕事って、センの性欲処理なのよ」
「え……」
「ラブドール、って言われたらわかる? 愛玩用の人形なのよ、わたし」
「……!」
ペパベールのストレートな物言いに、サラはようやく理解した。理解したからこそ、言葉が出なかった。
「さっき、センに『人を』犯す勇気はないって言ったでしょう? 当たり前よ、わたしがいるもの」
「……えっと、あの」
サラは自身の服の裾をぎゅっと掴んだ。今まで、人間の勝手で不自由な生活を送る人形を何度も見て、何度もその思いを聞いてきた。その度に胸が苦しくなってきたが、ペパベールにおいては、その上をいくつらさを覚えた。彼女はそもそも、『人間の欲求を満たすためだけに作られた』人形なのだ。
「……嫌じゃ、ないんですか」
人形の声を聞けるのは自分だけであるという使命感もあり、サラは彼女の不満を受け止めようと思った。自分に打ち明けて、少しでも心が晴れるならと。聞くことしかできないが、それが少しでも彼らの役に立つならば。
「そりゃあ、セックスは好きじゃないわ。センはとっても気持ち良さそうにわたしのなかに欲を吐き出すけれど、わたしは人形だし、何も感じない。いつも早く終わらないかなって思うわ」
──『お願い、早く』。
彼女は、世間話をするように語る。遠くで鐘が鳴ってるような。ぼんやりとした頭の痛みが、だんだん明確なものに変わってきていた。
「嫌じゃないかって聞いたわね。でも、わたしの声は、あの人に届かないでしょう? 嫌だなんて思うこと自体、しょうがないことなのよね、きっと」
──『嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。やめてっ……!』。
ズキン。ズキン。その痛みはサラの思考を邪魔するように響く。
声は届かない。そうだ。人形の声は、人間には届かない。
「あぁでもわたし、もしセンに声が届いても、きっと嫌だなんて言わないと思うわ」
「……どうし、て……?」
ズキン。ズキン。やっとの事でペパベールに相槌を打つ。
「だって、わたしの役割なんてそれだけでしょう? セックスできないラブドールなんて、捨てられてしまうわ」
──私の役割はそれだけ。
どうして。どうしてペパベールの言葉がこんなにも胸に刺さるのか。頭の痛みは引かない。むしろだんだん強くなって、割れんばかりだ。
「ねぇ、思っていたことを言ってもいい?」
「……?」
ペパベールはそう言うと、少しだけ押し黙った。見られている。頭があまりにも痛くてペパベールの方を確認できないが、確かにそう感じた。
「あなた、わたしと同じ匂いがするの。ねぇ、あなたも、わたしと同じなんでしょう?」
「……っ!」
──『お願い、もうやめてくださいっ……』
──『痛い、なんでこんなことするんですか。お願い、離してくださいっ……!』
──『……お父、様……っ』
「嫌ぁぁあああああああ!!」
頭の中で響いている声なのか。今この瞬間に口から出てる声なのか。サラ自身もわからぬまま、あまりの頭の痛さに意識を手放した。
* * *
サラは自室のベッドで横になっていた。いつも通りの夜だった。フカフカの広いベッド。幼少の頃から与えられていた自室は、この歳になっても狭いとは感じない。
こうしていると、いつの間にか睡魔がやってきて、またいつも通りの朝を迎えるのだ。母に言われた服を着て、言われた通りに勉強をして。それが当たり前の日常だった。
しかし、その日は様子が違った。キィ、と部屋の扉が開いた。鍵はかけてあった。それを開けることが出来るのは、両親だけである。慌ててベッドから飛び起きると、父が音を立てないように扉を閉めたところだった。
『……お父様? どうなさったんですか……?』
『静かにしなさい』
こちらの質問には答えない父に、違和感を覚えた。しかもこんな夜中に部屋にやって来るなんて、よほど急用ではないのだろうか。
『……あの……?』
もう一度尋ねるも、無言のまま父はサラのベッドに膝をついた。そのまま、両手もベッドについて身体をベッドに乗せる。
『……お父様……?』
『シルヴィのお腹に赤ん坊がいることは知ってるね』
『……はい……』
それは前から聞かされていた。自分に弟が出来るということは嬉しいことではあった。しかしそれ以上に喜んでいたのは両親だったはずだ。赤ん坊の性別がわかってから、両親が待望の跡取りの誕生を嬉しそうにしているのを見て、妬けてしまうほどだった。
『喜ばしいこと、です』
『お前に跡を継がせるよう躍起になる必要もなくなったからな』
『……はい』
今まで、長女であるサラがこの財閥を継ぐべくして教育を受けてきたが、息子が出来たとなると話は変わってくる。一応今まで通り勉強はしているが、その役目が終わるのももうすぐだろう。
『……ところで、お父様は、こんな夜中に、どうなさったのですか……?』
『赤ん坊がいる。そうだ』
『……あの……?』
『シルヴィは母である前に私の妻だ。でも今は母の仕事が重すぎて、妻としての働きが出来ない』
様子がおかしい。そう気付いたのは、父の目がほのかな月明かりで照らされたからだった。目が座っている。サラはジリジリと距離を詰められて、身動きが取れないでいた。
『……言っている意味がよく──きゃあ!』
ぐっと手首を掴まれて、逃げられなくなった。思わず叫び声をあげると、空いてる方の手で口を塞がれる。
『……ふ……っ! ふーっ!』
『静かにしなさい』
口はすぐに解放された。その代わり、さっきまで口を塞いでた手が、サラの身体をまさぐり始める。
『!? お父様……っなにをなさるんですか!?』
服の上からなぞるように身体をまさぐっていた手が、煩わしそうに服を捲り上げた。すぐにサラの白い肌が露わになって、膨らみかけた胸が父の手に包まれる。
『嫌だっ嫌だ嫌だ嫌だ! やめてください、お父様っ……!』
怖い。こんな父を見たのは初めてだった。抵抗するたびに、拘束する手に力が篭る。痛い。思わず硬く目をつむった。サラの訴えは父には届かない。嫌だ、離してと言えば言うほど、その手には力が込められた。しばらく胸をいじっていた父の手が下に伸びた時、サラは思い切り身体をじたばたとさせた。
『いやぁっ! やめてくださいっ……離して、お願いしますっ……! お父様っ……』
精一杯の抵抗だった。もしかしたら、やめてくれるかもしれない。諦めてくれるかもしれない。そう思って、精一杯暴れた。
パシン! 乾いた音が部屋に響いた。自分が殴られた音だと理解したのは、その痛みがじんじんと襲ってきてからだった。痛みに反応するように、目からは涙が零れ落ちた。
父を見た。父は冷たい瞳でサラを見下ろしている。しばらくして、父はサラの下着を取り去って、下を触り始めた。
──あぁ、無駄なんだ。
そう思った。私の声は届かないんだ。抵抗しても無駄なんだ。じんじんと脈打つように襲う頬の痛みと、そこに流れる涙だけを感じていた。抵抗しなくなったサラを見て満足したのか、父はそのまま最後まで行為を続けた。
痛みさえもう、感じなくなっていた。
* * *
──仕事?
サラは首を傾げた。仕事とは何のことだろうか。看板人形のマツリカは、自身の仕事──笑ってお客さんを迎えることを不満に思いながらも頑張っていた。それと同じようなものか。しかし、ペパベールの仕事の内容がわからない。そこで、壁の絵を思い出した。そういうことか、と納得する。
「なるほど……絵のモデルってことですね。裸のモデルも、ありますもんね」
一人でこくこくと頷いていると、ペパベールはしばらく黙ったあと、吹き出すようにして笑った。何かおかしなことを言ったつもりはなかったサラは、わけがわからずペパベールを見つめた。
「思ったよりも純真なのかしら。それとも、無知なのかしらね」
「あ、あの……?」
「ご免なさい。少し可笑しくって」
「えと……?」
「そうよね、女の子には馴染みないかしら。ねぇ、もう一度、布団をめくって、わたしの肌に触れてみて」
話の流れが読めない。とりあえず、サラは言われた通りに、布団を少しだけめくり上げて、ペパベールの肩を露わにした。そして、そこに触れる。ツヤツヤとした感触。少し力を込めると、まるで人間の肌と同じように、ペパベールの身体はその指を押し返した。
──本当に、人間そっくりなのね。
顔の作りや、肌の感触。今まで会った人形の中で、ペパベールは一番人間に近いと思った。
「どう?」
「どうって……えっと、柔らかい、です……?」
どう答えて欲しかったのかわからなかったサラは、とりあえずそう告げた。それが正解だったようで、ペパベールは「そうでしょう?」と呟いた。
「これ、抱き心地がいいようになのよ」
「……抱き心地……?」
「あら、まだわからない? あなたくらいの歳ならわかると思ったのだけれど」
うーん、と困ったように唸ると、ペパベールは小さくため息をついた。それは、何かを諦めたように、一区切りをつけるようにつかれたため息だった。
「つまりね、わたしの仕事って、センの性欲処理なのよ」
「え……」
「ラブドール、って言われたらわかる? 愛玩用の人形なのよ、わたし」
「……!」
ペパベールのストレートな物言いに、サラはようやく理解した。理解したからこそ、言葉が出なかった。
「さっき、センに『人を』犯す勇気はないって言ったでしょう? 当たり前よ、わたしがいるもの」
「……えっと、あの」
サラは自身の服の裾をぎゅっと掴んだ。今まで、人間の勝手で不自由な生活を送る人形を何度も見て、何度もその思いを聞いてきた。その度に胸が苦しくなってきたが、ペパベールにおいては、その上をいくつらさを覚えた。彼女はそもそも、『人間の欲求を満たすためだけに作られた』人形なのだ。
「……嫌じゃ、ないんですか」
人形の声を聞けるのは自分だけであるという使命感もあり、サラは彼女の不満を受け止めようと思った。自分に打ち明けて、少しでも心が晴れるならと。聞くことしかできないが、それが少しでも彼らの役に立つならば。
「そりゃあ、セックスは好きじゃないわ。センはとっても気持ち良さそうにわたしのなかに欲を吐き出すけれど、わたしは人形だし、何も感じない。いつも早く終わらないかなって思うわ」
──『お願い、早く』。
彼女は、世間話をするように語る。遠くで鐘が鳴ってるような。ぼんやりとした頭の痛みが、だんだん明確なものに変わってきていた。
「嫌じゃないかって聞いたわね。でも、わたしの声は、あの人に届かないでしょう? 嫌だなんて思うこと自体、しょうがないことなのよね、きっと」
──『嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。やめてっ……!』。
ズキン。ズキン。その痛みはサラの思考を邪魔するように響く。
声は届かない。そうだ。人形の声は、人間には届かない。
「あぁでもわたし、もしセンに声が届いても、きっと嫌だなんて言わないと思うわ」
「……どうし、て……?」
ズキン。ズキン。やっとの事でペパベールに相槌を打つ。
「だって、わたしの役割なんてそれだけでしょう? セックスできないラブドールなんて、捨てられてしまうわ」
──私の役割はそれだけ。
どうして。どうしてペパベールの言葉がこんなにも胸に刺さるのか。頭の痛みは引かない。むしろだんだん強くなって、割れんばかりだ。
「ねぇ、思っていたことを言ってもいい?」
「……?」
ペパベールはそう言うと、少しだけ押し黙った。見られている。頭があまりにも痛くてペパベールの方を確認できないが、確かにそう感じた。
「あなた、わたしと同じ匂いがするの。ねぇ、あなたも、わたしと同じなんでしょう?」
「……っ!」
──『お願い、もうやめてくださいっ……』
──『痛い、なんでこんなことするんですか。お願い、離してくださいっ……!』
──『……お父、様……っ』
「嫌ぁぁあああああああ!!」
頭の中で響いている声なのか。今この瞬間に口から出てる声なのか。サラ自身もわからぬまま、あまりの頭の痛さに意識を手放した。
* * *
サラは自室のベッドで横になっていた。いつも通りの夜だった。フカフカの広いベッド。幼少の頃から与えられていた自室は、この歳になっても狭いとは感じない。
こうしていると、いつの間にか睡魔がやってきて、またいつも通りの朝を迎えるのだ。母に言われた服を着て、言われた通りに勉強をして。それが当たり前の日常だった。
しかし、その日は様子が違った。キィ、と部屋の扉が開いた。鍵はかけてあった。それを開けることが出来るのは、両親だけである。慌ててベッドから飛び起きると、父が音を立てないように扉を閉めたところだった。
『……お父様? どうなさったんですか……?』
『静かにしなさい』
こちらの質問には答えない父に、違和感を覚えた。しかもこんな夜中に部屋にやって来るなんて、よほど急用ではないのだろうか。
『……あの……?』
もう一度尋ねるも、無言のまま父はサラのベッドに膝をついた。そのまま、両手もベッドについて身体をベッドに乗せる。
『……お父様……?』
『シルヴィのお腹に赤ん坊がいることは知ってるね』
『……はい……』
それは前から聞かされていた。自分に弟が出来るということは嬉しいことではあった。しかしそれ以上に喜んでいたのは両親だったはずだ。赤ん坊の性別がわかってから、両親が待望の跡取りの誕生を嬉しそうにしているのを見て、妬けてしまうほどだった。
『喜ばしいこと、です』
『お前に跡を継がせるよう躍起になる必要もなくなったからな』
『……はい』
今まで、長女であるサラがこの財閥を継ぐべくして教育を受けてきたが、息子が出来たとなると話は変わってくる。一応今まで通り勉強はしているが、その役目が終わるのももうすぐだろう。
『……ところで、お父様は、こんな夜中に、どうなさったのですか……?』
『赤ん坊がいる。そうだ』
『……あの……?』
『シルヴィは母である前に私の妻だ。でも今は母の仕事が重すぎて、妻としての働きが出来ない』
様子がおかしい。そう気付いたのは、父の目がほのかな月明かりで照らされたからだった。目が座っている。サラはジリジリと距離を詰められて、身動きが取れないでいた。
『……言っている意味がよく──きゃあ!』
ぐっと手首を掴まれて、逃げられなくなった。思わず叫び声をあげると、空いてる方の手で口を塞がれる。
『……ふ……っ! ふーっ!』
『静かにしなさい』
口はすぐに解放された。その代わり、さっきまで口を塞いでた手が、サラの身体をまさぐり始める。
『!? お父様……っなにをなさるんですか!?』
服の上からなぞるように身体をまさぐっていた手が、煩わしそうに服を捲り上げた。すぐにサラの白い肌が露わになって、膨らみかけた胸が父の手に包まれる。
『嫌だっ嫌だ嫌だ嫌だ! やめてください、お父様っ……!』
怖い。こんな父を見たのは初めてだった。抵抗するたびに、拘束する手に力が篭る。痛い。思わず硬く目をつむった。サラの訴えは父には届かない。嫌だ、離してと言えば言うほど、その手には力が込められた。しばらく胸をいじっていた父の手が下に伸びた時、サラは思い切り身体をじたばたとさせた。
『いやぁっ! やめてくださいっ……離して、お願いしますっ……! お父様っ……』
精一杯の抵抗だった。もしかしたら、やめてくれるかもしれない。諦めてくれるかもしれない。そう思って、精一杯暴れた。
パシン! 乾いた音が部屋に響いた。自分が殴られた音だと理解したのは、その痛みがじんじんと襲ってきてからだった。痛みに反応するように、目からは涙が零れ落ちた。
父を見た。父は冷たい瞳でサラを見下ろしている。しばらくして、父はサラの下着を取り去って、下を触り始めた。
──あぁ、無駄なんだ。
そう思った。私の声は届かないんだ。抵抗しても無駄なんだ。じんじんと脈打つように襲う頬の痛みと、そこに流れる涙だけを感じていた。抵抗しなくなったサラを見て満足したのか、父はそのまま最後まで行為を続けた。
痛みさえもう、感じなくなっていた。
* * *
0
あなたにおすすめの小説
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる