ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里

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非日常な話編

日常に潜む非日常なお話 第一話

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日常で本当にあった!?ちょっと大人な出会いのお話。

会社の同僚から誘われて足を踏み入れた、
ちょっと非日常な「大人の社交場」の話をしようと思う。






それは、会社の同期である男と二人、
場末の飲み屋でグラスを傾けていた時のことだった。

酒も回り始めた頃、彼が声を潜めて

「最近、面白い場所を見つけたんだ」

と切り出した。

なんでも、素性を一切明かすことなく、
全く知らない他人と大人の関係を
持てる場所があるという。
にわかには信じがたい、
眉唾ものの話だ。

彼女と別れて数年。

仕事の忙しさを言い訳に、
ここのところ風俗にさえ行けていない。

そんな俺の枯れた日常を知り尽くしている同僚が、
酒の肴にそんな話を持ち出してきたわけだ。

酔いも手伝って、
「どうせ与太話だろう」と高をくくりつつ、
「どんな場所なんだ?」とあえて乗っかってみた。

聞けば、もともとはいわゆる
ハプニングバーだった店が、
いつの間にかシステム化され、
特殊な社交場へと変貌したのだという。
同僚はすでに何度か足を運び、
いい思いをしているそうだ。

「どうせ、さぞいいお値段がするんだろう?」

皮肉交じりにそう尋ねると、
同僚が口にした金額は、
一般的な風俗に行くのとさほど変わらないレベルだった。

溜まっていたストレスも限界に近い。

「そこまで言うなら連れて行けよ」
と冗談半分で煽ってみると、
彼はニヤリと笑い、
「それじゃ、今から行くか」と即答した。
まさに酔いと勢いだけで、
俺は未知の世界へと踏み出すことに
なってしまったのだ

しかし、ここまで言っておきながら、
実は何でもないただのバーでした……
というオチも想定していたのだが、
同僚の様子は真剣そのものだ。

スマートフォンを取り出し、
何やら必死に操作している。

聞けば、訪問できる枠には限りがあり、
会員専用のシステムで空き状況を
確認しなければならないらしい。

「よし、空いてる」

同僚はシステムで空き枠を確認すると、
すぐにどこかへ電話をかけた。
小声で短いやり取りをした後、
電話を切ってこちらを向く。

「お前の分も確認取れたぞ。
 初回は会員からの紹介じゃないとダメなんだ。
 現地で登録審査があるからな」

軽い気持ちで口にしたはずが、
話はどんどん具体的かつ本格的になっていく。

ここまで段取りを組まれてしまっては、
「やっぱりいいや」と逃げ出すわけにもいかない。
「行くと決まったら善は急げだ」と、
同僚はそそくさと会計を済ませてしまった。
「とりあえず払っとくから、あとで割り勘な」
と言う彼に従い、俺たちは店を出た。

同僚が捕まえたタクシーに乗り込み、
彼は現在地とは少し離れた駅名を運転手に告げた。

こうなると、あとはもう運ばれていくだけだ。

これから一体どうなるのだろうか。

俺は何とも言えない不安と、
腹の底から湧き上がる奇妙な期待を抱えながら、
流れる夜景を眺めていた。

10分ほどで目的地に到着した。

タクシーを降りると、
そこは昼間なら活気があるであろう
商店街の一角だった。

しかし夜も更けたこの時間は、
人通りも疎らで静まり返っている。

「こんな場所に、そんな店があるのか?」

半信半疑で周囲を見渡していると、
同僚が「ここだ」と足を止めた。
そこは、いくつかのスナックや
マッサージ店の看板が掲げられた、
古びた雑居ビルだった。





「こっちだ」

慣れた足取りで進む同僚の後ろをついていく。

エレベーターに乗り込み、
ボタンが押されたのは地下階だ。

扉が開き、エレベーターを降りると、
そこには薄暗いフロアが広がっていた。
視線の先、唯一小さな明かりが灯るドアが一つだけ見える。

同僚は迷うことなくそのドアへ向かい、
ゆっくりとノブを回した。

俺もおそるおそる中へ入る。

ドアの先はさらに照明が落とされ、
ほぼ真っ暗な空間が視界を覆った。

同僚は無言でその闇の中を進んでいく。

声を発してはいけないような重苦しい、
それでいて濃密な空気が漂っている。
耳を澄ますと、うっすらと女性の艶めかしい声や、
男の低い唸り声が聞こえるような気がした。

少し進むと、スポットライトのように
テーブルの上だけが照らされた場所にたどり着いた。
同僚がその奥に向かって何か合図を送る。
すると、「ギィッ」という重い音と共に隠し扉が開き、
顔をマスクで完全に隠した人物が現れた。

同僚に促され、
テーブルの傍らにある椅子に腰を下ろす。
マスクの人物は無言のまま、
一枚の紙をテーブルに置いた。
そこには、この場所における
「絶対のルール」が記されていた。





「声に出さずに読んでくれ」と同僚に耳打ちされ、
俺はその紙に目を落とした。

そこに書かれていたのは、
あまりにも異様なシステムの全貌だった。

この場所では、顔をマスクで隠し、
ランダムで個室に入る。
個室では必ず男女の組み合わせとなる。
暴力行為の禁止、素性の詮索禁止、
連絡先交換の禁止。
とにかく「お互いのことを何も知らないまま」行為に及ぶこと。

そして何より驚いたのは、

「部屋に入ったら、男女でセックスを
 一度完了しない限り、外に出ることはできない」

というルールだった。

部屋は薄暗く、お互いの顔も
よく見えない仕様になっているという。
そんな状況下で、
ただひたすらに性欲を満たす
ためだけに存在するというのだ。
費用については一回の入室ごとに
課金されるシステムで、
聞いていた金額通りだった。

紙の下部には入会資格として
「20歳以上45歳未満」
という年齢制限が記されていた。

30代の俺は対象内だ。

つまり、この先にいるのは
その年齢層の男女だけということになる。

酔った勢いもあったが、
あまりに非日常的で背徳的な状況に、
俺の中でくすぶっていた雄の本能が強く刺激された。
思い切って入会審査を受けることに決め、
マイナンバーカードを提示する。

端末での認証を終えると、
マスクの人物は再び扉の奥へと消えていった。

「あとは審査結果を待つだけだから、俺は先に楽しんでくるわ」

同僚はそう言い残し、
慣れた様子で店の奥へと消えていった。

一人取り残され、静寂の中で待つこと10分。
先ほどの扉が開き、マスクの人物が戻ってきた。
手には一枚の紙を持っている。

無事に審査が通ったようだ。

促されるままに誓約書に署名し、
会員証となるカードを受け取った。

同時に渡された注意書きには、
紛失時の連絡先や、
先ほど読んだルールが再掲されていた。

最後に、受付の手順が記された紙を渡された。

「このカードを持って奥にある受付へ行けば、
向かうべき部屋番号が告げられる」とのことだ。
説明を終えたマスクの人物は、
再び闇の奥へと消えていった。

たった一人、異質な空間に取り残された。

だが、ここまで来たら引き返す選択肢はない。

むしろ、これから始まる
未知の体験への渇望が
身体を支配し始めていた。

俺はカードを強く握りしめ、
初めての快楽を求めて
店の奥へと足を踏み出した。
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