退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ

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励むクレア、遊ぶエレノア

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 クレアは決行日に向けて、男爵家邸内で練習をしていた。


 どれくらい着込めば怪我をせず、加えて痛みが軽減できるか、頭をぶつけずに済む速度はどれくらいかなどなど。その熱の入れようは凄まじい。

 男爵家の数少ない使用人は、その様を見かけては『妄言でなく奇行まで…?!』と困惑し、執事やメイド長に一応報告をあげた。
 そこからクレアの継母である男爵や婦人の耳に入ったが、真面目に取り合わずに「下賤な者の思考はよくわからない」と首を傾げるに留め、放置した。


「ふふ……ふふふ……完璧だわっ。
 しかもあそこの絨毯はこの家の物より上等だもの。痛みはもっと無いはず…!ふふふ…あははは!」


 物陰から覗く困惑した面持ちの使用人に気付くことなく、クレアは悪役よろしく高笑いを響かせたのであった。


***


 月に数度あるダンスの授業では、本来婚約者が居ればその人と組むことを優先するのがルールだ。
 王太子であるメイナードは、今まで特にエレノアを優先せず、王太子として皆平等に相手をしていたのだが、エレノアの怪我の一件からそれを取りやめ、エレノアを優先した。

 というのも、エレノアが眉尻を下げて頼りなげに


「ダンスの練習が暫くできなかったので、怪我の影響が出ないか、アンバランスになっていないかが不安です…」


 と、いじらしくモジモジと頼みごとを口にしたからである。
 決してその際に、胸の前で組まれた手で寄せられた柔らかそうな膨らみに目がいったからでは無い。……決して。


 不安げにしていたエレノアも、問題無くステップを踏めた事で、嬉しそうに頬を染めて微笑んでは、そのひたむきさにメイナードは頬を緩ませた。

 …決して柔らかな双丘が、しっかりと密着したからではない。決して。

 そうしてより頬を染めて仲睦まじい関係を周りに見せつけ、周りも未来の国王夫妻を生温い視線で見守った。
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