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サイドストーリー フレディ奮闘記
アマンダの引っ越し
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アマンダが伯爵家を出る日。
合わせて休暇を申請した僕は、アマンダの手伝いを申し出た。
ジェライト伯爵家の馬車が、王宮の文官寮に近い馬車留めに止まると、馬車に近寄って行く。
御者が踏み台などをセットして、馬車の扉を開けると、質素だが品のあるレースの飾り襟が付いた紺のワンピースを着たアマンダが現れた。
手にはそう大きくない旅行鞄が、ひとつだけだ。
少なすぎやしないか?どう見ても3日程度の服くらいか入っていなさそうなんだが……
「やぁ、アマンダ。手伝いが必要なさそうな量だね?他は?」
「先輩、律儀に有難う。大丈夫、これだけよ。必要なものは都度購入するつもりだったから」
「…そう、じゃ取り敢えずそれ持つね」
「大丈夫、っえ、っと先輩!」
断られる前に強引に持った鞄は、やはり見た目同様に軽い。伯爵家は何を考えているんだと、ため息が漏れる。
「入寮の紙は先に貰っておいたよ。部屋、案内するね」
「あ、お気遣いどうもありがとうございます?」
「なんだその疑問系。まぁ良いや、僕からのお祝いもあるんだ。先に割り当ての部屋へ運ばせてあるから、早く行こう」
「あ、先輩待って」
「こっちこっち」と急かしてアマンダを部屋まで案内した。
女子専用区域は、L字に曲がった寮の建物の短い部分。
未だ男性優位の国で、進出したとはいえ如何に女性の採用数が男性に比べて少ないかを物語っている。
王族、賓客のもてなしと世話をする侍女などは殆ど良いところの貴族女性だから、入寮せず家から通う者が多い事も理由の一つとしてあるのだが。
その女性専用区域は基本男性の立ち入りを禁じているが、引っ越しが多く行われる今日から3日間は特別なのだ。
引越しに伴い、家族や友人、多いときには専門の業者や使用人がわんさかやってくることが多いからだけど。
途中で通った場所を簡単に説明しながら、割り当ての部屋までゆっくりと進む。
文官寮女子専用区域のホールを通って、その2階の一室の扉を開く。
一応貴族向けと言うこともあって、そこそこ広くて誂も良い。小さなリビングにお茶を沸かす用の小さなキッチン、ベッドしか置けない程度のベッドルームと小さめのクローゼット。
「わぁ、思った以上に大きいですねぇ」
中に入ってくるりと見回しているアマンダをよそに、クローゼットの扉を開けて旅行鞄を端に置く。
「鞄、クローゼットに置いておいたから」
「あ、すみません。ありがとう」
新居に頬を染めるアマンダは、愛らしさも倍増だ。
って、そうじゃなかった。
「アマンダ、これ引越し祝い」
そこそこ大きい包みに目を丸くしたアマンダは、申し訳無さそうに眉を下げる。
「お祝いなんだから、遠慮なく受け取って?」
「はい、ありがとうございます。開けて良いですか?」
「うん、どうぞ」
リビングにあるテーブルへと置き、アマンダは早速中を開けた。
合わせて休暇を申請した僕は、アマンダの手伝いを申し出た。
ジェライト伯爵家の馬車が、王宮の文官寮に近い馬車留めに止まると、馬車に近寄って行く。
御者が踏み台などをセットして、馬車の扉を開けると、質素だが品のあるレースの飾り襟が付いた紺のワンピースを着たアマンダが現れた。
手にはそう大きくない旅行鞄が、ひとつだけだ。
少なすぎやしないか?どう見ても3日程度の服くらいか入っていなさそうなんだが……
「やぁ、アマンダ。手伝いが必要なさそうな量だね?他は?」
「先輩、律儀に有難う。大丈夫、これだけよ。必要なものは都度購入するつもりだったから」
「…そう、じゃ取り敢えずそれ持つね」
「大丈夫、っえ、っと先輩!」
断られる前に強引に持った鞄は、やはり見た目同様に軽い。伯爵家は何を考えているんだと、ため息が漏れる。
「入寮の紙は先に貰っておいたよ。部屋、案内するね」
「あ、お気遣いどうもありがとうございます?」
「なんだその疑問系。まぁ良いや、僕からのお祝いもあるんだ。先に割り当ての部屋へ運ばせてあるから、早く行こう」
「あ、先輩待って」
「こっちこっち」と急かしてアマンダを部屋まで案内した。
女子専用区域は、L字に曲がった寮の建物の短い部分。
未だ男性優位の国で、進出したとはいえ如何に女性の採用数が男性に比べて少ないかを物語っている。
王族、賓客のもてなしと世話をする侍女などは殆ど良いところの貴族女性だから、入寮せず家から通う者が多い事も理由の一つとしてあるのだが。
その女性専用区域は基本男性の立ち入りを禁じているが、引っ越しが多く行われる今日から3日間は特別なのだ。
引越しに伴い、家族や友人、多いときには専門の業者や使用人がわんさかやってくることが多いからだけど。
途中で通った場所を簡単に説明しながら、割り当ての部屋までゆっくりと進む。
文官寮女子専用区域のホールを通って、その2階の一室の扉を開く。
一応貴族向けと言うこともあって、そこそこ広くて誂も良い。小さなリビングにお茶を沸かす用の小さなキッチン、ベッドしか置けない程度のベッドルームと小さめのクローゼット。
「わぁ、思った以上に大きいですねぇ」
中に入ってくるりと見回しているアマンダをよそに、クローゼットの扉を開けて旅行鞄を端に置く。
「鞄、クローゼットに置いておいたから」
「あ、すみません。ありがとう」
新居に頬を染めるアマンダは、愛らしさも倍増だ。
って、そうじゃなかった。
「アマンダ、これ引越し祝い」
そこそこ大きい包みに目を丸くしたアマンダは、申し訳無さそうに眉を下げる。
「お祝いなんだから、遠慮なく受け取って?」
「はい、ありがとうございます。開けて良いですか?」
「うん、どうぞ」
リビングにあるテーブルへと置き、アマンダは早速中を開けた。
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