婚約破棄されてイラッときたから、目についた男に婚約申し込んだら、幼馴染だった件

ユウキ

文字の大きさ
56 / 59

結婚式ですわ…

しおりを挟む
そう、私は今大聖堂の扉前にいるのだ。


「覚悟はできたか?アデレイズ」

「ぇ、ええ。もうここまで来たら腹を括るしかないわ」



何をしているかと思えば、何とオーウェンは、大聖堂の使用許可をもぎ取りやがったのだ。

それに掛かる費用は国王陛下のポケットマネー。招待客はスケジュールに問題がない王族と、私の家の家族と王都に住んでいる仲のいい親戚。オーウェンの家のお母様と親族も一部いる。

招待状は王妃様の侍女総出で書き上げてくれた。
人数がそこまで居なかったから、早く終わったらしいけれど、王妃様は頭を抱えておられたとか。

ウェディングドレスは、殿下との婚礼で途中まで縫い上げていたものをブティックで掻っ攫ってサイズ直しとアレンジ。1ヶ月半という過酷スケジュールでも何とか対応できたのは、本当に奇跡だと思う。

星のレースが可愛いマリアベールを摘んで直して、お父様の肘へと手を添えると、大聖堂の大きな扉が音を鳴らして開いていく。


入り込む光に目を細めながら、皆私とお父様へと視線を集め、「おぉ……」と小さく声を上げる。

大注目の中、神聖なパイプオルガンが響く大聖堂の中を歩いていく。

本来ならここで王族の皆様が婚儀をあげる時には、貴族で埋め尽くされる筈だったが、今回は少人数で皆席も確保できて見やすそうだ。


大きな祭壇の前に、大司教様がニコニコしながら私の到着を見守ってくれている。

少し離れた両脇には国王陛下と、王太子殿下が証人として佇んでいる。王太子殿下、面白そうに陛下や参列者を見渡しているわね。お義兄様になる予定だった人。こういう面白い事(?)には出てくると思っていましたわ。

その錚々たるメンバーの前にオーウェンが晴れやかな笑顔で、私をまっすぐに見つめてくれている。


本当にどうしようもない人だわ。



「婚約期間は短くても良い、任せるとは言ったが、こんな短すぎるとは……」

「お父様、笑顔ですわ」

「ぅうっ」


やっとオーウェンの元まで辿り着き、差し出された手を取って誘われるままに腕へと手を添える。


お父様に向き合った私とオーウェンに、お父様は笑顔をどうにか貼り付けて言った。


「暴走は程々にしなさい。……娘を頼んだよ」

「ええ、もちろん。これはある意味意趣返しですから。本物は辺境で。その時も来てください」

「……楽しみにしているよ」


小声で交わされた言葉は、周りには聞こえなかったけれど、私にはバッチリ聞こえてますわ。


そして祭壇へと向かい、頭を垂れて言葉を待つ。


「新郎オーウェン・ディモアール。
貴方は今アデレイズ・バーミライトを妻とし 神の導きによって夫婦になろうとしています。
汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「はい、誓います」

「新婦アデレイズ・バーミライト。
貴女は今、オーウェン・ディモアールを夫とし 神の導きによって夫婦になろうとしています。
汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「…はい。誓いますわ」


あぁ、誓ってしまった。もう後戻りは出来ないし、逃げることも出来ない。わかってはいたけれど、腹を括るしかないのだわ。


「さぁ向かい合って。指輪を」


大司教様の言葉に、私たちは向かい合い指輪の交換を行う。

運ばれてきたリングピローの上にある指輪を見てギョッとした。


「さぁ、アデレイズ、手を」

「ぇ、あ、ええ」


恐る恐る出した手に、そっと嵌められた指輪を凝視する。



「ん?ブルースターダイヤモンドが良いって言ってただろ?」

「いや、あれは……」



言った。

確かに言った。

けどあれはそういうのじゃなくて!


ワガママ女作戦で放った言葉が、まさか実現するなんて思うわけないでしょーー!!
しおりを挟む
感想 157

あなたにおすすめの小説

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄ですか?勿論お受けします。

アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。 そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。 婚約破棄するとようやく言ってくれたわ! 慰謝料?そんなのいらないわよ。 それより早く婚約破棄しましょう。    ❈ 作者独自の世界観です。

【完結】チャンス到来! 返品不可だから義妹予定の方は最後までお世話宜しく

との
恋愛
予約半年待ちなど当たり前の人気が続いている高級レストランのラ・ぺルーズにどうしても行きたいと駄々を捏ねたのは、伯爵家令嬢アーシェ・ローゼンタールの十年来の婚約者で伯爵家二男デイビッド・キャンストル。 誕生日プレゼントだけ屋敷に届けろってど〜ゆ〜ことかなあ⋯⋯と思いつつレストランの予約を父親に譲ってその日はのんびりしていると、見たことのない美少女を連れてデイビッドが乗り込んできた。 「人が苦労して予約した店に義妹予定の子と行ったってどういうこと? しかも、おじさんが再婚するとか知らないし」 それがはじまりで⋯⋯豪放磊落と言えば聞こえはいいけれど、やんちゃ小僧がそのまま大人になったような祖父達のせいであちこちにできていた歪みからとんでもない事態に発展していく。 「マジかぁ! これもワシのせいじゃとは思わなんだ」 「⋯⋯わしが噂を補強しとった?」 「はい、間違いないですね」 最強の両親に守られて何の不安もなく婚約破棄してきます。 追伸⋯⋯最弱王が誰かは諸説あるかもですね。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 約7万字で完結確約、筆者的には短編の括りかなあと。 R15は念の為・・

【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。 しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。 自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。 夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか? 迷いながらもユートリーは動き出す。 サスペンス要素ありの作品です。 設定は緩いです。 6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

処理中です...