46 / 63
46.
しおりを挟むクリスティーナの指示を受けて近衛騎士達が部屋を下がっていくと、アシェリードとクリスティーナの2人だけになった。
シンとした空気を先に破ったのは、重厚な椅子から立ち上がったアシェリードだ。
執務机を回って備えられていた長椅子に腰掛けるクリスティーナの隣へと腰を下ろしたアシェリードは、クリスティーナの手を掬い取りキュッと包んで握り込む。
「クリスティーナ……昨夜はすまなかった」
「いえ、私も勢いで……言いすぎましたわ」
「君には情けないところばかり見せてしまっているな」
「外面が装えているのであれば、幾らでも情けなくとも構いませんわ。人ですもの」
「っ、すまない。ありがとう……クリスティーナの言う通り、あの子に罪はない。一国の王として、そろそろどうするか考えなければならないな」
「えぇ……私も考えております。まずはこの件を片付けてからに致しましょう」
「クリスティーナ……」
目を細めて愛おしげに妻を見つめるアシェリード。しかし空気に流されない……読めないのがクリスティーナである。
「さ・一先ずお風呂に致しますわ!アトリの様子も見に行かなくては。流石に徹夜はキツいです。陛下も調査の指示と公務を並行して行っていたのでしょう?無理なさらず早くお休みくださいませ」
すっくと立ち上がると、さっさと部屋を立ち去る勢いで扉へと向かって行く。
流石のアシェリードも、徹夜捜索明けの妻に何も言うことができず。
「……分かった」
がっくりと肩を落として、勇ましい妻の背中を見送ったのであった。
入浴を済ませてアトリの見舞いに出向き、クリスティーナは王妃の寝室で1人考え込む。
白雪姫は改案された広く知られているストーリーと、原案とある。勝手に広く知られている方だと思っていたが、もしかしたら原案の方なのかもしれないと、思い始めていた。
しかし、蓋を開けてみれば小人は子供だったし、もうすぐ8人兄弟(妹?)予定だし、魔女は魔女でも薬学の権威である森魔女様だった。
ストーリーに出てこない第3のファクターである“誘拐犯”が出てきた時点で、話が変わってきてしまっている…………いや、そもそもクリスティーナの中身が前世日本の庶務課に勤めるお局予備軍であったあたりで初っ端から逸脱していると言えるのだが。
「う~~ん、これはもうストーリーとか言ってる場合じゃないわね」
強制力やストーリーから脱却して平和に美幼女とキャッキャウフフしたかったのだが、そうも言っていられない状況である。
クリスティーナはストーリーを一旦頭から排除して、目的を定める事にした。
「スノウたんをいじめる奴はぶっ飛ばぁ~す!よっしっ!!」
これだ!と満足そうに頷き、明日から早期解決に向けて英気を養うべく夢の世界へスタートダッシュを決めた。
38
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
エメラインの結婚紋
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる