今更気付いてももう遅い。

ユウキ

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その後⑤


「久しぶりだな。しばらく世話になるよ」


オフィーリアは、父の胸から離れると、そっと父の横へと並んだ。


「何年ぶりだ?使っていない近くの家があるから自由にしてくれて構わないよ」
「助かる」
「まさか兄さんが家を放り出してこっちに来るとはなぁ~」
「そうだな。今後はのんびりするさ」
「何言ってんだ、婿入りした僕の地位向上のためにも、一役買ってもらうよ」
「……なんだ、上手くいっていないのか?」
「いいや?尊敬は幾らあっても困らないからね」
「変わらないやつだ」


抜け目のないやつだと、笑いながら久々に会う兄弟に肩を組まれて笑う。


「とおさーん」「ぱぱーぁ」


子供の声に目を向ければ、侍女と護衛が弟の子供を連れて来ていた。


「似てるな」
「そうだろ?娘の方は嫁に似てるんだ」
「とおさん、その人だれ?」
「父さんのお兄さんだ。オフィーリアのパパだよ」
「おねぇさんの?はじめまして」「ましてぇ」
「はじめまして。よろしくね」


オフィーリアより未だ背の低い子達と目線を合わせてかがみ、手を握って挨拶を交わすと、子供達が照れた様にはにかんだ。


暖かなこの地で、笑顔の未来に向けて歩き始める。



数年後、かの国の噂を聞いた。

宰相の急な交代で、少々混乱したものの、今は正常に機能しているらしい。

第一王子で、王太子になると目されていた殿下は、その地位を固辞。将来臣下へ下ると明言して、婚約者も無く息を潜める様にしているとか。第二王子は未だ幼いが、一層教育に力を入れるだろう。

あの男爵令嬢はどうなっただろうか……。

男爵家の取り潰しはそう珍しいことでもない。国の決めた婚約を潰した一つの要因というだけで、全てはオフィーリアの死によって片付けられている。処断するのは難しいだろう。

しかし、殿下と駄目になり、王家から疎まれている男爵令嬢とその家に明るい未来は訪れようもない。
また青臭い正義を掲げて、今やどこかの貴族夫人や当主になった者達が圧力を掛けなければ、市井で静かに生きるくらいは出来るだろうな。


「お父様?今よろしいですか?」
「あぁ、大丈夫だ。どうした?」
「えぇ…あの、何というか……」
「ん?」


扉を閉じたオフィーリアは、赤い顔でモジモジとしている。


「あの……ね?前に話したことがあると思うのだけれど。会って欲しい人がいるの。ダメ……かしら」


1年ほど前に弟の仕事関係で出会ったという、土木業を営む家の息子の事かと、その仕草から予想して思い出す。それから度々話題に上がり、時々出かけたとも聞いた。もちろん既に色々調査済みだ。


「ああ、いいとも。中々の好青年なんだろ?」
「…そうなの。この間婚姻を申し込まれて……」
「オフィーリアは、受けたいのだね?」

「えぇ……!出来るなら」

「私たちはもう平民だ。オフィーリアの心がそう決めたのなら、否やはないよ」
「お父様っ!明日でも良いかしらっ」
「あー……うん、午後で良いかな。楽しみにしているよ」

「ありがとう!伝えなきゃ…行ってきますわ、お父様っ!」

「気をつけて行っておいで」


急なセッティングに苦笑しながら、娘の頬を撫でる。弾けんばかりの笑顔で言ったオフィーリアは、弾む様な足取りで、扉を開けた。


笑顔のあふれる未来まで、きっとあと少し。
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