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切羽詰った声がかかるのを待って、足を止める。にっこりと笑顔で振り向くと、詐欺だ、と、隣で呟く声が聞こえた。詐欺ではなくて作戦だ。
「話があるなら、降りて来なよ。あたしたちがそっちに行こうか? とりあえず、盗み聞き防止のために結界張らなきゃね」
びくりと、少女の小さな体が竦んだ。見る見る、目に涙が溢れ、そのままへたり込んでしまう。
シュムが足を踏み出すよりも早く、体が浮いた。気付けば、カイに横抱きに抱え上げられ、軽々と少女のところへと跳び上がっている。
「お人よし」
「うるせえ」
少女の前に下ろしてもらうと、シュムは、驚きにか見開かれたものの、涙に濡れた紫紺の瞳を覗き込んだ。
「話があるなら、街中か…人目が気になるなら、ここの庭でもいいや。建物を出よう。あたしがうろ覚えの結界張るよりは、その方が確実」
「何…」
「この建物の中のことは全て、あなたが悪魔と呼ぶ誰かに筒抜けってこと」
さっと、少女の顔から血の気が引く。シュムは、そんな少女ににっこりと笑って見せた。
「これで、話すしかなくなったでしょ」
「悪魔か」
「それはカイじゃない。さあ、どうする?」
「あ、あなたたちっ、何なの…!?」
怯えるように後ずさる少女に対し、シュムは、カイと目を見合わせて首を傾げた。
「そこまで怯えられるようなこと、まだやってないよね?」
「ああ。まだ、シュムの悪魔よりも悪魔じみた手口しか披露してないな」
「…どういう意味?」
「そのままだ――おい!」
じりじりとシュムとカイから距離を取ろうとした少女は、踊り場の二辺が下り階段につながっていることを失念していたようだった。後ろ向きのまま、足を踏み外す。悲鳴さえ上がらない。
カイの叫び声は間に合わなかったが、手は届いた。
引いた反動で抱き締める形になった少女の無事にカイが安堵の息を吐く閑も与えず、シュムがその名を呼ぶ。丁度いい。
「そのまま連れ出そう。とりあえず、庭」
呆気にとられているカイと、おそらく硬直している少女の返事を待たず、シュムは、少女が落ちかけたのとは反対の階段へと足を向けた。
どこへ行く目的もないんだし、と呟くが、やや詭弁めいている。結局のところシュムは、厄介事に首を突っ込みたがる性分をしているのだ。
「話があるなら、降りて来なよ。あたしたちがそっちに行こうか? とりあえず、盗み聞き防止のために結界張らなきゃね」
びくりと、少女の小さな体が竦んだ。見る見る、目に涙が溢れ、そのままへたり込んでしまう。
シュムが足を踏み出すよりも早く、体が浮いた。気付けば、カイに横抱きに抱え上げられ、軽々と少女のところへと跳び上がっている。
「お人よし」
「うるせえ」
少女の前に下ろしてもらうと、シュムは、驚きにか見開かれたものの、涙に濡れた紫紺の瞳を覗き込んだ。
「話があるなら、街中か…人目が気になるなら、ここの庭でもいいや。建物を出よう。あたしがうろ覚えの結界張るよりは、その方が確実」
「何…」
「この建物の中のことは全て、あなたが悪魔と呼ぶ誰かに筒抜けってこと」
さっと、少女の顔から血の気が引く。シュムは、そんな少女ににっこりと笑って見せた。
「これで、話すしかなくなったでしょ」
「悪魔か」
「それはカイじゃない。さあ、どうする?」
「あ、あなたたちっ、何なの…!?」
怯えるように後ずさる少女に対し、シュムは、カイと目を見合わせて首を傾げた。
「そこまで怯えられるようなこと、まだやってないよね?」
「ああ。まだ、シュムの悪魔よりも悪魔じみた手口しか披露してないな」
「…どういう意味?」
「そのままだ――おい!」
じりじりとシュムとカイから距離を取ろうとした少女は、踊り場の二辺が下り階段につながっていることを失念していたようだった。後ろ向きのまま、足を踏み外す。悲鳴さえ上がらない。
カイの叫び声は間に合わなかったが、手は届いた。
引いた反動で抱き締める形になった少女の無事にカイが安堵の息を吐く閑も与えず、シュムがその名を呼ぶ。丁度いい。
「そのまま連れ出そう。とりあえず、庭」
呆気にとられているカイと、おそらく硬直している少女の返事を待たず、シュムは、少女が落ちかけたのとは反対の階段へと足を向けた。
どこへ行く目的もないんだし、と呟くが、やや詭弁めいている。結局のところシュムは、厄介事に首を突っ込みたがる性分をしているのだ。
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