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8戦目
大人への一歩
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「仕事ですか?」
第五回鍛冶屋杯まで二週間と迫ったある日、スギヤさんとミスト、モリさんの三人にリリィを加えて五人で会議室に集まっていた。昨日の夜に今後の事で話し合いがあるからとスギヤさんに呼び出された。
「正式に『ワンアタック』に加入してもらった以上、こちらのお仕事も手伝ってもらおうと思いまして」
そう切り出したスギヤさんの発言に疑問が浮かんだ。
――正式に加入してからもう一ヶ月以上経つんだけど、今更仕事って何?
普通に訓練して他のメンバーを強くするのは仕事とはまた違うのかとか、何でこのタイミングで改まってその話を切り出されたのかよく分からず困惑した。
「安心しなさい。今までの事も仕事の範疇ではあったから、エレアは特に今までと変わらないわよ」
ミストが私の思考を読んだのか分からないが、私が欲しい情報をいくつか教えてくれた。そして何故このタイミングで改まって話し合いをする事になったのかも、今の発言で大体分かった。
――つまりリリィにも仕事をやってもらいたいって話ね。
昨日、遂にリリィは『ワンアタック』のメンバー四人との戦闘に見事勝利した。まだ『力』の魔力を使っているというハンデはあるが、十四歳という若さで多対一を制したのだから十分な剣士としての力があると言い切れるレベルになった。だからこそ『ワンアタック』として一人前に扱いたいという事なのだろう。
「私もいよいよ働く事になるんですね」
スギヤさんから仕事を手伝ってほしいと言われて少し戸惑っていたリリィだったが、一応『ワンアタック』のメンバーがやっている仕事の情報をある程度は知っているからか、すでに覚悟はできていたかのようだった。
「もちろん頑張りますので、よろしくお願いいたします」
こまめに言葉遣いを直すよう指摘してきた影響か、かしこまった言葉で頭を下げる。
――もしかしたら初めて仕事をするから緊張して……。
よく見ればやはりちょっと手が震えている。『ワンアタック』の仕事は主にマチカゼ道場のある村の護衛と魔物退治。剣士として強くなると決意しているリリィと言えどまだ若いのだから、多少怖いと感じたって何もおかしくはない。
「大丈夫よ。リリィはもう十分強くなったわけだし、仕事だって一人でやるわけじゃないんでしょ?」
私はリリィの手を握りながらスギヤさん達の方を見る。それはもちろんと笑顔で返してくれた。
「今回ここで話し合いをしたいのは、どの仕事に就くかです。私としてはリリィさんはまだ若いので、村や道場での活動補佐でも良いと思っています」
スギヤさんが『ワンアタック』の仕事をいくつか説明する。剣士として、剣闘士として以外の仕事もあるわけだから、好き好んで危険な仕事をやる必要はないと優しく最後に付け足した。
「つまりこっちとしてはどの仕事に就いても良いと思ってるわ。メンバーが極端に足りない部分があるわけじゃないから、リリィの意志を尊重したいと思ってるの」
ミストもスギヤさんの意見に賛成なのか、同じように護衛や魔物退治の仕事以外の話を勧めてきた。
「リリィはどうしたいの?」
私個人としてはどっちの仕事を選ぶべきかなんて最初から決まっている。リリィは剣闘大会を勝ち抜くためにここにいるわけではない。故郷を自分の手で守れるようにするためにここまで来ているのだ。
「エレアさん、もう大丈夫です」
握っているリリィの手を見ると、もうさっきまでの震えは無くなっていた。リリィもこれからどうすべきか、どっちを選ぶべきか分かって、そしてその覚悟を改めて強くしていた。私が手を離すと、スギヤさん達に向かってしっかりと自分の意志を伝えた。
「護衛や魔物退治の仕事をやらせてください。よろしくお願いします」
第五回鍛冶屋杯まで二週間と迫ったある日、スギヤさんとミスト、モリさんの三人にリリィを加えて五人で会議室に集まっていた。昨日の夜に今後の事で話し合いがあるからとスギヤさんに呼び出された。
「正式に『ワンアタック』に加入してもらった以上、こちらのお仕事も手伝ってもらおうと思いまして」
そう切り出したスギヤさんの発言に疑問が浮かんだ。
――正式に加入してからもう一ヶ月以上経つんだけど、今更仕事って何?
普通に訓練して他のメンバーを強くするのは仕事とはまた違うのかとか、何でこのタイミングで改まってその話を切り出されたのかよく分からず困惑した。
「安心しなさい。今までの事も仕事の範疇ではあったから、エレアは特に今までと変わらないわよ」
ミストが私の思考を読んだのか分からないが、私が欲しい情報をいくつか教えてくれた。そして何故このタイミングで改まって話し合いをする事になったのかも、今の発言で大体分かった。
――つまりリリィにも仕事をやってもらいたいって話ね。
昨日、遂にリリィは『ワンアタック』のメンバー四人との戦闘に見事勝利した。まだ『力』の魔力を使っているというハンデはあるが、十四歳という若さで多対一を制したのだから十分な剣士としての力があると言い切れるレベルになった。だからこそ『ワンアタック』として一人前に扱いたいという事なのだろう。
「私もいよいよ働く事になるんですね」
スギヤさんから仕事を手伝ってほしいと言われて少し戸惑っていたリリィだったが、一応『ワンアタック』のメンバーがやっている仕事の情報をある程度は知っているからか、すでに覚悟はできていたかのようだった。
「もちろん頑張りますので、よろしくお願いいたします」
こまめに言葉遣いを直すよう指摘してきた影響か、かしこまった言葉で頭を下げる。
――もしかしたら初めて仕事をするから緊張して……。
よく見ればやはりちょっと手が震えている。『ワンアタック』の仕事は主にマチカゼ道場のある村の護衛と魔物退治。剣士として強くなると決意しているリリィと言えどまだ若いのだから、多少怖いと感じたって何もおかしくはない。
「大丈夫よ。リリィはもう十分強くなったわけだし、仕事だって一人でやるわけじゃないんでしょ?」
私はリリィの手を握りながらスギヤさん達の方を見る。それはもちろんと笑顔で返してくれた。
「今回ここで話し合いをしたいのは、どの仕事に就くかです。私としてはリリィさんはまだ若いので、村や道場での活動補佐でも良いと思っています」
スギヤさんが『ワンアタック』の仕事をいくつか説明する。剣士として、剣闘士として以外の仕事もあるわけだから、好き好んで危険な仕事をやる必要はないと優しく最後に付け足した。
「つまりこっちとしてはどの仕事に就いても良いと思ってるわ。メンバーが極端に足りない部分があるわけじゃないから、リリィの意志を尊重したいと思ってるの」
ミストもスギヤさんの意見に賛成なのか、同じように護衛や魔物退治の仕事以外の話を勧めてきた。
「リリィはどうしたいの?」
私個人としてはどっちの仕事を選ぶべきかなんて最初から決まっている。リリィは剣闘大会を勝ち抜くためにここにいるわけではない。故郷を自分の手で守れるようにするためにここまで来ているのだ。
「エレアさん、もう大丈夫です」
握っているリリィの手を見ると、もうさっきまでの震えは無くなっていた。リリィもこれからどうすべきか、どっちを選ぶべきか分かって、そしてその覚悟を改めて強くしていた。私が手を離すと、スギヤさん達に向かってしっかりと自分の意志を伝えた。
「護衛や魔物退治の仕事をやらせてください。よろしくお願いします」
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