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祝祭のあとはいつも虚しい
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突き刺すような澄んだ冷気が、結晶のように煌めいていた。凍てついた日差しを浴びながら、馬上の藤千代がリュカへと満面の笑みで振り返った。
「暑い!」
馬を乗り回して汗びっしょりになった藤千代は、鬱陶しそうに服を脱ぎ捨てた。藤千代の肌から立ち昇る湯気が、寒空へと吸い込まれる。
「ばか、風邪引くだろう! 早く服着て!」
隣に駆け寄ったリュカが馬上から慌てて汗を拭くが、藤千代は屈託なく笑って馬を駆ると、上半身裸のまま走り去っていく。
リュカの愛馬シミュヨンにも劣らない駿馬に乗った藤千代は、誘うようにリュカを振り返った。
リュカは仕方なく追いかけて横に並ぶと、藤千代の後ろに飛び移った。
「ほら、もう冷え切ってるじゃないか」
藤千代は、軽技のように飛び乗ってきたリュカを振り返って目を丸くすると、あははっと大声で笑った。
「ふざけないで」
リュカがムッとした声で上着を掛けても、邪魔だと言わんばかりに体を捩る。
「病気になっても知らないからな」
リュカが背後から押さえつけるように、上着ごとぎゅっと抱きしめると、藤千代はようやくおとなしくなった。
冷たい空気のせいか、頬や鼻先を真っ赤にしてリュカを見つめる。
「……じゃあ、リュカが温めてくれ」
かじかんだ乾いた頬を擦り寄せて、唇が重なる。
藤千代は手綱を引いて速度を落とすと上体を倒し、輝くような栗毛の首に抱きついた。
リュカは、突き出した藤千代の腰を撫でて服をずらし、手早く挿入する。
リュカが腰を使わずとも、ゆったりとした馬の振動だけで藤千代は体を震わせた。
荒涼とした大地に、馬の蹄の音と二人の息遣いだけが風に乗ってきれぎれに流れていく。
「チヨ……チヨ、好き。好きだよ……」
藤千代が虚に潤んだ瞳で、リュカを振り返った。
「俺も──」
バチンッと目を覚ましたリュカは、はぁはぁと息を継いだ。夢の名残にまだ胸が激しく鼓動している。額を拭った手は、びっしょりと汗で濡れた。
藤千代があんなことをするわけがない。
ザロヴィア語のときは気さくに話しかけてくれるが、それは敬語がわからないからだ。
普段は礼儀を弁えているし、優しく接してはくれても、とびっきりの笑顔を見せてくれることなどない。
時折カッとなることはあるが、藤千代が自分の心の奥底をリュカに曝け出したことなど、今まで一度もなかったのだ。
リュカは寝台に突っ伏すと、体を丸めた。湿った下腹部は、夢の中の藤千代の汗ばんだ肌と同じ感触なのに、あの時の幸せな気持ちは微塵も湧いてこなかった。ただ不快感だけが、いつまでも肌に張り付いて離れなかった。
允耀皇子から藤千代へ連絡がきたのは、冊立から数日後のことだった。
夜半にひっそりと訪れた近侍に連れられるまま向かった先は、王府への転居準備のために引き払った以前の皇宮だった。
手入れはされているものの、主人を失った宮は侘しさに沈んでいた。
薄暗い部屋の中で所在なげに立っていた允耀皇子は、藤千代の姿を見るなりパッと駆け寄ったが、伸ばした手は触れることなく宙を彷徨った。
「……この度は……誠におめでとう──」
「やめてくれ」
允耀皇子は藤千代の言葉を遮ると、手で顔を覆った。皇子の顔色は悪く、やつれて見えた。
藤千代は允耀皇子の手を取ると、ぽつんと置かれた椅子に座らせた。
「すまない、もっと早く話をしたかったのだが……」
「それどころではないでしょう」
藤千代が冗談めかして言うと、允耀皇子はようやく弱々しい笑顔を浮かべた。
宮廷内の噂で、藤千代でもある程度の事情は把握していた。
愛妾の子である允瑞皇子が皇太子の有力候補と見られていたが、允耀皇子の母である皇后陛下と、婚約者の実家の圧力で允耀皇子の立太子が決まった、というのがもっぱらの噂だった。
「……今さらわたしにどうしろというのだ」
しんと静まり返った部屋に、允耀皇子の声がぽつりと落ちる。
藤千代は繋いだ手を見つめたまま、躊躇いがちに口を開いた。
「わたしは琶国の小姓時代、多くの武将を見てきました。卒がなく人当たりが良くても王の器でない者もいれば、悪評ばかりでも有能な方もいらっしゃいました。良い王かどうかなど、数百年先にしかわからないのです」
允耀皇子は藤千代の手を握り返して、小さく笑った。
「人望がなく無能な場合はどうなる?」
「殿下はそんな方ではありません」
藤千代は允耀皇子の目を見つめて口を開いた。
「確かに、初対面の印象は最悪でしたが……殿下は思慮深く繊細なお心をお持ちです」
冷静に話をするつもりだった。
允耀皇子の立太子を祝い、婚約を慶び、将来を期待して健康を気遣うことができれば、それで充分のはずだった。
「ですから……」
笑顔がこわばり、言葉に詰まった。目の前が滲んで、声が震える。
允耀皇子の手を握る指に力がこもり、思わず目を伏せた。
「……わたしこそ、どうすればよいのですか」
自分の人生を自分で決めたことなど、一度もなかった。それでも、こんなふうに誰かに責任を委ねることなどしたくなかった。
「申し訳ございませ──」
頭を下げようとする藤千代を、允耀皇子が抱き止めた。温かい胸の中で、思わず涙が溢れ出る。喉の奥で唸るようにもがく藤千代を、允耀皇子はぎゅっと抱きしめる。
「すまない、そなたのことは必ず呼び寄せるから……もうしばらく待ってほしい」
溢れてしまった涙は、堰を切ったように止めどなく流れた。人前で泣きじゃくるなど、こんな姿を晒したことは今まで一度もなかった。
体を震わせて嗚咽を漏らす藤千代を、允耀皇子は何も言わずにずっと抱きしめていた。
このまま二人だけ闇に溶けて消えてしまいたいと、藤千代は思った。
「あの……」
藤千代は宿舎へと戻る帰り道、近侍へと声をかけた。
話しかけられると思っていなかったのか、前を歩いていた近侍が少し驚いた表情で振り返る。
「万が一、わたしのことで允耀殿下から頼み事があったとしても、わたしがそれを望むことはございませんので……」
立太子の経緯を考えれば、今の状況で允耀皇子が私的な願いを叶えることは難しいだろう。たとえ押し通すことができたとしても、政敵に付け入る隙を与えるだけだ。
そして、藤千代が東宮に入れたとしても、允耀殿下が皇太子妃と睦まじく暮らす様を間近で見なければならないのだ……。
藤千代の言葉に近侍は一瞥をくれただけで、無言のまま前へ向き直った。
冬の澄んだ空気の中、蕭と鼓の音が鳴り響いた。
宮廷内の広間から東宮へと向かうこの道のりだけが皇太子を見ることができる唯一の場所とあって、皇宮で働く人々の多くが詰めかけていた。
金色や赤の大きな扇の奥に、輿に乗った允耀皇子が見え隠れする。
人垣を超えて、さらに禁衛軍の向こうを練り歩く輿は、ほとんど見ることができない。それでも、意匠を凝らした刺繍が施された鮮やかな冕服姿は、皆が思わず息を止めるほどの美しさだった。
冬の陽光の中、花吹雪のような雪が允耀皇子を祝福するかのように舞い踊った。
冠から垂れ下がった玉飾りの奥の表情は、未来の皇帝にふさわしい凛とした佇まいを見せていた。
「美しいな」
藤千代の隣に立つ巡察師長が、思わずといった様子で呟いた。
「…………本当に」
藤千代の独り言のような返事は誰にも届くことなく、祝祭の音色に紛れた。
輿が通り過ぎ、見物の人々が帰っていく中、藤千代ものろのろと歩き出した。
「チヨ」
喧騒の中で名前を呼ばれて、藤千代は俯いていた顔を上げた。
「チヨ……一緒に行こう」
乾いた風に吹かれてリュカの金色の髪がたなびくのを、藤千代はじっと見つめた。
幼い頃から人の顔色ばかり窺ってきた藤千代が、人の心の機微をわからないわけがなかった。特に性的な視線には敏感だったので、最近のリュカの様子がおかしいことにも、当然気づいていた。
最初はただの親切心で誘ってくれていたと思っていたザロヴィア行きが、途端に虚しいものに思えてくる。
「リュカ殿下……申し訳ございませんが……」
藤千代が断りの言葉を口にするより先に、リュカが再度名前を呼ぶ。
「チヨ……。チヨが来れないなら、俺がチヨの方に行くよ。どこにでも、何をしてもいい。だから──……」
自分の人生を自分で決めたことなど、一度もなかった。
唐突にその選択を突きつけられて、藤千代は初めて正面からリュカを見つめた。
「暑い!」
馬を乗り回して汗びっしょりになった藤千代は、鬱陶しそうに服を脱ぎ捨てた。藤千代の肌から立ち昇る湯気が、寒空へと吸い込まれる。
「ばか、風邪引くだろう! 早く服着て!」
隣に駆け寄ったリュカが馬上から慌てて汗を拭くが、藤千代は屈託なく笑って馬を駆ると、上半身裸のまま走り去っていく。
リュカの愛馬シミュヨンにも劣らない駿馬に乗った藤千代は、誘うようにリュカを振り返った。
リュカは仕方なく追いかけて横に並ぶと、藤千代の後ろに飛び移った。
「ほら、もう冷え切ってるじゃないか」
藤千代は、軽技のように飛び乗ってきたリュカを振り返って目を丸くすると、あははっと大声で笑った。
「ふざけないで」
リュカがムッとした声で上着を掛けても、邪魔だと言わんばかりに体を捩る。
「病気になっても知らないからな」
リュカが背後から押さえつけるように、上着ごとぎゅっと抱きしめると、藤千代はようやくおとなしくなった。
冷たい空気のせいか、頬や鼻先を真っ赤にしてリュカを見つめる。
「……じゃあ、リュカが温めてくれ」
かじかんだ乾いた頬を擦り寄せて、唇が重なる。
藤千代は手綱を引いて速度を落とすと上体を倒し、輝くような栗毛の首に抱きついた。
リュカは、突き出した藤千代の腰を撫でて服をずらし、手早く挿入する。
リュカが腰を使わずとも、ゆったりとした馬の振動だけで藤千代は体を震わせた。
荒涼とした大地に、馬の蹄の音と二人の息遣いだけが風に乗ってきれぎれに流れていく。
「チヨ……チヨ、好き。好きだよ……」
藤千代が虚に潤んだ瞳で、リュカを振り返った。
「俺も──」
バチンッと目を覚ましたリュカは、はぁはぁと息を継いだ。夢の名残にまだ胸が激しく鼓動している。額を拭った手は、びっしょりと汗で濡れた。
藤千代があんなことをするわけがない。
ザロヴィア語のときは気さくに話しかけてくれるが、それは敬語がわからないからだ。
普段は礼儀を弁えているし、優しく接してはくれても、とびっきりの笑顔を見せてくれることなどない。
時折カッとなることはあるが、藤千代が自分の心の奥底をリュカに曝け出したことなど、今まで一度もなかったのだ。
リュカは寝台に突っ伏すと、体を丸めた。湿った下腹部は、夢の中の藤千代の汗ばんだ肌と同じ感触なのに、あの時の幸せな気持ちは微塵も湧いてこなかった。ただ不快感だけが、いつまでも肌に張り付いて離れなかった。
允耀皇子から藤千代へ連絡がきたのは、冊立から数日後のことだった。
夜半にひっそりと訪れた近侍に連れられるまま向かった先は、王府への転居準備のために引き払った以前の皇宮だった。
手入れはされているものの、主人を失った宮は侘しさに沈んでいた。
薄暗い部屋の中で所在なげに立っていた允耀皇子は、藤千代の姿を見るなりパッと駆け寄ったが、伸ばした手は触れることなく宙を彷徨った。
「……この度は……誠におめでとう──」
「やめてくれ」
允耀皇子は藤千代の言葉を遮ると、手で顔を覆った。皇子の顔色は悪く、やつれて見えた。
藤千代は允耀皇子の手を取ると、ぽつんと置かれた椅子に座らせた。
「すまない、もっと早く話をしたかったのだが……」
「それどころではないでしょう」
藤千代が冗談めかして言うと、允耀皇子はようやく弱々しい笑顔を浮かべた。
宮廷内の噂で、藤千代でもある程度の事情は把握していた。
愛妾の子である允瑞皇子が皇太子の有力候補と見られていたが、允耀皇子の母である皇后陛下と、婚約者の実家の圧力で允耀皇子の立太子が決まった、というのがもっぱらの噂だった。
「……今さらわたしにどうしろというのだ」
しんと静まり返った部屋に、允耀皇子の声がぽつりと落ちる。
藤千代は繋いだ手を見つめたまま、躊躇いがちに口を開いた。
「わたしは琶国の小姓時代、多くの武将を見てきました。卒がなく人当たりが良くても王の器でない者もいれば、悪評ばかりでも有能な方もいらっしゃいました。良い王かどうかなど、数百年先にしかわからないのです」
允耀皇子は藤千代の手を握り返して、小さく笑った。
「人望がなく無能な場合はどうなる?」
「殿下はそんな方ではありません」
藤千代は允耀皇子の目を見つめて口を開いた。
「確かに、初対面の印象は最悪でしたが……殿下は思慮深く繊細なお心をお持ちです」
冷静に話をするつもりだった。
允耀皇子の立太子を祝い、婚約を慶び、将来を期待して健康を気遣うことができれば、それで充分のはずだった。
「ですから……」
笑顔がこわばり、言葉に詰まった。目の前が滲んで、声が震える。
允耀皇子の手を握る指に力がこもり、思わず目を伏せた。
「……わたしこそ、どうすればよいのですか」
自分の人生を自分で決めたことなど、一度もなかった。それでも、こんなふうに誰かに責任を委ねることなどしたくなかった。
「申し訳ございませ──」
頭を下げようとする藤千代を、允耀皇子が抱き止めた。温かい胸の中で、思わず涙が溢れ出る。喉の奥で唸るようにもがく藤千代を、允耀皇子はぎゅっと抱きしめる。
「すまない、そなたのことは必ず呼び寄せるから……もうしばらく待ってほしい」
溢れてしまった涙は、堰を切ったように止めどなく流れた。人前で泣きじゃくるなど、こんな姿を晒したことは今まで一度もなかった。
体を震わせて嗚咽を漏らす藤千代を、允耀皇子は何も言わずにずっと抱きしめていた。
このまま二人だけ闇に溶けて消えてしまいたいと、藤千代は思った。
「あの……」
藤千代は宿舎へと戻る帰り道、近侍へと声をかけた。
話しかけられると思っていなかったのか、前を歩いていた近侍が少し驚いた表情で振り返る。
「万が一、わたしのことで允耀殿下から頼み事があったとしても、わたしがそれを望むことはございませんので……」
立太子の経緯を考えれば、今の状況で允耀皇子が私的な願いを叶えることは難しいだろう。たとえ押し通すことができたとしても、政敵に付け入る隙を与えるだけだ。
そして、藤千代が東宮に入れたとしても、允耀殿下が皇太子妃と睦まじく暮らす様を間近で見なければならないのだ……。
藤千代の言葉に近侍は一瞥をくれただけで、無言のまま前へ向き直った。
冬の澄んだ空気の中、蕭と鼓の音が鳴り響いた。
宮廷内の広間から東宮へと向かうこの道のりだけが皇太子を見ることができる唯一の場所とあって、皇宮で働く人々の多くが詰めかけていた。
金色や赤の大きな扇の奥に、輿に乗った允耀皇子が見え隠れする。
人垣を超えて、さらに禁衛軍の向こうを練り歩く輿は、ほとんど見ることができない。それでも、意匠を凝らした刺繍が施された鮮やかな冕服姿は、皆が思わず息を止めるほどの美しさだった。
冬の陽光の中、花吹雪のような雪が允耀皇子を祝福するかのように舞い踊った。
冠から垂れ下がった玉飾りの奥の表情は、未来の皇帝にふさわしい凛とした佇まいを見せていた。
「美しいな」
藤千代の隣に立つ巡察師長が、思わずといった様子で呟いた。
「…………本当に」
藤千代の独り言のような返事は誰にも届くことなく、祝祭の音色に紛れた。
輿が通り過ぎ、見物の人々が帰っていく中、藤千代ものろのろと歩き出した。
「チヨ」
喧騒の中で名前を呼ばれて、藤千代は俯いていた顔を上げた。
「チヨ……一緒に行こう」
乾いた風に吹かれてリュカの金色の髪がたなびくのを、藤千代はじっと見つめた。
幼い頃から人の顔色ばかり窺ってきた藤千代が、人の心の機微をわからないわけがなかった。特に性的な視線には敏感だったので、最近のリュカの様子がおかしいことにも、当然気づいていた。
最初はただの親切心で誘ってくれていたと思っていたザロヴィア行きが、途端に虚しいものに思えてくる。
「リュカ殿下……申し訳ございませんが……」
藤千代が断りの言葉を口にするより先に、リュカが再度名前を呼ぶ。
「チヨ……。チヨが来れないなら、俺がチヨの方に行くよ。どこにでも、何をしてもいい。だから──……」
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