乙女ゲーム?それは過去の話です

灯月

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戻りましたわ

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「父さん、帰ってきましたわ まずは休憩しましょ?」

そう言いながらグランピーを中庭へと案内する
こうやって腕でも引いていかないと来てくれないのよね
グランピーは困った顔をしつつも私の手をとって握ってくれた

…え、何? 腕じゃ嫌なの? 手を繋いでくださるって? まじですか、可愛すぎるんですけど

内心ではグランピーのことを可愛すぎるとニヤニヤしてるのをバレないようにと早足で歩く
部下に頼んで用意してもらった中庭の椅子の前にいくとグランピーはその椅子を引いてくれた

「…父さん?」
「座りなさい」
「あ、ありがとうございますわ」

こういう紳士的なところが素敵なのですわ
私は椅子に座るとグランピーはそっと笑うと前の椅子へと腰をかけた

「今日はすまなかったな 助かった」
「いえ、良いのですわ! 私がやりたかったんですもの」
「そうか… ん、新しい紅茶だな」

紅茶の飲んでいる姿、素敵だわ

「彼奴らは元気そうだったか?」
「はい、いつも通りでしたわ」

ドックは仕事を楽しんでいるようだったし
スターピーは眠そうだけど、話を聞いてくれたし
スニージーはくしゃみで辛い中、外に会いに来てくれたし
ハッピーは笑顔で歌を歌いながら楽しませてくれたし
ドーピーは私のために標準語で話してくれたし
バッシュフルは姿を見せてくれて無駄なことはしないし

あ、これは父さんに伝える為に少し良い言葉に変換してるのよ
え、少しじゃないって? いいのよバレなかったら

「そうか、彼奴らがルベライトになにもしてないようなら良いんだ」

一瞬目が鋭くなったが何もなかったかように紅茶を飲む

「…ルベライト」
「はい」
「ドックはどうだ」
「はい?」

言葉が足りなくって何を聞いているのかわかりませんわ
首を傾げていると何について聞かれたのかわかっていないと理解してくれたのか
どう思っているのか聞いているのと付け足された

「えっと、ドック様は本当に何でも知っている物知りで わからないことがあれば聞くとわかりやすく教えてくださる先生みたいな人ですわ」

前世でゲームをやっていた時もそんな感じだったわ  主人公ちゃんが学生でドックが先生で何だかいけない恋みないに思ってたわ
年もそれくらいだったしね

「そうか…、先生か。」

なにか言いたげだが次はスターピーの事を聞いてきた

「スターピー様は、いつもどこでも眠そうですわ
優しいかたで興味がないことには寝ていることが多くって、ちょっと怒りたくなりますのよ
それと、あそこは私には寒いですわ」
「彼奴は起きていることの方が珍しいからな それと、ここの生まれには辛いからなあそこは」

確かにゲームの中でははじめの頃はずっと寝てましたもんね 起きてることなんてレアでその上彼の瞳が見えるようになるのは終盤からですものね

「スニージーは?」
「お兄ちゃんですわね 花粉症辛そうで大丈夫かと心配になりますわ
私よりも可愛いからなんとなく守ってあげたくなります」 
「…ルベライトはどちらかというと美人さんだからな」

父さん、急にそんな事を言われると発狂しますわ 嬉しすぎて今すぐ大声だしながら走り出したい気分ですわ
実際そんなことしたら怒られるのでしませんけど

「ハッピーは?」
「ハッピー様はいつもニコニコ笑ってて素敵だとは思いますが、その分不気味で怖いですわ」
「怖い、か」
「はい、私はそこまで笑ってられませんし 何がそんなに楽しいのかわかりません 私の感覚からしたら あの方は苦手ですわ 良い方ですけど…」

ゲームの時はそういうキャラだしずっと笑ってて素敵だって思ってたけど
実際に側にそういう人がいると怖いわ
何考えてるかわかんないし、いつの間にか傷つけてしまいそうで

「ドーピーは?」
「あの人はわからないわ 全てがわからないし、わかりたくないの 人として暮らすよりも動物たちと暮らした方が良いんじゃないかしらって思う時があるかな」
「厳しいな」
「どうしてあんなに気に入られてるかわからないんですもの 才能はあると思うわ だから、凡人は天才の考えがわからないわ」

ドーピーが年下又は同じ年くらいなら可愛いと思えたが 年上だと話は変わるのよ
どう接して良いかわからないの

「…バッシュフルはどうだ?」
「バッシュはいっつも隠れてて姿を中々見せてくれないのよね 見つけるのも大変だし… 照れ屋なところ少しは直した方が良いと思うの」
「そうか?」
「ええ、そうですわ」

何処から声がするかわからないのって怖いんですからね?
ゲームの中では物陰から見てるっていうキャラだったはずなのに 今ではレベルが違うわ

「だが、昔好きだった… だろ?」

私は驚いて紅茶をこぼしそうになりましたわ
まさか、昔の話をしてくるだなんて思ってなかったですもの
というか、覚えてらっしゃったんですね

「そ、それは昔の話であって! 今はお兄さんにしか思えないんです」

あの時は父さんにかまってもらえなくって寂しくって、それを埋めるために紫の街に遊びにいってて
そこで良くしてもらっているうちに好きになっただけで というか、それ以上に

「私は父さんに少しでも休んでもらうために、バッシュからあの技を教えてもらいたかったのですわ!」
「…」

あの忍のような身のこなし、無駄のない動き
その時はお嫁にいったら教えてもらえるのではって思っていたんだもの!
今となってみたらアホよね あ、バッシュフルのことは好きだったわよ 勿論。
たぶん、それがわかってたのかもしれないわね だから断られた

「ふっ、そうか… 俺の為、か」

グランピーは嬉しそうに私をみている
私は何か言おうとするが、その顔に見とれて何も言えずにいたわ

「なにも聞かなかったことにしてくれ。 今日は助かった ルベライト、ちゃんと休めよ」

グランピーはそういうと立ち上がり私のおでこに昔のようにキスをして歩いていってしまった
私は何がおこったのかわからずその場から動けずにいた
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