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三章 七郎兵衛とシロ(人情もの)
三章 17
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「神様のご守護をいただくために、神様と人とが一緒に飲食する“神人共食”という言葉がありますね。まさに花見がそうだった。やってみると、いいものですね」
そう言ってまた七郎兵衛は酒に口づける。酒はいける口のようだ。その顔を光仙は笑みを浮かべながら流し見ていた。
シロは大八車に積まれた赤飯の山のてっぺんで、思う存分赤飯を味わっている。
宴会の料理目当てか、村犬たちも集まってきた。
「こういう日には、けちっちゃいけねえ」
村人たちは犬に料理をふるまっている。その犬の中には、今朝小藤が助けた白い犬も混じっていた。
「白い犬を見ると、七郎兵衛のやつを思い出すなあ」
村人の一人がしみじみと言う。
七郎兵衛はどきりとした表情で手を止めた。
「一度飲み比べをしたかったものだ。ああいうスラッとしたやつは案外強いからな」
「なに言ってるのさあんた。酒は一日一杯だからね」
妻に釘を刺されて亭主は「こういう席での話だろ」と言い訳をする。
「わしは将棋の相手をしてもらいたかったんだが。村では敵なしだからな」
「この村には、じいちゃんみたいな暇人がいないだけよ」
そんなやりとりでしばらく七郎兵衛の話題が盛り上がる。
「こうして話していれば七郎兵衛のやつもひょっこり現れて、実は今頃一緒におれたちと飲んでるかもな」
そう言う村人に、七郎兵衛は、
「いただいていますよ」
と軽く酒をかかげた。七郎兵衛の目元が濡れている。
「もっと早く歩み寄ってもよかったのかもしれませんね」
七郎兵衛は小さく呟いた。
「いやでもさあ、さっきからなんかいるって感じしねえか?」
「そうそう、手を合わせたくなるありがたい気配っていうかなあ」
村人たちが頷いている。
「いつもより体調がいいというか、酒が進むというか、気分が弾むというか」
「おまえもか。気のせいじゃなかったんだな」
「この桜も、さっきより元気になってるんだよ」
その言葉に村人たちは顔をあげた。つられて小藤も桜を見たが、その変化にはすでに気づいていた。散る間際で下を向いていた花弁たちが、張りを取り戻して色鮮やかになっていた。
村人たちが顔を見合わせた。
「こりゃ、いなさるな」
しばし間ができる。
「おい、誰か踊れ。神様にお見せしろ」
「もっと酒もってこい」
それからが大騒ぎだった。踊るなら見苦しいものは見せられないと、村で一番歌と踊りが上手い者が呼び出された。笛や太鼓も運び込まれる。そうなると、それを見物に来る村人も現れる。
結局境内は村人が大勢押し寄せる大宴会となった。
「こんな花見ならいつでも歓迎だ」
光仙は満足そうに笑った。
結局宴会は夜まで続き、大いに賑わったのだった。
そう言ってまた七郎兵衛は酒に口づける。酒はいける口のようだ。その顔を光仙は笑みを浮かべながら流し見ていた。
シロは大八車に積まれた赤飯の山のてっぺんで、思う存分赤飯を味わっている。
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「白い犬を見ると、七郎兵衛のやつを思い出すなあ」
村人の一人がしみじみと言う。
七郎兵衛はどきりとした表情で手を止めた。
「一度飲み比べをしたかったものだ。ああいうスラッとしたやつは案外強いからな」
「なに言ってるのさあんた。酒は一日一杯だからね」
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「わしは将棋の相手をしてもらいたかったんだが。村では敵なしだからな」
「この村には、じいちゃんみたいな暇人がいないだけよ」
そんなやりとりでしばらく七郎兵衛の話題が盛り上がる。
「こうして話していれば七郎兵衛のやつもひょっこり現れて、実は今頃一緒におれたちと飲んでるかもな」
そう言う村人に、七郎兵衛は、
「いただいていますよ」
と軽く酒をかかげた。七郎兵衛の目元が濡れている。
「もっと早く歩み寄ってもよかったのかもしれませんね」
七郎兵衛は小さく呟いた。
「いやでもさあ、さっきからなんかいるって感じしねえか?」
「そうそう、手を合わせたくなるありがたい気配っていうかなあ」
村人たちが頷いている。
「いつもより体調がいいというか、酒が進むというか、気分が弾むというか」
「おまえもか。気のせいじゃなかったんだな」
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結局宴会は夜まで続き、大いに賑わったのだった。
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