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終章 別れと始まり
別れと始まり 1
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高い位置から太陽に照らされて、アレクサンドラたちを乗せた船は、ジャスターク国の港に戻ってきた。乗員を降ろすとその船は食料などを補充して、オルレニア王国に戻っていった。
「キャプテン、待ってたぜ」
「お帰り」
「早くお宝探しに行こうぜ」
ロバート海賊団の何人かが石造りの突堤まで迎えに来ていた。その中にはエドワードの姿もあり、アレクサンドラはドキリとする。
「ただいま」
おずおずと声をかけてくるアレクサンドラの無事を確認したエドワードは、安堵の表情を浮かべたあとに顔を引き締めた。
「どこに行っていた?」
「それは言えない」
アレクサンドラは拳を握り、緊張しながらエドワードを見上げている。
「隠れ家なんだろ」
「……エド、話しがある。人のいないところに行きたい」
二人は宿屋に移動した。狭い部屋に立ったアレクサンドラは、表情を硬くしたまま目を伏せる。
「話があるんじゃないのか」
「エド……」
口を開きかけたものの、またアレクサンドラは俯いてしまった。それを見ていたエドワードは表情を硬くしたままベッドに腰かけた。
「では俺から話そう」
エドワードはアレクサンドラにも座るよう視線で促す。
「今日、昼過ぎに定期船が到着する。俺はそれで帰国する。おまえも来い」
「そんな、だってまだ……」
「十分な収穫だ。おまえはアジトを突き止めたんだろう」
挑発するような視線を受け、アレクサンドラは首を横に振った。
「私は帰らない」
そしてアレクサンドラはエドワードの瞳を真っ直ぐに見返した。
「エド。帝国に戻ったら、私は死んだと報告してほしい」
予測していたのだろう、エドワードはわずかに眉を寄せただけだった。
「兄は悲しむかもしれない。でも真実は知らせないで。嵐の夜に誤って船から転落したことにでもしてほしい。私の死が、軍の報復の手段に利用されるのも困る」
エドワードは固い表情で先を促した。
「アレクサンドラ・ヴァローズは死んだ。私はアレックスとして、ここで生きていく」
「……頭を冷やしても熱病は治らなかったのか」
「ごめん、エド。でも私は決めたんだ」
アレクサンドラは拳を固く握った。瞬きを忘れているかのような二人は、強い視線をぶつけ合っていた。
「俺が嫌だと言ったらどうする? 洗いざらい軍部に報告すると」
アレクサンドラは下唇を噛みしめて、一息吸ってからエドワードを見据えた。
「エド、剣で私と勝負して」
「……勝負?」
エドワードはわずかに目を眇める。
「私が勝ったら、帝国に戻って私が死んだと報告してほしい」
「正気か」
エドワードは立ち上がった。
「おまえに剣を教えたのは俺だぞ」
アレクサンドラは父や兄、そして特にエドワードに剣技を習っていた。
「わかってる。それを言うなら私だってエドの太刀筋はよく知っている」
エドワードは小さく首を振る。
「それほどまでして、海賊として生きていきたいのか」
アレクサンドラは頷いた。
「ロバートは海図を完成させたいという私の夢を笑わなかった」
その言葉にエドワードは瞠目し、小さく歯を鳴らす。
アレクサンドラはベッドサイドの荷からレイピアを持ち上げた。
「これを使いたい。カトラスはあまり得意ではないから」
腰に下げたカトラスに、レイピアの鞘をコツンと当てた。
「わかった。その勝負を受けよう」
エドワードは腰のカトラスをベッドにのせ、レイピアを帯刀した。
「ただし、俺が勝ったらおまえも帝国に帰るんだ。そしておまえは俺の妻になる」
「エド」
「俺に虚偽報告をさせようというんだ。当然、それくらいの覚悟はあるだろうな」
「……わかった」
妻になることを罰のように言わないでほしいと、アレクサンドラは悲しくなった。しかし、エドワードをそこまで追いつめているのは自分なのだ。
大好きな人を苦しめている。
それがわかっていても、アレクサンドラは夢を目指すことに決めたのだ。
もう後戻りするつもりはない。
「キャプテン、待ってたぜ」
「お帰り」
「早くお宝探しに行こうぜ」
ロバート海賊団の何人かが石造りの突堤まで迎えに来ていた。その中にはエドワードの姿もあり、アレクサンドラはドキリとする。
「ただいま」
おずおずと声をかけてくるアレクサンドラの無事を確認したエドワードは、安堵の表情を浮かべたあとに顔を引き締めた。
「どこに行っていた?」
「それは言えない」
アレクサンドラは拳を握り、緊張しながらエドワードを見上げている。
「隠れ家なんだろ」
「……エド、話しがある。人のいないところに行きたい」
二人は宿屋に移動した。狭い部屋に立ったアレクサンドラは、表情を硬くしたまま目を伏せる。
「話があるんじゃないのか」
「エド……」
口を開きかけたものの、またアレクサンドラは俯いてしまった。それを見ていたエドワードは表情を硬くしたままベッドに腰かけた。
「では俺から話そう」
エドワードはアレクサンドラにも座るよう視線で促す。
「今日、昼過ぎに定期船が到着する。俺はそれで帰国する。おまえも来い」
「そんな、だってまだ……」
「十分な収穫だ。おまえはアジトを突き止めたんだろう」
挑発するような視線を受け、アレクサンドラは首を横に振った。
「私は帰らない」
そしてアレクサンドラはエドワードの瞳を真っ直ぐに見返した。
「エド。帝国に戻ったら、私は死んだと報告してほしい」
予測していたのだろう、エドワードはわずかに眉を寄せただけだった。
「兄は悲しむかもしれない。でも真実は知らせないで。嵐の夜に誤って船から転落したことにでもしてほしい。私の死が、軍の報復の手段に利用されるのも困る」
エドワードは固い表情で先を促した。
「アレクサンドラ・ヴァローズは死んだ。私はアレックスとして、ここで生きていく」
「……頭を冷やしても熱病は治らなかったのか」
「ごめん、エド。でも私は決めたんだ」
アレクサンドラは拳を固く握った。瞬きを忘れているかのような二人は、強い視線をぶつけ合っていた。
「俺が嫌だと言ったらどうする? 洗いざらい軍部に報告すると」
アレクサンドラは下唇を噛みしめて、一息吸ってからエドワードを見据えた。
「エド、剣で私と勝負して」
「……勝負?」
エドワードはわずかに目を眇める。
「私が勝ったら、帝国に戻って私が死んだと報告してほしい」
「正気か」
エドワードは立ち上がった。
「おまえに剣を教えたのは俺だぞ」
アレクサンドラは父や兄、そして特にエドワードに剣技を習っていた。
「わかってる。それを言うなら私だってエドの太刀筋はよく知っている」
エドワードは小さく首を振る。
「それほどまでして、海賊として生きていきたいのか」
アレクサンドラは頷いた。
「ロバートは海図を完成させたいという私の夢を笑わなかった」
その言葉にエドワードは瞠目し、小さく歯を鳴らす。
アレクサンドラはベッドサイドの荷からレイピアを持ち上げた。
「これを使いたい。カトラスはあまり得意ではないから」
腰に下げたカトラスに、レイピアの鞘をコツンと当てた。
「わかった。その勝負を受けよう」
エドワードは腰のカトラスをベッドにのせ、レイピアを帯刀した。
「ただし、俺が勝ったらおまえも帝国に帰るんだ。そしておまえは俺の妻になる」
「エド」
「俺に虚偽報告をさせようというんだ。当然、それくらいの覚悟はあるだろうな」
「……わかった」
妻になることを罰のように言わないでほしいと、アレクサンドラは悲しくなった。しかし、エドワードをそこまで追いつめているのは自分なのだ。
大好きな人を苦しめている。
それがわかっていても、アレクサンドラは夢を目指すことに決めたのだ。
もう後戻りするつもりはない。
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