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第1章 レッツスローライフ
薬物はダメ、絶対に (3)
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回復薬を製造するために原液?を煮詰めて15分。鍋の中の液体がブクブクと泡立ちはじめた。
「わぁ………!」
沸騰する液体を見ながら、私はついつい感嘆の声をあげた。
鍋の中では、薄い透明な黄緑色の液体がグツグツ煮えている。あたりにはなかなかに爽やかなりんごの香りが漂っていて、いい加減お腹も空いてきた。
「しかし黄金りんごの実態がますますわからない……」
だって意味わからなくない?あんなブルーハワイも裸足で逃げるほど真っ青な皮に、スイカにしか見えない果肉と種を持って(種は全部抜いた)いて、しかもすりつぶした時は紫色のペーストだったこいつが。
「どうして水と蜂蜜加えて煮詰めたらこんな綺麗な黄緑色になるんだ?」
最初は濁っていた鍋の中身も、気づいたら清水よりも透き通った綺麗なものになってるし、何、溶けたの?黄金りんごのペーストは溶けるものなのか?
しかもこの香り。見た目も味も一切りんごじゃないくせに、どうして煮詰めるとがっつりりんごの香りなんだ?
不思議な生態だ………。言葉の使い方がおかしいのはわざとだから。
「………まあ、ほかのものよりツッコミどころ少なくて助かるけど……」
かき混ぜ棒でぐるぐると鍋の中身をかき混ぜながら、私は異世界に来てから何度目になるかわからないため息をついた。
ため息ばっかりついてるから私の幸せは逃げてるんだじゃないのか?なんかそんな気がちょっとしてきたよ!
「このくらい煮詰めれば大丈夫かな?」
沸騰してからもだいぶ時間は経ったから、もうそろそろいいんじゃないだろうか?アクも流石にもう出てないし。
私はとりあえず火を止めた。
「えっと………煮詰めたあとは一日放置だっけ?」
じゃあ明日までこの鍋と中身はここに置きっぱなしでいいわけね。
ラップとかかけた方がいいのかな……?
……とか思ったけどそういえばこの世界ってプラスチックなかったんだ!!
「木の蓋でも作ろうかな……?」
◇ ◇ ◇
翌日。
やってまいりました、調薬室。
「さて、回復薬はどうなってるかな?」
鍋の蓋を取り、私は鍋の中を覗き込む。昨日結局木の蓋、作りましたよ!
「わわ!すご!!」
鍋の中では、昨日見た時と同じ緑色の液体が入っているが、色が鮮やかになっていた。昨日は黄色っぽい黄緑だったが、今は緑っぽい黄緑だ。
しかもどういう原理かは知らないけど、液体がキラキラ輝いている!!
「回復薬作りは成功したの……か?」
やっぱりあのドラッグどもを入れないのは正解だったのかな……?ちょっと鑑定してみた。
天使の回復薬……HP1000回復。
「なんか名称変わってるよ!?」
体力回復薬じゃなくなってる!天使の回復薬とかすごいかっこいい!しかも回復効果2倍になってるよ。なんで?
「やっぱドラッグは入れなくて全然よかったじゃない」
そうだよね。あんな危険ドラッグを放り込んでたら、回復薬の回復効果だって落ちそうだもんね。
『新しいスキルを習得しました』
「ん?マジ?」
この展開だと、回復薬作りに関係ありそうなスキルだな。
真・調薬術……本物の回復薬を調合できるようになる。簡単に言えば才能だ。このスキルを持っている人はこの世界で4人しかいない
「めっちゃチート!!」
すげえな、このスキル!持ってるの世界でたった4人?つまりすんごいレアだね!
「しかし本物の回復薬って何?」
普通の回復薬とは違うの?薬術書を調べれば載ってる?
【天使の回復薬:体力回復薬の本物の回復薬。HP1000回復。
材料:黄金りんご。イムシロップ。水】(薬術書より抜粋)
「あれ?書き換えられてる!?」
この天使の回復薬って、体力回復薬の上位版だったのか!まあ、読み方同じだからそうか。
ちなみにイムシロップってのはイムイム花の蜜、いわゆる蜂蜜である。
『本物の回復薬とは、特定のスキルを持っていないと絶対に作ることができない回復薬である。通常の回復薬と同じだけ種類はあるが、通常の回復薬と比べて2倍の効果を得られる』
「なんかいちいち仕組みがめんどくさいな」
つまりこの世界には流通量は極少にしろ、回復薬が2種類あるってことでしょ?紛らわしくないの?
あ、でも自分で回復薬作れちゃえば関係ないか。
『ちなみに購入額も2倍かそれ以上になります』
「うん、それはなんとなく想像できてたよ!!」
「わぁ………!」
沸騰する液体を見ながら、私はついつい感嘆の声をあげた。
鍋の中では、薄い透明な黄緑色の液体がグツグツ煮えている。あたりにはなかなかに爽やかなりんごの香りが漂っていて、いい加減お腹も空いてきた。
「しかし黄金りんごの実態がますますわからない……」
だって意味わからなくない?あんなブルーハワイも裸足で逃げるほど真っ青な皮に、スイカにしか見えない果肉と種を持って(種は全部抜いた)いて、しかもすりつぶした時は紫色のペーストだったこいつが。
「どうして水と蜂蜜加えて煮詰めたらこんな綺麗な黄緑色になるんだ?」
最初は濁っていた鍋の中身も、気づいたら清水よりも透き通った綺麗なものになってるし、何、溶けたの?黄金りんごのペーストは溶けるものなのか?
しかもこの香り。見た目も味も一切りんごじゃないくせに、どうして煮詰めるとがっつりりんごの香りなんだ?
不思議な生態だ………。言葉の使い方がおかしいのはわざとだから。
「………まあ、ほかのものよりツッコミどころ少なくて助かるけど……」
かき混ぜ棒でぐるぐると鍋の中身をかき混ぜながら、私は異世界に来てから何度目になるかわからないため息をついた。
ため息ばっかりついてるから私の幸せは逃げてるんだじゃないのか?なんかそんな気がちょっとしてきたよ!
「このくらい煮詰めれば大丈夫かな?」
沸騰してからもだいぶ時間は経ったから、もうそろそろいいんじゃないだろうか?アクも流石にもう出てないし。
私はとりあえず火を止めた。
「えっと………煮詰めたあとは一日放置だっけ?」
じゃあ明日までこの鍋と中身はここに置きっぱなしでいいわけね。
ラップとかかけた方がいいのかな……?
……とか思ったけどそういえばこの世界ってプラスチックなかったんだ!!
「木の蓋でも作ろうかな……?」
◇ ◇ ◇
翌日。
やってまいりました、調薬室。
「さて、回復薬はどうなってるかな?」
鍋の蓋を取り、私は鍋の中を覗き込む。昨日結局木の蓋、作りましたよ!
「わわ!すご!!」
鍋の中では、昨日見た時と同じ緑色の液体が入っているが、色が鮮やかになっていた。昨日は黄色っぽい黄緑だったが、今は緑っぽい黄緑だ。
しかもどういう原理かは知らないけど、液体がキラキラ輝いている!!
「回復薬作りは成功したの……か?」
やっぱりあのドラッグどもを入れないのは正解だったのかな……?ちょっと鑑定してみた。
天使の回復薬……HP1000回復。
「なんか名称変わってるよ!?」
体力回復薬じゃなくなってる!天使の回復薬とかすごいかっこいい!しかも回復効果2倍になってるよ。なんで?
「やっぱドラッグは入れなくて全然よかったじゃない」
そうだよね。あんな危険ドラッグを放り込んでたら、回復薬の回復効果だって落ちそうだもんね。
『新しいスキルを習得しました』
「ん?マジ?」
この展開だと、回復薬作りに関係ありそうなスキルだな。
真・調薬術……本物の回復薬を調合できるようになる。簡単に言えば才能だ。このスキルを持っている人はこの世界で4人しかいない
「めっちゃチート!!」
すげえな、このスキル!持ってるの世界でたった4人?つまりすんごいレアだね!
「しかし本物の回復薬って何?」
普通の回復薬とは違うの?薬術書を調べれば載ってる?
【天使の回復薬:体力回復薬の本物の回復薬。HP1000回復。
材料:黄金りんご。イムシロップ。水】(薬術書より抜粋)
「あれ?書き換えられてる!?」
この天使の回復薬って、体力回復薬の上位版だったのか!まあ、読み方同じだからそうか。
ちなみにイムシロップってのはイムイム花の蜜、いわゆる蜂蜜である。
『本物の回復薬とは、特定のスキルを持っていないと絶対に作ることができない回復薬である。通常の回復薬と同じだけ種類はあるが、通常の回復薬と比べて2倍の効果を得られる』
「なんかいちいち仕組みがめんどくさいな」
つまりこの世界には流通量は極少にしろ、回復薬が2種類あるってことでしょ?紛らわしくないの?
あ、でも自分で回復薬作れちゃえば関係ないか。
『ちなみに購入額も2倍かそれ以上になります』
「うん、それはなんとなく想像できてたよ!!」
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