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~領地改革~
新たな幕開け
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次の朝、フレイヤは兄に連れられて、街の中心部にある瓦礫の山にやってきた。昨日まで病床に臥せっていたとは思えないほど体は元気だった。
「本当にこんなところにいるの?」
「ああ」
こんな瓦礫の山に、本当に貴族なんかが好んで入るのかな?不安で何度も兄に聞いたが、兄はためらいもなく進んでいく。
「よう!テオじゃん!」
瓦礫の壁を回り込み、開けた場所にたどり着いた兄は、開口一番そう言った。まるで親しい友人に会ったように気軽に。
「フレイ?なんでいるんだ?」
「来ちゃ悪いか?妹がユール様に会いたいって言ったからな」
「妹さん、治ったのか?」
「おかげさまでピンピンしてるよ」
「そっか。ユール様も一安心だろうな」
「そもそもあの人は心配もしてなかっただろう。"必ず治る"とか言い切っちゃって」
「ははっ!そうだったな」
兄と、知らない少年の声が聞こえる。兄の声は弾んでいた。こんな楽しそうに誰かと話している兄なんて始めて見た。誰かと楽しくおしゃべりなんて、死と隣り合わせのこの地方では夢物語だったから。
「ユール様に会いに来たんだろ?なら呼んでくるよ。ここで待ってて」
「わかった」
パタパタと一つの足音が遠ざかっていく。恐る恐る物陰から首を覗かせると、兄が微笑みながら手招きしていた。
「別に出てきてよかったのに。テオは別に悪いやつじゃないぞ?」
「いや……ちょっと、なんとなく」
兄の横まで移動して、フレイヤは広場を見渡す。
広場には白馬が引いている白い馬車と、黒馬、月色の馬がいた。それ以外には小さな焚き火が一つあって、その周りには毛布がたくさんあった。ここで寝泊まりした……?
焚き火の近くには、その毛布を拾い集めている赤いショートヘアに緑色の瞳の女の子が一人。馬車の中に何か小さな箱を運んでいる茶髪のツインテールに緑色の瞳の少女が一人。馬車の横で楽しそうに会話している金髪サイドテールに灰色の瞳の女の子と、黒髪緑色の瞳の女の子。そしてそのさらに奥に、兄と同じ黒い髪に黒い瞳の少年が、輝くばかりに美しい銀色の後ろ姿に声をかけていた。
「ねえ、兄さん」
「ん?」
「あの子……なの?」
「そう。あの銀色の子だよ」
やっぱり、あの子なんだ。
黒髪の少年…兄がテオと呼んでいた少年…に連れられてこっちへ来る銀髪の少女を、フレイヤは呆然と見つめた。
兄の言う通り、少女はフレイヤが思っていたような貴族像とはかけ離れすぎていた。第一印象は、恐ろしく綺麗で、人形のように冷たい少女だった。床まで流れている銀色の髪は、あたりの光を目一杯吸って美しい光沢を放っている。右目は銀色の髪に遮られて見えなかったが、左目は空の青とも海の青とも言えないような不思議な水色だった。雪のように白く透き通った肌、これでもかとまでに整った顔。少女はこの世の者とは思えぬほど美しかった。
「どうも、ユール様」
「おはよう、フレイ。妹さんが来てるって聞いたんだけど」
「ああ。妹のフレイヤだ」
「はじめまして!フレイヤと言います。助けていただいて、本当にありがとうございました」
慌てて頭を下げた。自分よりも年下のはずの彼女なのに、なのに尊敬に値するほどの気高いオーラと気品に満ちていた。
「顔をあげて。私はユグドラシル。ユールって呼んでもらえればいいわ」
「はい、ユール様」
「………。体は平気なの?」
「はい。ユール様のおかげでなんの問題もありません」
「そう。ならよかったわ」
フレイヤの返答に、ユールの目尻がわずかに下がった。それだけのことなのに、フレイヤはドキッとなった。
「あの……」
「…?」
「よろしければですが、その右目にかかっている髪をあげてはもらえませんか?」
「……どうして?」
「えっと……見間違えかもしれませんが、その銀髪の下に違う色が見えるような気がするのです」
フレイヤは人より視力がよかった。目がいいからなのか、人の表情を読むことや、光加減を見極めるのも得意だった。
だからフレイヤはユールの銀色の髪の下に隠された彼女の右目に違和感を覚えた。白い色彩に邪魔されてはっきりとは捉えられないが、それでも銀髪の下にある色彩は水色ではないように思えた。
「……へぇ。目が良いんだ」
「はい………」
「いいわ。言っても言わなくても変わんないもの」
ユールは小さく肩を竦めると、その美しい手で流れるように髪をかきあげた。
その下から現れた燃えるような赤に、フレイヤは息を呑んだ。なんて美しい紅色だろう、と思った。
「綺麗な瞳ですね……」
「…?あ、そっか。ここには教会の教えはないもんね」
「?」
「なんでもない。そう言ってくれて、嬉しい」
「い、いえ!」
落ち着け、私。女子が女子にドキドキしてどうするの。
フレイヤが一人でうだうだやっている間に、ユールの方では別の話が進んでいた。
「今日はここを発つ?」
「ええ。一週間って、長いようで短いもの。時間は無駄にできない」
「なら!俺を連れてってくれないか?」
「……フレイを?」
「ああ。あんたたちについて行きたいんだ。それに、案内役は必要だろ?やらせてくれないか?」
兄がフレイヤを差し置いて同行を願い出ていた。
「ちょっと、兄さん!抜け駆けは良くないよ!」
「うわっ!フレイヤ服掴まないで!」
「ユール様!私も一緒に行かせてください!」
「え、えっと………」
「私はユール様に命を救われました。だから恩返しがしたいんです!助けてもらったのに、なにもせずにただ生きるなんて嫌です!」
「えぇ………」
「命の恩なんて、一生返せないのはわかってるんです。でも何かしたいの!ユール様が私の命を救ってくれたように、私もユール様を助けたいのです!」
「えーっと…………」
この少女のために何かしてあげたかった。命を救われたことへの恩返しという目的もあるんだが、自分のためにもフレイヤはそう願った。
フレイヤには夢があった。自分たちの置かれている環境を知った時に、諦めてしまった夢が。
いつか、この街を豊かにしたい。遠い昔のフレイヤは確かにそんな夢を持っていた。
生まれた街は貧しくて、ボロボロだった。だから豊かにしたいと願った。誰もが健康に生きられる街にしたいと願った。でも自分たちの住むこの地方には支配者すらいない、何百年もの間見捨てられていた事実を知って、自分ではどうしようもできないことを悟って諦めてしまった。
その夢が、今になって表に出てきた。フレイヤはユールを見る。兄は、この子がこの地方の領主だと言った。彼女の隣に、かつて自分が望んでいた地方の未来があるように思えた。
この少女になら、この地方を繁栄させられると思った。うまく言葉にはできないが、そう確信させるような何かを、彼女は確かに持っていた。
彼女のことは兄からの話の中でしか知らない。それでもその話の片鱗で、彼女が優秀だということは悟っていた。
あなたの歩く先にあるヴァルハラを、見てみたいの。
「……本気、なの?」
「私は本気です!」
「………たくさん働くことになるよ?」
「本望です!それでユール様を助けられるなら、この地方が良くなるなら喜んでやります!」
「…………」
「ユール様、俺からも頼む」
「フレイ」
「俺は、あなたを慕っている。嘘じゃない。昨日、俺を諌めてくれたことに感謝してるんだ。あれのおかげで、俺は間違いを侵さずに済んだ。こんな場所だから、そういうことを言ってくれる人間はいない。だからその言葉が死ぬほど嬉しかったのだ」
「…………」
「動機は違うにしろ、俺もフレイヤも、本気でユール様について行きたいと願ってる。だから、連れて行ってくれ」
兄の言葉を聞いて、ユールが静かに目を伏せる。
「わかった。一緒に来るといいわ」
「ユール様っ!」
「その代わり、ガンガン働いてもらうからね」
いたずらっ子のような笑みをうっすら浮かべながら、ユールがそう言った。フレイヤも嬉しそうに微笑み返した。
フレイとフレイヤの同行を許可したはいいが、別の問題が浮上した。
「フレイって、馬乗れるの?」
「ちょっと……無理ですね」
「フレイヤも乗れないよね?」
「はい、乗れません」
「うーん………」
二人がどこに乗るかの問題だ。ユールの馬車は4人乗りで、その他に馬がもう一頭空いていて、御者台にもう一人座れるかな、ぐらいの感じだ。
「今日出発ってのは変えるつもりないから、フレイには移動しながら乗馬を覚えてもらおう」
「それは私が教えるんですよね?」
「だってノルン以外乗馬できる人いないもん」
「大丈夫です!人に教えるのは得意ですから!」
「ノルンって人にものを教えたことあったか?」
「フレイヤは馬車に乗ればいいし……」
「え!?私が?」
「そうよ。まさか御者台に乗るわけいかないでしょ。私はノルンの前に乗っけてもらうわ」
「あの、俺は?」
「フレイは乗馬を覚えるまでテオの横」
「だってさ」
「だって、フレイ」
ちょっと、そこなんで嬉しそうに握り手交わしてるのよ。
「ほら、出発するよ。フレイヤも乗って」
「え、でも………」
「でも、じゃない。平気よ、ウルズたちがいるもの。退屈しないわ」
「君が新しいお仲間?私はスクルド!ユー様の友達だよ!」
「ああ、もう!スクルド!そんなに袖引っ張らないであげて!ごめんね、妹が迷惑かけて。私はヴェルザンディ。よろしくね」
「はぁ………妹が二人ともおてんばですみませんね。私はウルズ。年齢も近そうだし、仲良くしましょ」
「え?え??」
よしよし。これなら問題ないね。
三姉妹に馬車へ引きずりこまれたフレイヤを見てそう断言する。
「フレイ、この地方の領都に最短距離で行きたいんだけど、どこを通っていくべき?」
「あ、それならこの街から出てる街道で一本だよ。道中2・3個くらい街があるけど」
「それはちょうどいいわ。テオ、このルートで行くよ」
「あいよ」
やっぱりこの地方に詳しい人がいると違うね。探索魔法を広範囲に展開して精神的に疲労するより楽だわ。
「よーし、出発進行ー」
「なんかユール様のテンションが久々に謎だわ」
こうして、一行の旅は次のステージに入って行った。
「本当にこんなところにいるの?」
「ああ」
こんな瓦礫の山に、本当に貴族なんかが好んで入るのかな?不安で何度も兄に聞いたが、兄はためらいもなく進んでいく。
「よう!テオじゃん!」
瓦礫の壁を回り込み、開けた場所にたどり着いた兄は、開口一番そう言った。まるで親しい友人に会ったように気軽に。
「フレイ?なんでいるんだ?」
「来ちゃ悪いか?妹がユール様に会いたいって言ったからな」
「妹さん、治ったのか?」
「おかげさまでピンピンしてるよ」
「そっか。ユール様も一安心だろうな」
「そもそもあの人は心配もしてなかっただろう。"必ず治る"とか言い切っちゃって」
「ははっ!そうだったな」
兄と、知らない少年の声が聞こえる。兄の声は弾んでいた。こんな楽しそうに誰かと話している兄なんて始めて見た。誰かと楽しくおしゃべりなんて、死と隣り合わせのこの地方では夢物語だったから。
「ユール様に会いに来たんだろ?なら呼んでくるよ。ここで待ってて」
「わかった」
パタパタと一つの足音が遠ざかっていく。恐る恐る物陰から首を覗かせると、兄が微笑みながら手招きしていた。
「別に出てきてよかったのに。テオは別に悪いやつじゃないぞ?」
「いや……ちょっと、なんとなく」
兄の横まで移動して、フレイヤは広場を見渡す。
広場には白馬が引いている白い馬車と、黒馬、月色の馬がいた。それ以外には小さな焚き火が一つあって、その周りには毛布がたくさんあった。ここで寝泊まりした……?
焚き火の近くには、その毛布を拾い集めている赤いショートヘアに緑色の瞳の女の子が一人。馬車の中に何か小さな箱を運んでいる茶髪のツインテールに緑色の瞳の少女が一人。馬車の横で楽しそうに会話している金髪サイドテールに灰色の瞳の女の子と、黒髪緑色の瞳の女の子。そしてそのさらに奥に、兄と同じ黒い髪に黒い瞳の少年が、輝くばかりに美しい銀色の後ろ姿に声をかけていた。
「ねえ、兄さん」
「ん?」
「あの子……なの?」
「そう。あの銀色の子だよ」
やっぱり、あの子なんだ。
黒髪の少年…兄がテオと呼んでいた少年…に連れられてこっちへ来る銀髪の少女を、フレイヤは呆然と見つめた。
兄の言う通り、少女はフレイヤが思っていたような貴族像とはかけ離れすぎていた。第一印象は、恐ろしく綺麗で、人形のように冷たい少女だった。床まで流れている銀色の髪は、あたりの光を目一杯吸って美しい光沢を放っている。右目は銀色の髪に遮られて見えなかったが、左目は空の青とも海の青とも言えないような不思議な水色だった。雪のように白く透き通った肌、これでもかとまでに整った顔。少女はこの世の者とは思えぬほど美しかった。
「どうも、ユール様」
「おはよう、フレイ。妹さんが来てるって聞いたんだけど」
「ああ。妹のフレイヤだ」
「はじめまして!フレイヤと言います。助けていただいて、本当にありがとうございました」
慌てて頭を下げた。自分よりも年下のはずの彼女なのに、なのに尊敬に値するほどの気高いオーラと気品に満ちていた。
「顔をあげて。私はユグドラシル。ユールって呼んでもらえればいいわ」
「はい、ユール様」
「………。体は平気なの?」
「はい。ユール様のおかげでなんの問題もありません」
「そう。ならよかったわ」
フレイヤの返答に、ユールの目尻がわずかに下がった。それだけのことなのに、フレイヤはドキッとなった。
「あの……」
「…?」
「よろしければですが、その右目にかかっている髪をあげてはもらえませんか?」
「……どうして?」
「えっと……見間違えかもしれませんが、その銀髪の下に違う色が見えるような気がするのです」
フレイヤは人より視力がよかった。目がいいからなのか、人の表情を読むことや、光加減を見極めるのも得意だった。
だからフレイヤはユールの銀色の髪の下に隠された彼女の右目に違和感を覚えた。白い色彩に邪魔されてはっきりとは捉えられないが、それでも銀髪の下にある色彩は水色ではないように思えた。
「……へぇ。目が良いんだ」
「はい………」
「いいわ。言っても言わなくても変わんないもの」
ユールは小さく肩を竦めると、その美しい手で流れるように髪をかきあげた。
その下から現れた燃えるような赤に、フレイヤは息を呑んだ。なんて美しい紅色だろう、と思った。
「綺麗な瞳ですね……」
「…?あ、そっか。ここには教会の教えはないもんね」
「?」
「なんでもない。そう言ってくれて、嬉しい」
「い、いえ!」
落ち着け、私。女子が女子にドキドキしてどうするの。
フレイヤが一人でうだうだやっている間に、ユールの方では別の話が進んでいた。
「今日はここを発つ?」
「ええ。一週間って、長いようで短いもの。時間は無駄にできない」
「なら!俺を連れてってくれないか?」
「……フレイを?」
「ああ。あんたたちについて行きたいんだ。それに、案内役は必要だろ?やらせてくれないか?」
兄がフレイヤを差し置いて同行を願い出ていた。
「ちょっと、兄さん!抜け駆けは良くないよ!」
「うわっ!フレイヤ服掴まないで!」
「ユール様!私も一緒に行かせてください!」
「え、えっと………」
「私はユール様に命を救われました。だから恩返しがしたいんです!助けてもらったのに、なにもせずにただ生きるなんて嫌です!」
「えぇ………」
「命の恩なんて、一生返せないのはわかってるんです。でも何かしたいの!ユール様が私の命を救ってくれたように、私もユール様を助けたいのです!」
「えーっと…………」
この少女のために何かしてあげたかった。命を救われたことへの恩返しという目的もあるんだが、自分のためにもフレイヤはそう願った。
フレイヤには夢があった。自分たちの置かれている環境を知った時に、諦めてしまった夢が。
いつか、この街を豊かにしたい。遠い昔のフレイヤは確かにそんな夢を持っていた。
生まれた街は貧しくて、ボロボロだった。だから豊かにしたいと願った。誰もが健康に生きられる街にしたいと願った。でも自分たちの住むこの地方には支配者すらいない、何百年もの間見捨てられていた事実を知って、自分ではどうしようもできないことを悟って諦めてしまった。
その夢が、今になって表に出てきた。フレイヤはユールを見る。兄は、この子がこの地方の領主だと言った。彼女の隣に、かつて自分が望んでいた地方の未来があるように思えた。
この少女になら、この地方を繁栄させられると思った。うまく言葉にはできないが、そう確信させるような何かを、彼女は確かに持っていた。
彼女のことは兄からの話の中でしか知らない。それでもその話の片鱗で、彼女が優秀だということは悟っていた。
あなたの歩く先にあるヴァルハラを、見てみたいの。
「……本気、なの?」
「私は本気です!」
「………たくさん働くことになるよ?」
「本望です!それでユール様を助けられるなら、この地方が良くなるなら喜んでやります!」
「…………」
「ユール様、俺からも頼む」
「フレイ」
「俺は、あなたを慕っている。嘘じゃない。昨日、俺を諌めてくれたことに感謝してるんだ。あれのおかげで、俺は間違いを侵さずに済んだ。こんな場所だから、そういうことを言ってくれる人間はいない。だからその言葉が死ぬほど嬉しかったのだ」
「…………」
「動機は違うにしろ、俺もフレイヤも、本気でユール様について行きたいと願ってる。だから、連れて行ってくれ」
兄の言葉を聞いて、ユールが静かに目を伏せる。
「わかった。一緒に来るといいわ」
「ユール様っ!」
「その代わり、ガンガン働いてもらうからね」
いたずらっ子のような笑みをうっすら浮かべながら、ユールがそう言った。フレイヤも嬉しそうに微笑み返した。
フレイとフレイヤの同行を許可したはいいが、別の問題が浮上した。
「フレイって、馬乗れるの?」
「ちょっと……無理ですね」
「フレイヤも乗れないよね?」
「はい、乗れません」
「うーん………」
二人がどこに乗るかの問題だ。ユールの馬車は4人乗りで、その他に馬がもう一頭空いていて、御者台にもう一人座れるかな、ぐらいの感じだ。
「今日出発ってのは変えるつもりないから、フレイには移動しながら乗馬を覚えてもらおう」
「それは私が教えるんですよね?」
「だってノルン以外乗馬できる人いないもん」
「大丈夫です!人に教えるのは得意ですから!」
「ノルンって人にものを教えたことあったか?」
「フレイヤは馬車に乗ればいいし……」
「え!?私が?」
「そうよ。まさか御者台に乗るわけいかないでしょ。私はノルンの前に乗っけてもらうわ」
「あの、俺は?」
「フレイは乗馬を覚えるまでテオの横」
「だってさ」
「だって、フレイ」
ちょっと、そこなんで嬉しそうに握り手交わしてるのよ。
「ほら、出発するよ。フレイヤも乗って」
「え、でも………」
「でも、じゃない。平気よ、ウルズたちがいるもの。退屈しないわ」
「君が新しいお仲間?私はスクルド!ユー様の友達だよ!」
「ああ、もう!スクルド!そんなに袖引っ張らないであげて!ごめんね、妹が迷惑かけて。私はヴェルザンディ。よろしくね」
「はぁ………妹が二人ともおてんばですみませんね。私はウルズ。年齢も近そうだし、仲良くしましょ」
「え?え??」
よしよし。これなら問題ないね。
三姉妹に馬車へ引きずりこまれたフレイヤを見てそう断言する。
「フレイ、この地方の領都に最短距離で行きたいんだけど、どこを通っていくべき?」
「あ、それならこの街から出てる街道で一本だよ。道中2・3個くらい街があるけど」
「それはちょうどいいわ。テオ、このルートで行くよ」
「あいよ」
やっぱりこの地方に詳しい人がいると違うね。探索魔法を広範囲に展開して精神的に疲労するより楽だわ。
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