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~領地改革~
千年樹
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今、ユールたちはペンドラゴンの郊外に来ている。ここにユールの目的のものがあるからだ。
『は?魔力の源?知らねえな……。しいてそれっぽいのがペンドラゴン郊外の千年樹、かな?』
トールがそう言っていたので、彼の案内でその千年樹を訪れてきたのだ。
「他の奴ら、置いてきてよかったのか?」
「大丈夫よ。街の人たちとコミュニケーションをとって、ついでに馬車の見張りも頼んできたから」
「つーかなんでノルンも連れてきたんだ?」
「私の次に魔力に慣れてるからよ」
「………俺はそもそも魔力ねえぞ?」
「だから千年樹の手前でテオと留守番よ。そのためにテオを連れてきたんだから」
魔力の濃い場所に行く時は、いつもノルンを連れてきていた。他の仲間たちではそもそも魔力値も魔力への慣れも足りなくて、魔力に押し戻されてしまうから。
一般的に魔力が濃縮された場所へ立ち入るには、同等の量の魔力があればいいが、別にノルンのように、大量の魔力(ユールと長く一緒にいたため)に慣れていれば、ユール並みに魔力が高くなくても聖獣の森とかに入れる。
ただノルンの次に長くいるテオはともかく、ウルズたちやフレイたちはユールと一緒に行動するようになってまだ日が浅すぎる。とてもじゃないが、こんな濃密な魔力の集まる千年樹には来れない。
トールを連れてきたのは案内役だったからであって、彼も魔力には目覚めていないから麓までは連れていけない。テオと一緒に遠くで作業が終わるまで待ってもらおう。
「あ!見えた。あれだよ」
トールが遠くを指差しながら言った。
そこには淡い金色に輝く巨大な樹木がそびえていた。樹冠からはキラキラしたものが舞い落ちていて、あたり一帯が神秘的に雰囲気に包まれている。周辺には草原が花畑がある。千年樹周辺の魔力には食い違いがないようだ。
「ここから先は、トールはいけないね」
「無理っすね。ここでも十分押されてる感じがするよ」
「テオ、トールをよろしく」
「わかっています」
テオとトールをその場に残し、ユールとノルンは先へ進む。そこそこの距離があったので、麓にたどり着くまで少し時間がかかった。
「近くでみるとすごく綺麗ですね」
「ええ」
近くで見るととても綺麗な大木だった。濃いめの小麦色の幹はなめらかで、柔らかい光沢を放っている。淡い金色の葉っぱはゆったりと頭上に広がり、その隙間から降り注ぐ日の光があたりを幻想的な色に染めている。
葉っぱから降り注いでいるキラキラしたものが、この千年樹で作り出された魔力のようだ。千年樹の幹に手を当て、ユールは千年樹の魔力と大地の魔力が食い違っている原因を探る。
「……………」
やっぱりこの地方の魔力が変化したのは、魔の森と魔の海が形成されたからのようだ。魔の森と魔の海の魔力が、この地方の大地の魔力の性質を変質させたのだろう。
なるほど。もともとこの木から発せられていた魔力を太陽に例えると、今の大地の魔力は月のような感じだ。性質が似てるようで決定的に違うからなかなか同調できないのか。
全体的にいうと、千年樹の魔力はこの地方に広がろうとしているけど、今の大地の魔力が壁みたいになってそれを阻んでいる感じだ。
どうしようか?
千年樹に魔力を流しこむ。千年樹の魔力の性質は変えられないだろうか?この地方全体に浸透しきっている今の魔力の性質を組み替えるのは無理。規模が広すぎるし、地方全体に行き渡らせられるほどの魔力はさすがにユールでも持っていない。
だったら千年樹の方はどうだろう?魔力の濃度が濃いからちょっと時間がかかるだろうけど、トータルの魔力量はこっちの方が少ない。
それに、この大地の魔力はもともとここから出ているものと同じだった。その大地の魔力が変化したのだから、千年樹の魔力も変えられるんじゃないかな?
そのまま流し込む魔力の量を増やしていく。大地の魔力は、魔の森と海の膨大な魔力を受けて変異した。だったら千年樹の方にも同じように大量の魔力を流せば、似たような性質になるんじゃないか?と考えたのだ。
どれほど魔力を流しただろうか、カチリと何かが噛み合う音が頭の奥に響いてきた。ユールは目を開いて幹から手を離す。
頭上を覆っていた金色の葉っぱは、みずみずしい若草色に変わっている。葉から降り注いでいた魔力は、今は地下の根っこから溢れている。
千年樹の魔力の性質が変わったのだ。
ユール並みに規格外な魔力を持っていると、一地方の魔力の源すらも変化させることができるのです。
もう一度周囲の魔力を探ってみると、魔力の食い違いはもうほとんど起きていなかった。速攻で同調しているわけではないが、これなら一年ぐらい猶予があれば同調できそうだ。
「ユール様、お疲れ様です」
「ふぅ……だるい」
「あれだけの魔力を使ったんです。だるくて同然ですよ」
千年樹の治療(と呼べるのかどうかは微妙だが)を終え、ユールはテオたちのところに戻る。
魔力の問題も片付いたし、あとはこのヴァルハラ地方を復興させるだけだ。
『は?魔力の源?知らねえな……。しいてそれっぽいのがペンドラゴン郊外の千年樹、かな?』
トールがそう言っていたので、彼の案内でその千年樹を訪れてきたのだ。
「他の奴ら、置いてきてよかったのか?」
「大丈夫よ。街の人たちとコミュニケーションをとって、ついでに馬車の見張りも頼んできたから」
「つーかなんでノルンも連れてきたんだ?」
「私の次に魔力に慣れてるからよ」
「………俺はそもそも魔力ねえぞ?」
「だから千年樹の手前でテオと留守番よ。そのためにテオを連れてきたんだから」
魔力の濃い場所に行く時は、いつもノルンを連れてきていた。他の仲間たちではそもそも魔力値も魔力への慣れも足りなくて、魔力に押し戻されてしまうから。
一般的に魔力が濃縮された場所へ立ち入るには、同等の量の魔力があればいいが、別にノルンのように、大量の魔力(ユールと長く一緒にいたため)に慣れていれば、ユール並みに魔力が高くなくても聖獣の森とかに入れる。
ただノルンの次に長くいるテオはともかく、ウルズたちやフレイたちはユールと一緒に行動するようになってまだ日が浅すぎる。とてもじゃないが、こんな濃密な魔力の集まる千年樹には来れない。
トールを連れてきたのは案内役だったからであって、彼も魔力には目覚めていないから麓までは連れていけない。テオと一緒に遠くで作業が終わるまで待ってもらおう。
「あ!見えた。あれだよ」
トールが遠くを指差しながら言った。
そこには淡い金色に輝く巨大な樹木がそびえていた。樹冠からはキラキラしたものが舞い落ちていて、あたり一帯が神秘的に雰囲気に包まれている。周辺には草原が花畑がある。千年樹周辺の魔力には食い違いがないようだ。
「ここから先は、トールはいけないね」
「無理っすね。ここでも十分押されてる感じがするよ」
「テオ、トールをよろしく」
「わかっています」
テオとトールをその場に残し、ユールとノルンは先へ進む。そこそこの距離があったので、麓にたどり着くまで少し時間がかかった。
「近くでみるとすごく綺麗ですね」
「ええ」
近くで見るととても綺麗な大木だった。濃いめの小麦色の幹はなめらかで、柔らかい光沢を放っている。淡い金色の葉っぱはゆったりと頭上に広がり、その隙間から降り注ぐ日の光があたりを幻想的な色に染めている。
葉っぱから降り注いでいるキラキラしたものが、この千年樹で作り出された魔力のようだ。千年樹の幹に手を当て、ユールは千年樹の魔力と大地の魔力が食い違っている原因を探る。
「……………」
やっぱりこの地方の魔力が変化したのは、魔の森と魔の海が形成されたからのようだ。魔の森と魔の海の魔力が、この地方の大地の魔力の性質を変質させたのだろう。
なるほど。もともとこの木から発せられていた魔力を太陽に例えると、今の大地の魔力は月のような感じだ。性質が似てるようで決定的に違うからなかなか同調できないのか。
全体的にいうと、千年樹の魔力はこの地方に広がろうとしているけど、今の大地の魔力が壁みたいになってそれを阻んでいる感じだ。
どうしようか?
千年樹に魔力を流しこむ。千年樹の魔力の性質は変えられないだろうか?この地方全体に浸透しきっている今の魔力の性質を組み替えるのは無理。規模が広すぎるし、地方全体に行き渡らせられるほどの魔力はさすがにユールでも持っていない。
だったら千年樹の方はどうだろう?魔力の濃度が濃いからちょっと時間がかかるだろうけど、トータルの魔力量はこっちの方が少ない。
それに、この大地の魔力はもともとここから出ているものと同じだった。その大地の魔力が変化したのだから、千年樹の魔力も変えられるんじゃないかな?
そのまま流し込む魔力の量を増やしていく。大地の魔力は、魔の森と海の膨大な魔力を受けて変異した。だったら千年樹の方にも同じように大量の魔力を流せば、似たような性質になるんじゃないか?と考えたのだ。
どれほど魔力を流しただろうか、カチリと何かが噛み合う音が頭の奥に響いてきた。ユールは目を開いて幹から手を離す。
頭上を覆っていた金色の葉っぱは、みずみずしい若草色に変わっている。葉から降り注いでいた魔力は、今は地下の根っこから溢れている。
千年樹の魔力の性質が変わったのだ。
ユール並みに規格外な魔力を持っていると、一地方の魔力の源すらも変化させることができるのです。
もう一度周囲の魔力を探ってみると、魔力の食い違いはもうほとんど起きていなかった。速攻で同調しているわけではないが、これなら一年ぐらい猶予があれば同調できそうだ。
「ユール様、お疲れ様です」
「ふぅ……だるい」
「あれだけの魔力を使ったんです。だるくて同然ですよ」
千年樹の治療(と呼べるのかどうかは微妙だが)を終え、ユールはテオたちのところに戻る。
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