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~領地改革~
改革初期は割愛
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千年樹の魔力合わせから半年が経過した。ヴァルハラ地方に来て最初の冬が過ぎ、今では初夏に差し掛かっている。
この半年で、領地の復興は順調に軌道に乗った。
魔力合わせ後、ユールはまずブラズニルに向かい、住人との約束を果たした。ブラズニルの人たちは泣いて喜んでいた。周辺の村からも人が集まっていて、人口密度が上がっていた。ユールが置いて行った薬のおかげで伝染病は払拭できそうだとか。
とりあえず住人を全員雇って、二つのグループに分けた。街道の整備をするグループと、家や城壁の建て替え工事をするグループ。責任者にはフレイについてもらった。なんだかんだ、フレイはブラズニルでは結構顔が利いていたから。
給料は金ではなく三食の配給と毛布の支給。買える物がないヴァルハラで、金を渡したところで意味はない。ヴァルハラの人たちに必要なのは、十分な食料と安心して眠れる場所と環境なのだから。
同時並行で、同じことをフィヨルギンとボルギ、ペンドラゴンでもやった。全てうまく回っている。フィヨルギンの責任者はフレイヤ、ボルギはユール自身(住民投票より)、ペンドラゴンはトールが作業を回している。
食料不足は起こらない。ユールの異次元収納には溢れんばかりの勢いで食料が詰め込まれているので、半年経った今でも食料は一向に底を尽きない。
何百年も飢えてきた人たちだから当然体力がない。だから無理はせず、彼らの体力や作業ペースに合わせて工事や整備を続けさせた。最初の頃はスピードが遅かったが、最近は半年間毎日きっちり食べて体力がついてきたのか、作業効率が上がってきている。
あ、子供に強制労働はさせてませんよ。
復興が進んでいる街についてもまとめておく。
魔力の同調が終わるまでの一年、フィヨルギンにはじゃがいもの苗を大量に渡した。入手先は公爵領の農家。ちゃんとした食物が育つようになるまで、不毛な土地でも育つジャガイモでつないでもらおうという魂胆です。
結果、それは成功したんですがね。今のフィヨルギンはジャガイモで食いつなげられるほど大量にジャガイモがある。食しきれなかった分はユールが預かった。いずれ別の街で使うつもりだ。
それからフィヨルギン郊外のカカの木の本数が増えた。試しに食べてみたけど、なんだかまずいような苦いような微妙な味だった。食べ物ではあるから、暇ができたら美味しく食べれる調理法を考えないと。
ボルギの街でも別の試みを実行している。前に考えていた、岩山てっぺんのくぼみに土を詰め込んで農業する方法は成功していた。それに伴い、岩山には階段やスロープをつけました。もちろんユールの魔法で彫った。さすがに岩壁よじ登りは危険すぎるから。
天然の花壇のような感じだから、大掛かりなものは流石に無理だが、トマトとかきゅうりとか、手軽に育てられる野菜は順調に育っている。
土は公爵領の商人から買い占めました。金は有り余ってるし、問題なかった。ちょっと公爵領で土不足が起きるかもしれないが、その辺はユミルに丸投げしようと思う。
鉱山の発掘に関しては、設備が整っていないがゆえにユールが魔法で掘っている。ボルギの人たちにやらせて、怪我をされるわけにはいかないからね。掘り出した石は家の建て替えに使ったり、日常用品に加工したりしている。
ペンドラゴンではトールと彼の実家、彼が保護している子供達が頑張ってくれていた。あのあとトールの両親と話して、協力を取り付けることができたのだ。おかげさまでペンドラゴンの作業は思った以上に進んでいる。さすがみんなの拠り所。
アントヴァリナウトのヴァルグリンドの店も、最近は知名度が上がってお客が増えてきたようで、財源としては大いに役立っている。異次元収納の中の宝石や貴重品はここを通じて売るのもいいかもしれない。
役所のロビーに置かれた机もどきで書類を見ていると、アレックスさんがやってきた。
「ユール様、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう、アレックスさん」
「この報告書のこれって、どうしましょうか?」
「ああ、やっぱり出ましたね。もうちょっと早く来ると思ってたんだけど」
「いかがいたしましょう?」
アレックスさんと言うのが、トールのお父さんである。
ユールたちは今、ペンドラゴンにある役所に寝泊まりしている。かつては領主の館だったらしいが、役所として使った方が都合がよさそうだったから、館は別のところに適当に作ることにしている。
「対処法ならこっちの紙にまとめたわ。これを実行して改善されないならもう一度報告を」
「わかりました」
アレックスさんが去っていくと、ユールは手元の資料と再びにらめっこを始める。
ヴァルハラの復興が始まったといっても、まだほんの一部だ。復興が始まった街もやらないといけないことがたくさんあるし、この地方にはまだユールが見つけていない街もある。おいおいは法律なども制定しないと無法地帯になってしまう。いや、今までずっと無法だったけど。
ついでにヴィクトリア水郷にもまだ行けてない。聖獣に会いたいのはユールの個人的な願望なので、復興作業が落ち着いてからでいいと思っているが、どんな聖獣が住んでいるのかと、実は楽しみだったりする。
「やることいっぱいだわ」
とりあえず手始めに、ペンドラゴンから出てる数本の街道のうち、南に続いているものをたどってみよう。また新しい街が見つかるかもしれない
この半年で、領地の復興は順調に軌道に乗った。
魔力合わせ後、ユールはまずブラズニルに向かい、住人との約束を果たした。ブラズニルの人たちは泣いて喜んでいた。周辺の村からも人が集まっていて、人口密度が上がっていた。ユールが置いて行った薬のおかげで伝染病は払拭できそうだとか。
とりあえず住人を全員雇って、二つのグループに分けた。街道の整備をするグループと、家や城壁の建て替え工事をするグループ。責任者にはフレイについてもらった。なんだかんだ、フレイはブラズニルでは結構顔が利いていたから。
給料は金ではなく三食の配給と毛布の支給。買える物がないヴァルハラで、金を渡したところで意味はない。ヴァルハラの人たちに必要なのは、十分な食料と安心して眠れる場所と環境なのだから。
同時並行で、同じことをフィヨルギンとボルギ、ペンドラゴンでもやった。全てうまく回っている。フィヨルギンの責任者はフレイヤ、ボルギはユール自身(住民投票より)、ペンドラゴンはトールが作業を回している。
食料不足は起こらない。ユールの異次元収納には溢れんばかりの勢いで食料が詰め込まれているので、半年経った今でも食料は一向に底を尽きない。
何百年も飢えてきた人たちだから当然体力がない。だから無理はせず、彼らの体力や作業ペースに合わせて工事や整備を続けさせた。最初の頃はスピードが遅かったが、最近は半年間毎日きっちり食べて体力がついてきたのか、作業効率が上がってきている。
あ、子供に強制労働はさせてませんよ。
復興が進んでいる街についてもまとめておく。
魔力の同調が終わるまでの一年、フィヨルギンにはじゃがいもの苗を大量に渡した。入手先は公爵領の農家。ちゃんとした食物が育つようになるまで、不毛な土地でも育つジャガイモでつないでもらおうという魂胆です。
結果、それは成功したんですがね。今のフィヨルギンはジャガイモで食いつなげられるほど大量にジャガイモがある。食しきれなかった分はユールが預かった。いずれ別の街で使うつもりだ。
それからフィヨルギン郊外のカカの木の本数が増えた。試しに食べてみたけど、なんだかまずいような苦いような微妙な味だった。食べ物ではあるから、暇ができたら美味しく食べれる調理法を考えないと。
ボルギの街でも別の試みを実行している。前に考えていた、岩山てっぺんのくぼみに土を詰め込んで農業する方法は成功していた。それに伴い、岩山には階段やスロープをつけました。もちろんユールの魔法で彫った。さすがに岩壁よじ登りは危険すぎるから。
天然の花壇のような感じだから、大掛かりなものは流石に無理だが、トマトとかきゅうりとか、手軽に育てられる野菜は順調に育っている。
土は公爵領の商人から買い占めました。金は有り余ってるし、問題なかった。ちょっと公爵領で土不足が起きるかもしれないが、その辺はユミルに丸投げしようと思う。
鉱山の発掘に関しては、設備が整っていないがゆえにユールが魔法で掘っている。ボルギの人たちにやらせて、怪我をされるわけにはいかないからね。掘り出した石は家の建て替えに使ったり、日常用品に加工したりしている。
ペンドラゴンではトールと彼の実家、彼が保護している子供達が頑張ってくれていた。あのあとトールの両親と話して、協力を取り付けることができたのだ。おかげさまでペンドラゴンの作業は思った以上に進んでいる。さすがみんなの拠り所。
アントヴァリナウトのヴァルグリンドの店も、最近は知名度が上がってお客が増えてきたようで、財源としては大いに役立っている。異次元収納の中の宝石や貴重品はここを通じて売るのもいいかもしれない。
役所のロビーに置かれた机もどきで書類を見ていると、アレックスさんがやってきた。
「ユール様、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう、アレックスさん」
「この報告書のこれって、どうしましょうか?」
「ああ、やっぱり出ましたね。もうちょっと早く来ると思ってたんだけど」
「いかがいたしましょう?」
アレックスさんと言うのが、トールのお父さんである。
ユールたちは今、ペンドラゴンにある役所に寝泊まりしている。かつては領主の館だったらしいが、役所として使った方が都合がよさそうだったから、館は別のところに適当に作ることにしている。
「対処法ならこっちの紙にまとめたわ。これを実行して改善されないならもう一度報告を」
「わかりました」
アレックスさんが去っていくと、ユールは手元の資料と再びにらめっこを始める。
ヴァルハラの復興が始まったといっても、まだほんの一部だ。復興が始まった街もやらないといけないことがたくさんあるし、この地方にはまだユールが見つけていない街もある。おいおいは法律なども制定しないと無法地帯になってしまう。いや、今までずっと無法だったけど。
ついでにヴィクトリア水郷にもまだ行けてない。聖獣に会いたいのはユールの個人的な願望なので、復興作業が落ち着いてからでいいと思っているが、どんな聖獣が住んでいるのかと、実は楽しみだったりする。
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