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第8楽章 好きな声音 3
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雷はいつの間にか遠くへ行ったようだけど、風雨は収まる様子はない。
時々心に突き刺さるダメ出しを受けつつ練習を続けていたら、いつの間にかチェンバロが勝手に重奏しており、物凄く満ち足りた気持ちで演奏してしまった。
「雨、全然弱くなりませんね」
気づけば時刻は夜の6時を過ぎている。
乗合馬車の最後の便はもうない。
「泊っていきな」
これがフレウティーヌの言葉だったら「やったー!」となっただろう。
言われた途端に跳ね上がった心臓は、「じゃあお言葉に甘えて」とはとても言えないほど脈打っている。
いつもの倍のこの速さはアレグロ。正直苦しい。
(意識しない、意識しない…意識するからおかしいことになる)
「ありがとうございます」
窓から振り返らずにそう言った声は、冷静に言ったつもりながら自分でも上ずっていると思った。
窓に反射した自分の顔の色まではわからなかったけど、絶対に赤くなっている気がする。
ノートヴォルトは彼女の不自然な声に何も言わないで演奏に戻った。
コールディアはそのまましばらく次の行動をどうすべきか悩んでいたが、時計が6時を過ぎていたのを思い出し、結局夕食を作ることにした。
そう言えばキッチンが地獄だった時、ノートヴォルトは食事はどうしていたのだろう。
自分で作りそうにもないし、そもそもストックされている食材すらなかった。
曲作りに没頭して、食事を忘れていることもありそうだった。
来る前にした買い物の中から、自宅用にも少し買った食材がある。
簡単なスープと付け合わせくらいなら作れるだろう。
「先生って、もしかして食事を忘れたりします?」
「しているかもしれない」
「胃袋事情くらいは把握してくださいよ。不眠ぽいし、不健康の塊ですか」
「別に気にならない」
(私が気になるよ)
そう思ったが、それとは別のことを口にした。
「じゃあせっかく泊まるんだし、今日はちゃんと食べてちゃんと寝てください」
それに対しての返事はなかったが、簡単な夕食が出来ればきちんと席には着いてくれた。
「君は器用だね」
「そうですか? 一人暮らししてたらこんなものじゃないですか?」
「目の前にそうじゃない人間がいる」
「…そうでした」
豆がたくさん入ったスープは、故郷の味付け。
少しずつ形は違うかもしれないけど、北部の定番はどれもこれに近い。
「君は北部の出身か?」
「はい。北の小さな田舎町です。ノースロックって言う」
「僕はそのさらに北、もっと小さいブルークランプの村だ」
「え、凄く近いじゃないですか」
「ノースロックもそんなに豊かな土地ではないだろう? どこでピアノを学んだんだ?」
時々心に突き刺さるダメ出しを受けつつ練習を続けていたら、いつの間にかチェンバロが勝手に重奏しており、物凄く満ち足りた気持ちで演奏してしまった。
「雨、全然弱くなりませんね」
気づけば時刻は夜の6時を過ぎている。
乗合馬車の最後の便はもうない。
「泊っていきな」
これがフレウティーヌの言葉だったら「やったー!」となっただろう。
言われた途端に跳ね上がった心臓は、「じゃあお言葉に甘えて」とはとても言えないほど脈打っている。
いつもの倍のこの速さはアレグロ。正直苦しい。
(意識しない、意識しない…意識するからおかしいことになる)
「ありがとうございます」
窓から振り返らずにそう言った声は、冷静に言ったつもりながら自分でも上ずっていると思った。
窓に反射した自分の顔の色まではわからなかったけど、絶対に赤くなっている気がする。
ノートヴォルトは彼女の不自然な声に何も言わないで演奏に戻った。
コールディアはそのまましばらく次の行動をどうすべきか悩んでいたが、時計が6時を過ぎていたのを思い出し、結局夕食を作ることにした。
そう言えばキッチンが地獄だった時、ノートヴォルトは食事はどうしていたのだろう。
自分で作りそうにもないし、そもそもストックされている食材すらなかった。
曲作りに没頭して、食事を忘れていることもありそうだった。
来る前にした買い物の中から、自宅用にも少し買った食材がある。
簡単なスープと付け合わせくらいなら作れるだろう。
「先生って、もしかして食事を忘れたりします?」
「しているかもしれない」
「胃袋事情くらいは把握してくださいよ。不眠ぽいし、不健康の塊ですか」
「別に気にならない」
(私が気になるよ)
そう思ったが、それとは別のことを口にした。
「じゃあせっかく泊まるんだし、今日はちゃんと食べてちゃんと寝てください」
それに対しての返事はなかったが、簡単な夕食が出来ればきちんと席には着いてくれた。
「君は器用だね」
「そうですか? 一人暮らししてたらこんなものじゃないですか?」
「目の前にそうじゃない人間がいる」
「…そうでした」
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「はい。北の小さな田舎町です。ノースロックって言う」
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