歌姫聖女は、貴方の背中に興味があります

325号室の住人

文字の大きさ
19 / 43
隣国からの侵攻

山の上の神殿の役目

しおりを挟む

山の上の神殿が暖かさに包まれた後は、神殿にとって悪意のある者は神殿にやって来なくなったの。
けれど、他の村の怪我人やこの国の聖騎士や兵士なんかの怪我人はこの神殿に集められるようになり、逆に元気な村人達はもっと広い中央神殿や王城へと転移魔法陣で運ばれて、この神殿の礼拝用のベンチは救護人の手当てに使われるようになったの。

それから、この神殿に集められた怪我人を癒すための《癒しの聖女》と護衛の聖騎士や看護師らが、城仕えの魔法師達を伴って日に何度かやって来たり休息のために中央へ戻ったり、食料や水と毛布や清潔な着替えなどをこちらへ運んだりと、城や中央神殿とのルートが幾本も繋がれたの。

その中で、私は朝に夕にと女神像の祭壇の前で『祈りの歌』を捧げたわ。
たまに《癒しの聖女》も誘ったけれど、びっくりするほど声が出なくて歌えなかったのよ。

現在の《癒しの聖女》は、キャリアは長いけれどまだ9つのチェルリーンちゃんという子で、本気を出せば町1つ分の範囲の怪我人を治癒させる力を持つという女の子なの。
ただし、今この神殿に運ばれてくる怪我人達は程度がさまざまなので、個人個人に向けての施術となるの。
その方が心身共に疲れるみたいだから、チェルリーンちゃんと1日ずつ交代で、前の《癒しの聖女》や前の前の《癒しの聖女》も1日ずつのローテーションに入っていたの。

何代か前の聖女が『聖女にも女性の幸せを!』と唱えて、聖女の引退は25歳になって、婚姻も出産も望めるようになったんですって。

だから、前の《癒しの聖女》は現在34歳、前の前の《癒しの聖女》はもうお婆ちゃんに近いご年齢で、ギリアン爺のお知り合いだったのよ。
最初にラウを見てくださったのも、この方だったのですって。
引退後の年数に応じて聖女としての力はどんどん弱まって行くそうなのだけど、この方の力は元々歴代の《癒しの聖女》の中でも最大だったとかで、ご年齢のことがなければもっと力を使えるのですって。凄いわよね。

そんな流れから、私は初めて近くで他の聖女の仕事を見ることになったの。

《癒しの聖女》の力の色は若葉色で、使えば辺りの空気が澄んで、周りに居る人まで清浄化されたようになって…とても素晴らしかったわ。

逆に私は歌うことしかできないし、個々の人間には使えない力だから、何だか役に立ててないような気がして……

とにかく、朝夕の『祈りの歌』だけは、いつも心を込めてしっかりと歌わせてもらっていたの。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

処理中です...