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もろもろあって、最後の1年
最後にはしたくない別れと…
しおりを挟む「ギリアン爺…ただいま。女神様へ、歌を捧げても良いかしら?」
私はギリアン爺の手を握りながら言うと、ギリアン爺は頬を緩める。
最前列のベンチに先々代の《癒しの聖女》であるマリー様とお2人で並んで掛けるまでを見届けると、ギリアン爺の飾った祭壇の前に膝を付き、私は『祝福の歌』を歌い始めた。
目を閉じて祈る。
もう何度も歌っているから、私のタイミングで始める。
最初のフレーズ以降は、神殿内の空気に溶けた私の声に合わせた男声が2音下を歌い、ハーモニーがとても美しく決まったの。
右隣にウルの気配を感じれば、とても心が温かくなったわ。
ウルと私、2人のハーモニーが神殿中に広がって、ギリアン爺とマリー様とを包んだわ。
私が初めてギリアン爺に会った時から、ギリアン爺はお爺さんだったわ。
目が見えなくなっていたって、耳が遠くなっていたって、握った手が痩せて細くなっていても、生きているギリアン爺に会えたことを嬉しく思った。
だって、私にとっては血の繋がりはなくても家族なんだもの。
もしかしたら、いよいよお別れが近いのかもしれないけれど、今はまだ考えない。
歌を終えたら、ギリアン爺の元へ向かう。
それから握手をして、
「ギリアン爺、行ってきます。」
「セアリア、いってらっしゃい。」
「マリー様、ギリアン爺を宜しくお願いします。」
「はい、いってらっしゃい。」
それから、すぐに私をエスコートする位置に控えようとするウルにもお二人へしっかりと挨拶をさせて、すぐに転移陣のある部屋へ向かったの。
次は、王城を中心として東の位置にある神殿を目指すわ。
転移陣の円の真ん中でウルの手を取れば、次の瞬間には東の神殿に到着し、女神像の前に跪いて祈って歌う。
その次は西の神殿に転移陣で跳び、また女神像の前に跪いて祈って歌った。
そうして最後は、転移陣を使って南の神殿へ跳ぶ。
この国の南は大海原。それに崖になっている為、《隣国が》と言ってもまずここから攻めてくることは考え難いという場所にあるの。
灯台を兼ねた塔の上にある転移陣で南の神殿に到着すると、そこで異変に気付いたわ。
いつもなら転移陣に降り立って聞こえるのは海風の音なのに、今日聞こえたのはチャプチャプという水の音に潮の香り。
それどころか足先が水に浸かっていたの。
直後に、ドーンと何かが建物にぶつかる大きな音と振動があり、壁にヒビが入り……
「セアリア、掴まれ!」
ウルの手を掴むと、ウルの魔法で崖の上へ転移したの。
けれどその場所には、
「うおぉぉぉーーーーー!!!」
待ち伏せていた人が向かって来て、ウルは私を咄嗟に庇った…けれど、
「…クッ!」
背中を斬られてしまったの。
「やっとだ…やっと、歌姫をこの手に!」
「ウル!」
「セアリア!!」
私の手がウルに触れたその時、辺りが金色の光に包まれたの。
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