歌姫聖女は、貴方の背中に興味があります

325号室の住人

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いよいよお務めの終わり

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「待っていましたよ。」

神官長の一言で、全員が執務机と私達の間にある会議用のソファセットへ移動した。

私とウルは一番下座にあるオットマンを分け合うように浅く掛けた。
最初はウルが私を膝に乗せようとしたのだけれど、それはやんわりと断った。

「問題が起きたのだ…」

最初に口火を切ったのは、ウルの父親である国王だった。

「今日のお務めの終わりにギリギリ合わせるように、隣国が《歌姫聖女》の派遣を依頼してきたのだ。」
「「隣国が?」」

国王は頷く。

「先の王子は、まだ《歌姫聖女》に執着しておるのか、婚姻どころか婚約の兆しもない。きっと、自分の国に派遣されている時に任期を終えさせて、取り込もうと考えているのだろう。
任期を終えた《歌姫聖女》か能力をどの程度残すのか確認するため、どう返答しようかと私は神官長に相談に来たのだ。」

国王は神官長を見た。

「ですが、私には先客がありました。グラント様です。」

神官長はグラント様を見やる。

「私は、《歌姫聖女》が定年の25を過ぎても聖女の仕事を続けられるのかを確認に来ていた。
実は、妃の懐妊がわかったのだ。立太子前に安定期に入った方が、妃への負担が少ないのではないか、聖女の仕事が続けられるのなら、それまで待ってもらえないかと考えたのだ。
そうしたら……」

グラント様は、神官長を見る。

「私も暫く前から思い悩んでいたことがありまして…グラント様からの申し出を、渡りに船だと…
実は、現在の聖女候補者の中に、《歌姫聖女》に成り得る該当者は居ないのです。いや、正確には1人……」

神官長は、女性神官のリーダーを見る。

「居るには居ます。公爵家出身の聖女候補です。確かに、歌の教育も受けていらっしゃるようで、それなりに歌えます。ただし、素養はあっても素質は…とでも言いましょうか。
この春、聖女としての学びを始めたのですが、女神への朝の祈りには起きてこない、好きな歌しか歌わない、とにかくわがまま放題な上、権力を振り翳し、これまで何人もの女性神官が配置交代しています。
その上…」

女性神官のリーダーは、神官長を見、それから私とウルの順番に見、再び語る。

「セアリアが引退したら、ウルをお付きの神官にしろと、権力に訴えてきたのです。
私はその…今日の今日までウルがラウル殿下だとは存じ上げませんでしたので、神官長にご相談すればどうにかなるものかと…」

女性神官のリーダーは、ウルに礼をとる。

「…公表していませんでしたから、仕方ありません。逆に、ご迷惑をお掛けしてしまい…」

ウルは女性神官のリーダーに頭を下げている。
今度は私が口を開く。

「そうなれば、私が聖女を続けられればとも思うのですが、でも…」

私は気になっていたマリー様を見た。
十中八九、ギリアン爺のことだと思ったからだ。

「ギリアンと私は、明日にでも次の世界へ旅立つ予定なの。
皆様ご存知の通り、この世界で次の世界へ旅立つには、決意したその日その時に女神の住まいを訪ねて願い、女神のお力を借りなければならないわ。
それで、ギリアンが意識と理性を保っている間に相談していたのよ。
もう、1日の内に目覚めている時間も少なくてね、まず変更はできないわ。
《何か》がない限りは、聖女は自由に神殿から出られないでしょう? 今ギリアンが居るのは、麓の村の宿屋だから、セアリアちゃんがお務めを終えたらと考えていたの。」
「行きます。私、ギリアン爺に会いに行きます。」

居ても立っても居られず、私はそう言葉を発していたの。


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