【完結】身代わり婚の果てに

325号室の住人

文字の大きさ
1 / 6

  運命が記されたノート

しおりを挟む

「は? 誰が見ていたのだ!」

俺は、読んでいたノートを丸めると、床に叩きつけた。
なぜなら内容が、どうしても許せなかったからだ。

そのノートは、俺の机の上へ置かれていた。

見覚えのないノート。記名はない。

だから開いてみた。
何ら、変な行動ではないと思う。

だが驚くべきことに、中には俺の名前と妹の名前、妹の婚約者である第2王子殿下の名前があった。
だから読み進めた。

ここまでもどうだ? 誰だって、ノートに知り合いの名前があったら、読み進めてしまうだろう。そうだよな?

で、読んで行くと…
そこには、俺が主人公である物語が書かれていた。

なのだが、何と、俺の記憶と内容とが完全にリンクしている。

たとえば……
俺と妹は、額(髪の生え際)に傷がある。

物心ついたくらいの幼い頃、俺の髪は妹と全く同じに腰まであった。
でもそのせいで、俺はいつも妹に間違われたり、そうでなくても女に間違われたりしていた。

そこである日の俺は、俺と妹を左右の膝にのせて、ひっくるめて「かわいいかわいい。」と言っていた父から跳んで、ローテーブルに置いていた父の仕事道具である剣を抜き、頭の上で俺の髪を斬ってやった。

手入れが行き届いてメチャ切れ味の良かった剣が額をかすめた。

妹は俺の行動に驚いた父の膝からバランスを崩してローテーブル側に体を傾かせ、ローテーブルの角で頭を打った。

で、俺と妹はほぼ同時の流血騒動に発展。俺達はそろって驚いて気を失い、目が覚めたのはそろって3日後のことだった。



その話が、話の流れとして正しく書かれていた。

そして、俺がノートを床に叩きつける5分前に読んでいたのは、俺の昨日の行動だった。

読んでいた本が面白くて完徹してしまい、通う学園の自国語の時間にうっかり居眠りをしてしまって担当教員に呼び出され、その日の授業内容のレポートを書かされたのだ。

『はい、不合格!』
『残念!!』
『今度こそ合格しろよ。』

散々言われながら追試追試で合計10回書き直しを命じられた。

やっとで合格して部屋を出るとそこは既に日暮れ。
確か入室したのはまだ陽が高い時間だったはずだ。

その時の俺は、やっとの開放感からひと言呟いた。

「先生のバカヤロー…」

それが、そのノートには細かく書かれていたのだ。

そりゃ、床に叩きつけたくなるってモンだろ?

けれどそこで、俺は思い出す。
そのノートには、昨日のページ以降も記載があったことに。

──もしかして、俺の未来が…?

俺は、ノートを拾い上げると、恐る恐る最後のページを開いた。

そこにはこう書かれていた。

「『シャノンのしをなげき、みずから……せいを終える』……だと?」

特に日付はないが、今の俺は10歳。
その最後のページはそれまでのページに比べたら枚数的に少なかった。

「シャノンに何が……?」

1ページ捲れば、そこには婚姻後の妹シャノンと第2王子の生活が書かれていた。

「『シャノンのことは、あいせない』……『シャノンはきぞくとしては白いこんいんと言えたが、国王と王妃のあいだでりえんは難しかった』
は? シャノンは幸せな婚姻ができないということなのか?」

婚約3年目の今の2人を思い出し、俺は愕然とした。

「なら、シャノンは第2王子とは婚姻させない!!」

俺は、シャノンの幸せのため色々と画策し、実行に移しては2人の仲を引き離した。

………………が、やはりあのノートに記載があるのは俺達の未来だったのか、どうしても婚約を解消させることはできず、とうとうシャノンと第2王子との婚姻の日がやって来た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました

多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。 ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。 ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。 攻め ユキ(23) 会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。 受け ケイ(18) 高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。 pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中

アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕

めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、 その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。 「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。 最初から、選ばされてなどいなかったことを。 αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、 彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。 「愛してるよ」 「君は、僕たちのもの」 ※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)

世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)

かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。 ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。

断られるのが確定してるのに、ずっと好きだった相手と見合いすることになったΩの話。

叶崎みお
BL
ΩらしくないΩは、Ωが苦手なハイスペックαに恋をした。初めて恋をした相手と見合いをすることになり浮かれるΩだったが、αは見合いを断りたい様子で──。 オメガバース設定の話ですが、作中ではヒートしてません。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

失恋したと思ってたのになぜか失恋相手にプロポーズされた

胡桃めめこ
BL
俺が片思いしていた幼なじみ、セオドアが結婚するらしい。 失恋には新しい恋で解決!有休をとってハッテン場に行ったエレンは、隣に座ったランスロットに酒を飲みながら事情を全て話していた。すると、エレンの片思い相手であり、失恋相手でもあるセオドアがやってきて……? 「俺たち付き合ってたないだろ」 「……本気で言ってるのか?」 不器用すぎてアプローチしても気づかれなかった攻め×叶わない恋を諦めようと他の男抱かれようとした受け ※受けが酔っ払ってるシーンではひらがな表記や子供のような発言をします

王子様の愛が重たくて頭が痛い。

しろみ
BL
「家族が穏やかに暮らせて、平穏な日常が送れるのなら何でもいい」 前世の記憶が断片的に残ってる遼には“王子様”のような幼馴染がいる。花のような美少年である幼馴染は遼にとって悩みの種だった。幼馴染にべったりされ過ぎて恋人ができても長続きしないのだ。次こそは!と意気込んだ日のことだったーー 距離感がバグってる男の子たちのお話。

恋するおれは君のオモチャ

野中にんぎょ
BL
 古賀真緒(18)は隣家に住む6歳年上の幼馴染・鈴村京一(24)こと「きょーちゃん」に片思い中。大学合格をきっかけに京一へ想いを伝えようとした真緒だったが、意地悪な幼馴染・林圭司(20)こと「けい君」にタイミング悪く遭遇してしまい、更には想い人の京一から「彼女ができた」と報告され呆気なく恋に破れてしまう。泣いているところに「慰めてあげる」と現れる圭司。圭司から「真緒は俺のおもちゃ」と言われ散々いじめられてきた真緒は彼の申し出を突っぱねる。が、「言うことを聞かなければ京一にお前の気持ちをバラす」と脅され、泣く泣く圭司の計画する傷心デートに向かうように。  意地悪だとばかり思っていた彼は、実は……? ハリネズミみたいな彼と紡ぐ、意地っ張りラブ。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

処理中です...