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本編
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しおりを挟む「仰る通り、俺には前世の記憶があります。」
ライド様が話してくださったのは、領主街を一望できる丘の上だった。
展望台になっているその場所は夕暮れ間近のこの時間には無人で、貸切状態だった。
ベンチに並んで座っての開口一番が、その言葉だった。
「こうして上から見ても感じるでしょうが、この辺境伯領には転生者、それも日本からの転生者が多く住んでいますし、度々生まれるのです。
私も、母も、それから、伯父も転生者です。
ただ、貴女を知っているのは私だけでしょうか。伯父と母は、少し時代が違うので。」
ライド様は、私の様子を伺うように膝ごとこちらを向いた。
「黙っていて申し訳ない。この通りだ。」
ライド様は頭を下げた。
「俺は貴女が《フレリア》だと知っている。それであの日あの場所へ向かったのです。
本来は、物語の冒頭、あの場所で出会うのは第2王子殿下でした。
俺は殿下の講堂入りの時間を変更し、殿下が《フレリア》と出会うことを回避しました。
しかし、結局気になって貴女を探していて、第3王子殿下の取り巻き連中をあの場所に見つけた。
訝んで見張りを伸して潜入すれば、貴女が襲われていて……あとは無我夢中でした。
俺は倉庫をぶった斬っていた。緊急事態とは言え、反省文は書きました。」
ライド様はゲンナリといった表情になる。
これまでのライド様は気を張っていたようで、前世の男子高校生の試験前日のような子どもらしい表情だった。
私はライド様の手を、感謝の気持ちから両手で包んだ。
俯いていたライド様は顔を上げると、信じられないといった表情で私を見た。
「ライド様、ありがとうございます。《フレリア》の物語が始まらないように動いてくださって。」
「! ですが…」
「結果的には、物語は始まって……しまったのですか? 私、前世の記憶の中に、《フレリア》を冠した物語の記憶がなくて。お話、知らないのです。」
「…………………………そうだったのですね。俺はてっきり、知っていて《婚姻の誓い》をしたのかと。俺が選ばれたのかと思ってうかれていましたが、違ったのですね?」
「…………はい。本当にモノを知らなくて、お恥ずかしい限りですわ。もし差し支えなければ、ストーリーを伺いたいのですが。」
「はい。でしたら…
あの、まず…………このゲームは男性向けR18のゲームです。ですから…」
「大丈夫です。私、前世の記憶は曖昧ですけれどアラサーまでありましたから。女性でしたけどね。」
「……年上? いや、では、はい。お話しします。
まず最初は学園の入園式。講堂の前で、第2王子殿下と知り合い、二人は恋に落ちます。
その数日後には、教室で二人はキスをし、そのまた数日後には教室で一線を越えて、国王夫妻へ紹介するため王城へ入ります。
第3王子という存在はなかったと思うんですけど。第2王子とはぐれた廊下で第1王子殿下とぶつかっていわゆるお持ち帰りされ、密偵に探らせていた国王陛下、それから各王子の側近達とも関係を持ち、最終的には逆ハーレムになるルートと、1人に絞るルートがあります。」
「その…尻軽と言うか何と言うか……ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありませんでした。」
「それです! そこが最初に感じた違和感で……
俺は貴女がゲームの《フレリア》とは違うと感じまして、惹かれたのです。
あとは、その……ゲームヒロインとしての《フレリア》とのギャップ萌えでしょうかね。男を誘う体つきで、実際《フレリア》は男を誘って挑発して、善がって笑って、男はみんな馬鹿だと手玉に取るようでしたから。
けれと貴女は違う。とても可愛らしくて……気付いたらハマっていました。
直後には《騎士の誓い》に《騎士の婚姻の誓い》と!
俺は、完全に舞い上がってしまっていたのです。」
「はぁ…そうだったのですね。」
私は逆に、申し訳なく思ってしまった。
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