【本編完】しがない男爵令嬢だった私が、ひょんなことから辺境最強の騎士と最強の剣の精霊から求愛されている件について A-side

325号室の住人

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本編

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「仰る通り、俺には前世の記憶があります。」


ライド様が話してくださったのは、領主街を一望できる丘の上だった。

展望台になっているその場所は夕暮れ間近のこの時間には無人で、貸切状態だった。

ベンチに並んで座っての開口一番が、その言葉だった。

「こうして上から見ても感じるでしょうが、この辺境伯領には転生者、それも日本からの転生者が多く住んでいますし、度々生まれるのです。
私も、母も、それから、伯父も転生者です。
ただ、貴女を知っているのは私だけでしょうか。伯父と母は、少し時代が違うので。」

ライド様は、私の様子を伺うように膝ごとこちらを向いた。

「黙っていて申し訳ない。この通りだ。」

ライド様は頭を下げた。

「俺は貴女が《フレリア》だと知っている。それであの日あの場所へ向かったのです。
本来は、物語の冒頭、あの場所で出会うのは第2王子殿下でした。
俺は殿下の講堂入りの時間を変更し、殿下が《フレリア》と出会うことを回避しました。
しかし、結局気になって貴女を探していて、第3王子殿下の取り巻き連中をあの場所に見つけた。
訝んで見張りを伸して潜入すれば、貴女が襲われていて……あとは無我夢中でした。
俺は倉庫をぶった斬っていた。緊急事態とは言え、反省文は書きました。」

ライド様はゲンナリといった表情になる。
これまでのライド様は気を張っていたようで、前世の男子高校生の試験前日のような子どもらしい表情だった。

私はライド様の手を、感謝の気持ちから両手で包んだ。

俯いていたライド様は顔を上げると、信じられないといった表情で私を見た。

「ライド様、ありがとうございます。《フレリア》の物語が始まらないように動いてくださって。」

「! ですが…」

「結果的には、物語は始まって……しまったのですか? 私、前世の記憶の中に、《フレリア》を冠した物語の記憶がなくて。お話、知らないのです。」

「…………………………そうだったのですね。俺はてっきり、知っていて《婚姻の誓い》をしたのかと。俺が選ばれたのかと思ってうかれていましたが、違ったのですね?」

「…………はい。本当にモノを知らなくて、お恥ずかしい限りですわ。もし差し支えなければ、ストーリーを伺いたいのですが。」

「はい。でしたら…
あの、まず…………このゲームは男性向けR18のゲームです。ですから…」

「大丈夫です。私、前世の記憶は曖昧ですけれどアラサーまでありましたから。女性でしたけどね。」

「……年上? いや、では、はい。お話しします。
まず最初は学園の入園式。講堂の前で、第2王子殿下と知り合い、二人は恋に落ちます。
その数日後には、教室で二人はキスをし、そのまた数日後には教室で一線を越えて、国王夫妻へ紹介するため王城へ入ります。
第3王子という存在はなかったと思うんですけど。第2王子とはぐれた廊下で第1王子殿下とぶつかっていわゆるお持ち帰りされ、密偵に探らせていた国王陛下、それから各王子の側近達とも関係を持ち、最終的には逆ハーレムになるルートと、1人に絞るルートがあります。」

「その…尻軽と言うか何と言うか……ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありませんでした。」

「それです! そこが最初に感じた違和感で……
俺は貴女がゲームの《フレリア》とは違うと感じまして、惹かれたのです。
あとは、その……ゲームヒロインとしての《フレリア》とのギャップ萌えでしょうかね。男を誘う体つきで、実際《フレリア》は男を誘って挑発して、善がって笑って、男はみんな馬鹿だと手玉に取るようでしたから。
けれと貴女は違う。とても可愛らしくて……気付いたらハマっていました。
直後には《騎士の誓い》に《騎士の婚姻の誓い》と!
俺は、完全に舞い上がってしまっていたのです。」

「はぁ…そうだったのですね。」

私は逆に、申し訳なく思ってしまった。


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