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本編
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しおりを挟むこの艦船では、夕方5時になると《夕べの鐘》が鳴る。日勤の仕事が終わる時間を知らせるものだ。
事前にその時間に団長の部屋を訪ねるという約束になっていた。
昼食後は健全に、手を握る程度に留め…ないと俺の股間が耐え切れず、手を繋いで艦内を案内した。
いつも使っている食堂や、シャワールーム、ランドリールーム……
ただ、共同トイレには連れて行きたくなくて副団長の部屋を訪ねた。
戻ってきたフレリアが真っ赤な顔をしていたのはなぜかと気になったけれど、今はとにかく隣に居てくれるフレリア本人に嬉しくて、歩いていても座っていても、ずっとフレリアの手を握っていた。
けれど夕方5時を告げる鐘が鳴り、フレリアとのデートは終わってしまった。
フレリアと手を繋いで、一緒にブリッジへ向かう。
教えてもらって間もない合図のやり方でノックすると、先にハンス先輩とシュカ嬢が到着していたようで、副団長と4人で談笑していた。
話題の中心にはシュカ嬢の左手があり、薬指にはシルバー色の指輪が光っている。
どうやらハンス先輩の左手の薬指にもシルバー色の指輪が嵌っているらしい。
先輩、どうやら男を見せたようだ。
「ハンス先輩、婚約決めたのですね? おめでとうございます。」
「え? 本当だわ。シュカ、おめでとう!」
フレリアと婚約を祝う。
「ふふ…それがね、違うの。《婚姻》してきたんですって。今日はシュカの誕生日だからって。」
「えぇ! シュカ、おめでとう。それじゃあもう、侍女は辞めるのよね? 新居はどこなの?」
「それは…まだなの。フレリアと同じで、まだ書類と宣誓だけの夫婦なのよ。」
「でも俺…シュカと一緒になりたかったから…えと…その……」
「ありがとう、ハンス。あたしのこと、ちゃんと考えてくれて。」
シュカ嬢とハンス先輩は見詰め合い、今にもキスでもしてしまいそうな甘い雰囲気だ。
──羨ましい。
「月末にはライド様達の婚姻式だろう? その蜜月休暇に合わせて俺らもって、シュカと相談したんだ。」
ハンス先輩はシュカ嬢の腰を抱いて、とても幸せそうに笑った。
「徐々に準備して、フレリア達の婚姻式の準備までで退職しようと思ってる。
だから、それまで宜しくね。」
「えぇ。ありがとう、シュカ。」
フレリアとシュカ嬢が手を取り合ってはしゃいでいる。
かわいいなぁ~とデレっとフレリアを眺めていると、似たような表情でシュカ嬢を見てるハンス先輩と目が合った。
お互いにちょっと気不味くて、視線を逸らした先に団長と副団長がいらして、生温かい笑顔を向けられて、ちょっと恥ずかしかった。
いよいよ辺境伯邸へ帰ることになって、操縦室の片隅にある脱出陣なる円の真ん中へ、シュカと私は手を繋いで立った。
足元からキラキラと白い光に包まれる。
眩しくて空いた手を翳すと、次の瞬間にはシュカと繋いだ側の手を引かれる。
瞼を上げれば、そこは辺境伯邸の使用人寮の前だった。
「今日はいろいろなことがあったわね。」
「楽しい1日だった。それじゃ、また明日ね。」
「えぇ。また明日。」
私とシュカは各々の部屋へと戻った。
いろいろあったけれど、2人とも足取りは軽く見えた。
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