旦那様と私の、離・婚前旅行

325号室の住人

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離・婚前旅行 7日目はお呼ばれの準備

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「エリ…エリサ…」
「ん…………はぃ…」

翌朝、私は体が怠くてなかなか起きられませんでした。
まず瞼が上がってくれません。

「エリ……そんなにかわいく眠っているなら、《夢》ってことにして抱いてしまっても構わないだろうか?」
「もぅ、無理です。私を解放してくださいまし。」

私はゴロリと転がって俯せになりました。

「エリ…ごめん。昨日は久々だったから、抱き潰してしまった。」

消沈したような声に、私は顔を上げました。
バルトルは泣きそうな顔になっています。

「バルトル様、大丈夫ですわ。私頑丈ですもの。もう少し寝かせて頂ければすぐに復活を…」

そこまで喋って、バルトル様が外出着姿なことに気付きました。

「実は今朝方先触れがあってね。この地の領主にランチに誘われたのだ。
君には、少し後の時間に夫人の名でお茶会の招待を受けた。
でもこの状態なら、断ろうか?」
「いいえ! 伺います。伺う旨お伝えくださいまし。」

私は飛び起きました。

なぜなら、
《格上の人間からのお茶会は、何があっても出席すること》というのがキャセリーヌ様のモットーだからです。

いつも言われているのです。

『エリサさん、貴女は《夫》こそ侯爵家の方ですが未だ当主の御子息の夫人でしかありません。
つまり、貴女はまだ《侯爵夫人》ではありません。婚家ではなく実家の男爵家の方が適用されるのです。
ですから…貴女は誰のお茶会であっても、ご懐妊とご出産以外の理由での欠席は認められないのですよ。』

ですもの。万が一お断りなどしてしまえば、王都の邸あちらへ戻った時に何を言われるやら。
私はバルトル様と離婚する身とは言え、万が一離婚してもらえなかった場合には王妃様のお茶会への出席を理由なく欠席することは許されないのですもの。

まだ腰は痛むし足もガクガクでしたが、なんとか気合いを入れて浴室へ向かうのでした。




浴室から戻ると、そっくりの顔の《影》の女性が2人、侍女のお仕着せで待ち受けていました。

「リリサと申します。」
「レレキと申します。」
「それでは奥様、この先は我らに身を委ねていただきますよう。」

跪いて首を垂れる彼女たちなのに、話す言葉には有無を言わせない強引さがあって背筋が伸びます。

──まだ若い娘さんたちなのに、妙齢の公爵家の侍女長みたいな貫禄があるわね。

「宜しくお願い致します!」

背筋を伸ばして頭を下げれば、2人は腕捲くりをしながら作業を始めた。



「奥様……………本日は、こちらのデイドレスをお召しになっていただきます。」
「わぁっ…可愛らしいわね。」

リリサが出したのは、濃緑色のハイネックの、先がラッパのように広がった七分袖のデイドレスだった。
ただし、この国で流行っているようなコルセットを使うものではなく、胸の下で切り替えになっている形…これは……

「隣国のデザインでしょうか。」
「左様でございます。こちらは、侯爵夫人より預かりました。」
「義母様が…?」
「はい。エリサ様の到着を、実の息子であるバルトル様の到着よりも楽しみにしていらっしゃいましたが、到着が遅れるとの報告にこちらを預かったのです。」
「まぁ! コルセットをしないワンピースだなんてとても嬉しいです。もしも私より先に義母様にお会いすることがあったなら、よくお礼をお伝えいただきたいわ。」
「畏まりました。」

デイドレスのシンプルさの中にも繊細な美しさのあるワンピースを着せてもらえば、何だか普段よりも大人っぽく見えるように思います。

「それでは、御髪とメイクはわたくしにさせてくださいまし。」

今度は、大きなメイクボックスを抱えたレレキがやってきました。

エスコートされるように手を引かれ、ドレッサーの前に掛けると、
「奥様、申し訳ありません。こちらの鏡は最後にご確認いただきたいのでこちらを見てくださいませ。」

私は鏡を背負うように座り直すと、レレキの指示で瞼をおろしました。

「失礼致します。」

レレキはまず、私の髪を整えて行きます。
その時、ふわっと香ったものは何かの残り香のようで、でも何だったのか思い出せなくて…



2人とも、《影》として剣を振るだけあって女性にしてはゴツゴツとした手をしていますが、とても丁寧に仕上げてくださいました。

そうして私は、キャセリーヌ様の待つ伯爵邸へと向かったのです。


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