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旅の終わりと見知らぬ天井
しおりを挟む目覚めた私は、見覚えのない天井を眺めていました。
あの日、馬車の中で毛布に包まった私を抱き締めて守ってくれたのは確かにバルトルだった。
私は毛布の中で、抱き締める腕と閨で何度も感じたバルトルの汗の匂いに気付いたのだから。
──バルトルはどこかしら。また助けてくれたこと、お礼を言いたいわ。
そうして体を起こした時でした。
ノックが聞こえ、私の許可で入室したのは、ティセットなどを載せたワゴンを押すリリサでした。
「奥様…良かった。目が覚めたようですね。」
ワゴンの上の手桶で軟らかな布を湯で絞り、手や顔、鎖骨の辺りまで拭ってくれながら、リリサは続けます。
「あの馬車から助けられてから、今日で5日てすよ。ずっと眠っていらして…心配致しましたよ。」
「ありがとう。リリサは? 体調は?」
リリサは再び湯で布を絞ると、
「元気です。それだけが取り柄ですから。失礼します。」
今度は私の足を拭いてくれた。
足の指の間も1本1本拭いてくれて、とても気持ちがいい。
「こちらは、侯爵家の客間なのですよ。何か口に入れられるものを見繕って参りますわ。少々お待ちくださいませ。」
リリサは布を湯で濯いで硬く絞ると、手桶と一緒に持って静かに退室して行った。
すると、入れ替わるようにリリサと面差しの似た私より少し年上の女性と、その女性より少し上かという、レレキと面差しの似た女性が入室してきた。
2人は優雅にカーテシーをして見せると、私に微笑んで見せた。
「わたくしはルルハと申します。」
「わたくしはララカですわ。宜しくお願い致します。」
「宜しく…お願いします。」
私もペコリと頭を下げた。
「わたくし達は先程の、リリサの姉なのです。」
「先般は妹が、きちんと任務をまっとうできず申し訳ありませんでした。」
「本日からはわたくしとララカが奥様の護衛兼侍女を。リリサには侍女として奥様の身の回りのお世話に専念させることに決まりました。」
「これは長である父の決定ですので、ご希望ありましたら父までお申し出ください。」
「父?」
私が不思議そうな顔をすると、
「ご存知ありませんか?」
「現在は、バルトル様について隣で掃除をしておりますわ。」
会いたいと思っていると、特にこちらから訊ねなくても情報はあちらからやってくるものですね。
「バルトル…バルトルは? 会えませんか?」
「はい。」
「暫くは、お会い頂けません。」
「え…」
「バルトル様だけに任命された長期のお仕事がありますの。」
「お会いできるようになれば、きっと父が連れて参りますわ。」
「……そうですか。」
私は、瞬時に気持ちが沈むのを感じました。
コココンッ
そこへ、ノックの音が響きました。
返事をすればリリサが扉を開き、その後ろに領主夫妻のお姿があります。
慌ててベッドから降りようとしましたら、夫人に止められました。
「エリサさん、体調はいかがかし」
ぐぅ~
恥ずかしいです。夫人の言葉に、お腹で返事をしてしまいました。
真っ赤になって俯くと、夫人が合図し、リリサが野菜の温かなスープを持ってきてくれました。
「食べているままで構わない。
エリサさん、この度は、バルトルが申し訳なかった!!」
ベッドのヘッドボードに枕を山に積んで背を凭れ、最初の一口を口に運ぼうとしたその時、侯爵家の当主に頭を下げられ、私は驚きに匙を落としそうになりました。
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