母に託されたので、(体の相性を)確かめてみました【完】

325号室の住人

文字の大きさ
1 / 4

しおりを挟む

「素敵な夜を、ありがとう。それじゃ…」

私は身支度のため掛けていた寝台から立ち上がった。



ミルス辺境伯は、世襲ではない。
団長を頂点とした騎士団の、副騎士団長に次ぐ東西南北の辺境伯という役職の1つで、5年に1度代替わりを迎える。

直近では昨年代替わりがあって伯を継いだこの男─マイルズ─は、私の学園生時代の友人だった。

卒業後は騎士団へ、そこで場数を踏んで実力を認められ、国のトップ3として過酷な南の辺境伯にこれまでの最年少で着任したこの男は、学園生時代に比べると同じ男としては惚れ惚れするほどの肉体に鍛え上がっていた。

顔つきも、自分を含めた王都の男共とは違う、やや太めの凛々しい眉、しかし全体を通して男臭さが和らいでいるのは、少し目尻が下がっていることと、いつも何か楽しげに口角が上がっているからだと言える。

また騎士団に在籍しているのに、体力よりも魔法の特性が強い者が多い、髪色の淡いのも特徴の1つだ。
けれど、赤を纏うだけのことはある…
情熱的な者が多いと聞く彼の指が立ち上がろうとした私の左肘に掛かれば、私はあっという間に寝台の彼の下へと逆戻りしてしまった。

──彼のような者は、私には相応しくない。

私だって、こうして今晩彼と寝台を共にしたのは、亡き母に託されたから…妹の縁談のためだ。

妹には、お見合いから始まる政略結婚ではなく、私の紹介から始まる恋愛結婚をして欲しいというのが、この世から次の世界へ旅立つ母の、最後の願いだったのだから……

──君の相手は、私ではないよ…

そういう気持ちを込めて、私は彼を見上げた。

少しだけ、悲しそうに見えるのはなぜなのか。

「この一晩だけなのか…?」

その表情から紡がれたのは、体格に合わないか細い声だった。

「最初に話したはずだ。今晩の夜会で再会した時、私の双子の妹との縁談を。それで、相性を確かめさせてくれ、と。」
「しかし!」
「君は承諾した。それで我が屋敷のこの客間へやで…」
「俺は、愛を伝えたはずだ。」
「あれは、閨作法の1つだろう?」
「違う! 俺の、真の言葉だ!!」

彼は言うと、再び私と唇を重ねた。

「…んっ……」

甘い口付けから、私の唇のあわいから肉厚の舌を差し込んでの、溺れるような深い……

「…ん!」

抵抗しようと肩を押したつもりが、うまく力が入らないまま、彼と指を絡める。
太ましい膝が、仕度を整えた正装の足の間へ捩じ込まれる。

「ふ…んっ…」

少しの息継ぎののち、再び重なる唇…
火照る頬、熱を持つ股間、上がる息…

そうして唇が離れれば、私は呼吸を整えるのに必死で…
でも私の上で彼は、優越感に浸るような余裕のある瞳に、少し微笑みをたたえ…

「さぁ、寝室へ運んでやろう。」
言うと、私を抱き上げた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

何故か男の俺が王子の閨係に選ばれてしまった

まんまる
BL
貧乏男爵家の次男アルザスは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。 なぜ男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へ行く。 しかし、殿下はただベッドに横たわり何もしてこない。 殿下には何か思いがあるようで。 《何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました》の攻×受が立場的に逆転したお話です。 登場人物、設定は全く違います。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

処理中です...