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現代日本
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しおりを挟むリンジ先生とあんなことがあったなんて……
美術準備室直前で、僕の顔は真っ赤になってしまった。
少し熱を冷ましてからリンジ先生の元へ向かおうと、僕は廊下の窓を開けた。
すると、美術準備室から風にのって1枚のデッサンが僕の足元へ飛んできた。
拾い上げると、僕が居た頃の制服を身に纏った…コレは、僕?
僕はそのデッサンを手に、美術準備室の引き戸を開けた。
すると、少し焦った表情のリンジ先生と目が合った。
先生は僕の右手の先にあるデッサンを見やると、
「はぁーーーっ」
長い溜め息のような息を吐くと、僕の表情を見…
「バレたか。」
言うと、頭をポリポリと掻きながら顔を背けた。
僕は美術準備室に入ると、ゆっくりと引き戸を閉め、リンジ先生に向き直った。
「そうだよ。私はシノダが好きだ。」
「僕は…実は高校時代のこと、今思い出したんです。」
「………だからか。再会しても自然だと思っていたんだ。」
リンジ先生は言った。
「あの日から、私は意識してたよ。けれど君は私を避けて…あ、そうだ。」
リンジ先生は、1枚のカンバスを取り出した。
「Sの3号…? それって………」
「そう。君の、出品した作品だ。」
リンジ先生に渡された、ソレは、僕が在学中に描いた、油画。
見て思い出す。
描かれたのは、リンジ先生の《手》。
僕がド素人過ぎて、題材が思いつかず、先生の《手》を描かせてもらったんだ。
「懐かしい…」
受け取って、まじまじと眺める。
下手だけど、先生への好意が透けて見えて……
「シノダ…」
先生の声に顔を上げると、不意にカンバスを取り上げられ、抱き締められた。
「私は…君が好きだ。」
耳元へ囁かれる。
「初めて会った時から…私は……」
言いながらリンジ先生は僕の両肩に手を乗せたまま一度僕から体を離し、ほぼ同じ身長の僕を真正面から見た。
「シノダ…君の気持ちを聞かせてくれないだろうか。」
名前の通りの凛々しい武士のようで、かっこいい。
「でもただの部活顧問から、しかも同性から、こんな気持ちを告げられることは……」
でも、リンジ先生はだんだん俯いて行く。
「フフフッ……」
僕が笑えば、リンジ先生は即座に顔をあげる。
「笑っ? え?」
「ププッフフフフフ……」
「あの…え?」
リンジ先生は焦ってる。
僕は笑いながら先生を観察してるけど、たぶんリンジ先生は僕がどうして笑ってるのか、わかってないのだろうな………
だから僕は、返事をしてみた。
口で。
………と言っても、言葉じゃない。
チュッ
狙いをつけたら、目を閉じた直後に先生の頬めがけて唇を押し付けた。
しっかりとしたリップ音に、思わず目を開けると、僕がキスした先は先生の唇だった。
「……うぅ!」
しかも、瞬間的に後頭部押さえられて、触れるだけで直ぐに離れた後にまた、今度は深い方のキスをした。
『うぅ!』の時点で口内に先生の舌が侵入してきた。
「んっんんんー!!」
僕は先生の胸を叩いて抵抗するも、全然口は離れないし、口の中すごく気持ちいいし、だんだん膝やら腰やら腕やら力が抜けて来て、口が離れた時には完全に、リンジ先生の胸に倒れ込んでいた。
リンジ先生は、腰砕け状態の僕を抱き上げると、一度作業台の上に横たえた。
「帰る準備してくる。」
先生は僕に優しく言うと、同じ人とは思えないようにバタバタと、帰り支度をしてから、僕を抱き上げた。
「えっと、荷物は……」
「あ、今日は全部ロッカーで、貴重品はポケットなので大丈夫です。」
伝えれば、先生の足は職員玄関に向かい、そしてそのまま先生の車へ向かった。
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