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番外編 瑠可/楓
番外編 Luka-9
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コンコン
ノックをするとすぐ「はい。どーぞ」と中から声がした。
ドアを静かに開けると、楓兄はベッドに入ってスマホを弄っていた。
「お取り込み中?」
「いや、ゆうに連絡してただけ。あいつ、瑠可のことすっげぇ心配してて、返事よこせって何度もメッセージ来ててこえーの。……ほら」
クイと手招きされて近づくとその画面を見せてくれた。
結季くんとの画面の前半はボクの様子を聞くメッセージがたくさん並んでいたけど、後半は返事がなくてイライラしたのか楓兄への悪口だった。
「わーホントだー。ボクにも来てたのかな?」
「もう連絡したから、明日、確認すればいいよ。悪口は書いてないはずだから」
ピコンと結季くんから『おやすみ』のスタンプが届いて、ボクはふふふっと笑ってしまった。
「で、瑠可、どうした?眠れないのか?」
「えっと、楓兄の顔が見たかった…から?」
「くっ、何だそれ」
適当に答えると笑って頭をくしゃくしゃされた。
「ちょっとー、もう髪型崩れるから」
「寝たら寝癖つくんだから関係ないだろ」
「そうだけど…」
それ以上言葉が続かなくて、楓兄にくしゃくしゃにされた髪を撫で続ける。
「………眠れないのか?」
「……うん……静かにしてるから此処にいて、いい?」
楓兄に呆れられたらって思ったら顔を見ながらは言えなくて、握りしめるパジャマの裾をずっと見つめた。
ふぅと、息を吐く音にビクッと肩が揺れる。
「瑠可……おいで」
その声に視線を上げると楓兄はベッドの奥に寄ってスペースを空けてくれた。
今更ながら、自分の発言に恥ずかしくなってモジモジするボクの手を取ってベッドに招き入れた。
「狭くても文句言うなよ」
セミダブルベッドはあの時のホテルのより少し狭くて必然的に密着する。
「せ、狭い…」
「我慢しろ」
仰向けになるボクのために、楓兄は横向きになって腕枕をしてくれた。
「お日様の匂いがする」
「ああ、昼間干したからな」
薄掛けの掛け布団からお日様の匂いに混じって楓兄の匂いがする。
この匂いにホッとする反面、篠崎さんに項を噛まれていたらと考えたらゾッとした。
ボクはモゾモゾと楓兄の方に向きを変えた。
「瑠可?」
「こうして…眠っていい?」
楓兄にしがみついて、その胸に顔を埋める。
今頃、震えが止まらなくなったボクの背中を楓兄は温める様にさすってくれる。
震えが落ち着いてくると、顔を埋める胸からトクトクと少し早い心臓の音が耳に届いた。
この部屋は楓兄の匂いで溢れている。
森林の様な匂いと少し早い心臓の音、背中に当たる暖かさに安心したボクの目蓋は少しずつ重くなった。
ボクはなんでこの人の手を放そうとしたのだろう?
こんなにも温かくて優しい手を取らなかったんだろう?
眠りに落ちる直前、そんなことが頭をよぎった。
ノックをするとすぐ「はい。どーぞ」と中から声がした。
ドアを静かに開けると、楓兄はベッドに入ってスマホを弄っていた。
「お取り込み中?」
「いや、ゆうに連絡してただけ。あいつ、瑠可のことすっげぇ心配してて、返事よこせって何度もメッセージ来ててこえーの。……ほら」
クイと手招きされて近づくとその画面を見せてくれた。
結季くんとの画面の前半はボクの様子を聞くメッセージがたくさん並んでいたけど、後半は返事がなくてイライラしたのか楓兄への悪口だった。
「わーホントだー。ボクにも来てたのかな?」
「もう連絡したから、明日、確認すればいいよ。悪口は書いてないはずだから」
ピコンと結季くんから『おやすみ』のスタンプが届いて、ボクはふふふっと笑ってしまった。
「で、瑠可、どうした?眠れないのか?」
「えっと、楓兄の顔が見たかった…から?」
「くっ、何だそれ」
適当に答えると笑って頭をくしゃくしゃされた。
「ちょっとー、もう髪型崩れるから」
「寝たら寝癖つくんだから関係ないだろ」
「そうだけど…」
それ以上言葉が続かなくて、楓兄にくしゃくしゃにされた髪を撫で続ける。
「………眠れないのか?」
「……うん……静かにしてるから此処にいて、いい?」
楓兄に呆れられたらって思ったら顔を見ながらは言えなくて、握りしめるパジャマの裾をずっと見つめた。
ふぅと、息を吐く音にビクッと肩が揺れる。
「瑠可……おいで」
その声に視線を上げると楓兄はベッドの奥に寄ってスペースを空けてくれた。
今更ながら、自分の発言に恥ずかしくなってモジモジするボクの手を取ってベッドに招き入れた。
「狭くても文句言うなよ」
セミダブルベッドはあの時のホテルのより少し狭くて必然的に密着する。
「せ、狭い…」
「我慢しろ」
仰向けになるボクのために、楓兄は横向きになって腕枕をしてくれた。
「お日様の匂いがする」
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「瑠可?」
「こうして…眠っていい?」
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今頃、震えが止まらなくなったボクの背中を楓兄は温める様にさすってくれる。
震えが落ち着いてくると、顔を埋める胸からトクトクと少し早い心臓の音が耳に届いた。
この部屋は楓兄の匂いで溢れている。
森林の様な匂いと少し早い心臓の音、背中に当たる暖かさに安心したボクの目蓋は少しずつ重くなった。
ボクはなんでこの人の手を放そうとしたのだろう?
こんなにも温かくて優しい手を取らなかったんだろう?
眠りに落ちる直前、そんなことが頭をよぎった。
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