金の野獣と薔薇の番

むー

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番外編 瑠可/楓

番外編 Luka-11

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新学期が始まっても、篠崎さんからの連絡が続いた。

通知画面には『体調悪いの?』『何かあった?』『会いたい』『声が聞きたい』と短いメッセージが何度も表示される。
そこにはあの日の謝罪の言葉は一切なかった。
見る度にボクの心はすぅーっと冷めていくのが分かる。
もう、この関係は限界かもしれない。
そう感じた。

今日は『話がしたい』と表示された。
ボクは思い切って、トーク画面を開いた。

『ボクも話があります』

それまでのメッセージには触れず、その言葉だけを送るとすぐ返事が来て、次の日曜日に会うことになった。


夜、楓兄に篠崎さんと会う約束をしたとメッセージを送ると、すぐ電話が来た。

『いつ会うんだ?』
「日曜日」

答えるとチッと舌打ちが聞こえた。

「楓兄?」
『いや、その日…最終面接の日で…』
「大丈夫だよ。いつも行くカフェで会うから」
『でもっ…』

食い下がる楓兄の声が嬉しいけど、これはボクの問題だから、ボクが決着つけないと。
そして……。

「あの…楓兄。カフェで待ってるから、面接終わったら会えないかな?」
『………?』
「は、話があるんだ」
『………分かった。これだけは約束しろ。何があっても絶対、店から出るな』
「分かった」

ボクは自分の気持ちと向き合う決心をした。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「此処でのことがつい先日のような気がするよ。そう思わないか、瑠可?」

なんで…。
なんで、此処なの?


カフェに着いたボクは、入り口で待っていた篠崎さんに捕まり、初めて会った場所である人気のないビルの裏に連れてこられた。

「此処で初めて瑠可と会ったね」
「なんで…?」

なんで此処に連れてきたの?

「そういえば、田幡創悟くんだっけ?あの時の子は?あの子、瑠可の初めての相手だよね?彼も呼ぼうかと思うんだけど、どう?」
「な、なんで…?」

なんでそのこと知ってるの?
なんで呼ぶとか言うの?

「なんで?って顔をしてるね。僕はね、瑠可のことが好きなんだよ。鳥籠に閉じ込めて誰にも見せたくないくらいに、ね」

クツクツと笑う篠崎さんは1ヶ月前とは全く違う顔をしていた。
残虐な表情を隠そうとしていなかった。

「瑠可のことは全て調べたよ。家族、友達、初めての相手からセフレまで」

膝がガクガクして立っているのがやっとだ。
篠崎さんにここまで執着されているなんて思ってもいなかった。
付き合うまではずっと一歩引いて接してくれてた。
付き合ってからは少し強引なところはあったけど、エッチをするまでは普通の恋人同士だった…のに。

「そうだ、瑠可のせフレだった子もみんな呼ぼうか。そこで瑠可を一番可愛く鳴かせた子を瑠可の番にするんだ。そうすれば、瑠可でも分かるだろう?誰が君の一番かって?」

ゾッとする話だ。
そこにボクの意思はない。

「なんで?ボクが篠崎さんの連絡を無視したから?それで篠崎さん、傷ついたの?だって、先にボクを傷つけたのは篠崎さんじゃない!」
「何を言ってるんだ瑠可?」
「だってあの時ーー」
「あの時?ああ、謝るつもりはないよ。瑠可、僕言ったよね。オメガは社会の足手纏いだって。だから瑠可は僕との子供を産んで夢を託せばいいんだよ」

あの時と同じ目で同じことを言われた。
楓兄は一緒にいても、そんなこと一度だって言われたことはなかったのに。

「違う、オメガボクは足手纏いなんかじゃない。そんなことをいう人とはもう付き合えないっ!」
「何?まだ不満があるのか?……ああ、如月楓くんだっけ?彼も呼んで欲しいのか。瑠可は欲張りだね。……あ、でも彼、今日は最終面接だった。今ここに来たら不採用だね。瑠可、それでも呼んで欲しい?」
「な、んで…」
「だから言っただろう。瑠可のことは全て調べてるって」

話が通じないだけでなく、楓兄の未来まで潰すようなことを言ってきた篠崎さんに恐怖のあまり、その場にペタンと座った。
篠崎さんはボクのそばに膝をつきバッグのポケットからスマホを取り出すと、ロックを解除してどこかに電話を掛けた。

「……ああ、君が如月楓くんだね。面接前だというのに電話に出るなんて余裕だね」
「篠崎さん、やめてっ!」
『瑠可?』

スマホを取り返そうとしたけど、簡単に突き飛ばされた。

「すごいよね、あのNANA-tsukiの最終面接まで残るなんて。内定取れたら将来は安泰だね………え、ああ、瑠可は元気だよ。ちょっと会わない間に我儘になっちゃったのは君のせいかな?……大丈夫、僕は瑠可のことを愛しているから、ちゃんと躾けて、オメガとしての生き方と幸せを教えてあげるから安心して。じゃあ切るよ、面接頑張って」

篠崎さんは電話を切ると、スマホを投げ捨てた。
少し離れた地面に転がるスマホがブルブルと震える。

「じゃあ行こうか瑠可」
「や、やだっ。行かない」
「仕方がない。なら、ここで少し躾をしようね」

篠崎さんは薄ら笑いを浮かべながら手を振り上げた。

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