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最終章 Side:愛梨
1話
しおりを挟む玲子とお昼のタイミングが合わず1人で社食を食べていると、1週間ぶりの出勤となった友理香が愛梨の傍にやって来た。
「友理香ちゃん、ここ座る?」
促すと友理香が目の前の席に腰を下ろしてくれる。最後に見た顔面蒼白からは幾分か顔色を取り戻していたが、やはり元気がないままだった。その萎れた表情のまま、友理香がそっと口を開く。
「愛梨、この間はごめんなさい。謝って済まされることじゃないけど……」
「ううん。大丈夫だよ」
しょんぼりと俯いた姿を見て愛梨が首を横に振ると、顔を上げた友理香の表情が少しやわらかなものに変化した。その笑顔に、密かに魅了されてしまう。女の愛梨でも惚けてしまうほどに美人の友理香には、もっと笑っていて欲しいと思うのに。
「あの後、雪哉にすっごい怒られたの」
「えぇ、あれからまだ怒ったんだ? もういいのに」
友理香が悲しそうに俯くので、つい愛梨の方が呆れてしまう。
あの日から数日後、愛梨は雪哉から直接謝罪を受けた。『愛梨が望まないような対応はしない』と話していたから穏便に済んだと思っていたのに、実は更に友理香を叱った後だったとは。
仕事に私情を挟んで愛梨に迷惑かけた友理香を叱るのなら、資料室で無理矢理キスした雪哉も十分同罪だと思う。それなのに友理香だけ厳しく断罪するのはどうなのだろう。とは言え、それは誰も知らない話なので、愛梨以外に雪哉を注意する人もいないのだけれど。
「私、本当は自分から本社に報告しようとしたんだ。悪い事したのは私だから、ちゃんと罰を受けるべきかなって」
肩を落とした友理香が口にした言葉に、思わず目を丸くする。
愛梨には派遣元会社のルールがわからない。だから判断は雪哉に委ねるしかないと思っていたが、友理香も自分自身でしっかりと反省したらしい。落ち込んで項垂れた友理香が歳の近い妹のように思えて、なんだか可愛いと思ってしまう。
「でも雪哉に止められたの」
「それはそうだよ。だって友理香ちゃんがいなくなったら、うちの会社も困るもん」
「それもあるけど、折角庇ったのに処罰になったら、愛梨が気にするからって」
「へ……私?」
「自分だけ処分を受け入れて楽になっても、それで担当外れたら愛梨は絶対気にするからって。だから反省してるならその分は仕事で返してって言われちゃった」
「わぁ……手厳しいねぇ……」
雪哉は愛梨に鋭い視線を向けることはあるが、基本的に他人には厳しくないし、今までは友理香の困った言動を強く咎める様子もなかった。その雪哉にしては、今回は随分厳格な判断をしたと思う。
けれど雪哉の言い分は間違っていない。愛梨が気にするかどうかはともかく、仕事のミスを仕事で取り返すのは社会人の基本だ。ミスを愛嬌で取り返せるのは学生まで。
とは言え、友理香自身が自分の過ちをしっかり理解しているなら、きっと大丈夫だろう。雪哉の信頼を取り戻せるかどうかは友理香の頑張りにかかっていて、愛梨には見守る事しか出来ない。それでも友理香の成長のサインを見つけた気がして、愛梨は『そっか』と安堵して頷いた。
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