「おまえが泣いてんのに、オレが幸せなわけねーだろ!!」~最強の魔法使い師弟5~

火威

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第二幕

「おまえが泣いてんのに、オレが幸せなわけねーだろ!!」~最強の魔法使い師弟5~

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第二幕
 
「えーめんどーくさいー。」
 貴婦人が好むような、洒落た猫足のソファに、気怠い様子で体を投げ出し、彼はうんざりした顔で言う。
 二十歳前後だろうか。少年とも青年ともとれる年頃。顔立ちは、見た者が息を呑むほど整っているが、酒や薬に溺れていそうな、退廃的な雰囲気がある。
 来客がいるのに、半裸に近いほど服をはだけて、煙管をくゆらしていれば、せっかくの美貌も崩れて見える。
「ほっときゃいーんじゃないのー。サタンもアスモデウスもさー、手を出さなきゃよかったんだよー。向こうから仕掛けてきたわけじゃないんでしょー?魔界に引っ込んで、五百年もすればいなくなってるよー。力ある魔法使いって言ったってー若さを保てるだけで、不死ってわけじゃないんだからさー。」
 ふう、と煙管から煙を吐き出す。
「ベルフェゴール。今回ばかりは、怠惰のおまえと言えども、働いてもらうぞ。」
 と、ベルフェゴールの正面に立つ青年が重々しく言う。
「えー。」
と、ベルフェゴールが煙管を咥えつつ見上げるのは、二十代後半ほどに見える青年だ。厳めしく武骨な美丈夫。軍を率いる司令官と言われたら納得できる。ただし、どれほど苛酷な命令を下そうと、心はわずかも痛まないであろう、非情さを漂わせている。
「マモン、それどーゆーこと?ボク、働いたら負けだと思ってるんだけどー。」
と、不満たらたらのベルフェゴールに、マモンはただ一言告げる。
「ルシファー様のご命令だ。」
「…。」
 ベルフェゴールは、しばし無言になり、やがて、がっくりと肩を下ろす。
「あーはいはい。でもさー、ボクのやり方でいーよねー?」
「おまえのやり方、とは?」
「できるだけ労力の少ない方法で、例の魔法使いに、最大の苦しみを与えてあげようよー。人の心を操るのが一番カンタンで、一番愉しいよー。」
と、唇がゆるく弧を描く。その笑みには、マモンと同種の、人外の者にしか持てない残忍さが香る。
 人は玩具。操って追い詰めて、血みどろの惨劇を演じさせ、愉しませてくれればいい。
「ルシファー様、どうせ聞いていらっしゃいますよねー。」
と、ベルフェゴールは、虚空に向かって呼びかける。返事はないが、構わず続けた。
「かの魔法使いから、一番大切なモノを取り上げましょう。それが、同胞を殺された我ら魔王の復讐にして、彼の者の力を削ぐ最も有効な手段。引き離されるのが死よりも辛い。あの二人は、そういう関係。だからこそ、引き裂くのは、我らの愉悦。」
 くく、と喉の奥で笑う妖しい美貌の主は、いつの間にか、口調もまとう雰囲気も変わり、冷酷さが濃厚に滲み出ている…。

 <星の塔>の中心にそびえ立つ、統治機関、<元老院>。同じ建物の中に、執行機関の<政務宮>があるため、この周囲は、<星の塔>で最も人通りが多い。所謂メイン・ストリートで、始業間もない時間でありながら、大勢の魔法使いが行き交っていた。
「おはようございます。今日も暑くなりそうですね。」
「ああ、おはよう。つい先日まで、北の方にいたので、この暑さは堪えるよ。」
「そうですか。道理で、お見かけしないと思いましたよ。北の方は、さぞ過ごしやすいのでしょうね。」
「快適だったが、今年は祭を見逃してしまったのが残念だ。」
「それはお気の毒さまです。ところで、北の方と言えば、魔族が…。」
 顔見知りと出会うと、足を止め、しばし互いの近況を語り合っている。<星の塔>の魔法使いは、依頼を受けて世界中を飛び回るため、数か月、顔を合わせないこともざらにある。
 <星の塔>最大の行事である、夏の祭典が終わって数日。祭の後の、気が抜けたような、どこか寂しく弛緩した空気。しかし、その分、のんびりと平和な夏の朝。
 太陽は既にぎらぎらと照り付けているが、吹く風は、この時間ならまだ一片の冷涼さを含んでいる。その爽やかでのどかな空気を引き裂く勢いで、
「フェレトさまっ!!」
と、少年の声が響き渡った。
 道行く魔法使いたちが、何事かと振り返ったほどの、感情的な叫び声。
「オレも連れていってください!オレは、フェレトさまの弟子でしょう!?こういう時に同行して助けるのが当たり前のはずです!!」
と、ディアスはフェレトに詰め寄った。
「今回は駄目だ。次は連れてってやるから、大人しく待ってな。そんなに長く留守にはしねえよ。」
 声を荒げてはいないが、断固たる声音だった。小さな子どもに道理を説くように、フェレトは厳然と告げた。
 ディアスの返事を待たずに、身を翻したフェレトのマントを、ディアスがぐ、とつかむ。
「嫌です!!」
「おまえな…。」
 つんのめりかけて踏み止まり、肩ごしに振り向いたフェレトは、「駄々っ子か。」と言いかけて、口を閉じた。
 皺が寄るほど強くフェレトのマントを握りしめるディアスの手は、力を入れすぎているのか、小さく震えて、もともと処女雪の肌なのに、真っ白になっている。
 かみしめた唇が震え、紫色の瞳にはうっすらと膜がかかって、朝露に濡れる葡萄のようだ。
 俯いていた顔を上げ、ディアスははっきりと言った。
「置いて行かれるのは、もう嫌です。」
 どうしてディアスが頑ななのか、ようやく理解して、フェレトは天を仰いだ。
(オレのせいかよ。)
 フェレトは、サタンの一件の時にディアスを置き去りにした。だからディアスは、フェレトと離れることを嫌がる。正しくは、怖がっている。
 <風の賢者>とその弟子が騒いでいるのは珍しくもないが、不穏な気配を感じ取ったのか、何事かと魔法使いたちが足を止める。フェレトは、良くも悪くも有名人だ。注目を浴びやすい。
「また、<風の賢者>殿ですか。毎度毎度元気なことで。」
「しかし、何かいつもと違うようですが…。」
 遠巻きにひそひそと囁かれ、フェレトは軽く舌打ちする。
「行くぞ。」
とディアスの腕をつかみ、<政務宮>に引き返した。

 フェレトは、使われていない一室にディアスを放り込んだ。
 <政務宮>は、最奥に<元老院>があるため、その周囲は高位の魔法使いしか入れないエリアになっている。
 フェレトがディアスを連れて来たのは、その一画。当然人気は無いが、フェレトは念のため鍵をかけた。
 一歩も退く気のない顔をした弟子と向き合う。
 フェレトとディアスが揉めている原因は、フェレトに入った仕事にあった。
 魔族の退治、というのは、高位の魔法使いに任される仕事としては珍しくない。ただし、今回は賢者に…その中でも最強のフェレトに名指しで回ってきた仕事、という点が非常に稀な依頼だった。
『わざわざ貴様に任せる理由はわかるだろう。』
と、<教皇>は苦い顔をして言った。単に、<元老院>に平気で逆らう<風の賢者>を毛嫌いしているというだけではなく。
『派遣した魔法使いたちが連絡を絶った。』
 と、ひどく重い一言を、<教皇>は感情を押し殺した声で告げた。
 その意味するところは、この依頼に適任とされて赴いた魔法使いたちが全滅したということ。
 しかし、フェレトがディアスの動向を拒むのは、敵の強さだけではなかった。
(こいつは、言わなきゃ納得しねえよな。)
 フェレトは、ディアスの強情さを知っている。しかし、それだけではなく、ディアスに対して真摯でありたいと思う。隠して遠ざけることが、守ることではないのだと、フェレトは学んだ。ディアスと共に過ごした数か月で、フェレト自身も成長している。師として。
「行き先はオルコス王国だ。」
「それがどうしたんです。」
 間髪入れす切り返したディアスに、フェレトは呆れる。
「おまえな…。流石に、故郷に行ったら素状は割れるだろうが。そもそも、おまえ、どういう形で国を出てきたんだ?」
 こんな状況でなければ、フェレトはディアスに尋ねることはなかっただろう。恵まれていたとは思えない子ども時代の記憶を、わざわざ掘り起こそうとは思わない。
「…第一王子の生誕祭の日に…」
と、ディアスは話し出す。兄、とは呼ばない。意識してのことか、無意識にか。おそらく後者だろうと、フェレトは思う。五歳のディアスは、実母でさえも、母とは呼ばなかった。
「大きな宴で、国外からも賓客を大勢招いていました。城の下働きだけでは手が足りなくて、街からも臨時で雇い入れていました。」
 ディアスは、自分と兄王子との差に傷ついただろうか、と一瞬考え、フェレトはすぐに否定する。ディアスは、千載一遇のチャンスだと思ったはずだ。
 人の出入りが多ければ、それにまぎれやすい。もともと、公の場に出ることの少なかった第二王子だ。服を変えて、下働きの者に混ざってしまえば、城から抜け出すのは容易。
 そして、ディアスなら、念入りに準備をしていたはずだ。逃走経路も、資金も、十分に確保した上で、実行に移したのだろう。
「オレの傍仕えは、もともと数が少なかったし、そのほとんどが宴に駆り出されていたから、抜け出すのは簡単でした。」
「つまり、おまえは失踪扱いになっているってことだな。」
「はい。いないことが発覚しても、本気で捜索なんてされていないと思います。」
 王が正妃を裏切った証、王宮の汚点のような第二王子。しかし、何の力もない子どもであるがゆえに、『脅威であるから殺す。』という大義名分も通らず、捨て置くしかなかった。
「邪魔者が消えて、あっちはさぞ喜んだでしょうね。」
「やめろ。そういう言い方は。」
 フェレトが語気を強めたので、ディアスは小さく
「すみません。」
と詫びる。師の怒りが、自分のために燃え上がったものだと自覚して。自分を貶めるなと、フェレトはそう言いたいのだと、正しく理解して。
「オレは、王宮の奥まった一画で、隠すように育てられたので、オレの顔を知っている人間は、本当に一握りなんです。」
 正直に言えば、自分の正体に感づく人間も皆無ではないだろうと予測している。ディアスは状況を正確に把握できないほど愚かではないし、根拠もなく楽観的な見方もしない。
 ただし、疑いを持たれたところで、平気だった。
 まず第一に、証拠がない。
 <星の塔>という魔法使い組合ギルドの一員であるディアス・パレルが、五年前に失踪したオルコス王国の第二王子だと証明する手立てがない。
 万が一、それを証明する方法があったとしても、メリットがない。
 オルコス王国に生きる誰一人として、第二王子が祖国に戻って得をする人間はいない。第二王子の生還を、喜ぶ者など一人もいない。あえて指摘する人間はいない。
 だから正体がばれたところで、何も問題はないと、ディアスは読んでいた。
 自分の考えをそのまま伝えると、口は悪いが本当は優しい師匠は、痛ましく思うだろうと、ディアスにはわかる。
(同情してほしいわけじゃないし、オレは傷ついてなんかいないのに。)
 ディアスにとっては、オルコス王国で王子として過ごした時間は、ただの過去で、もはやどうでもいいことだ。価値があるとすれば、フェレトに出会えたという一点のみ。
(あなたに会いたかったんです。)
 それが、国を捨てた一番の理由だから。
 ディアスは言葉を選んで、証拠とメリットがないことを説明した。
「…だから、疑う人間がいたとしても、騒ぎ立てることはないと思います。それに、王子だった時の名前は捨てました。」
 つながりは断ち切ったのだと。
 ディアスはフェレトの両腕をぎゅっとつかむ。夏服の薄い生地を通して伝わるフェレトの体温。
「お願いです。連れていってください。オレは、フェレトさまの役に立ちたいんです…!フェレトさま、言ったじゃないですか。巻き込んでくれるって。」
 視線が重なる。
 どんな宝玉よりも強い輝きを放つ、澄んだ青。
 くつろいだ気配を断った時のフェレトのまとう雰囲気は、研ぎ澄まされた刃のように鋭利で、野生の獣のように猛々しい。
 喉元に指をかけられたような、空気が薄くなるような恐怖を味わいながら、ディアスは必死で顔を上げていた。
 退く気はない、と態度で示す。
 視線の間で火花が散る、息もできない数瞬が過ぎて。
「…こき使ってやるから、覚悟しろよ。ったく。なんでこんなに強情なんだ、おまえは。」
 ふう、とフェレトが苦笑の混じった吐息をついた。
「きっと師匠に似たんですよ。」
と、ディアスは、ツンとあごを反らして返す。小さな声で
「ありがとうございます、フェレトさま。」
と囁く。
 フェレトは、
「ディアス、おまえはオレの目の届くところにいろよ。」
と返した。それが条件だ、と。そして、もう一つ。

「もう、いいぜ。」
と、フェレトに言われ、ディアスは自分の手足に視線を巡らす。見た目は何も変わっていない。
 だが、感じる。
 清廉にして雄大な力の片鱗を。それは、いつの間にかディアスの心身に馴染んだ、
(フェレトさまの力…。)
 不思議なくらいに、心が凪いだ。
 顔を上げ、周囲の景色を見渡した。
 五年ぶりにオルコス王国の風景を目にし、ディアスは感じたのは、懐かしさなどという湿っぽい感情ではなくー。
「相変わらず田舎ですね。山しかない。ま、涼しくていいですけど。」
 それだけだった。
 そのあっけらかんとした物言いに、フェレトは安堵していたが、顔には出さない。
「冬服に変えてきて正解だったな。」
と頷き、見上げた空は高い。
 大陸中央に位置する<星の塔>では、まだ夏まっさかりで、立っているだけでも汗が吹き出すほどなのだが、北国のオルコスでは既に秋の気配が色濃い。
 髪を揺らして吹き過ぎる風は、清々しい冷涼さを含み、木々の一部は早くも黄や赤に色づき始めている。空に浮かぶ雲さえも、夏とは形が違う。北国の夏の短さを肌に感じる風景だった。
 できるだけ早急に次の魔法使いを、というオルコス王国側からの要請を受け、フェレトとディアスは魔力の続く限り<碧風翼へくふうよく>を移動手段にした。馬よりもよほど早い。フェレトは、ディアスの限界を本人以上に見極めていて、けして無理はさせなかった。
 地図が完璧に頭に入っているらしく、魔力が尽きるまでに、宿を取っていた。『泊まれる場所がないところで魔力が空になったら最悪だぜ。』と言う言葉には実感がこもっていたので、そういう経験があるのかもしれないなと、ディアスは思った。旅慣れしている印象だった。
 <星の塔>に所属する魔法使いは、世界中を飛び回るので、それも当然。賢者の第一の任務は、<星の塔>の守護なので、賢者になってからは、旅に出る機会は減ったはずだが。
(でも、フェレトさまなら、<星の塔>を好き勝手に抜け出していそうだな…。)
という、ディアスの心の声が聞こえたわけではないはずだが、フェレトが
「行くぞ。」
と絶妙なタイミングで声をかけたので、ディアスはビクッとする。
「おまえ、またなんか失礼なこと考えてたな?」
「違いますよ。なんでそんなに疑り深いんですか。」
と、返しながら、ディアスは内心(心臓に悪いな…。)と冷や汗をかく。フェレトの勘が鋭いのか、四六時中一緒にいると、思ってることが筒抜けになるのか…、と考えながら歩き出したディアスは、
「そっちじゃねーよ。」
と、フェレトに襟首を捕まえられ
「は?」
と、目を瞬いた。
 方角は間違っていない。
 ディアスの進もうとした先には、見覚えのある王城。三方を山に囲まれ、天然の要塞になっている。いくつかの尖塔、居館パレス、跳ね橋。記憶にあるままだ。
「まずは腹ごしらえしよーぜ。」
と、フェレトは言い放ち、ディアスを引きずって行く。
「はあ?そんな悠長な!って苦しいです!」
 ディアスはじたばたしながら連れられて行く。

 フェレトがディアスを連れて入ったのは、一階が食堂、二階が宿屋、というよくある造りの店だった。これが一番効率的に儲けられる形なのだろう。国が変わっても、このスタイルが多い。
「いらっしゃい!」
と、声を張り上げて迎えてくれた主人らしき中年の男は
「へえ、兄ちゃんたち、魔法使いサンかい?」
と、訪ねてくる。<星の塔>は、世界的に有名なので、制服姿のフェレトとディアスの素状はすぐに知れる。しかし、流石に、マントの意味までは知らないようだ。
「ああ。近くの国で一仕事終えてきたとこなんだが、もうちょっと稼ぎたくてな。なんか仕事になりそーな情報ネタはねーか?」
と、カウンター席に座ったフェレトに訊かれ
「いやあ。悪いが、魔法使いサンのお世話になるような事件はないねえ。平和なもんだよ。」
と、店の主人は気安く答えている。フェレトが、一流の魔法使い組合ギルドで、最高位にいるとは想像もできない、砕けた物言いをするからだろう。人の懐にするりと入り込む、人懐っこい笑顔で首をすくめ、会話を続ける。
「そりゃ、残念だ。ああ、この店じゃ、何がおすすめなんだ?実は、休暇も兼ねてるんで、この国らしいもんが食いたいんだが。」
「それだったら、具だくさんのシチューと、鹿肉の香草焼きだ。地元ここの客だけじゃなくて、よそから来るお客さんにも好評ですぜ。」
「じゃあ、それ二人前。よそから来る客ってことは、ここはやっぱり観光客が多いのか?」
「へえ、毎度あり。そりゃ、避暑地ですからねえ。今は稼ぎ時なんですよ。もうちょっとしたら、紅葉も見事なもんです。どうです?そこまで滞在されちゃ。ウチの二階、空けときますよ。」
「そこまでいたら、金が続かねーよ。ここじゃ、仕事もねーんだろ?」
「そりゃ、残念。じゃあ、どっか余所よそで稼いで、また来てくだせえ。」
「それは、ここで出てくる料理の味次第ってやつだな。」
「唸らせてやりますから、お楽しみに。」
 ぽんぽん弾む会話。本当に初対面かと疑いたくなるような、打ち解けた様子だ。もちろん、客商売だから、店の主人が愛想がいいのは当然だろうが、損得抜きで会話を楽しんでいるのが窺える。
 フェレトには、老若男女を問わない人たらしの才能があるようだ。店の主人との会話を聞いていた客たちが、好意的な笑みをこぼしている。明らかに地元民とわかる、北国特有の色素の薄い髪や肌の客もいれば、主人に言う通り、旅装姿の異国の民もいる。
 ディアスは、店の主人が厨房に引っ込んだので、
「フェレトさま!」
と、声を上げた。
「なんだよ、酒は注文してねーだろ。」
「そうじゃなくて!全部う。」
 嘘、と言いかけたディアスは、
「声出すな。」
と、フェレトの大きな掌で口を塞がれる。ディアスは、両手でフェレトの手を引きはがそうともがく。しかし、フェレトの手は、ぴくりとも動かない。歴然とした力の差が悔しくて、ディアスは意地になって暴れるが、フェレトは涼しい顔で抑え込んでいる。それがまた憎たらしい。
 体格差も大きい上に、腕力では絶対敵わない。しかも、フェレトは人の体のどこを抑えると抵抗できなくなるか熟知している。フェレトに抑え込まれるとディアスは抜け出せない。
 フェレトの、『近くの国で一仕事終えて来て、この国には新しい仕事を探しに来た。』というのも虚偽なら、店の主人の言った、『魔法使いに依頼するような事件などない。』というのも有り得ない。
 <星の塔>から派遣された魔法使いが、消息を絶っているのだ。
「後で説明してやるから、話合わせな。ってか、爪立てんな。」
と、フェレトに、ひそめた声で耳元で囁かれ、ディアスが渋々抵抗をやめると、フェレトはすぐに手を離す。
「猫か、おまえは。」
と、ディアスに引っ掻かれた手の甲を見て眉をひそめている。血が滲むほどではないが、くっきり爪痕が残っているので、そこそこ痛かっただろう。
「だってフェレトさまが。」
と、唇を尖らせたディアスは
「その通り。こんなに愛らしい御令嬢を苛めていれば、どう見ても君が悪人だろう。」
と、かけられた声に、フェレトと同時に振り向いた。

 一言で表すなら武人。
 背中に背負った大剣にふさわしい、堂々たる体躯は、一目で歴戦の勇者と知れる。
 こんな、平和でのどかで大衆的な食堂では浮いている。相当稼いでいるのか、身に着けている物も、高級品だ。指を飾る指輪一つで、庶民なら一年は食べていけそうだ。
 しかし、高価な品が嫌味なく似合う、華やかな容姿の持ち主でもある。長身で、並べばフェレトと同じくらいあるだろう。鍛え抜かれた鋼の筋肉が、服の上からでも存在を主張している。
 漆黒の滝のように、まっすぐに流れ落ちる、艶やかな長い黒髪。同じ色の瞳は切れ長で、濡れたような輝きに、吸い込まれそうな引力がある。
 ひどく目を惹く、迫力の美貌。ただ立っているだけで、圧倒的な存在感を放つ。
 超絶美形のフェレトを見慣れているディアスでさえ、一瞬ぽかんとしたほどだった。突然かけられた声に驚いたのも確かだが。
 復活はフェレトの方が早かった。ニッと警戒心を抱かせない笑みを浮かべ、飄々と言ってのける。
「騒いで悪いな、兄さん。だけど、苛めちゃいねーよ。こいつは、こんな顔して礼儀知らずなんで、これくらいきつく躾けねーと、将来が心配でね。」
「しかし、か弱い乙女に。」
と、生真面目な口調でなおも言う青年に、ディアスがムッとした表情で割って入る。
「男です。ご心配はありがたいのですが、黙って苛められているようなか弱いお嬢様・・・ではないので、ご安心を。」
 口調だけは丁寧だが、声には棘がある。それもたっぷり毒を含んだ棘だ。「余計なお世話だ。とっとと引っ込め。」という本音が透ける。慇懃無礼の見本のような物言いをしたディアスを、フェレトがぺしんと叩く。
「初対面の目上の人間に失礼だろーが。」
「痛っ!フェレトさまに礼儀云々を言われたくないです。だいたい、すぐに暴力に訴えるのはやめてくださいよ!いつも言ってるじゃないですか!」
「おまえだって、オレの手、引っかいたじゃねーか。」
 場所が変わっても、いつもと全く同じやりとりをしていたら、
「ハハハハハハッ!」
と、明るい笑い声が響いた。青年が、楽しそうに笑っている。王侯貴族のような身なりに反して、気取ったところのない笑い声だ。腹の底からこみ上げてくる笑いに身を任せている。
 耳に心地よい、低音楽器のような、重いが柔らかな声。
「いや、これは全く私の勘違いだったようだ。これも何かの縁。名前を聞いてもいいだろうか。私は、カサル・ティリオと言う。」
「フェレト・リウスだ。」
 師に続いて名乗ろうとしたディアスだが、カサルが
「フェレト・リウス?」
と、復唱して息を呑んだので、そのタイミングを失う。
「というと、<星の塔>の<風の賢者>か?」
「へえ。あんたみたいな人に知られているとは、光栄だな。」
 フェレトは白い歯を見せて、気負いなく笑った。

 カサルは、自分も魔法使いだと名乗った。<聖杯の使徒>という魔法使い組合に属しているのだと。<聖杯の使徒>は、<星の塔>とは地理的に離れているので、ほとんど交流はない。しかし、確かな腕前の魔法使いを多数抱えていると評判で、<星の塔>とは、よく言ってライバル、悪く言えば商売敵、ということになる。
「凄腕の傭兵かと思ってたら、ご同業とは驚いたぜ。」
「帯剣は、<聖杯の使徒>の方針だ。魔法のみならず、あらゆる力を尽くして魔族を滅せよ、というのがな。このような辺境の地で、有名な<風の賢者>に会えるなど、望外の喜びだ。」
「あんた、かたっ苦しいな。そんな大層なもんじゃねーよ。」
 フェレトとカサルは、すっかり意気投合してしまい、盛り上がっている。この後、仕事が入っているので、フェレトは流石に酒は頼んでいないが。
「どこにでも横暴な上司というのはいるものだな。」
「そーなんだよ、<元老院>のジジイ共は、救いようがねーほど頭固いんだよ。」
 いつの間にか、上司の愚痴になっている。
 フェレトがカサルと話しこんでいるので、ディアスはちょっと面白くない。しかし、ちょっと放っておかれたくらいで、あからさまに拗ねるのも、構ってほしがる子どもみたいなので態度には出したくない。
 ディアスは、つとめて無表情を保ったまま、出された食事を平らげることに専念する。
 きちんと食事と休養を取ることの大切さは、日頃からフェレトの叩きこまれている。「食うもの食って、ちゃんと寝ろ。でなきゃ、いざって時に力が出せねーよ。それと、背も伸びねーぞ。」と。最後の一言は余計だと、ディアスは言われた時にカチンときたものだが。
 シチューは、根菜も肉も、ごろごろと大きい。どれも、角がなくなり、口に入れたとたんに柔らかくほどけるように、じっくり煮込まれ、味が染みている。オルコスの郷土料理とも言える一皿だ。貧富の差に関係なく好まれる料理なのでーもちろん、王侯貴族に供されるものは、もっと高い食材を使うがーディアスも、幾度となく口にした料理だった。
 懐かしいはずなのだが、それほど美味いとも思わない。今のディアスには、フェレトが作ってくれるスープの方が、ずっと舌に馴染んだ味になっている。流し込むように食べていると
「では、私は先を急ぐので、この辺りで失礼する。また会うことがあれば、貴公とは手合せ願いたいものだ。」
と、カサルが黒髪を揺らして席を立つところだった。フェレトがひらりと手を振る。
「おう。じゃあ、縁があったら、どっかでな。」
 あっさりとしたものだ。ディアスは、口の中のニンジンをあわてて呑みこみ
「道中、お気を付けて。」
と、紋切型の台詞で見送った。

「で、どういうことか、説明してくれますよね、フェレトさま。」
と、ディアスはフェレトに詰め寄った。
 傾きかけた午後の日射し。<星の塔>なら一番気温が高くなり、外にいるだけで倒れそうになる時間帯だが、オルコスでは歩いていても汗が吹き出すようなことはない。日差しは強いが、空気は冷涼に澄んでいて、風には初秋の爽やかさがある。
 城へと続く一本道に、人気はない。フェレトはそれでも、抑えた声で答えた。
「ああ。まず、おかしいのは、この国の住人が魔族の脅威を欠片も感じてねーってことだな。」
「それなのに、王家から<星の塔>に魔族退治の依頼があり、実際に<星の塔>の魔法使いは消息を絶っている…。」
と、ディアスが知っている情報を整理するために声を出す。これも、すぐ隣を歩くフェレトにしか聞こえない声量だ。
「ああ。<黒影翔こくえいしょう>による定期連絡も途絶えたってことだから、何らかのトラブルに見舞われたんだろうな。おそらく、もう…。」
 フェレトは言葉を濁す。危険と隣り合わせの仕事だ。頭では理解しているが、感情の面ではやりきれない。しかし、この依頼を果たすことが、彼らへの供養と割り切り、フェレトは言葉を続けた。
 彼らのためにも、冷静にならなければならない。そしてそれは、必要以上に悲愴になることとも違う。神経を尖らせ続けていても逆効果だ。油断はせず、余裕をもつ。できるだけ日常の、ニュートラルな状態を。
「そこで、オルコス王家から、あらためて<星の塔>に依頼があった。」
「そこで、<元老院>は、フェレトさまを指名したんですよね。」
 と、ディアスが答える。
 小国とは言え、王家からの依頼だ。<星の塔>が派遣した魔法使いたちは、それなりの手練れだろう。それが、全滅。<黒影翔>で<星の塔>に救援を求める暇もなく。
 それなのに、街の住人は魔族の存在も知らない。
「考えられることは、三つだ。」
と、フェレトは指を三本立て、そのうち一本を折る。
「一つ目。王宮から街の住人に、箝口令が出されている。だが、この可能性は低い。」
「どうしてですか?この時期のオルコスは観光で稼いでいるんです。魔族の出現を隠すのは不自然ではないと思います。来る人間の安全を考慮していないので倫理的には許されませんが、この国ではありえます。」
と、祖国に対して辛辣な評価を下すディアス。しかしフェレトは首を横に振る。
「店の親父は、嘘吐いてる様子は無かった。油断してるところで、もう一度、『ここじゃ、仕事もねーんだろ?』って訊いたの覚えてるか?」
「あ。」
と、ディアスは、小さく息を呑む。ようやく、フェレトが口から出まかせばかり言っていた理由がわかった。
(フェレトさまは、オルコスの現状を探っていたのか…!)
 舌を巻く思いだった。最初に、『なんか仕事になりそーな情報ネタはねーか?』と正面切って言われたときは、身構えるから取り繕える。しかし、会話が弾み、その最中に、何気なく入れられた探りの問いに、とぼけきるのは難しい。相手は、演技を生業とする役者でもなければ、人を騙すことに慣れた詐欺師でもない、善良な一般市民だ。
 フェレトは、もう一本指を折る。
「二つ目。魔族の被害は、非常に狭い範囲、それも閉鎖的な場所に出ている。」
「たとえば王宮、ですか?」
 ディアスの菫色の双眸が油断なく光る。フェレトは
「合格。」
と、口角を上げる。ディアスは得意になったが、表情には出さないようにする。フェレトに一言褒められただけで有頂天になる、と悟られるのは癪だった。ただ、フェレトはディアスの心情などお見通しなのか、かすかに含み笑いをされた気がする。
 そのまま、フェレトは最後の指を折った。
「三つ目。魔族の被害は、真っ赤な嘘。この場合、オルコスの王族は、嘘をついてまで、<星の塔>の魔法使いを呼び寄せ、監禁もしくは殺害していることになる。」
「公にできない、後ろ暗い、真の目的があるということですね。」
「ご名答。」
「ここまで説明されてわからなかったら馬鹿ですよ。」
と、ディアスはツンと肩をそびやかす。フェレトとしては、打てば響くように正しい答えが返るこの会話を楽しんでいたのだが。
「ちったあ、素直に喜べ。せっかく褒めてやったんだから。おまえって、ホントに可愛げのねーガキだな。」
「オレは小さい子どもじゃないんで、可愛げなんて必要ありません!」
「小さいじゃねーか。」
 ぐりぐりぐりぐり。
 フェレトに頭を押さえつけられ、ディアスが喚く。
「やめてください!縮む!」
 じたばたもがくディアスを眺め、にーっと、実に楽しそうな、意地の悪い笑みを浮かべるフェレト。
「ああもう、腹が立つ!何食べたらそんなに無駄にでかくなるんですか!?」
 若干、口調が荒くなったディアスが、毛を逆立てた猫のように怒鳴った。
 場所が変わってもいつものやりとりになっていたが、ふいに、フェレトが表情を厳しいものに変えたので、ディアスは戸惑う。
(フェレトさま…?)
 フェレトは、声をひそめた。ほとんど吐息だけで囁く。
「どう転んでも、オルコス王家は一筋縄じゃいかねえ。」
 フェレトが、ディアスの肩をグッとつかんだ。
「おまえが押さえられたら、オレは動けなくなる。それを忘れるな。」
 ディアスの背筋が、自然と伸びた。まっすぐに、フェレトを見上げる。左の耳朶のピアスが、陽光をきらりと反射した。
「はい、フェレトさま。フェレトさまの足を引っ張るような真似は、絶対にしません。」

 城に近づき、城壁塔に立つ見張りの表情まで見える距離になると、フェレトもディアスも依頼に関する話題は口にしなくなった。
 下ろされた跳ね橋までたどり着いたとき。
「あんのお、<星の塔>の魔法使いさまだべかー。」
 訛りのきつい口調と、間延びした声で呼び止められた。城に食糧でも納めに来た農夫かと思いきや、腰に剣をさした騎士の格好をしている。
 ディアスが、胡乱気な表情で見返したせいか、まだ少年の面影を色濃く残す青年は、たじたじとなった。
「すんません。まぁだ城に上がったばっかで…。」
と、照れたように頭をかく。よく見れば、顔立ちそのものは紅顔の美少年だ。柔らかそうな亜麻色の髪が、午後の日射しを浴びて金褐色に光っている。瞳は、アクアマリンのような、淡い水色。見目が良いので、城に召し上げられたのだろうか。
 フェレトは、青い瞳に鋭利な光を宿して、騎士を見据える。
「オレたちは、<星の塔>の魔法使いだ。おまえが案内役か?」
「へえ。キュクロプス殿下のご命令で…あんのお、とりあえず、オレについて来てもらえますかあ?」
 フェレトが軽く頷くと、騎士はほっとした顔で歩き出す。フェレトとディアスは、騎士に続いて城内に入った。
 ディアスにとっては、五年ぶりの王宮だが、自分でも意外なくらい、郷愁を誘うものがない。もともと、城の奥まった一画に封じ込められるようにして育ったので、この城の全てを把握しているわけではない。育った場所以外で覚えがあるのは、逃走経路に使った、下働きの者が使う通路くらいだ。
 だが、それでも、強烈な違和感がある。
(こんなに金がある国だったか?)
 ただの通路、しかも、延々続く廊下に敷かれた、足首が沈むほど毛足の長い臙脂の絨毯。一定の間隔を置いて設置された燭台は、凝った装飾の上、金銀に眩く輝いている。
 時折すれ違う騎士のまとう鎧も、最近開発されたばかりの、軽量で丈夫という高級品だ。
 無意識に眉をひそめていたディアスを、フェレトは横目で見たが、ここで訊く訳にはいかないので、確認は後回しにする。騎士に話を振ってみる。
「キュクロプス殿下つーと、王弟だな?」
「へえ。よく御存じで。どぅも王様は忙しいらしくって、魔法使い様方のお世話は、殿下が引き受けておいでのようで…おらのような、入ったばっかの騎士まで駆り出されているんですわ。あの、粗相があっても許してくんな。ああ、違う違う、許してください。」
 オルコスの王家や、政治経済については一通り調べてある。確か、前王の末子だ。側妃も多かった前王は子が多く、末子であるキュクロプスは、甥にあたる第一王子とそれほど年が離れていない。
 対照的に、現王の子は、第一王子のみ。これには理由がある。
 現王の正妃は、国で最も権力をもつ大臣の娘で、正妃亡き後も、第一王子の外戚として権勢をふるっている。正妃の死には、王にも多大な責任があるため、妻の実家に遠慮してか、正妃の死後、現王は、新しい正妃はおろか、側妃を迎えてもいない。隠された庶子の存在は否定できないが。
 そして。
(ここにも、もう一人、王子さまがいるわけだがな。)
と、フェレトは隣を歩くディアスを見下ろした。
 桃色の唇を、きゅっと真一文字に引き結び、前を見据えて歩くディアスは、いつもよりも雰囲気がピリピリしている。
 それが、単に大きな仕事を控えた緊張ゆえなのか、重い過去につながるこの城にいること自体が負担になっているのかは、流石にわからないが。
 ディアスは、ぽんと、ディアスの肩を軽く叩く。細い肩が、フェレトの掌の下でびくんとはねた。
 反射的に見上げてくる、菫色の瞳に。
(今から緊張してたら、もたねーぞ。肩の力抜け。)
と、笑いかける。
 声に出さずともフェレトの意図は伝わったようで、ディアスは、心を読まれていたことに対する、少し悔しそうな、それでいて励まされたことをはにかむような、複雑な表情を浮かべる。
 そこで、
「ああ、ここです。」
と、騎士は重厚な扉の前で、足を止める。
 神話か伝説の一場面だろうか。精緻なレリーフが施されている。三つ首のドラゴンが、それぞれの首から火を噴いている。それに対峙するのは、騎士…否、勇者というべきか。少年とも青年ともとれる、透明な美貌は、これが稀代の名工の手による作品だと知らしめる。時代を感じさせる鎧に身を包み、大剣を構えて竜に対峙する、美麗にして勇敢な覇者―。
 扉が、音をたてて開いていく。
 待ち受けるものが、何であっても乗り越える。
 隣にフェレトがいれば、ディアスは何も怖くない。
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