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番外編・大学生活編
廃墟に行こう! ワクワクドキドキ☆肝試し
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肝試しがしたい。
部活中にうちの部の先輩が呟いた一言である。
現在大学は長い夏休み期間中だ。学生たちは各々青春を過ごしていることであろう。そんでもってバレー部である私達は汗を流して青春を送っているのだが、その先輩はそれじゃ不満みたいである。
「デートしたとか別荘にいったとかあちこちから聞こえてくるのに、私は部活しか行ってない!」
彼女は満足行く青春を送ってないというのだ。
つい先日、婚約者とその友人とともに別荘へお泊まりに行った自分はなんとも言えなかった。別荘へお泊りしに行ったことはこの先輩には話してないんだけど……他の人から聞かされたのかな?
部長がその人を宥めていたが、彼女の勢いはそのまま。話を聞きつけた男子バレー部の面々が面白がったので、肝試しを実施することになったのである。
場所は街の外れにある廃墟だ。
勝手に入っていいのかなぁと思ったけど、彼らは迷わずずかずかと敷地内に入っていた。私はと言えば、その不気味さに圧されて大仰な門扉の前で立ち止まっていた。
憑依霊である私がビビってんだぞ。絶対にここには何かがあるはずだ…!
「…こんな不気味な場所に、よくも来ようと思ったな…」
「だから無理してこなくていいといったのに」
バレー部一行で来る予定だったのだが、心配した慎悟も一緒にやってきた。高等部時代の合宿で私が後輩からまとわりつかれたって話を男バレの二宮さんに聞かされた慎悟は、私のことが心配でたまらないらしい。他にも人がいるから大丈夫だと言ったのだけどね。
「……おい、今2階の窓の向こうでなにか動かなかったか…?」
「え!? やめてよちょっと」
廃墟を見上げていた慎悟が怖いこと言ってきた。
やめて。肝試し前からビビらせるの。私お化け役でエントリーしてるんだからね。
■□■
歩けば床がミシミシ鳴り響く洋館は、家探しされたかのように荒れていた。私達と同じく肝試しに使う人がいたのか、それとも金目の物を探して荒らしたのか…定かじゃないけど。
「うばぁぁー!!」
「ぎゃあああああ!!」
「ひぃっ」
不気味さも相まってか、私の脅かしにみんな面白いくらい反応してくれる。ただ髪の毛をボサボサにした白いワンピースの女が叫んでいるだけなのにね。
「…そういえば思い出すなぁ」
「?」
肝試し参加者から死角にあたる場所で、その辺にあった椅子に腰掛けていた慎悟が私のボヤキに反応してこっちを見た。
あの時は合宿場だったけど、今と同じく肝試しの脅かし役をしていたのだ。
「高校時代の合宿でも肝試しやったって話したことあるでしょ? 2年以降はお化け役で参加してさ…」
2年の時の私はエリカちゃんに身体を返すこと優先で、自分が成仏するためだけを考えて、ただ前を突っ走っていた。
「実はね、あのインターハイでの救急搬送の少し前から心臓あたりが痛くなったりして、身体に異変は感じていたんだ」
あれはお迎えに来ていた鬼が、私の魂をエリカちゃんの身体から引き剥がすための術みたいなものを施していた影響なんだって地獄で聞かされた。
「本来なら2年の合宿中に私は天に召される予定だったんだよ。実際にお迎えも来ていたんだって」
だけど鬼は思わぬ妨害にあう。
何を隠そう、悪気なくスマホのカメラを回してきた人間によってである。カメラのフラッシュとお清めの塩によって鬼は退散した。それで私のお迎えは延長となったのである。
この話前にも慎悟に話をしたかな。だけどあまりまともに受け取ってくれなかったんだったな。
「あの時二宮さんが写真撮影してなかったら私は今頃ここにはいなかったかも。写真のフラッシュに怯む鬼ってなんだろうね」
私は軽く笑って見せた。
幽霊がカメラのフラッシュに弱いという話はなんとなく聞いたような聞かなかったような気がするが、鬼がそれに弱いって……それってどうなのって思うよね。泣く子も黙る地獄の鬼なのに…威厳はどこ行ったって感じ。
「やめろ」
私はほんの思い出話のつもりで語っていたのだけど、慎悟にとっては笑えなかったみたいである。
私を拘束するように抱きついてくると、ぎゅううと力いっぱい抱きしめてきた。少し苦しい。
「その話は聞きたくない」
「…ごめんて。未だにトラウマってんだね、私のご臨終事件」
更に力が増す。苦しいので慎悟の背中をバシバシ叩いておく。
不気味な洋館。古いからか変な音が時折鳴り響く。外から吹いてくる風が窓を叩いて不気味な音を鳴らす。そんな中で私達の吐息と身じろぐ音が大きく聞こえた。
「…笑さんは遺された側の気持ちを全くわかってない」
「ごめんってば」
慎悟の声はすねていた。
いじめるために言ったわけじゃないのに…弱ったな。首にグリグリ頭を擦り付けられてくすぐったい。甘えっ子モードに変わった慎悟。肝試し中なんだけどと引き離したらご機嫌を損ねてしまうだろうか。
慎悟の背中や頭を撫でて宥めていると、慎悟がおもむろにキスをしてきた。軽いキスならいいかなと受け入れていると、慎悟の手の動きが危うくなってきた。なんとスカートの上からお尻を揉み始めたのである。
少し前から思っていたが、尻フェチかこいつ。
「だ、めだって、人が来るかもしれないでしょ」
吸血鬼のように首筋に噛み付き、吸い付いてくる噛みつき魔は、私の言葉を聞こえないふりして不埒な真似をする。
肝試しが終わるまで我慢できないのかこのお坊ちゃんは。全くもう…
今日は夜になっても暑さが引かなかった。じっとりした暑さ。今夜も熱帯夜だとお天気キャスターが言っていた。
しかし何かがおかしい。
この洋館は冷房どころか電気が走ってないからそれなりに暑いはず……こうして身体を密着させると汗をかいて暑さを感じるはずなのに、なぜか汗をかかない…
…妙に涼しいのだ。
「……なんか寒くない?」
私の問いかけにうーんと生返事する慎悟。
…聞いてないね。こら、スカートに手を突っ込もうとするんじゃないよ。
いやらしく太ももを撫でつける慎悟の手を抑え込もうとしていると、目の端をフッと黒い影がよぎった気がした。
「……?」
私が顔を上げると、黒い影。
慎悟の後ろに黒い人影が見えた気がした。
それはこちらに向かって手を伸ばしており、なんだか……
──パシャパシャリッ
突然浴びせられたフラッシュ。私は光に驚いて目をぎゅっと閉じた。
「こらー。こんなとこでイチャついたら駄目だぞー?」
……二宮さんである。おばけ役姿の彼はスマホを掲げてニコニコと笑っていた。
「…空気読んでくださいよ」
突然の妨害に慎悟はムスッとしていた。
いやいや、今のはあんたが悪いよ。こんな場所でおっぱじめようとしてとんでもない坊っちゃんである。
「そんな事言われてもー…。肝試し終わったから戻ろー」
二宮さんは肝試し終了のお知らせに来てくれたみたいだ。もうそんなに時間が経っていたのか。思ったより早かったな。
「ふたりともいちゃついて仕事してなかったでしょー」
言葉では注意しているが、二宮さんはニヤニヤしてからかう気満々である。私は慌てて慎悟から離れる。慎悟が不満そうな顔をしているが、知らんぷりである。
「坊っちゃんってドライに見えるけど、結構肉食だねぇ…」
「変な想像しないでもらえますか。あと俺は加納です」
あいかわらず二宮さんに懐かない慎悟は反抗的な態度を取っている。二宮さんはその態度に気を悪くするわけじゃないからいいだろうけど、先輩にケンカ売ってたら変に絡まれるよあんた。
私達は廃墟の階段をゆっくり降りる。出口に近づくにつれ、湿気と熱気がムワッと襲ってくる。……2階部分は冷房がかかってるかのように涼しかったのに。
……少し冷静になってから思い出した。さっきの黒い影は何だったんだろう。慎悟に向かっていたように思える。
「うわ、なにこれ! 坊っちゃんの背中になんか映ってるよ!」
ロビーに降り立った二宮さんが何やらひとり騒ぎ始めた。彼の手元にはスマホ。そういえばさっきこの人連写モードで私達を抜き打ち撮影していたな。
「写真撮ってたら変なの映ってたんだよ。みる?」
二宮さんはそう言って私達にスマホ画面を見せてきた。
一枚目にはいちゃつく私達が映っているのだが、加えて慎悟の背後へ黒い影が映っていた。それは慎悟や私の影ではない。別のなにかである。
二枚目ではぼやけた姿の何者かが黒い影の腕を掴んでる風の写真。そのシルエット…着物姿に見えるこれは……ぼやけているけど私にはわかるぞ。お迎え鬼だ!!
「2年前にも同じことあったよねー。エリカちゃんの後ろに背後霊みたいなのがスマホカメラに映ってさ。その直後インハイで救急車騒ぎになったでしょ? アレって死神だったのかな?」
「似たようなものですけど、あの人もお仕事だったので…」
「え?」
近からずも遠からずである。
慎悟が微妙な顔をしてその写真を見つめている。気持ち悪いからこの写真消していいかと二宮さんに確認していた。
多分恐らく、二枚目はこの廃墟に居着いた幽霊をお迎えに来た地獄の鬼なんじゃないかなって思う。なぜその幽霊がこっちに手を伸ばしていたかは知らないけど、夏だし、廃墟だし、肝試しだしなんでもありだよね。
二宮さんって無意識にそういうの察知する能力でもあるのかな…偶然が怖いよ。
とりあえず塩を近くのコンビニで購入して身体全体に振っておく。慎悟にも念入りに振り掛けておいた。洋服の中にまで塩が入ってきたと文句を言っていたが、これはお清めだ。我慢しろ。
肝試し、別の意味で涼しくなった気がするぞ。
部活中にうちの部の先輩が呟いた一言である。
現在大学は長い夏休み期間中だ。学生たちは各々青春を過ごしていることであろう。そんでもってバレー部である私達は汗を流して青春を送っているのだが、その先輩はそれじゃ不満みたいである。
「デートしたとか別荘にいったとかあちこちから聞こえてくるのに、私は部活しか行ってない!」
彼女は満足行く青春を送ってないというのだ。
つい先日、婚約者とその友人とともに別荘へお泊まりに行った自分はなんとも言えなかった。別荘へお泊りしに行ったことはこの先輩には話してないんだけど……他の人から聞かされたのかな?
部長がその人を宥めていたが、彼女の勢いはそのまま。話を聞きつけた男子バレー部の面々が面白がったので、肝試しを実施することになったのである。
場所は街の外れにある廃墟だ。
勝手に入っていいのかなぁと思ったけど、彼らは迷わずずかずかと敷地内に入っていた。私はと言えば、その不気味さに圧されて大仰な門扉の前で立ち止まっていた。
憑依霊である私がビビってんだぞ。絶対にここには何かがあるはずだ…!
「…こんな不気味な場所に、よくも来ようと思ったな…」
「だから無理してこなくていいといったのに」
バレー部一行で来る予定だったのだが、心配した慎悟も一緒にやってきた。高等部時代の合宿で私が後輩からまとわりつかれたって話を男バレの二宮さんに聞かされた慎悟は、私のことが心配でたまらないらしい。他にも人がいるから大丈夫だと言ったのだけどね。
「……おい、今2階の窓の向こうでなにか動かなかったか…?」
「え!? やめてよちょっと」
廃墟を見上げていた慎悟が怖いこと言ってきた。
やめて。肝試し前からビビらせるの。私お化け役でエントリーしてるんだからね。
■□■
歩けば床がミシミシ鳴り響く洋館は、家探しされたかのように荒れていた。私達と同じく肝試しに使う人がいたのか、それとも金目の物を探して荒らしたのか…定かじゃないけど。
「うばぁぁー!!」
「ぎゃあああああ!!」
「ひぃっ」
不気味さも相まってか、私の脅かしにみんな面白いくらい反応してくれる。ただ髪の毛をボサボサにした白いワンピースの女が叫んでいるだけなのにね。
「…そういえば思い出すなぁ」
「?」
肝試し参加者から死角にあたる場所で、その辺にあった椅子に腰掛けていた慎悟が私のボヤキに反応してこっちを見た。
あの時は合宿場だったけど、今と同じく肝試しの脅かし役をしていたのだ。
「高校時代の合宿でも肝試しやったって話したことあるでしょ? 2年以降はお化け役で参加してさ…」
2年の時の私はエリカちゃんに身体を返すこと優先で、自分が成仏するためだけを考えて、ただ前を突っ走っていた。
「実はね、あのインターハイでの救急搬送の少し前から心臓あたりが痛くなったりして、身体に異変は感じていたんだ」
あれはお迎えに来ていた鬼が、私の魂をエリカちゃんの身体から引き剥がすための術みたいなものを施していた影響なんだって地獄で聞かされた。
「本来なら2年の合宿中に私は天に召される予定だったんだよ。実際にお迎えも来ていたんだって」
だけど鬼は思わぬ妨害にあう。
何を隠そう、悪気なくスマホのカメラを回してきた人間によってである。カメラのフラッシュとお清めの塩によって鬼は退散した。それで私のお迎えは延長となったのである。
この話前にも慎悟に話をしたかな。だけどあまりまともに受け取ってくれなかったんだったな。
「あの時二宮さんが写真撮影してなかったら私は今頃ここにはいなかったかも。写真のフラッシュに怯む鬼ってなんだろうね」
私は軽く笑って見せた。
幽霊がカメラのフラッシュに弱いという話はなんとなく聞いたような聞かなかったような気がするが、鬼がそれに弱いって……それってどうなのって思うよね。泣く子も黙る地獄の鬼なのに…威厳はどこ行ったって感じ。
「やめろ」
私はほんの思い出話のつもりで語っていたのだけど、慎悟にとっては笑えなかったみたいである。
私を拘束するように抱きついてくると、ぎゅううと力いっぱい抱きしめてきた。少し苦しい。
「その話は聞きたくない」
「…ごめんて。未だにトラウマってんだね、私のご臨終事件」
更に力が増す。苦しいので慎悟の背中をバシバシ叩いておく。
不気味な洋館。古いからか変な音が時折鳴り響く。外から吹いてくる風が窓を叩いて不気味な音を鳴らす。そんな中で私達の吐息と身じろぐ音が大きく聞こえた。
「…笑さんは遺された側の気持ちを全くわかってない」
「ごめんってば」
慎悟の声はすねていた。
いじめるために言ったわけじゃないのに…弱ったな。首にグリグリ頭を擦り付けられてくすぐったい。甘えっ子モードに変わった慎悟。肝試し中なんだけどと引き離したらご機嫌を損ねてしまうだろうか。
慎悟の背中や頭を撫でて宥めていると、慎悟がおもむろにキスをしてきた。軽いキスならいいかなと受け入れていると、慎悟の手の動きが危うくなってきた。なんとスカートの上からお尻を揉み始めたのである。
少し前から思っていたが、尻フェチかこいつ。
「だ、めだって、人が来るかもしれないでしょ」
吸血鬼のように首筋に噛み付き、吸い付いてくる噛みつき魔は、私の言葉を聞こえないふりして不埒な真似をする。
肝試しが終わるまで我慢できないのかこのお坊ちゃんは。全くもう…
今日は夜になっても暑さが引かなかった。じっとりした暑さ。今夜も熱帯夜だとお天気キャスターが言っていた。
しかし何かがおかしい。
この洋館は冷房どころか電気が走ってないからそれなりに暑いはず……こうして身体を密着させると汗をかいて暑さを感じるはずなのに、なぜか汗をかかない…
…妙に涼しいのだ。
「……なんか寒くない?」
私の問いかけにうーんと生返事する慎悟。
…聞いてないね。こら、スカートに手を突っ込もうとするんじゃないよ。
いやらしく太ももを撫でつける慎悟の手を抑え込もうとしていると、目の端をフッと黒い影がよぎった気がした。
「……?」
私が顔を上げると、黒い影。
慎悟の後ろに黒い人影が見えた気がした。
それはこちらに向かって手を伸ばしており、なんだか……
──パシャパシャリッ
突然浴びせられたフラッシュ。私は光に驚いて目をぎゅっと閉じた。
「こらー。こんなとこでイチャついたら駄目だぞー?」
……二宮さんである。おばけ役姿の彼はスマホを掲げてニコニコと笑っていた。
「…空気読んでくださいよ」
突然の妨害に慎悟はムスッとしていた。
いやいや、今のはあんたが悪いよ。こんな場所でおっぱじめようとしてとんでもない坊っちゃんである。
「そんな事言われてもー…。肝試し終わったから戻ろー」
二宮さんは肝試し終了のお知らせに来てくれたみたいだ。もうそんなに時間が経っていたのか。思ったより早かったな。
「ふたりともいちゃついて仕事してなかったでしょー」
言葉では注意しているが、二宮さんはニヤニヤしてからかう気満々である。私は慌てて慎悟から離れる。慎悟が不満そうな顔をしているが、知らんぷりである。
「坊っちゃんってドライに見えるけど、結構肉食だねぇ…」
「変な想像しないでもらえますか。あと俺は加納です」
あいかわらず二宮さんに懐かない慎悟は反抗的な態度を取っている。二宮さんはその態度に気を悪くするわけじゃないからいいだろうけど、先輩にケンカ売ってたら変に絡まれるよあんた。
私達は廃墟の階段をゆっくり降りる。出口に近づくにつれ、湿気と熱気がムワッと襲ってくる。……2階部分は冷房がかかってるかのように涼しかったのに。
……少し冷静になってから思い出した。さっきの黒い影は何だったんだろう。慎悟に向かっていたように思える。
「うわ、なにこれ! 坊っちゃんの背中になんか映ってるよ!」
ロビーに降り立った二宮さんが何やらひとり騒ぎ始めた。彼の手元にはスマホ。そういえばさっきこの人連写モードで私達を抜き打ち撮影していたな。
「写真撮ってたら変なの映ってたんだよ。みる?」
二宮さんはそう言って私達にスマホ画面を見せてきた。
一枚目にはいちゃつく私達が映っているのだが、加えて慎悟の背後へ黒い影が映っていた。それは慎悟や私の影ではない。別のなにかである。
二枚目ではぼやけた姿の何者かが黒い影の腕を掴んでる風の写真。そのシルエット…着物姿に見えるこれは……ぼやけているけど私にはわかるぞ。お迎え鬼だ!!
「2年前にも同じことあったよねー。エリカちゃんの後ろに背後霊みたいなのがスマホカメラに映ってさ。その直後インハイで救急車騒ぎになったでしょ? アレって死神だったのかな?」
「似たようなものですけど、あの人もお仕事だったので…」
「え?」
近からずも遠からずである。
慎悟が微妙な顔をしてその写真を見つめている。気持ち悪いからこの写真消していいかと二宮さんに確認していた。
多分恐らく、二枚目はこの廃墟に居着いた幽霊をお迎えに来た地獄の鬼なんじゃないかなって思う。なぜその幽霊がこっちに手を伸ばしていたかは知らないけど、夏だし、廃墟だし、肝試しだしなんでもありだよね。
二宮さんって無意識にそういうの察知する能力でもあるのかな…偶然が怖いよ。
とりあえず塩を近くのコンビニで購入して身体全体に振っておく。慎悟にも念入りに振り掛けておいた。洋服の中にまで塩が入ってきたと文句を言っていたが、これはお清めだ。我慢しろ。
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