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番外編・大学生活編
成り上がりを目論む男【三人称視点】
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一人の男性がスッと横を通ると、彼を目で追う女性社員が色めき立つ。
「瀬戸さんだわ、素敵…」
「海外事業部に移動したんでしょう?」
「うちの会社で一番の有望株なんじゃない?」
「彼女いるのかしら…」
憧れに満ちたその視線、褒め称える言葉。それに男の唇は弧を描いた。彼は絵に描いたようなエリートだった。高身長高学歴高収入。そんでもっていつも自信に満ちた彼は28歳独身だ。女性陣のあこがれの的であった。
彼は上昇志向の持ち主で、成り上がることを目的としていた。人当たりも良く、優秀な彼は、将来絶対に一角の人物になるのだと希望に満ちていた。
そんな彼に引き寄せられる女性は後を絶たず、自分の武器を使っていろんな女性を落としてきた。これだけの条件を持っていれば、安定を求める女性はすぐに身体を開いた。男にとって女性はちょろい生き物。結婚をちらつかせれば、すぐに股を開く頭の弱い存在に過ぎなかった。
取引先の上役の娘を射とめたり、秘書課の花形と夜の街へ繰り出したり、総務課の可愛いあの子を車内で口説いたり……。
決して誠実ではない人間なのだが、仕事はできた。上司からの覚えも良い。仕事関係では信頼されていた。その上こういう遊びごとを隠すのがうまかったので、上司含め周りの人間は彼という人間を過剰評価していた。
彼はある日言っていた。
遊び相手の一人である、同じ会社の受付嬢の服を乱しながら楽しそうに、虎視眈々とした目をしてこう言った。
「今度、社長の娘が社会勉強とか言ってうちに来ることになったんだ。俺はその案内役を任されたんだけどよ…。所詮世間知らずのお嬢様のお遊びだ……みてろよ、俺は成り上がるぜ」
これからってときに他の異性の話をするのはかなり最低なことである。
ここは繁華街にあるホテル。彼らはいつもここで逢引をしているのだが、見事いいムードをぶち壊しにしたのだ。さすがに相手の女性も不満そうな表情を浮かべていた。
「ひどい! 今は私と一緒にいるのに!」
不快であると訴えた女性が男の手を振り払って今しがた寝転んでいたベッドから起き上がろうとすると、それを阻止するかのように男が唇を塞いだ。
「そんなに怒るなよ…よく考えてみろって。お嬢様を惚れさせて、社長に取り入ってもらえば俺は出世できるかもしれない」
「…私と、いつ結婚してくれるの…?」
男は女性の切実なる訴えに目を細めると、何も言わずに彼女の首に吸い付いた。
男はずるい男だった。
自分のためなら何人もの女性を裏切ろうと利用しようと全く胸が痛まなかった。
腕に抱く女はただの性欲処理相手。今年の新入社員の中で一番可愛かったから声を掛けただけだ。若さと可愛さしか取り柄のない女に飽き始めていた男は自らの欲を吐き出す為だけに腰を振り、事後には甘える女の手を冷たくあしらっていた。
女性のことを全く大切にしない男だがモテた。男が女を容姿で見ているのと同時に、女性側も男を経済力で見ているからだ。彼にとって性行為は自分の欲を発散するための行為に過ぎない。相手の気持ちはどうでも良かった。
「ね、もっかいしよ? 今度は私がシてあげる…」
甘えた声を出して上に乗り上がる女を無感動に見上げた男は冷めた目をしていた。
今の男は、社長令嬢をどう落とすかそれで頭がいっぱいなのだ。今現在女子大生だという社長令嬢。二階堂グループ創業者の孫娘……社会を知らない、酸いも甘いも知らない小娘なら簡単に落とせると男は謎の自信を持っていた。
絶対に落とす。相手によっては結婚も考えていい。いいところのお嬢様なら女遊びにも寛容だろきっと。
…と、ニヤリほくそ笑んでいるが、男は知らない。
令嬢には相思相愛の婚約者がいることを。
令嬢の中の人が日々バレーに没頭する脳筋であることを知らずに…
「瀬戸さんだわ、素敵…」
「海外事業部に移動したんでしょう?」
「うちの会社で一番の有望株なんじゃない?」
「彼女いるのかしら…」
憧れに満ちたその視線、褒め称える言葉。それに男の唇は弧を描いた。彼は絵に描いたようなエリートだった。高身長高学歴高収入。そんでもっていつも自信に満ちた彼は28歳独身だ。女性陣のあこがれの的であった。
彼は上昇志向の持ち主で、成り上がることを目的としていた。人当たりも良く、優秀な彼は、将来絶対に一角の人物になるのだと希望に満ちていた。
そんな彼に引き寄せられる女性は後を絶たず、自分の武器を使っていろんな女性を落としてきた。これだけの条件を持っていれば、安定を求める女性はすぐに身体を開いた。男にとって女性はちょろい生き物。結婚をちらつかせれば、すぐに股を開く頭の弱い存在に過ぎなかった。
取引先の上役の娘を射とめたり、秘書課の花形と夜の街へ繰り出したり、総務課の可愛いあの子を車内で口説いたり……。
決して誠実ではない人間なのだが、仕事はできた。上司からの覚えも良い。仕事関係では信頼されていた。その上こういう遊びごとを隠すのがうまかったので、上司含め周りの人間は彼という人間を過剰評価していた。
彼はある日言っていた。
遊び相手の一人である、同じ会社の受付嬢の服を乱しながら楽しそうに、虎視眈々とした目をしてこう言った。
「今度、社長の娘が社会勉強とか言ってうちに来ることになったんだ。俺はその案内役を任されたんだけどよ…。所詮世間知らずのお嬢様のお遊びだ……みてろよ、俺は成り上がるぜ」
これからってときに他の異性の話をするのはかなり最低なことである。
ここは繁華街にあるホテル。彼らはいつもここで逢引をしているのだが、見事いいムードをぶち壊しにしたのだ。さすがに相手の女性も不満そうな表情を浮かべていた。
「ひどい! 今は私と一緒にいるのに!」
不快であると訴えた女性が男の手を振り払って今しがた寝転んでいたベッドから起き上がろうとすると、それを阻止するかのように男が唇を塞いだ。
「そんなに怒るなよ…よく考えてみろって。お嬢様を惚れさせて、社長に取り入ってもらえば俺は出世できるかもしれない」
「…私と、いつ結婚してくれるの…?」
男は女性の切実なる訴えに目を細めると、何も言わずに彼女の首に吸い付いた。
男はずるい男だった。
自分のためなら何人もの女性を裏切ろうと利用しようと全く胸が痛まなかった。
腕に抱く女はただの性欲処理相手。今年の新入社員の中で一番可愛かったから声を掛けただけだ。若さと可愛さしか取り柄のない女に飽き始めていた男は自らの欲を吐き出す為だけに腰を振り、事後には甘える女の手を冷たくあしらっていた。
女性のことを全く大切にしない男だがモテた。男が女を容姿で見ているのと同時に、女性側も男を経済力で見ているからだ。彼にとって性行為は自分の欲を発散するための行為に過ぎない。相手の気持ちはどうでも良かった。
「ね、もっかいしよ? 今度は私がシてあげる…」
甘えた声を出して上に乗り上がる女を無感動に見上げた男は冷めた目をしていた。
今の男は、社長令嬢をどう落とすかそれで頭がいっぱいなのだ。今現在女子大生だという社長令嬢。二階堂グループ創業者の孫娘……社会を知らない、酸いも甘いも知らない小娘なら簡単に落とせると男は謎の自信を持っていた。
絶対に落とす。相手によっては結婚も考えていい。いいところのお嬢様なら女遊びにも寛容だろきっと。
…と、ニヤリほくそ笑んでいるが、男は知らない。
令嬢には相思相愛の婚約者がいることを。
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