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番外編・大学生活編
どうも、社会勉強とスパイに来ました。
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現在、英学院大学部の経営学部で色々学んでいる私ではあるが、机の上で習っているだけじゃ実際の会社の仕組みや業務の流れはイメージできなかった。あ、私の頭がアホとかそういうのは置いといての話ね?
いくら私が慎悟の元にお嫁に行くお約束をしているとはいえ、私かて今は二階堂の娘なのだ。今までお世話になった分、私もなにか恩返しがしたいと考えていた。大学卒業した後、私もお仕事という形でパパママを助けてあげたいのだ。
そんなわけで私はパパママが働く会社を一度見学してみたいとお願いしてみた。ざっと会社の内部を見てみたら意識が変わるかもしれないじゃない。
パパママの会社の場所や業種は知っていたけど、実際に会社の中に入ったのは初めてだ。エリカちゃんも来たことないって言っていた。
しかしお忙しい中見学させてもらうのに、社長令嬢が来たと言われたら従業員も気を遣うであろう。なので私は事前にお願いしておいた。
令嬢であることは伏せておいてほしい。と。
令嬢と言ったら業務中断して接待されそうな気がするので、それだけはやめてほしかった。こっちは自然な仕事風景をみてみたかっただけなので。
ただ、案内役の人には話してしまったとのことだったので、そこは仕方ないので諦めた。
会社に到着すると、パパがお出迎えしてくれた。
「じゃあ瀬戸くん、よろしく頼むよ」
「今日はよろしくお願いします」
「お任せください。お嬢様」
ピシィッとスーツで決めた男性がかしこまってお辞儀してきた。そこまでしなくていいんですが…だけど社員からしてみたらかしこまっちゃうものなのかな。
会社案内してくれるのは海外事業部の人なんだって。何だってそんな部署の人が私を案内するのかと思ったけど、この人もともと営業部にもいて、社内でも顔が広いからとパパが教えてくれた。
「帰りに迎えに行くから、見学が終わったら下のカフェで待っててね」
「うん、わかった。お仕事頑張ってね」
パパと別れたあと、私は受付で入場許可証の手続きを取った。
「あの、本日見学のお約束をしていたものですが…」
受付にいたお姉さんに声をかけると、彼女はぎょろりと目を動かした。その目の怖さに私はぎくりと身をこわばらせる。
「…そこに記名しておいてください」
素っ気ない対応である。
え、受付嬢って会社の顔だよね? こんなんでいいの? こわっ、受付嬢態度悪っ。
なに、私が大学生だからナメられてるの? エリカちゃんの可憐な雰囲気を見て、何しても平気と油断してるのかな。
カウンターに放り投げるように、【Visiter】と書かれた名札を渡される。最悪な応対である。これパパたちに言っとかなきゃ。
ちらりと後ろを振り返ると……こっち睨んでるし。可愛い顔が台無しである。
「ご存知かと思いますが、今年度は過去1位2位を超える収益を見越しておりまして、今後海外にも事業を広げるという話が持ち上がっています。」
私がもやもやしているとは知らないであろう、案内役の瀬戸さんはぺらぺら演説のように会社説明している。
そして何故か自然な動作でさわっと腰を掴まれ、私はぎょっとする。
「ありがたいことに、営業部から転属という形で、私もそのプロジェクトに参加することになりました」
ニコニコと愛想よく説明してくれるのは良いけど、距離が近いな。セクハラだぞ。
「…そうなんですか。あの、歩きにくいので離れていただけますか?」
私は引き攣りそうになる顔面をなんとか笑顔で固めて、素早く距離をとった。エレベーター内なので逃げる場所がないのが痛い。
…あの、私一応二階堂家の令嬢やってまして……あまりにも失礼ですよ?
「お嬢様は男慣れしておられないのですね」
にこりと爽やかに笑う瀬戸さん。私はなんだか嫌な感じを受けた。なんだろう、うまく説明できないが…野生的勘がそう訴えているのさ。
一定の距離を保ったまま会社案内をしてもらうが、気づかないうちに肩を抱かれていたりしてすごく困る。その都度断るの疲れるんですけどね。…私が恥じらっているように見えるのか? 嫌がっているんですけど。
「お噂はお聞きしておりましたが、本当にお綺麗でいらっしゃる。社長もご自慢でしょうね」
「…ありがとうございます」
褒められたのでとりあえずお礼を言っておく。
まさか可憐なエリカちゃんに一目惚れ…? と思って瀬戸さんを見上げるが、彼の瞳は違う。私のことが大好きな愛しの婚約者のような熱を持った瞳じゃない。…んーじゃあ、逆玉狙いかな?
パパとママが働く会社だったから色々期待していたけど、私は序盤からもうすでに疲れていた。
受付嬢から始まり、案内役の距離なし。
その後も総務部で足止め食らった挙げ句に、瀬戸さんに気があるっぽい女子社員に押しのけられたり、秘書課らしきお綺麗どころに肩ドンされたり。
まるで大学で加納ガールズに妨害されているときのことを思い出すよ……いや、慎悟は私を庇ってくれるからまだマシだ。この瀬戸さんは「はっはっはー困ったなぁ」って感じで笑ってみているだけ。なんだその【俺モテて困ってるんです】アピール。
周りにいる女性はどれも美人揃い。彼女らは口々に「瀬戸さんにどこどこへ連れて行ってもらった」「今度どこへ行きましょう」と競い合うように誘っている。これが来る者拒まず。……大人って汚いなぁ…って思っちゃった。
慎悟が硬派な性格じゃなかったらこんな感じなのかなとちょっとドン引きした。普通に業務時間内にする話じゃないと思うんですが。
「なぁに? この子」
「会社見学に来た子だよ。あまりいじめないでやってよ」
……女性陣は私を邪魔者とばかりにきつく睨みつけてきては排除しようとする。
その人達の社員証の名前をちらっと確認した私はメモ代わりに持ってきたノートの片隅にメモをする。
──ごめん、パパママ。きついこと言っちゃうけど、お宅の社員はどういう教育を受けていらっしゃるの!? 働いたことのない小娘が言うのも何だけど、あまりにもひどすぎないか!?
私はイビられるために会社見学に来たんじゃないのよ。もしかしてインターンに来た学生にも同じことしてんじゃないでしょうね!? 会社のイメージ低下にもつながっちゃうでしょうが! パパに報告しますからね!
そんな感じでなかなか先へ進めず、いっそ瀬戸さんを置いて一人で見学しようかなと思った。
ただ私は会社見学に来ただけなのに、これからどうなることかと思ったが、全員が全員おかしな人ってわけでなかった。
次にお邪魔した経理課のお姉さんは普通に応対してくれた。お仕事のお邪魔にならないように観察していたんだけど、気を遣われたのかここで行っている業務を簡単に説明してくれたの。
そう、これでいいの。私は経理のお姉さんの普通な応対に感動した。
すごい歓待されたいわけじゃない。ごく普通の淡々とした対応に私は感激したのだ。決してこんなところで加納ガールズの亜種に会いたかったわけじゃないんだよ…!
なんだかじんわりと鼻の奥がしびれた気がした。
「今は計算用ソフトが進化したのでだいぶ楽になりましたが、それでも簿記の資格があったほうがいいかなと思います」
「そうなんですねぇ…」
確かに便利になったからって機械任せじゃ駄目だな。できることなら扱う人にも専門知識があったほうがいい。
「お次は海外事業部に参りましょうか。地味な経理課よりももっと面白いお話があるんです」
私はまだお話を聞いている途中なのだが、瀬戸さんが次へと急かしてくる。時間の問題があるのかもしれないが、時間ロスしたのはここの女性社員が瀬戸さんを囲んでおしゃべりしていたからだからね。
「すみません、いまこちらの方に話聞いてるので、もう少し待っていてもらえますか」
しかしこの人は要らん一言を言うなぁ。経理の人に恨み買ったらあとが怖いんじゃない? のちのち融通効かせてもらえなくなるぞ。
経理課で色々お話を聞いて満足できた私はお世話になったお姉さんにお仕事の邪魔をしたことを詫び、お礼を言ってその場を後にした。
隣で自慢話をぺらぺら話す瀬戸さんの話を聞き流しながら向かう先は海外事業部。
興味ないと言ったらあれだけど、瀬戸さんの自慢話を聞いてあげなきゃいけないのかなと少々うんざりしてしまったのである。
いくら私が慎悟の元にお嫁に行くお約束をしているとはいえ、私かて今は二階堂の娘なのだ。今までお世話になった分、私もなにか恩返しがしたいと考えていた。大学卒業した後、私もお仕事という形でパパママを助けてあげたいのだ。
そんなわけで私はパパママが働く会社を一度見学してみたいとお願いしてみた。ざっと会社の内部を見てみたら意識が変わるかもしれないじゃない。
パパママの会社の場所や業種は知っていたけど、実際に会社の中に入ったのは初めてだ。エリカちゃんも来たことないって言っていた。
しかしお忙しい中見学させてもらうのに、社長令嬢が来たと言われたら従業員も気を遣うであろう。なので私は事前にお願いしておいた。
令嬢であることは伏せておいてほしい。と。
令嬢と言ったら業務中断して接待されそうな気がするので、それだけはやめてほしかった。こっちは自然な仕事風景をみてみたかっただけなので。
ただ、案内役の人には話してしまったとのことだったので、そこは仕方ないので諦めた。
会社に到着すると、パパがお出迎えしてくれた。
「じゃあ瀬戸くん、よろしく頼むよ」
「今日はよろしくお願いします」
「お任せください。お嬢様」
ピシィッとスーツで決めた男性がかしこまってお辞儀してきた。そこまでしなくていいんですが…だけど社員からしてみたらかしこまっちゃうものなのかな。
会社案内してくれるのは海外事業部の人なんだって。何だってそんな部署の人が私を案内するのかと思ったけど、この人もともと営業部にもいて、社内でも顔が広いからとパパが教えてくれた。
「帰りに迎えに行くから、見学が終わったら下のカフェで待っててね」
「うん、わかった。お仕事頑張ってね」
パパと別れたあと、私は受付で入場許可証の手続きを取った。
「あの、本日見学のお約束をしていたものですが…」
受付にいたお姉さんに声をかけると、彼女はぎょろりと目を動かした。その目の怖さに私はぎくりと身をこわばらせる。
「…そこに記名しておいてください」
素っ気ない対応である。
え、受付嬢って会社の顔だよね? こんなんでいいの? こわっ、受付嬢態度悪っ。
なに、私が大学生だからナメられてるの? エリカちゃんの可憐な雰囲気を見て、何しても平気と油断してるのかな。
カウンターに放り投げるように、【Visiter】と書かれた名札を渡される。最悪な応対である。これパパたちに言っとかなきゃ。
ちらりと後ろを振り返ると……こっち睨んでるし。可愛い顔が台無しである。
「ご存知かと思いますが、今年度は過去1位2位を超える収益を見越しておりまして、今後海外にも事業を広げるという話が持ち上がっています。」
私がもやもやしているとは知らないであろう、案内役の瀬戸さんはぺらぺら演説のように会社説明している。
そして何故か自然な動作でさわっと腰を掴まれ、私はぎょっとする。
「ありがたいことに、営業部から転属という形で、私もそのプロジェクトに参加することになりました」
ニコニコと愛想よく説明してくれるのは良いけど、距離が近いな。セクハラだぞ。
「…そうなんですか。あの、歩きにくいので離れていただけますか?」
私は引き攣りそうになる顔面をなんとか笑顔で固めて、素早く距離をとった。エレベーター内なので逃げる場所がないのが痛い。
…あの、私一応二階堂家の令嬢やってまして……あまりにも失礼ですよ?
「お嬢様は男慣れしておられないのですね」
にこりと爽やかに笑う瀬戸さん。私はなんだか嫌な感じを受けた。なんだろう、うまく説明できないが…野生的勘がそう訴えているのさ。
一定の距離を保ったまま会社案内をしてもらうが、気づかないうちに肩を抱かれていたりしてすごく困る。その都度断るの疲れるんですけどね。…私が恥じらっているように見えるのか? 嫌がっているんですけど。
「お噂はお聞きしておりましたが、本当にお綺麗でいらっしゃる。社長もご自慢でしょうね」
「…ありがとうございます」
褒められたのでとりあえずお礼を言っておく。
まさか可憐なエリカちゃんに一目惚れ…? と思って瀬戸さんを見上げるが、彼の瞳は違う。私のことが大好きな愛しの婚約者のような熱を持った瞳じゃない。…んーじゃあ、逆玉狙いかな?
パパとママが働く会社だったから色々期待していたけど、私は序盤からもうすでに疲れていた。
受付嬢から始まり、案内役の距離なし。
その後も総務部で足止め食らった挙げ句に、瀬戸さんに気があるっぽい女子社員に押しのけられたり、秘書課らしきお綺麗どころに肩ドンされたり。
まるで大学で加納ガールズに妨害されているときのことを思い出すよ……いや、慎悟は私を庇ってくれるからまだマシだ。この瀬戸さんは「はっはっはー困ったなぁ」って感じで笑ってみているだけ。なんだその【俺モテて困ってるんです】アピール。
周りにいる女性はどれも美人揃い。彼女らは口々に「瀬戸さんにどこどこへ連れて行ってもらった」「今度どこへ行きましょう」と競い合うように誘っている。これが来る者拒まず。……大人って汚いなぁ…って思っちゃった。
慎悟が硬派な性格じゃなかったらこんな感じなのかなとちょっとドン引きした。普通に業務時間内にする話じゃないと思うんですが。
「なぁに? この子」
「会社見学に来た子だよ。あまりいじめないでやってよ」
……女性陣は私を邪魔者とばかりにきつく睨みつけてきては排除しようとする。
その人達の社員証の名前をちらっと確認した私はメモ代わりに持ってきたノートの片隅にメモをする。
──ごめん、パパママ。きついこと言っちゃうけど、お宅の社員はどういう教育を受けていらっしゃるの!? 働いたことのない小娘が言うのも何だけど、あまりにもひどすぎないか!?
私はイビられるために会社見学に来たんじゃないのよ。もしかしてインターンに来た学生にも同じことしてんじゃないでしょうね!? 会社のイメージ低下にもつながっちゃうでしょうが! パパに報告しますからね!
そんな感じでなかなか先へ進めず、いっそ瀬戸さんを置いて一人で見学しようかなと思った。
ただ私は会社見学に来ただけなのに、これからどうなることかと思ったが、全員が全員おかしな人ってわけでなかった。
次にお邪魔した経理課のお姉さんは普通に応対してくれた。お仕事のお邪魔にならないように観察していたんだけど、気を遣われたのかここで行っている業務を簡単に説明してくれたの。
そう、これでいいの。私は経理のお姉さんの普通な応対に感動した。
すごい歓待されたいわけじゃない。ごく普通の淡々とした対応に私は感激したのだ。決してこんなところで加納ガールズの亜種に会いたかったわけじゃないんだよ…!
なんだかじんわりと鼻の奥がしびれた気がした。
「今は計算用ソフトが進化したのでだいぶ楽になりましたが、それでも簿記の資格があったほうがいいかなと思います」
「そうなんですねぇ…」
確かに便利になったからって機械任せじゃ駄目だな。できることなら扱う人にも専門知識があったほうがいい。
「お次は海外事業部に参りましょうか。地味な経理課よりももっと面白いお話があるんです」
私はまだお話を聞いている途中なのだが、瀬戸さんが次へと急かしてくる。時間の問題があるのかもしれないが、時間ロスしたのはここの女性社員が瀬戸さんを囲んでおしゃべりしていたからだからね。
「すみません、いまこちらの方に話聞いてるので、もう少し待っていてもらえますか」
しかしこの人は要らん一言を言うなぁ。経理の人に恨み買ったらあとが怖いんじゃない? のちのち融通効かせてもらえなくなるぞ。
経理課で色々お話を聞いて満足できた私はお世話になったお姉さんにお仕事の邪魔をしたことを詫び、お礼を言ってその場を後にした。
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