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ひとつ思い出すと、ドミノ崩しのように次々と記憶が蘇る。
自分には「矢崎唯」として生まれる前に別の人生があったこと。
この世界がその時代に読んだ小説の中の世界とそっくりなこと。
その小説は恋愛小説で、この「山城旭」が主人公であること。
そして、斗真が山城旭を「好き」になること。
いきなりこんなこと思い出しても頭の中は一杯一杯で、だけど何故だかストンと腑に落ちる感覚がある。夢を見たときにとんでもない世界なのにすんなりと受け入れてしまってる、あの感覚に近いのかも。
それにしても、なんで今までこのことに気がつかなったのか。
小説を読んでるときも斗真のキャラクターが好きだったけど、まさか同じ世界で今度は斗真に恋をするなんて思いもしなかった。ずっと一緒にいたのに、なんで斗真のこと気づかなかったんだ。
山城旭のことは見ただけで分かったのに。
見ただけ、見た目。
そうだ、あの小説って、表紙と挿絵に主人公とその彼氏しか出てなかったじゃん!
そりゃ二人のビジュアルしか分かんないよ。
江口斗真なんて特別珍しい名前でもないし、小説でもイケメンとし書かれてなかった気がするし。イケメンだけで気づけないよ!
そして、俺って本当にこの小説にいた?
もしかしてストーリー変えちゃった?
「中学この辺じゃないからさ、仲良くしてくれると嬉しいな」
俺が新事実に混乱しているとは知らずに、山城旭は話続けた。
このセリフ、覚えている。
山城旭は高校入学と同時に引越してきて、友達がいなかったんだ。それで、席が近い陽キャのクラスメイトを通じて斗真を紹介してもらって、仲良くなるにつれて斗真が旭を好きになるんだった。
もしかして、陽キャのクラスメイトって俺?
いやいや、俺は陽キャじゃないし、このキャラ冒頭しか出ないというか斗真と出合わせるための舞台装置みたいなキャラで、名前もロクに出てこない……あ、俺ってそういう役割?
確かに「ユイ」って名前だったかも。でも、絶対苗字出てきてない。あのキャラの名前って矢崎唯だったんだ。数年越しの新事実ばっかりだな。
まてまて冷静になろう。
俺は言わばモブキャラで、そこはもう別にいい。
問題は、好きな人にこれから好きになる人を仲介する役割ってこと?
なにそれ。
自分には「矢崎唯」として生まれる前に別の人生があったこと。
この世界がその時代に読んだ小説の中の世界とそっくりなこと。
その小説は恋愛小説で、この「山城旭」が主人公であること。
そして、斗真が山城旭を「好き」になること。
いきなりこんなこと思い出しても頭の中は一杯一杯で、だけど何故だかストンと腑に落ちる感覚がある。夢を見たときにとんでもない世界なのにすんなりと受け入れてしまってる、あの感覚に近いのかも。
それにしても、なんで今までこのことに気がつかなったのか。
小説を読んでるときも斗真のキャラクターが好きだったけど、まさか同じ世界で今度は斗真に恋をするなんて思いもしなかった。ずっと一緒にいたのに、なんで斗真のこと気づかなかったんだ。
山城旭のことは見ただけで分かったのに。
見ただけ、見た目。
そうだ、あの小説って、表紙と挿絵に主人公とその彼氏しか出てなかったじゃん!
そりゃ二人のビジュアルしか分かんないよ。
江口斗真なんて特別珍しい名前でもないし、小説でもイケメンとし書かれてなかった気がするし。イケメンだけで気づけないよ!
そして、俺って本当にこの小説にいた?
もしかしてストーリー変えちゃった?
「中学この辺じゃないからさ、仲良くしてくれると嬉しいな」
俺が新事実に混乱しているとは知らずに、山城旭は話続けた。
このセリフ、覚えている。
山城旭は高校入学と同時に引越してきて、友達がいなかったんだ。それで、席が近い陽キャのクラスメイトを通じて斗真を紹介してもらって、仲良くなるにつれて斗真が旭を好きになるんだった。
もしかして、陽キャのクラスメイトって俺?
いやいや、俺は陽キャじゃないし、このキャラ冒頭しか出ないというか斗真と出合わせるための舞台装置みたいなキャラで、名前もロクに出てこない……あ、俺ってそういう役割?
確かに「ユイ」って名前だったかも。でも、絶対苗字出てきてない。あのキャラの名前って矢崎唯だったんだ。数年越しの新事実ばっかりだな。
まてまて冷静になろう。
俺は言わばモブキャラで、そこはもう別にいい。
問題は、好きな人にこれから好きになる人を仲介する役割ってこと?
なにそれ。
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