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七章
最後の戦い⑥
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その音は、後ろから聞こえていた。
思わず俺は伸ばす手を止め、弾かれたように振り返る。
すると、
まるでスローモーションのような動作で、ゆっくりと身体を前方に傾げていくみらいの姿が、俺の目に飛び込んできた。
―――ドサッ。
力なく、彼女が屋上の地面に倒れ込む。
「みらい……?」
……状況が呑み込めなかった。
さっきまで俺と話をしていたみらいが、今は冷たい屋上の地面に横たわっている。
「みらい?」
もう一度声を掛ける。だが彼女からの反応はない。
俺は駆け寄り、彼女の身体を抱きかかえた。
「みらい……おいっ! どうしたんだよ⁉」
そこでようやく、俺は彼女の意識がないことに気が付いた。
俺は彼女の身体を乱暴に揺する。
しかしみらいは、まるで瞑想にでも耽るように、静かに目を閉じたまま微動だにしなかった。
「最後の最後に、裏切りやがって―――」
「―――ッ⁉」
その時、屋上の入口から、まるで地獄の底から響いてくるような低い声がした。
はっと、声のした方を見る。
そこには―――ボロボロになった水色のワンピースに身を包み、ドブ川のように濁った目でこちらを睨みつける、初音の姿があった。
「……初、音……⁉」
驚きと恐怖から、掠れた声が出た。
この二年間死んだと思っていた―――もう二度と会うことは叶わないと思っていた最愛の妹が、今、俺の目の前に立っていた。
「本当に初音、なのか……」
思わず、俺は腕の中のみらいの存在を忘れて、彼女にそう問うた。
先ほど携帯の画面越しで、俺は確かに初音の姿を確認した。彼女が生きていることを知った。
しかし、いざ本人が目の前に現れると、やはりどこかその現実を受け止めきれていない自分がいた。
―――クスッ……。
初音の口から、小さな笑い声が漏れた。
「どうしたのお兄ちゃん、そんな顔して。感動の再会なんだよ。もっと喜んでよ!」
彼女が両手を大きく広げる。気味が悪いほどの眩しい笑顔を、その顔に湛えていた。
「初音、どうして今まで―――」
だが、そこで俺は言葉を詰まらせた。彼女が右手に持っていた、黒い大きな物体の存在に気付いたからだ。
―――拳銃だった。
銃口からは、一筋の白い煙が立ち上っている。
微かな火薬の匂いが、俺の鼻孔を刺激した。それは一気に絶望の匂いへと変わる。
「お前、まさかそれでみらいを―――」
バッと俺はみらいを見る。
相変わらず静かに目を閉じたままの彼女を、俺は色を失った瞳で凝視した。
ガゴンッ―――!
鈍い音が響いた。
初音が持っていた拳銃を、屋上の地面に投げ捨てた音だった。
「あははっ、もういいんだよそんな奴! 私には必要ない。最後の最後に私を裏切るからこういうことになるんだっ! そいつも死んで当然だ! 生きてる価値なんてないんだよっ‼」
ゲラゲラと天を仰ぎながら、初音が下品に嗤いだす。
みらいを抱きかかえた格好のまま、俺は呆気にとられた。
あんな風に嗤う彼女の姿を、俺は今まで一度たりとも見たことがなかった。何が彼女をここまで変えてしまったのだろうか―――
「私の邪魔をする奴は、みんな死んで当然だっ‼ 死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ! みーんな、死んじゃえばいいんだよっ‼」
何か言わなければ。彼女を正気に戻すために何か言わなければ―――
初音をこんなになるまで追い込んでしまったのは、そもそもは俺が原因だ。俺が彼女のことを、もっとちゃんとわかっていれば、こんなことにはならなかったのだ。
全て俺のせいなのだ。俺が何とかしなければ。彼女を救い出さなければ。俺はあいつの―――!
だが、何か言おうとすればするほど、俺の頭はぐつぐつと泡立つばかりで、何の言葉も浮かんでこなかった。
そんな時―――
「ごめ、んね……初音ちゃん」
闇に溶けるような小さな声が、俺のすぐ下から聞こえた。
弾かれたように、俺は声の主を見る。
先ほどまで力なく閉じられていたみらいの目が、うっすらと開けられていた。
「みらい⁉ 大丈夫か⁉」
「はは。声、大きいよ……ユウ君」
弱々しく彼女は微笑んだ。
「心配するなよ、すぐ助けてやるからな!」
俺は彼女を抱きかかえて、立ち上がろうとする。
だが、
「もう無理だよ……」
彼女はゆっくりとかぶりを振った。
「何弱気なこと言ってんだっ‼ こんなの、病院に行けばすぐ治るに決まってる! だから、絶対に死ぬなよ! 死なせねえからなっ‼」
「それは……無理なんだよ……」
「無理じゃない‼ 絶対諦めんなよ! 死ぬんじゃ―――」
「―――違うんだよ、ユウ君」
今にも消え入りそうな小さな声―――だが力の籠った声で、彼女は俺の言葉を遮った。
「何がだよ」
立ち上がろうと膝に込めていた力を俺は少しだけ緩める。
「……私を助けるのは、もう絶対に無理なの」
「だから何でだよっ⁉」
苛立ちを露わにした。
助けようとする俺の意志に反して、なぜ彼女はこうも頑なに諦めようとするのか。
助かるかもしれないのに。結果は誰にもわからないのに―――
しかし、彼女はそんな俺の疑問に答えるように、
「だって私は―――」
と、口を開いた。
「私は……」
言い淀む。
だか次の瞬間には、彼女は覚悟を決めたように、口を真一文字に結んだ。
「私はね―――」
告白するみたいに、全てを吐き出すみたいに―――彼女は一息に言った。
「私は、二年前に死んでるから―――」
「………え?」
時が止まった。音がなくなる。
次の瞬間、
「―――ッ⁉」
ぼうっと彼女の身体が、青白く発光し始めた。
俺は自分の目を疑う。目の前の彼女に、一体何が起きているのか全く理解ができなかった。
彼女の身体は淡く発光しており、そして徐々に透けていっている。
うっすらと彼女の後ろに見える自分の右手を、俺はただただ凝視していた。
しばらくして、
「なんだよ……これ」
ようやく言葉を発した。
彼女に触れている感覚が徐々に無くなっていく。重さと温もりが零れ落ちていく。彼女の存在が―――消えようとしている。
「何なんだよこれはっ!」
俺の叫び声が夜空に響いた。
「やっぱり、ユウ君は覚えてないみたいだね。二年前にあった、もう一つの悲劇―――」
だが、激しく取り乱す俺とは正反対に、みらいはとても落ち着いた声でそう言った。
「何なんだよ、二年前って! 今はそんなことどうでも―――」
だがその時、激しい頭痛が俺を襲ってきた。
「……あ……ぐっ……」
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
鉄の輪を嵌められたような鈍い痛みが、頭全体に広がっていく。
「……ぐっ……!」
あまりの痛さに、俺は両目を固く閉じた。
すると、次の瞬間、
「………ッ⁉」
昨夜、さよに掘り起こされた記憶が、フラッシュバックのように俺の脳裏に映し出されてきた。
カツン―――カツンッ―――!
何か堅いもの同士がぶつかり合う音。それに気付いて、裏庭へと回る俺。
黒いダウンを着込んだ不審な人物。庭に掘られた大きな穴。そして、その穴から飛び出した白い腕―――
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
頭痛が更に激しさを増していく。うぅと俺は低く呻いた。
嫌だ、と思った。
これ以上は思い出したくない、いや思い出してはいけない―――本能の部分でそう思った。決して超えてはならない境界線のように思えた。
今ならまだ間に合う。引き返せ。後戻りできなくなる前に―――
頭の中で、うるさいくらいに警鐘が鳴り響いている。
必死に自分に言い聞かせる。思い出すな、と―――
しかし、腕の中のみらいは、そんな俺の中の葛藤を見透かしたように、
「ユウ君は、見たはずだよ。あの日、私の家で、本当は何が起こっていたのか。一体誰が、あの冷たい穴の中で死んでいたのか―――」
静かに諭すように言った。
だがそれでも、俺は思い出すことを拒み続ける。
違う違う違う違うっ!
俺は何も見てない。見えなかったんだ。あの時は、目の前に変なノイズが走っていて―――だから、俺は何も見ていない。何も見ていないんだ!
「ユウ君……」
俺は知らない。あの時あった事なんて、何も知らない。関係ないんだ。俺には―――
―――フワッ……
「―――ッ」
不意に、みらいの手が俺の頬に触れた。その手は先ほどよりも透明度を増していた。
はっとして彼女を見た。
刹那、
バチッ―――バチバチバチバチッ―――‼
頭の中に電流が駆け巡った。それは一瞬で身体全体を巡り、俺の意識を完全に覚醒させた。
途端、今まで記憶の中にかかっていたノイズが、溶けるようにして消えていくのがわかった。あの時の情景が、鮮明に映し出される。
そして―――
俺は全てを知った。と同時に諦めた。
無駄な努力だったのだ。全ては虚しい抵抗だった。
……みらいの言う通りだ。俺は見ていなかったんじゃない、忘れたんだ。記憶に蓋をして封印した。あの現実を、なかったことにするために……。
なんて都合のいい生き方なのだろう。なんと愚かな選択だったのだろう。
俺は薄ら笑いを浮かべて、自らを嘲笑する。
あの時、庭で穴を掘っていた人物は―――黒いダウンにフードを被っていた人物は―――
彼女の母親だ。
そして、血の気を失った白い手を覗かせ、穴の中で冷たくなっていたのは―――
「―――みらい。お前だったのか」
雨上がり、ぽとりと落ちる雫のように俺は呟いた。
思わず俺は伸ばす手を止め、弾かれたように振り返る。
すると、
まるでスローモーションのような動作で、ゆっくりと身体を前方に傾げていくみらいの姿が、俺の目に飛び込んできた。
―――ドサッ。
力なく、彼女が屋上の地面に倒れ込む。
「みらい……?」
……状況が呑み込めなかった。
さっきまで俺と話をしていたみらいが、今は冷たい屋上の地面に横たわっている。
「みらい?」
もう一度声を掛ける。だが彼女からの反応はない。
俺は駆け寄り、彼女の身体を抱きかかえた。
「みらい……おいっ! どうしたんだよ⁉」
そこでようやく、俺は彼女の意識がないことに気が付いた。
俺は彼女の身体を乱暴に揺する。
しかしみらいは、まるで瞑想にでも耽るように、静かに目を閉じたまま微動だにしなかった。
「最後の最後に、裏切りやがって―――」
「―――ッ⁉」
その時、屋上の入口から、まるで地獄の底から響いてくるような低い声がした。
はっと、声のした方を見る。
そこには―――ボロボロになった水色のワンピースに身を包み、ドブ川のように濁った目でこちらを睨みつける、初音の姿があった。
「……初、音……⁉」
驚きと恐怖から、掠れた声が出た。
この二年間死んだと思っていた―――もう二度と会うことは叶わないと思っていた最愛の妹が、今、俺の目の前に立っていた。
「本当に初音、なのか……」
思わず、俺は腕の中のみらいの存在を忘れて、彼女にそう問うた。
先ほど携帯の画面越しで、俺は確かに初音の姿を確認した。彼女が生きていることを知った。
しかし、いざ本人が目の前に現れると、やはりどこかその現実を受け止めきれていない自分がいた。
―――クスッ……。
初音の口から、小さな笑い声が漏れた。
「どうしたのお兄ちゃん、そんな顔して。感動の再会なんだよ。もっと喜んでよ!」
彼女が両手を大きく広げる。気味が悪いほどの眩しい笑顔を、その顔に湛えていた。
「初音、どうして今まで―――」
だが、そこで俺は言葉を詰まらせた。彼女が右手に持っていた、黒い大きな物体の存在に気付いたからだ。
―――拳銃だった。
銃口からは、一筋の白い煙が立ち上っている。
微かな火薬の匂いが、俺の鼻孔を刺激した。それは一気に絶望の匂いへと変わる。
「お前、まさかそれでみらいを―――」
バッと俺はみらいを見る。
相変わらず静かに目を閉じたままの彼女を、俺は色を失った瞳で凝視した。
ガゴンッ―――!
鈍い音が響いた。
初音が持っていた拳銃を、屋上の地面に投げ捨てた音だった。
「あははっ、もういいんだよそんな奴! 私には必要ない。最後の最後に私を裏切るからこういうことになるんだっ! そいつも死んで当然だ! 生きてる価値なんてないんだよっ‼」
ゲラゲラと天を仰ぎながら、初音が下品に嗤いだす。
みらいを抱きかかえた格好のまま、俺は呆気にとられた。
あんな風に嗤う彼女の姿を、俺は今まで一度たりとも見たことがなかった。何が彼女をここまで変えてしまったのだろうか―――
「私の邪魔をする奴は、みんな死んで当然だっ‼ 死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ! みーんな、死んじゃえばいいんだよっ‼」
何か言わなければ。彼女を正気に戻すために何か言わなければ―――
初音をこんなになるまで追い込んでしまったのは、そもそもは俺が原因だ。俺が彼女のことを、もっとちゃんとわかっていれば、こんなことにはならなかったのだ。
全て俺のせいなのだ。俺が何とかしなければ。彼女を救い出さなければ。俺はあいつの―――!
だが、何か言おうとすればするほど、俺の頭はぐつぐつと泡立つばかりで、何の言葉も浮かんでこなかった。
そんな時―――
「ごめ、んね……初音ちゃん」
闇に溶けるような小さな声が、俺のすぐ下から聞こえた。
弾かれたように、俺は声の主を見る。
先ほどまで力なく閉じられていたみらいの目が、うっすらと開けられていた。
「みらい⁉ 大丈夫か⁉」
「はは。声、大きいよ……ユウ君」
弱々しく彼女は微笑んだ。
「心配するなよ、すぐ助けてやるからな!」
俺は彼女を抱きかかえて、立ち上がろうとする。
だが、
「もう無理だよ……」
彼女はゆっくりとかぶりを振った。
「何弱気なこと言ってんだっ‼ こんなの、病院に行けばすぐ治るに決まってる! だから、絶対に死ぬなよ! 死なせねえからなっ‼」
「それは……無理なんだよ……」
「無理じゃない‼ 絶対諦めんなよ! 死ぬんじゃ―――」
「―――違うんだよ、ユウ君」
今にも消え入りそうな小さな声―――だが力の籠った声で、彼女は俺の言葉を遮った。
「何がだよ」
立ち上がろうと膝に込めていた力を俺は少しだけ緩める。
「……私を助けるのは、もう絶対に無理なの」
「だから何でだよっ⁉」
苛立ちを露わにした。
助けようとする俺の意志に反して、なぜ彼女はこうも頑なに諦めようとするのか。
助かるかもしれないのに。結果は誰にもわからないのに―――
しかし、彼女はそんな俺の疑問に答えるように、
「だって私は―――」
と、口を開いた。
「私は……」
言い淀む。
だか次の瞬間には、彼女は覚悟を決めたように、口を真一文字に結んだ。
「私はね―――」
告白するみたいに、全てを吐き出すみたいに―――彼女は一息に言った。
「私は、二年前に死んでるから―――」
「………え?」
時が止まった。音がなくなる。
次の瞬間、
「―――ッ⁉」
ぼうっと彼女の身体が、青白く発光し始めた。
俺は自分の目を疑う。目の前の彼女に、一体何が起きているのか全く理解ができなかった。
彼女の身体は淡く発光しており、そして徐々に透けていっている。
うっすらと彼女の後ろに見える自分の右手を、俺はただただ凝視していた。
しばらくして、
「なんだよ……これ」
ようやく言葉を発した。
彼女に触れている感覚が徐々に無くなっていく。重さと温もりが零れ落ちていく。彼女の存在が―――消えようとしている。
「何なんだよこれはっ!」
俺の叫び声が夜空に響いた。
「やっぱり、ユウ君は覚えてないみたいだね。二年前にあった、もう一つの悲劇―――」
だが、激しく取り乱す俺とは正反対に、みらいはとても落ち着いた声でそう言った。
「何なんだよ、二年前って! 今はそんなことどうでも―――」
だがその時、激しい頭痛が俺を襲ってきた。
「……あ……ぐっ……」
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
鉄の輪を嵌められたような鈍い痛みが、頭全体に広がっていく。
「……ぐっ……!」
あまりの痛さに、俺は両目を固く閉じた。
すると、次の瞬間、
「………ッ⁉」
昨夜、さよに掘り起こされた記憶が、フラッシュバックのように俺の脳裏に映し出されてきた。
カツン―――カツンッ―――!
何か堅いもの同士がぶつかり合う音。それに気付いて、裏庭へと回る俺。
黒いダウンを着込んだ不審な人物。庭に掘られた大きな穴。そして、その穴から飛び出した白い腕―――
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
頭痛が更に激しさを増していく。うぅと俺は低く呻いた。
嫌だ、と思った。
これ以上は思い出したくない、いや思い出してはいけない―――本能の部分でそう思った。決して超えてはならない境界線のように思えた。
今ならまだ間に合う。引き返せ。後戻りできなくなる前に―――
頭の中で、うるさいくらいに警鐘が鳴り響いている。
必死に自分に言い聞かせる。思い出すな、と―――
しかし、腕の中のみらいは、そんな俺の中の葛藤を見透かしたように、
「ユウ君は、見たはずだよ。あの日、私の家で、本当は何が起こっていたのか。一体誰が、あの冷たい穴の中で死んでいたのか―――」
静かに諭すように言った。
だがそれでも、俺は思い出すことを拒み続ける。
違う違う違う違うっ!
俺は何も見てない。見えなかったんだ。あの時は、目の前に変なノイズが走っていて―――だから、俺は何も見ていない。何も見ていないんだ!
「ユウ君……」
俺は知らない。あの時あった事なんて、何も知らない。関係ないんだ。俺には―――
―――フワッ……
「―――ッ」
不意に、みらいの手が俺の頬に触れた。その手は先ほどよりも透明度を増していた。
はっとして彼女を見た。
刹那、
バチッ―――バチバチバチバチッ―――‼
頭の中に電流が駆け巡った。それは一瞬で身体全体を巡り、俺の意識を完全に覚醒させた。
途端、今まで記憶の中にかかっていたノイズが、溶けるようにして消えていくのがわかった。あの時の情景が、鮮明に映し出される。
そして―――
俺は全てを知った。と同時に諦めた。
無駄な努力だったのだ。全ては虚しい抵抗だった。
……みらいの言う通りだ。俺は見ていなかったんじゃない、忘れたんだ。記憶に蓋をして封印した。あの現実を、なかったことにするために……。
なんて都合のいい生き方なのだろう。なんと愚かな選択だったのだろう。
俺は薄ら笑いを浮かべて、自らを嘲笑する。
あの時、庭で穴を掘っていた人物は―――黒いダウンにフードを被っていた人物は―――
彼女の母親だ。
そして、血の気を失った白い手を覗かせ、穴の中で冷たくなっていたのは―――
「―――みらい。お前だったのか」
雨上がり、ぽとりと落ちる雫のように俺は呟いた。
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