51 / 91
七章
最後の戦い⑥
しおりを挟む
その音は、後ろから聞こえていた。
思わず俺は伸ばす手を止め、弾かれたように振り返る。
すると、
まるでスローモーションのような動作で、ゆっくりと身体を前方に傾げていくみらいの姿が、俺の目に飛び込んできた。
―――ドサッ。
力なく、彼女が屋上の地面に倒れ込む。
「みらい……?」
……状況が呑み込めなかった。
さっきまで俺と話をしていたみらいが、今は冷たい屋上の地面に横たわっている。
「みらい?」
もう一度声を掛ける。だが彼女からの反応はない。
俺は駆け寄り、彼女の身体を抱きかかえた。
「みらい……おいっ! どうしたんだよ⁉」
そこでようやく、俺は彼女の意識がないことに気が付いた。
俺は彼女の身体を乱暴に揺する。
しかしみらいは、まるで瞑想にでも耽るように、静かに目を閉じたまま微動だにしなかった。
「最後の最後に、裏切りやがって―――」
「―――ッ⁉」
その時、屋上の入口から、まるで地獄の底から響いてくるような低い声がした。
はっと、声のした方を見る。
そこには―――ボロボロになった水色のワンピースに身を包み、ドブ川のように濁った目でこちらを睨みつける、初音の姿があった。
「……初、音……⁉」
驚きと恐怖から、掠れた声が出た。
この二年間死んだと思っていた―――もう二度と会うことは叶わないと思っていた最愛の妹が、今、俺の目の前に立っていた。
「本当に初音、なのか……」
思わず、俺は腕の中のみらいの存在を忘れて、彼女にそう問うた。
先ほど携帯の画面越しで、俺は確かに初音の姿を確認した。彼女が生きていることを知った。
しかし、いざ本人が目の前に現れると、やはりどこかその現実を受け止めきれていない自分がいた。
―――クスッ……。
初音の口から、小さな笑い声が漏れた。
「どうしたのお兄ちゃん、そんな顔して。感動の再会なんだよ。もっと喜んでよ!」
彼女が両手を大きく広げる。気味が悪いほどの眩しい笑顔を、その顔に湛えていた。
「初音、どうして今まで―――」
だが、そこで俺は言葉を詰まらせた。彼女が右手に持っていた、黒い大きな物体の存在に気付いたからだ。
―――拳銃だった。
銃口からは、一筋の白い煙が立ち上っている。
微かな火薬の匂いが、俺の鼻孔を刺激した。それは一気に絶望の匂いへと変わる。
「お前、まさかそれでみらいを―――」
バッと俺はみらいを見る。
相変わらず静かに目を閉じたままの彼女を、俺は色を失った瞳で凝視した。
ガゴンッ―――!
鈍い音が響いた。
初音が持っていた拳銃を、屋上の地面に投げ捨てた音だった。
「あははっ、もういいんだよそんな奴! 私には必要ない。最後の最後に私を裏切るからこういうことになるんだっ! そいつも死んで当然だ! 生きてる価値なんてないんだよっ‼」
ゲラゲラと天を仰ぎながら、初音が下品に嗤いだす。
みらいを抱きかかえた格好のまま、俺は呆気にとられた。
あんな風に嗤う彼女の姿を、俺は今まで一度たりとも見たことがなかった。何が彼女をここまで変えてしまったのだろうか―――
「私の邪魔をする奴は、みんな死んで当然だっ‼ 死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ! みーんな、死んじゃえばいいんだよっ‼」
何か言わなければ。彼女を正気に戻すために何か言わなければ―――
初音をこんなになるまで追い込んでしまったのは、そもそもは俺が原因だ。俺が彼女のことを、もっとちゃんとわかっていれば、こんなことにはならなかったのだ。
全て俺のせいなのだ。俺が何とかしなければ。彼女を救い出さなければ。俺はあいつの―――!
だが、何か言おうとすればするほど、俺の頭はぐつぐつと泡立つばかりで、何の言葉も浮かんでこなかった。
そんな時―――
「ごめ、んね……初音ちゃん」
闇に溶けるような小さな声が、俺のすぐ下から聞こえた。
弾かれたように、俺は声の主を見る。
先ほどまで力なく閉じられていたみらいの目が、うっすらと開けられていた。
「みらい⁉ 大丈夫か⁉」
「はは。声、大きいよ……ユウ君」
弱々しく彼女は微笑んだ。
「心配するなよ、すぐ助けてやるからな!」
俺は彼女を抱きかかえて、立ち上がろうとする。
だが、
「もう無理だよ……」
彼女はゆっくりとかぶりを振った。
「何弱気なこと言ってんだっ‼ こんなの、病院に行けばすぐ治るに決まってる! だから、絶対に死ぬなよ! 死なせねえからなっ‼」
「それは……無理なんだよ……」
「無理じゃない‼ 絶対諦めんなよ! 死ぬんじゃ―――」
「―――違うんだよ、ユウ君」
今にも消え入りそうな小さな声―――だが力の籠った声で、彼女は俺の言葉を遮った。
「何がだよ」
立ち上がろうと膝に込めていた力を俺は少しだけ緩める。
「……私を助けるのは、もう絶対に無理なの」
「だから何でだよっ⁉」
苛立ちを露わにした。
助けようとする俺の意志に反して、なぜ彼女はこうも頑なに諦めようとするのか。
助かるかもしれないのに。結果は誰にもわからないのに―――
しかし、彼女はそんな俺の疑問に答えるように、
「だって私は―――」
と、口を開いた。
「私は……」
言い淀む。
だか次の瞬間には、彼女は覚悟を決めたように、口を真一文字に結んだ。
「私はね―――」
告白するみたいに、全てを吐き出すみたいに―――彼女は一息に言った。
「私は、二年前に死んでるから―――」
「………え?」
時が止まった。音がなくなる。
次の瞬間、
「―――ッ⁉」
ぼうっと彼女の身体が、青白く発光し始めた。
俺は自分の目を疑う。目の前の彼女に、一体何が起きているのか全く理解ができなかった。
彼女の身体は淡く発光しており、そして徐々に透けていっている。
うっすらと彼女の後ろに見える自分の右手を、俺はただただ凝視していた。
しばらくして、
「なんだよ……これ」
ようやく言葉を発した。
彼女に触れている感覚が徐々に無くなっていく。重さと温もりが零れ落ちていく。彼女の存在が―――消えようとしている。
「何なんだよこれはっ!」
俺の叫び声が夜空に響いた。
「やっぱり、ユウ君は覚えてないみたいだね。二年前にあった、もう一つの悲劇―――」
だが、激しく取り乱す俺とは正反対に、みらいはとても落ち着いた声でそう言った。
「何なんだよ、二年前って! 今はそんなことどうでも―――」
だがその時、激しい頭痛が俺を襲ってきた。
「……あ……ぐっ……」
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
鉄の輪を嵌められたような鈍い痛みが、頭全体に広がっていく。
「……ぐっ……!」
あまりの痛さに、俺は両目を固く閉じた。
すると、次の瞬間、
「………ッ⁉」
昨夜、さよに掘り起こされた記憶が、フラッシュバックのように俺の脳裏に映し出されてきた。
カツン―――カツンッ―――!
何か堅いもの同士がぶつかり合う音。それに気付いて、裏庭へと回る俺。
黒いダウンを着込んだ不審な人物。庭に掘られた大きな穴。そして、その穴から飛び出した白い腕―――
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
頭痛が更に激しさを増していく。うぅと俺は低く呻いた。
嫌だ、と思った。
これ以上は思い出したくない、いや思い出してはいけない―――本能の部分でそう思った。決して超えてはならない境界線のように思えた。
今ならまだ間に合う。引き返せ。後戻りできなくなる前に―――
頭の中で、うるさいくらいに警鐘が鳴り響いている。
必死に自分に言い聞かせる。思い出すな、と―――
しかし、腕の中のみらいは、そんな俺の中の葛藤を見透かしたように、
「ユウ君は、見たはずだよ。あの日、私の家で、本当は何が起こっていたのか。一体誰が、あの冷たい穴の中で死んでいたのか―――」
静かに諭すように言った。
だがそれでも、俺は思い出すことを拒み続ける。
違う違う違う違うっ!
俺は何も見てない。見えなかったんだ。あの時は、目の前に変なノイズが走っていて―――だから、俺は何も見ていない。何も見ていないんだ!
「ユウ君……」
俺は知らない。あの時あった事なんて、何も知らない。関係ないんだ。俺には―――
―――フワッ……
「―――ッ」
不意に、みらいの手が俺の頬に触れた。その手は先ほどよりも透明度を増していた。
はっとして彼女を見た。
刹那、
バチッ―――バチバチバチバチッ―――‼
頭の中に電流が駆け巡った。それは一瞬で身体全体を巡り、俺の意識を完全に覚醒させた。
途端、今まで記憶の中にかかっていたノイズが、溶けるようにして消えていくのがわかった。あの時の情景が、鮮明に映し出される。
そして―――
俺は全てを知った。と同時に諦めた。
無駄な努力だったのだ。全ては虚しい抵抗だった。
……みらいの言う通りだ。俺は見ていなかったんじゃない、忘れたんだ。記憶に蓋をして封印した。あの現実を、なかったことにするために……。
なんて都合のいい生き方なのだろう。なんと愚かな選択だったのだろう。
俺は薄ら笑いを浮かべて、自らを嘲笑する。
あの時、庭で穴を掘っていた人物は―――黒いダウンにフードを被っていた人物は―――
彼女の母親だ。
そして、血の気を失った白い手を覗かせ、穴の中で冷たくなっていたのは―――
「―――みらい。お前だったのか」
雨上がり、ぽとりと落ちる雫のように俺は呟いた。
思わず俺は伸ばす手を止め、弾かれたように振り返る。
すると、
まるでスローモーションのような動作で、ゆっくりと身体を前方に傾げていくみらいの姿が、俺の目に飛び込んできた。
―――ドサッ。
力なく、彼女が屋上の地面に倒れ込む。
「みらい……?」
……状況が呑み込めなかった。
さっきまで俺と話をしていたみらいが、今は冷たい屋上の地面に横たわっている。
「みらい?」
もう一度声を掛ける。だが彼女からの反応はない。
俺は駆け寄り、彼女の身体を抱きかかえた。
「みらい……おいっ! どうしたんだよ⁉」
そこでようやく、俺は彼女の意識がないことに気が付いた。
俺は彼女の身体を乱暴に揺する。
しかしみらいは、まるで瞑想にでも耽るように、静かに目を閉じたまま微動だにしなかった。
「最後の最後に、裏切りやがって―――」
「―――ッ⁉」
その時、屋上の入口から、まるで地獄の底から響いてくるような低い声がした。
はっと、声のした方を見る。
そこには―――ボロボロになった水色のワンピースに身を包み、ドブ川のように濁った目でこちらを睨みつける、初音の姿があった。
「……初、音……⁉」
驚きと恐怖から、掠れた声が出た。
この二年間死んだと思っていた―――もう二度と会うことは叶わないと思っていた最愛の妹が、今、俺の目の前に立っていた。
「本当に初音、なのか……」
思わず、俺は腕の中のみらいの存在を忘れて、彼女にそう問うた。
先ほど携帯の画面越しで、俺は確かに初音の姿を確認した。彼女が生きていることを知った。
しかし、いざ本人が目の前に現れると、やはりどこかその現実を受け止めきれていない自分がいた。
―――クスッ……。
初音の口から、小さな笑い声が漏れた。
「どうしたのお兄ちゃん、そんな顔して。感動の再会なんだよ。もっと喜んでよ!」
彼女が両手を大きく広げる。気味が悪いほどの眩しい笑顔を、その顔に湛えていた。
「初音、どうして今まで―――」
だが、そこで俺は言葉を詰まらせた。彼女が右手に持っていた、黒い大きな物体の存在に気付いたからだ。
―――拳銃だった。
銃口からは、一筋の白い煙が立ち上っている。
微かな火薬の匂いが、俺の鼻孔を刺激した。それは一気に絶望の匂いへと変わる。
「お前、まさかそれでみらいを―――」
バッと俺はみらいを見る。
相変わらず静かに目を閉じたままの彼女を、俺は色を失った瞳で凝視した。
ガゴンッ―――!
鈍い音が響いた。
初音が持っていた拳銃を、屋上の地面に投げ捨てた音だった。
「あははっ、もういいんだよそんな奴! 私には必要ない。最後の最後に私を裏切るからこういうことになるんだっ! そいつも死んで当然だ! 生きてる価値なんてないんだよっ‼」
ゲラゲラと天を仰ぎながら、初音が下品に嗤いだす。
みらいを抱きかかえた格好のまま、俺は呆気にとられた。
あんな風に嗤う彼女の姿を、俺は今まで一度たりとも見たことがなかった。何が彼女をここまで変えてしまったのだろうか―――
「私の邪魔をする奴は、みんな死んで当然だっ‼ 死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ! みーんな、死んじゃえばいいんだよっ‼」
何か言わなければ。彼女を正気に戻すために何か言わなければ―――
初音をこんなになるまで追い込んでしまったのは、そもそもは俺が原因だ。俺が彼女のことを、もっとちゃんとわかっていれば、こんなことにはならなかったのだ。
全て俺のせいなのだ。俺が何とかしなければ。彼女を救い出さなければ。俺はあいつの―――!
だが、何か言おうとすればするほど、俺の頭はぐつぐつと泡立つばかりで、何の言葉も浮かんでこなかった。
そんな時―――
「ごめ、んね……初音ちゃん」
闇に溶けるような小さな声が、俺のすぐ下から聞こえた。
弾かれたように、俺は声の主を見る。
先ほどまで力なく閉じられていたみらいの目が、うっすらと開けられていた。
「みらい⁉ 大丈夫か⁉」
「はは。声、大きいよ……ユウ君」
弱々しく彼女は微笑んだ。
「心配するなよ、すぐ助けてやるからな!」
俺は彼女を抱きかかえて、立ち上がろうとする。
だが、
「もう無理だよ……」
彼女はゆっくりとかぶりを振った。
「何弱気なこと言ってんだっ‼ こんなの、病院に行けばすぐ治るに決まってる! だから、絶対に死ぬなよ! 死なせねえからなっ‼」
「それは……無理なんだよ……」
「無理じゃない‼ 絶対諦めんなよ! 死ぬんじゃ―――」
「―――違うんだよ、ユウ君」
今にも消え入りそうな小さな声―――だが力の籠った声で、彼女は俺の言葉を遮った。
「何がだよ」
立ち上がろうと膝に込めていた力を俺は少しだけ緩める。
「……私を助けるのは、もう絶対に無理なの」
「だから何でだよっ⁉」
苛立ちを露わにした。
助けようとする俺の意志に反して、なぜ彼女はこうも頑なに諦めようとするのか。
助かるかもしれないのに。結果は誰にもわからないのに―――
しかし、彼女はそんな俺の疑問に答えるように、
「だって私は―――」
と、口を開いた。
「私は……」
言い淀む。
だか次の瞬間には、彼女は覚悟を決めたように、口を真一文字に結んだ。
「私はね―――」
告白するみたいに、全てを吐き出すみたいに―――彼女は一息に言った。
「私は、二年前に死んでるから―――」
「………え?」
時が止まった。音がなくなる。
次の瞬間、
「―――ッ⁉」
ぼうっと彼女の身体が、青白く発光し始めた。
俺は自分の目を疑う。目の前の彼女に、一体何が起きているのか全く理解ができなかった。
彼女の身体は淡く発光しており、そして徐々に透けていっている。
うっすらと彼女の後ろに見える自分の右手を、俺はただただ凝視していた。
しばらくして、
「なんだよ……これ」
ようやく言葉を発した。
彼女に触れている感覚が徐々に無くなっていく。重さと温もりが零れ落ちていく。彼女の存在が―――消えようとしている。
「何なんだよこれはっ!」
俺の叫び声が夜空に響いた。
「やっぱり、ユウ君は覚えてないみたいだね。二年前にあった、もう一つの悲劇―――」
だが、激しく取り乱す俺とは正反対に、みらいはとても落ち着いた声でそう言った。
「何なんだよ、二年前って! 今はそんなことどうでも―――」
だがその時、激しい頭痛が俺を襲ってきた。
「……あ……ぐっ……」
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
鉄の輪を嵌められたような鈍い痛みが、頭全体に広がっていく。
「……ぐっ……!」
あまりの痛さに、俺は両目を固く閉じた。
すると、次の瞬間、
「………ッ⁉」
昨夜、さよに掘り起こされた記憶が、フラッシュバックのように俺の脳裏に映し出されてきた。
カツン―――カツンッ―――!
何か堅いもの同士がぶつかり合う音。それに気付いて、裏庭へと回る俺。
黒いダウンを着込んだ不審な人物。庭に掘られた大きな穴。そして、その穴から飛び出した白い腕―――
ズキン、ズキン、ズキン、ズキン、ズキン―――
頭痛が更に激しさを増していく。うぅと俺は低く呻いた。
嫌だ、と思った。
これ以上は思い出したくない、いや思い出してはいけない―――本能の部分でそう思った。決して超えてはならない境界線のように思えた。
今ならまだ間に合う。引き返せ。後戻りできなくなる前に―――
頭の中で、うるさいくらいに警鐘が鳴り響いている。
必死に自分に言い聞かせる。思い出すな、と―――
しかし、腕の中のみらいは、そんな俺の中の葛藤を見透かしたように、
「ユウ君は、見たはずだよ。あの日、私の家で、本当は何が起こっていたのか。一体誰が、あの冷たい穴の中で死んでいたのか―――」
静かに諭すように言った。
だがそれでも、俺は思い出すことを拒み続ける。
違う違う違う違うっ!
俺は何も見てない。見えなかったんだ。あの時は、目の前に変なノイズが走っていて―――だから、俺は何も見ていない。何も見ていないんだ!
「ユウ君……」
俺は知らない。あの時あった事なんて、何も知らない。関係ないんだ。俺には―――
―――フワッ……
「―――ッ」
不意に、みらいの手が俺の頬に触れた。その手は先ほどよりも透明度を増していた。
はっとして彼女を見た。
刹那、
バチッ―――バチバチバチバチッ―――‼
頭の中に電流が駆け巡った。それは一瞬で身体全体を巡り、俺の意識を完全に覚醒させた。
途端、今まで記憶の中にかかっていたノイズが、溶けるようにして消えていくのがわかった。あの時の情景が、鮮明に映し出される。
そして―――
俺は全てを知った。と同時に諦めた。
無駄な努力だったのだ。全ては虚しい抵抗だった。
……みらいの言う通りだ。俺は見ていなかったんじゃない、忘れたんだ。記憶に蓋をして封印した。あの現実を、なかったことにするために……。
なんて都合のいい生き方なのだろう。なんと愚かな選択だったのだろう。
俺は薄ら笑いを浮かべて、自らを嘲笑する。
あの時、庭で穴を掘っていた人物は―――黒いダウンにフードを被っていた人物は―――
彼女の母親だ。
そして、血の気を失った白い手を覗かせ、穴の中で冷たくなっていたのは―――
「―――みらい。お前だったのか」
雨上がり、ぽとりと落ちる雫のように俺は呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
【完結】百怪
アンミン
ホラー
【PV数100万突破】
第9回ネット小説大賞、一次選考通過、
第11回ネット小説大賞、一次選考通過、
マンガBANG×エイベックス・ピクチャーズ
第一回WEB小説大賞一次選考通過作品です。
百物語系のお話。
怖くない話の短編がメインです。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/23:『でんとう』の章を追加。2026/1/30の朝頃より公開開始予定。
2026/1/22:『たんじょうび』の章を追加。2026/1/29の朝頃より公開開始予定。
2026/1/21:『てがた』の章を追加。2026/1/28の朝頃より公開開始予定。
2026/1/20:『ものおと』の章を追加。2026/1/27の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/19:『みずのおと』の章を追加。2026/1/26の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/18:『あまなつ』の章を追加。2026/1/25の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/17:『えれべーたー』の章を追加。2026/1/24の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
恋文より、先にレポートが届いた~監視対象と監視官、感情に名前をつけるまで
中岡 始
BL
政府による極秘監視プロジェクト──その対象は、元・天才ハッカーで現在は無職&生活能力ゼロの和泉義人(32歳・超絶美形)。
かつて国の防衛システムに“うっかり”侵入してしまった過去を持つ彼は、現在、監視付きの同居生活を送ることに。
監視官として派遣されたのは、真面目で融通のきかないエリート捜査官・大宮陸斗(28歳)。
だが任務初日から、冷蔵庫にタマゴはない、洗濯は丸一週間回されない、寝ながらコードを落書き…と、和泉のダメ人間っぷりが炸裂。
「この部屋の秩序、いつ崩壊したんですか」
「うまく立ち上げられんかっただけや、たぶん」
生活を“管理”するはずが、いつの間にか“世話”してるし…
しかもレポートは、だんだん恋文っぽくなっていくし…?
冷静な大宮の表情が、気づけば少しずつ揺らぎはじめる。
そして和泉もまた、自分のために用意された朝ごはんや、一緒に過ごすことが当たり前になった日常…心の中のコードが、少しずつ書き換えられていく。
──これは「監視」から始まった、ふたりの“生活の記録”。
堅物世話焼き×ツンデレ変人、心がじわじわ溶けていく、静かで可笑しな同居BL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる