ワールドマテリアルズ~転生先は、自分が原作者の異世界でした。

依槻

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第一部

11:魔物大討伐作戦

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 魔物大発生の被害を食い止める為、あまり乗り心地は良くない魔動車に乗ってクラド村から少し離れた森林地帯へとやってきたシノと仲間の冒険者達。
 さすが機械仕掛けの乗り物というだけあってか、十分も経たないうちに目的地へ到着することができた。

「よしっ! 早いとこ魔物を片付けに行くとするか!」

「ここ最近で一番長い十分だった……もうあまり乗りたくはないよ」

 操縦者の剣士が先導する傍らで、魔術師の彼女は既に若干疲れ気味な感じだ。
 そりゃああれだけガタガタ揺れながら走ってたら具合だって悪くなる。異世界でも乗り物酔いは付きものらしい。
 シノはこの長年の間になんだかもう慣れてしまったし、格闘家の彼は元より平気なようだった。
 少し経って若干落ち着いたのか、魔術師の彼女も皆と歩幅を合わせて歩き始める。

「遠目にだが、他の冒険者の姿も見えたな。他の村や街からも派遣されてるのかもしれない」

「まー、大発生なんていうぐらいだからなぁ。俺ら四人だけじゃ追っつかないだろ」

「私も昔見たことはあるけど、数十人で討伐作戦を行ってた感じだったね」

「数十人って……まるでドラゴン退治に行くような人数じゃん」

 塵も積もれば山となる。たとえ弱い魔物だったとしても大発生という事態になれば、数人で片付くような問題でもないのだろう。
 仮に、スライム百匹が一斉に覆いかぶさってこようものなら十分命の危険になりうる。というか実際にシノは、何十年か前にその光景を見たことがあった。
 ペルアエルフの彼女が本気でやれば一人で殲滅できそうな気がしなくもないが、あの頃はまだそこまで戦い慣れしているわけではなかったため、さすがに無理は禁物だ。

「おっ、目的の森林が見えたぞ!」

 小高い丘に挟まれた街道を抜けると、前方に森林地帯が姿を見せた。近隣の村や街からもそこまで遠くはないので、一般人が被害に遭うというのも頷ける。
 剣士の声を受けて少し歩く速度を速めた一行は森林の目の前へたどり着いた。それと同時に、生い茂る木々の間から見える景色を見て驚愕する。

「うわぁ……本当に大発生って感じ」

「魔物も行列って作るんだな。初めて知ったぞ」

「行列なのかよアレは……」

「どうりで、近隣からも冒険者が派遣されてくるわけだね」

 それぞれの口から出た素直な感想の数々。大小様々な魔物が物凄い群れを成して森林を闊歩している様子が見て取れた。
 今いる場所から見えるだけでも、数百は余裕で超えているだろうか?
 確かにこんなところに何も知らない一般人が来てしまえば、被害は免れないだろう。これならば十年に一度起こる規模というのも頷ける。魔物の大群を目の前にした全員の構えにも、自然と力が入った。

「よっしゃあ腕が鳴るぜ! 誰が一番多く倒せるか競争といこうじゃないか!」

 背負った剣を抜き放った剣士が威勢の良い掛け声を放つ。数秒後には、魔物の群れへ突貫していってしまいそうな勢いだ。

「全く、またあんたはそうやって……」

「ま、あのぐらいの勢いでやらねぇと被害が広がる前に抑えきれないだろうさ」

「頼むから、囲まれて面倒になるようなことだけはやめてねー」

 分かっているのかいないのか、剣士の彼は大きく頷いた後に今度こそ森林へ走り出す。それを見た三人も後を追って森林へと入っていった。
 陣形は若干散開しつつも、お互いにフォローしあえる程度といった感じだろうか。剣士が魔物に突っ込んでいった直後に、剣戟の音が森林へと響き始める。

「さて、私も頑張らないと!」

 戦い始めた皆の姿を見て、シノは改めて気合を入れなおす。彼ら彼女らと違って剣も杖も持っていないが、彼女にはそれが必要ない。
 ペリアエルフ――――――――というよりもエルフ族全体にいえることなのだが、基本的に杖などの魔力増幅がなくても普段と変わらず魔法を扱うことができる。
 もちろんあったほうがより強力になることは間違いないが、今はこれで十分だろう。

「炎抱きし旋風よ――――――フレアトルネード!」

 魔物の集団に対してシノが空中を手で薙ぎ払う動作をすると、直後に魔法が発動する。炎を纏った暴風が巻き起こり、スライムやら狼やら様々な魔物を巻き込んで焼き払った。

 ……森林地帯なのに炎の魔法なんて使ったら、火事になるんじゃないだろうか?

 傍から見ればそう思われても仕方がないのだが、周りの木々には何故か一切燃え移っていない。

「ヒュー、やるねぇ! やっぱ、指向性がある魔法ってのは便利なもんだなぁ」

 少し離れたところで戦っていた格闘家が、シノの戦いぶりを見て口笛交じりに称賛した。
 指向性魔法というのは、魔法そのものに意思のようなものを持たせることで効果範囲を限定し、同士討ちなどを防ぐ特殊な魔法の扱い方を指す。魔物に囲まれた人を傷つけずに魔物だけ攻撃するという芸当も可能なため、応用の幅はかなり広い。

「私も使えるようになりたいなー……」

 残念ながら魔術師の彼女はまだその域には達していないため、若干羨ましがっていた。
 ちなみに、指向性魔法を普通の人間が会得しようとすると軽く数十年はかかる。意思を持たない魔法に指向性を持たせようというトンデモなことをやっているのだし、一般人がすぐに使えたりしたら面目丸つぶれというやつだ。

「無いものねだりしても仕方ないぜ――――――そりゃあっ!」

 彼女のぼやきが聞こえたのか、近くで戦っていた格闘家の彼が声をかける。
 最初に突っ込んでいった剣士は既に魔物の真っただ中で孤軍奮闘しているが、格闘家の戦いぶりも実に見事なものだ。まさに風を切るような速さで十匹ほどの群れへ突貫し、次々に拳で打倒していく。

「ちょ、ちょっと! 置いてかないでよー!」

 魔物を倒しながら森林地帯をどんどん進んでいく彼を追いかけるように彼女も続く。当然のように新たな魔物が立ち塞がってくるのだが、魔法で逐次片付けていった。
 ただし、炎の魔法を使えば火事になるので氷や風の魔法限定とはなるが。
 一方、剣士の彼はというと――――――――

「――――――さぁどうしたどうしたっ! 俺はまだまだいけるぜ!」

 勢いが衰える様子もなく、剣を振るい続けていた。
 先ほどからずっと遠目に姿が見えているのだが、一撃で数匹の魔物を薙ぎ倒し続けている。振りの剣で倒したかと思えば、返しの剣で更に倒す。力技を体現したかのような戦い方だ。

「よく不意打ちとかされないなぁ……いや、しようとした魔物も巻き込んでるのかな」

 豪快そのものといわんばかりの剣士の戦いぶりを見てシノが苦笑する。腕は確かなのだが危なっかしいのが彼の持ち味といったところか。
 討伐を始めてから既に一時間ほどが経過し、周りを見渡してみると魔物の数も結構まばらになっていた。
 遠くの方は別の冒険者集団が倒してまわっているようなので、こちら側に残っているのは多くてあと二、三十匹ぐらいだ。

「……よしっ、残りは私が!」

 ここで剣士に勝ちを譲ってしまったらしばらくは自慢を聞かされるんだろうなぁとか思いつつ、残った中型の魔物十数匹が群れている地点へと走り出す。散らばっている残り数匹は、皆に任せておけば大丈夫だろう。
 中でも剣士の彼だけは「先を越された!」といわんばかりの表情をしていたが。
 正直、下手すれば人命に関わる魔物討伐を競争みたくするのは気が進まないけれども、乗りかかった船ということで、ここらで本気の一つでも出しておかなければ示しがつかない。

「さぁ、まとめてかかってきなさい!」

 残っている魔物の群れに対して、威嚇するようにシノが叫ぶ。
 それに反応した魔物達は一斉に彼女目掛けて走り出し、今にも飛び掛かろうとする勢いだ。さすがに無謀なのではないかと思った三人がフォローに入ろうとするが、それは杞憂。

ぜよ、光の奔流ほんりゅう――――――シャイニングバースト!」

 もうすぐ魔物達の攻撃が届こうかというところでシノの魔法が発動し、彼女の前方数メートルほどが光の爆発に包まれた。
 たったそれだけで十数匹いた群れが吹き飛ばされ、数秒遅れて魔結晶がバラバラと落ちてくる。
 光が収まった後、全くの無傷でシノが立っているのが見えた。その姿を見て安堵したのか、仲間の三人はほっと胸を撫でおろす。

「さ、さすがシノさん……たった一撃であの数を全滅させるなんて」

「ちっとばかりヒヤッとしたが、最後にはやっぱやってくれるな!」

「くぅー! やっぱ剣じゃ魔法には敵わねぇかー」

 シノが魔結晶を拾い集めている間に、皆が集まってきた。
 散らばっていた数匹は既に討伐したようで、周囲にも新たな魔物の姿は見受けられない。
 遠くで聞こえていた剣戟や魔法の音もいつの間にか止んでいたため、どうやら他の冒険者達の方も魔物討伐が終わったらしい。
 いつしか森林は、普段通りの静けさを取り戻しつつあった。

「どう? ちょっとは見直してくれた?」

 シノが少しだけ威張ってみせると、それを見た三人は顔を見合わせて笑う。反応を見るに、これは肯定と受け取ってよさそうだ。
 腕が鈍るだの言われていたが、あれだけの活躍を見せればもうそんなことはないだろう。

「他のとこで狩ってた奴らも終わったっぽいし、俺らも帰るか!」

「さんせーい! 私もさすがに疲れちゃったよー」

 周囲の確認をしていた剣士の彼は武器を仕舞うと、先頭に立って歩き出した。
 三人は同時に頷くと森林地帯を後にしようとしたが、魔動車が停まっている場所まで歩いている途中で魔術師の女性が「そういえば」と話を振る。

「ところで……さっき凄い人がいたんだけど、みんな見た?」

「こっちと反対側で戦ってたようだが、ありゃかなりの手練れだな」

「顔は隠れて見えなかったけど……双剣使いの女の人だったね」

 さすがに直接話などはしていないが、物凄い速さで魔物を倒して回っていた冒険者がいたようだ。
 顔は仮面のようなもので隠れて見えなかったが、体格や髪型から女性だということだけはわかる。
 薄紫色のポニーテールは、鬱蒼とした森林地帯の中でもかなり目立っていた。その上双剣使いともなれば、女性冒険者の中ではかなり珍しいといえるだろう。

「ありゃあ絶対に美人だな! 俺にはわかるぞ」

「そうやってお前は今まで何人に蹴っ飛ばされてきたんだよ」

「う、うるせぇな! 男の勘ってやつだよ」

 二人組の茶化しあいはさておいて、また何かの討伐依頼になった時にあの冒険者と出会うことがあったりするのだろうか。シノはふと、そんなことを考えていた。
 普段であれば、たった一度見かけた冒険者とかはそこまで印象に残らないことが多いのだが、さっきの戦いの最中で目にした彼女だけは、何故か強く記憶に残り続けている。

「ほらほら二人とも、早く帰るよー」

「おぉ、悪ぃ悪ぃ。帰りの操縦は交代な!」

「なんでそうなるんだよ……」

 どこかぼんやりとした思いを残しつつ、皆と一緒にシノも帰路へ着き始めた。
 そしてその帰り道、魔術師の彼女がまた具合を悪くしたのは――――――――言うまでもない。
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