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第一部
19:魔法道具と友情と
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魔法道具の暴発によって一瞬だけ真昼になった店内に悲鳴が響き渡った後、ティエラは立ち上がったはいいものの若干フラついていた。
対魔物用の目くらましをあれだけ至近距離で食らえば無理もないと思う。
「まだ眼の奥がチカチカしてますよ……」
「殺傷用の魔法道具じゃなくてよかったね……もしそうだったら怪我してたよ?」
「そうですね……商品の取り扱いには改めて気を付けるとします……」
そういえば以前も、新作の魔法道具を見せてもらった時に暴発していた気がする。確かその時は、竜巻魔法を発生させる道具で目を回していたような……。
これは、次も注意しておくべきだろう。彼女に限っては二度あることは絶対に三度目が起こるものだ。
「扱いに注意するのは魔法にも言えることなんだけどね」
「シノの魔法は指向性を持たせられるのですから、多少は大丈夫でしょう?」
「多少っていっても指向性魔法は対象の選択が重要になるんだから、雑にやったら大惨事だよ」
道具の取り扱いも魔法の扱いも、注意するところは似たようなものだ。
ただ、後者の場合は使い手によっては影響がとんでもないので甘くは見れないだろう。それこそ魔力の暴走なんてしてしまえば、発動者自身にもどうしようもなくなってしまう。
「私としましては、シノが良い魔法の参考になってくれるので助かりますけどね」
「それはどうも。ティエラにとって私は魔法の先生って感じかな?」
「先生っていうほど年上じゃないのもなんだか変な感じがしますけど」
「むむ、エルフに年齢なんて殆ど関係ないでしょーが」
実際、彼女が過去に作った魔法道具はシノが使う魔法からヒントを得ていたりもする。
そして何より驚きなのが、ティエラはシノと一つしか年が離れていないということだ。シノより頭一つ分ほど背が低い上に見た目が完全に少女っぽいのでそうとは思えないのだが、これがエルフ族ならではの年齢事情というヤツなのだろうか。
「それで、これからどうする? まだ皆にも顔見せてないんでしょ?」
「そうでした! さっそく森の訪れへ行きましょう。ローザにも久々に会いたいです」
「料理娘と商売娘、感動の再会だねー」
「ですから、その変な呼び方はやめてください」
村の入り口から家へ直行してきたため、まだ帰還報告なども全然していない。彼女が帰ってきたことがわからないと店も再開できないので、顔見せは重要だ。
シノに続いてティエラも店の外へと出ると、ドアにかかっていた営業中の札を戻しておく。ならば何故さっきわざわざ裏返したのだろうかとツッコみたかったが、ここは黙っておこう。
◇
「長旅お疲れ様でした、ティエラさん!」
ティエラの帰還報告を聞いたローザは、ホッとした笑顔を見せて安心していた。
森の訪れは基本的に冒険者が集う店ではあるのだが彼ら彼女らに限らず、この村から旅立っていった誰かが帰ってくるのは喜ばしいことだろう。
それに加えて、久しぶりにクラド村の年長者二人組が揃ったということで顔なじみ達も嬉しそうだ。
「今回は中々の長丁場でしたからね。ローザも、ちゃんと仕事していましたか?」
「そ、それはもちろん大丈夫ですよ! ……武道大会を除いては」
「そういえばもうそんな時期でしたか。また、ここの皆が出場を?」
武道大会という言葉が出ると、ティエラは懐かしむような表情になる。行商に出ている時はさすがに無理だが、彼女も大会自体は何度も見に行っているそこそこの常連だ。
大会について話を振られたと思ったのか、ローザは急に笑顔になった。その理由はもちろん――――――――
「聞いて驚かないでくださいね。なんと、今年はシノさんが準優勝したんですよ!」
「なんと……それは本当ですか!?」
今まで観戦側だったシノが出場し、優勝こそ逃したが入賞までいったことだろう。
これはさすがにティエラも驚かざるを得なかったようで、シノの方へ顔を寄せてくる。
「シノ、あなたはいつから武闘派になったのですか。詳しく聞きたいのですが」
「別に武闘派じゃないんだけど……その話はまた追々ね。ローザも巻き込んだ話になっちゃうし」
「……ということはローザが元凶なのですね。あなたという人は……」
結構長めの話になってしまいそうなので、また夜にでも改めたほうがいいだろう。
ローザが発端になっていることをなんとなく察したティエラは、やれやれといった感じで肩を竦める。
当の彼女はというと、頭を掻きつつ若干苦笑気味だ。怒られるかと心配していたのかもしれないが、ティエラは滅多なことでは怒らないので大丈夫だろう。
「ほ、ほら! 大会で実力を示せば冒険者としての名も際立ちますし!」
「それは否定しませんが……シノはたまに、冒険者に見えない時があるので」
「ティエラに言われると、私の立つ瀬が無いんだけどなぁー」
数十年来の友人からしても、やはりシノは冒険者というより先生寄りに見えているようだ。これは、彼女がいなかったここしばらくの武勇の数々を聞かせて名誉挽回しておかなければ。
賑やかな店内で談笑する最中、彼女は密かにそう思うのであった。
「今日は皆のんびりしてるけど、まだ依頼とかは入ってきてない?」
「今朝から変わらずといった感じですね。でもまぁ、平和なのは良いことですよ」
「冒険者が討伐に出ないということは、つまりそういうことですからね」
周囲を見渡すと、冒険者の面々はそれぞれ談笑したり酒を酌み交わしたりしている。昼下がりの時間帯になると大概みんなどこかへ出払っているのだが、今日は殆ど暇なのだろう。
その様子をしばらく見ていたティエラは何事か考えた後に、シノへと顔を向ける。
「それでしたら、シノ。私に付き合って貰えますか?」
「うん、別に構わないよ。魔物が出たら私が守ってあげるし」
「そこまで大げさなものではないですよ。道具作りの素材集めです」
「となると近くの森林か。分かった、一緒に行こう!」
冒険者向けの依頼がなければ個人の依頼、ということだ。今日はこの後の予定もないのだし、久々にティエラに付き合ってあげよう。
シノは二つ返事で承諾すると店の皆へ別れを告げると森の訪れを後にする。
「いってらっしゃいませ、お二人とも!」
ローザの見送りを受けて、冒険者と商人はクラド村近くの森林へと向かうのであった。
対魔物用の目くらましをあれだけ至近距離で食らえば無理もないと思う。
「まだ眼の奥がチカチカしてますよ……」
「殺傷用の魔法道具じゃなくてよかったね……もしそうだったら怪我してたよ?」
「そうですね……商品の取り扱いには改めて気を付けるとします……」
そういえば以前も、新作の魔法道具を見せてもらった時に暴発していた気がする。確かその時は、竜巻魔法を発生させる道具で目を回していたような……。
これは、次も注意しておくべきだろう。彼女に限っては二度あることは絶対に三度目が起こるものだ。
「扱いに注意するのは魔法にも言えることなんだけどね」
「シノの魔法は指向性を持たせられるのですから、多少は大丈夫でしょう?」
「多少っていっても指向性魔法は対象の選択が重要になるんだから、雑にやったら大惨事だよ」
道具の取り扱いも魔法の扱いも、注意するところは似たようなものだ。
ただ、後者の場合は使い手によっては影響がとんでもないので甘くは見れないだろう。それこそ魔力の暴走なんてしてしまえば、発動者自身にもどうしようもなくなってしまう。
「私としましては、シノが良い魔法の参考になってくれるので助かりますけどね」
「それはどうも。ティエラにとって私は魔法の先生って感じかな?」
「先生っていうほど年上じゃないのもなんだか変な感じがしますけど」
「むむ、エルフに年齢なんて殆ど関係ないでしょーが」
実際、彼女が過去に作った魔法道具はシノが使う魔法からヒントを得ていたりもする。
そして何より驚きなのが、ティエラはシノと一つしか年が離れていないということだ。シノより頭一つ分ほど背が低い上に見た目が完全に少女っぽいのでそうとは思えないのだが、これがエルフ族ならではの年齢事情というヤツなのだろうか。
「それで、これからどうする? まだ皆にも顔見せてないんでしょ?」
「そうでした! さっそく森の訪れへ行きましょう。ローザにも久々に会いたいです」
「料理娘と商売娘、感動の再会だねー」
「ですから、その変な呼び方はやめてください」
村の入り口から家へ直行してきたため、まだ帰還報告なども全然していない。彼女が帰ってきたことがわからないと店も再開できないので、顔見せは重要だ。
シノに続いてティエラも店の外へと出ると、ドアにかかっていた営業中の札を戻しておく。ならば何故さっきわざわざ裏返したのだろうかとツッコみたかったが、ここは黙っておこう。
◇
「長旅お疲れ様でした、ティエラさん!」
ティエラの帰還報告を聞いたローザは、ホッとした笑顔を見せて安心していた。
森の訪れは基本的に冒険者が集う店ではあるのだが彼ら彼女らに限らず、この村から旅立っていった誰かが帰ってくるのは喜ばしいことだろう。
それに加えて、久しぶりにクラド村の年長者二人組が揃ったということで顔なじみ達も嬉しそうだ。
「今回は中々の長丁場でしたからね。ローザも、ちゃんと仕事していましたか?」
「そ、それはもちろん大丈夫ですよ! ……武道大会を除いては」
「そういえばもうそんな時期でしたか。また、ここの皆が出場を?」
武道大会という言葉が出ると、ティエラは懐かしむような表情になる。行商に出ている時はさすがに無理だが、彼女も大会自体は何度も見に行っているそこそこの常連だ。
大会について話を振られたと思ったのか、ローザは急に笑顔になった。その理由はもちろん――――――――
「聞いて驚かないでくださいね。なんと、今年はシノさんが準優勝したんですよ!」
「なんと……それは本当ですか!?」
今まで観戦側だったシノが出場し、優勝こそ逃したが入賞までいったことだろう。
これはさすがにティエラも驚かざるを得なかったようで、シノの方へ顔を寄せてくる。
「シノ、あなたはいつから武闘派になったのですか。詳しく聞きたいのですが」
「別に武闘派じゃないんだけど……その話はまた追々ね。ローザも巻き込んだ話になっちゃうし」
「……ということはローザが元凶なのですね。あなたという人は……」
結構長めの話になってしまいそうなので、また夜にでも改めたほうがいいだろう。
ローザが発端になっていることをなんとなく察したティエラは、やれやれといった感じで肩を竦める。
当の彼女はというと、頭を掻きつつ若干苦笑気味だ。怒られるかと心配していたのかもしれないが、ティエラは滅多なことでは怒らないので大丈夫だろう。
「ほ、ほら! 大会で実力を示せば冒険者としての名も際立ちますし!」
「それは否定しませんが……シノはたまに、冒険者に見えない時があるので」
「ティエラに言われると、私の立つ瀬が無いんだけどなぁー」
数十年来の友人からしても、やはりシノは冒険者というより先生寄りに見えているようだ。これは、彼女がいなかったここしばらくの武勇の数々を聞かせて名誉挽回しておかなければ。
賑やかな店内で談笑する最中、彼女は密かにそう思うのであった。
「今日は皆のんびりしてるけど、まだ依頼とかは入ってきてない?」
「今朝から変わらずといった感じですね。でもまぁ、平和なのは良いことですよ」
「冒険者が討伐に出ないということは、つまりそういうことですからね」
周囲を見渡すと、冒険者の面々はそれぞれ談笑したり酒を酌み交わしたりしている。昼下がりの時間帯になると大概みんなどこかへ出払っているのだが、今日は殆ど暇なのだろう。
その様子をしばらく見ていたティエラは何事か考えた後に、シノへと顔を向ける。
「それでしたら、シノ。私に付き合って貰えますか?」
「うん、別に構わないよ。魔物が出たら私が守ってあげるし」
「そこまで大げさなものではないですよ。道具作りの素材集めです」
「となると近くの森林か。分かった、一緒に行こう!」
冒険者向けの依頼がなければ個人の依頼、ということだ。今日はこの後の予定もないのだし、久々にティエラに付き合ってあげよう。
シノは二つ返事で承諾すると店の皆へ別れを告げると森の訪れを後にする。
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