ワールドマテリアルズ~転生先は、自分が原作者の異世界でした。

依槻

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第一部

21:感謝を込めたサプライズを

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 ティエラの手伝いで採集に出掛けたらゴーレムに出くわすというまさかの事態になったわけだが、見事な援護からの連携で討伐に成功。採集にしてはそれなりにハードな外出となった。
 そろそろ夕方も近付いた頃、クラド村へと帰り着いた二人は採集物を片付けると森の訪れへと戻る。


「お二人共、聞きましたよっ! ゴーレム討伐なんてお手柄じゃないですか!」


 店内に入って開口一番、ローザは興奮を隠しきれない様子で二人を出迎えた。
 どうやらあの冒険者達はクラド村で魔結晶の交換をしていったらしく、その際に討伐の話を彼らから聞かされていたのだろう。
 周囲を見回してみるがその姿は見当たらず、彼らは既に村を発った後のようだ。

「私達にかかればあんなものですよ。ねぇ、シノ?」

「殆ど成り行きではあったんだけどね……」

 相変わらず得意げに話すティエラと、肩を竦めるシノ。ローザはそんな二人の様子を見て可笑しそうに笑っている。

「でも、よく今まで誰も襲われなかったよね。一般人が出くわしてたかもしれないのに……」

「この辺りの地方は比較的平和なので、魔物の調査隊もそれほど力を入れていないのでしょう。それはそれでどうかと思いますが」

「事前に発見していれば、確実にここへ討伐依頼がきていたはずですからね」

 その辺を歩いていたのなら別だが、地面に擬態して眠っていたともなれば、本格的な調査でもしなければ中々発見はできないだろう。
 それが偶然動き出したアクシデントはともかく、見かけたのがシノ達だったのは不幸中の幸いだった。

「ともあれ厄介事は片付きましたし報酬も入ったので、今日は飲みますよ! 昼間の話も色々と伺いたいので、シノもお付き合いをお願いします」

 そういえば昼にそんな話をしていたな、とシノは今更ながらに思い出す。
 これは今夜は結構長くなると思ったのか、他ならぬ友人のためなので彼女は気合を入れなおした。ティエラは酒が入ると絡み癖があるので注意が必要なのである。

「ふふふ、お望みならばシノさんの武勇を聞かせてあげようじゃないかっ」

「そうこなくては! ローザ、まずはいつものを二つお願いします」

「分かりました。でも、お二人共お仕事だってあるんですから程々にしてくださいね?」

 なんだかノリ気になった二人を見て釘を刺しておくローザ。シノはともかくティエラは店を経営する立場なのだから、帰ってきて早々ポカをやらかすわけにもいかない。
 ポカというよりドジなら昼間にシノの目の前でやらかしてこそいたが。
 ほどなくして二人のもとに料理と共にお酒が運ばれてくると、和気あいあいと盃を交わす。

 こうして、久々の再会を果たした友人同士による夕餉の時は賑やかに過ぎていくのであった。


 ◇


 それから一週間ほど過ぎたある日。シノはいつも通り、森の訪れでのんびり過ごしていた。またしても依頼が無い様子で、結構暇している感じである。夕暮れ時の店内は村の外から戻った冒険者達で溢れかえっており、こちらも相変わらずの賑わいだ。
 ティエラの魔法道具店はあのあとすぐに再開したようで、常連客達は彼女の帰りを喜んでいた。

「――――――そうなんですよ! 最近の売れ筋がですねー」

 ……で、その店主はというと、今まさに店内で知り合い達と談笑をしている。こうしてふらっと店に来たりするので、気まぐれ営業なのは帰ってきてからも変わらないようだ。

(基本的に、昔からジッとしていない子だもんねー……)

 シノは苦笑しつつも、ローザが淹れてくれたお茶を啜っている。ジッとしているのは、自宅に籠って新商品の開発をしている時ぐらいだろうか。
 色々と思うところはあるのだがそれはさておき。シノは何かに気付いたのか、ある疑問を口にする。


「ねぇローザ。最近、村の雰囲気がいつもと違う気がするんだけど……」


 村の雰囲気というのは、ローザはもちろんのこと、村の皆や子ども達に至るまでを指している。
 パッと見ではおかしなところはないのだが、どことなく浮足立っているというか。言葉では表し難い違和感のようなものを、シノはこの数日の間ずっと感じていた。
 多分、思い過ごしか何かだろうと思ってはいたのだが――――――――


「ふえっ!? そ、そんなことはない……ですよ……?」


 突然訊かれて驚いたのか、かなり焦った様子でローザが反応した。声も若干裏返っている。
 その反応を見たシノはすぐさま何かがあることを確信したようだ。でもそこで追及するのはさすがにかわいそうなので、

「それなら別にいいんだけど……」

 気にしていない風を装うと、更にお茶を一口啜った。
 その際に店内をもう一度ぐるりと見回すと、背後でローザが安心したように息をついたのが聞こえる。とりあえずそれは聞かなかったことにして、何か催しでもあっただろうか? と考えを巡らせた。自分の誕生日はかなり前に祝ってもらったし、クラド村で行われる祭事も恐らくは違うだろう。

(何かのサプライズをしようとしてるのかな……)

 サプライズを仕掛けられるにしても、今一つこれといったものが思いつかない。
 しかし、あまり深入りすると台無しにしてしまうかもしれないので、そっとしておくことにした。サプライズやドッキリを潰してしまうのは、人として一番やってはいけないことだ。

「そろそろ忙しくなる頃だろうし、私はそろそろ行くね」

「は、はい! また明日っ」

 今日のシノは特に何か注文するでもなく入り浸っているだけなので、あまり長居し過ぎても迷惑をかけてしまうだろう。
 そろそろ夕食時なのでここで食べてもいいのだが、たまには家で自炊もしなければ。
 入り口のドアが鐘の音を鳴らしてシノが店を後にするのと入れ替わるように、向こうで談笑をしていたティエラがローザの近くへとやってくる。

「シノは帰ったようですね。何か悟られませんでしたか? 彼女を侮ってはいけませんよ」

「だ、大丈夫ですよ! さすがに何かまではバレてませんので」

「それならいいのですが……私も、予定を切り上げて早く帰ってきた甲斐がありました」

「きっと喜んでくれると思います。頑張りましょう……!」

 どうやら、シノを対象としたが計画されているのは明らかなようだ。そしてそれはローザやティエラだけではなく、村全体を巻き込んでいると見える。ローザの決意表明にも似た言葉を聞いた周囲の顔なじみ達が揃って頷いていた。
 なんとなく気付かれてこそいるが、まさかここまで大規模かつ重要なものだとは当の彼女は夢にも思っていないだろう。

 そして翌日の夕方。シノは家に帰ってのんびりしていたのだが、誰かが玄関の扉をノックしていることに気付いた。
 夕方に訪問者というのは珍しく、不思議に思いながらも玄関のドアを開けてみるとそこに立っていたのはなんとティエラ。

「ごきげんようシノ。突然ですが、少し私についてきて頂けますか?」

「えっ? 別に構わないけれど……」

 突然の訪問に突然の同行要請。何が何やらわからないが、相手がティエラなので別に怪しいことなんてないだろうと思ったシノは二つ返事で承諾した。
 彼女から家を訪ねてくること自体がそもそも珍しいし、何か個人的な依頼でもあるのだろうか? などと思いつつそのまま付いていくシノであったが、途中で違和感に気付く。
 依頼ならば村の外に行くはずなのに普通に村の中を歩いていることもそうだが、


(表に出てる人が誰もいないんだけど……?)


 夕方ともなれば帰路に着く子供たちや行き交う村人で賑わう時間帯の筈。
 しかし、今日に限っては周囲を見回しても誰一人として見かけないのだ。二人の足音だけが響く村の道は、いつにも増して静寂に包まれていた。
 やがて、先導してくれているティエラと共にたどり着いたのは、なんと森の訪れの入り口。別に珍しいことなどないいつもの場所だ。


「……さてと。それではシノ、どうぞ中へお入りください」


 意味ありげな笑みを浮かべてそう言ったティエラは、店の裏口から素早く店内に入ってしまった。止める間も無かったので呆気に取られてしまうシノは一人、入り口へと残される。
 昨日の今日でこの状況なのでこれはもう間違いない。このドアの先に、彼女がここ一週間で感じていた違和感の正体があるのだろう。
 別に身構える必要はないのだが、シノは気合を入れなおすように長く息を吐くと、両開きのドアに手をかけて一気に開け放ってみせた。
 すると――――――――


 ――――――パパパパァーーンッ!!!


 クラッカーのような祝砲の音が小さく何度も鳴り響いたかと思えば、紙吹雪やら花吹雪やらがシノの頭上から降り注いだ。
 当然のように驚いてしまう彼女であったが、ドアの向こうに待機していた百名近いであろう人数が続けてかけた言葉に対して、更に驚かざるを得なくなる。



「――――――シノさん! クラド村への来訪百周年、どうもありがとう!!!」



 そう――――――今日この日こそが。シノがクラド村へやってきてちょうど百年目の日だったのであった。
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