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第一部
23:宴の後にて
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来訪百年祭で何十年分を語り明かしたかと思えば、その夜はエリザに付き合ってまた何十年分を語り合い、気づけば次の日になってしまっていた。
シノもエリザも酒に関しては笊レベルなため大丈夫といえば大丈夫なのだが、あまり夜更かしし過ぎると翌朝に響いてしまう。古い友人同士の二次会は、夜もかなり老けたところでお開きになった。
「んー……昨夜はほんと、喋りっぱなしだったなぁー」
翌日、いつも通りの時間に目覚めたシノは昨日の催しを振り返る。まさに一生の思い出とも言っても過言ではないほど楽しく充実した一日だった。村中の人から元気を分けて貰った気分で、また楽しくやっていけそうだ。
今日も、まだ陽が登りきらない村近辺の街道へと日課の討伐のために訪れた彼女だったが、
「雷鳴集いて炸裂せよ――――――サンダーヴォルト!!!」
昨日の今日でテンションが上がっているのか、放つ魔法が景気よくなっているように思える。
当然のことながら酔いが残っているわけではないが、心なしか上機嫌なのは間違いない。朝っぱらから中級クラスの魔法をぶっ放されている魔物はご愁傷様といったところか。
「おはよう、シノさん! さっき、向こうから凄い音が聞こえたんだけど――――」
「あ……それ多分私です……朝早くからお騒がせしました」
「なんだそうだったのかい。いやまぁ、いい目覚ましにはなったよ。はっはっは!」
村に戻ると、入り口付近で村の人とそんな会話を交わすシノ。
いかんいかん、気付かない間に気分も魔法も舞い上がっちゃってるぞ。確かにまだお祭り感が抜けきってないかもしれないけれど、そこはちゃんと自制しなければ。
(昨日の今日でドジなんて踏んじゃったら示しつかないもんね……それこそ、あの子みたいに)
なんてことを思いつつ、今日も授業のために学校のほうへと足を向ける。元気な子ども達の顔を見れば気持ちだってシャッキリする筈だ。
一方その頃、時を同じくして――――――――
「――――――くしゅんっ!」
村の魔法道具店で仕事をしていたあの子を突然のくしゃみが襲っていた。まだ営業開始時間前なので当然誰も周りにはいないのだが、
「……なんだか、凄く失礼な噂をされた気がします」
若干顔をむっとさせながら誰に言うでもなく呟くと、ティエラは仕事を続ける。彼女も昨夜は相当飲んで騒いでいたはずなのだが、絡み癖があることを除けば強い方らしい。
せっせと商品の準備をしており、棚に並ぶ物の中には先日暴発したフラッシュボトルもある。今度は扱いに注意しなければならない。むしろいつも注意しておくべきなのだが。
そしてそんな中、失礼な噂をしていたシノ本人は学校の授業に精を出していた。
「――――というわけで、今日は精霊についてのお話でした!」
どうやら今日は読み書きの授業ではなく、たまにやっている歴史関連のことだったようだ。
教師の仕事を始める前は世界各地に足を延ばしたこともあるので冒険者ならではの視点で語れるし、それに憧れを持つ子ども達からは特に人気がある授業内容となっている。
「先生! 俺もいつか、大精霊に会えるかな!?」
「うん。強くなって認められれば、いつかきっとね」
「へへん! 先生より先に会って、自慢してやるんだー!」
授業が終わった後、シノは生徒の男の子と楽しそうに会話をしていた。
精霊自体はそれなりにいるのだが、その中でも上位とされている限られたものが大精霊だ。当然ながらこの世界に関するそれらの設定はかつてのシノが考えた通りになっている。
定番とされる地水火風の属性はもちろんのこと、それ以外にも複数の大精霊が存在し、精霊の長として君臨していた。
(設定作った私でさえ会ったことないからなぁ……精霊自体は何度か見たことあるけれど)
精霊は人の身体を持つ者と持たない者に分かれており、前者はパッと見では人間と見分けがつかないことも多い。精霊特有の力を感じ取って見分けることは出来るが、それなりに経験を積んでいないと難しい。
もっとも、シノはその術を心得ているのでいざ出会ったとしても大丈夫ではあるけれども。
「それじゃあ、また明日ね」
「うん! それじゃあね、先生っ!」
最後の生徒を見送ったので学校は閉めておき、今日の教師仕事はこれにて終了。そろそろ昼も近づいてきたことだし、森の訪れへ顔を出すべく足を店の方へと向ける。
酔った影響で昼まで寝ている予定のローザは、果たしてどうなっているんだろうか? ついさっき自宅の方へ歩いていくエリザの姿が遠目に見えたので、交代はしたと思うのだけど。
数分ほど歩いて店へ到着したシノは、窓からこっそりと様子を伺ってみた。
「――――はい、それではこちらが報酬ですね。ありがとう御座いました!」
いつも通りしっかりとこなしているようで、特に問題はないようだ。二日酔いっぽさもない。むしろ二日酔いだったら、エリザが大事をとって一日中交代している筈だ。
とりあえず安心したシノは、改めて店内へと足を進めていった。
「おはよう、ローザ! 昨日はよく眠れた?」
「お、おはよう御座います! ……はい、おかげ様で」
「若いんだから、あんまり無理しちゃ駄目だよー」
「あはは……き、気を付けます」
一応、酔って寝てしまっていたことぐらいは覚えているみたいだ。まぁ、その後のことはすっかり忘れてしまっているようだけれども。
「お母さん、とても喜んでましたよ! シノさんと久々に語り合えたって」
「相変わらずあの人のペースに呑まれっぱなしだったけどねー。ローザの昔の話とか特に」
「そうですよねー……って、えっ? 私の……話……?」
エリザの押しが強いともいえる明るさと元気は、娘である彼女が一番よく知っていることだろう。その事には同意したのだが、その後に続いた自分の名前を聞いて思わず問い返す。
「私も当時気付かなかったんだけど、ローザが私のことをお姉ちゃんって呼ん――――」
「わっ、わーっ! それ以上言わないでください!! 忘れてくださぁぁぁぁい!!!」
シノが言いかけて瞬時にその出来事を思い出したのか、ローザが全力で口止めにかかる。顔は既に真っ赤になっており、普段の彼女からは考えられないほどの慌て様だ。
エリザから話を聞いた通り、やっぱり相当恥ずかしかったんだろうなぁ……と、内心苦笑するシノ。たまに先生のことをお母さんとか呼んでしまうアレに近い感じだろうか?
「お母さんも、シノさんになんてこと話してるんですかぁぁぁぁ……」
「私としては、ローザが妹になっても全然問題ないよっ」
「シノさんも、変に悪ノリしないでくださいっ!」
実際、ローザだったら物凄く頼られ甲斐のある妹になりそうだなぁ。と、世話焼きで面倒見もいい方であるシノは思う。既に普段のやり取りが姉妹っぽく見えるので、これはこれで良い気がするが。
先ほどローザが発した大声に気付いた周りが寄ってこようとしていたが、彼女はそれを「なんでもないですから!」と必死に押し留めていた。
やがて馬鹿話も終わって少し落ち着いたのか、二人はいつも通りの談笑へと戻る。
「ところで、シノさんに頼みたいことがあるんですけど……いいですか?」
「うんいいよ。もしかして依頼の話?」
「依頼というか、お店の個人的なことなんですけれど……」
村近くの森林にある泉では名水が採れることで有名なのだが、昨夜の百年祭の準備のためにかなり盛大に蓄えを消費してしまったらしい。
森林自体が村の外にあるため魔物も出るし、泉の水を採りに行く際には大概冒険者に依頼を出している。ただ、報酬が良いわけでもないので、いつも請け負ってくれるわけでもないようだ。
「わかった。祝ってもらったお礼も兼ねて、私が行ってくるよ」
「ありがとう御座います、シノさん! 夕食は御馳走しますので」
「よし行こう、すぐ行こうっ!」
ローザに夕食を作ってもらえるということで即座にやる気全開になるシノ。無報酬で請け負ってくれるとはいえ、彼女も大概現金である。ファウレス家の料理は百年経ってもシノの原動力だ。
「それじゃ、パパッと行って帰ってくるね」
「はい、お気を付けて!」
シノすぐに準備を終えると、足早に森の訪れを後にする。
ローザはそれを笑顔で見送った後、再び自分の仕事へと戻るのであった。
◇
村近くの森林にある泉へとやってきたシノは、さっそく水の採集に取り掛かろうとしていた。
直径五十メートルほどある泉は底が透けて見えるほど水が澄んでいて物凄く綺麗だ。周囲は木々の揺れる音だけが響いており、その静かさには癒しさえ感じさせる。
泉の前に立ったシノは何も持っていないようだが、果たしてどう採集するのかというと――――――
「――――――水流よ、舞いて集えっ!」
――――――とまぁ、こうやって魔法で水を集めてしまうのが一番簡単ということだ。
圧縮して持ち運んでしまえば、重さや大きさなどは殆ど関係ない。なんと便利なことだろうか。
泉から舞い上がった水は十センチ四方ほどまで圧縮され、持ってきた鞄へと仕舞い入れる。たったこれだけで終わるのだから、依頼の際に報酬が少なくなってしまうのも無理はない。
「よし! これでお仕舞いっと」
自分用の水筒にも水を汲んだシノは泉の恵みに一礼しておくと、その場を後にする。あとは持って帰って店の貯水槽で解放すれば、ローザからの依頼は完了だ。
まだ陽も大分高いし、戻ったら別の依頼がないか探してみるとしよう。そんなことを思いつつ数分ほど歩いていると、森林の入り口が見えてきた。
「夕食は何を作ってもらおうかなー……ん?」
既に夕食を御馳走してもらうことに思考が向いている中、シノは前方に何かを発見する。それはどうやら人のようで、黒を基調とした燕尾状のローブのような服を纏っていた。
逆光になっているので顔はよく見えないが、背格好からして十五、六歳ほどの少女だろうか? そして何より目についたのが、足取りが明らかにフラついていたことだ。
これはなんだか危なそうだと思ったシノはすぐに駆け寄ろうとしたものの、
「……えっ、ちょっ――――――――」
――――――駆け寄る間もなくその少女は、パタリと地面に倒れ込んでしまったのだった。
シノもエリザも酒に関しては笊レベルなため大丈夫といえば大丈夫なのだが、あまり夜更かしし過ぎると翌朝に響いてしまう。古い友人同士の二次会は、夜もかなり老けたところでお開きになった。
「んー……昨夜はほんと、喋りっぱなしだったなぁー」
翌日、いつも通りの時間に目覚めたシノは昨日の催しを振り返る。まさに一生の思い出とも言っても過言ではないほど楽しく充実した一日だった。村中の人から元気を分けて貰った気分で、また楽しくやっていけそうだ。
今日も、まだ陽が登りきらない村近辺の街道へと日課の討伐のために訪れた彼女だったが、
「雷鳴集いて炸裂せよ――――――サンダーヴォルト!!!」
昨日の今日でテンションが上がっているのか、放つ魔法が景気よくなっているように思える。
当然のことながら酔いが残っているわけではないが、心なしか上機嫌なのは間違いない。朝っぱらから中級クラスの魔法をぶっ放されている魔物はご愁傷様といったところか。
「おはよう、シノさん! さっき、向こうから凄い音が聞こえたんだけど――――」
「あ……それ多分私です……朝早くからお騒がせしました」
「なんだそうだったのかい。いやまぁ、いい目覚ましにはなったよ。はっはっは!」
村に戻ると、入り口付近で村の人とそんな会話を交わすシノ。
いかんいかん、気付かない間に気分も魔法も舞い上がっちゃってるぞ。確かにまだお祭り感が抜けきってないかもしれないけれど、そこはちゃんと自制しなければ。
(昨日の今日でドジなんて踏んじゃったら示しつかないもんね……それこそ、あの子みたいに)
なんてことを思いつつ、今日も授業のために学校のほうへと足を向ける。元気な子ども達の顔を見れば気持ちだってシャッキリする筈だ。
一方その頃、時を同じくして――――――――
「――――――くしゅんっ!」
村の魔法道具店で仕事をしていたあの子を突然のくしゃみが襲っていた。まだ営業開始時間前なので当然誰も周りにはいないのだが、
「……なんだか、凄く失礼な噂をされた気がします」
若干顔をむっとさせながら誰に言うでもなく呟くと、ティエラは仕事を続ける。彼女も昨夜は相当飲んで騒いでいたはずなのだが、絡み癖があることを除けば強い方らしい。
せっせと商品の準備をしており、棚に並ぶ物の中には先日暴発したフラッシュボトルもある。今度は扱いに注意しなければならない。むしろいつも注意しておくべきなのだが。
そしてそんな中、失礼な噂をしていたシノ本人は学校の授業に精を出していた。
「――――というわけで、今日は精霊についてのお話でした!」
どうやら今日は読み書きの授業ではなく、たまにやっている歴史関連のことだったようだ。
教師の仕事を始める前は世界各地に足を延ばしたこともあるので冒険者ならではの視点で語れるし、それに憧れを持つ子ども達からは特に人気がある授業内容となっている。
「先生! 俺もいつか、大精霊に会えるかな!?」
「うん。強くなって認められれば、いつかきっとね」
「へへん! 先生より先に会って、自慢してやるんだー!」
授業が終わった後、シノは生徒の男の子と楽しそうに会話をしていた。
精霊自体はそれなりにいるのだが、その中でも上位とされている限られたものが大精霊だ。当然ながらこの世界に関するそれらの設定はかつてのシノが考えた通りになっている。
定番とされる地水火風の属性はもちろんのこと、それ以外にも複数の大精霊が存在し、精霊の長として君臨していた。
(設定作った私でさえ会ったことないからなぁ……精霊自体は何度か見たことあるけれど)
精霊は人の身体を持つ者と持たない者に分かれており、前者はパッと見では人間と見分けがつかないことも多い。精霊特有の力を感じ取って見分けることは出来るが、それなりに経験を積んでいないと難しい。
もっとも、シノはその術を心得ているのでいざ出会ったとしても大丈夫ではあるけれども。
「それじゃあ、また明日ね」
「うん! それじゃあね、先生っ!」
最後の生徒を見送ったので学校は閉めておき、今日の教師仕事はこれにて終了。そろそろ昼も近づいてきたことだし、森の訪れへ顔を出すべく足を店の方へと向ける。
酔った影響で昼まで寝ている予定のローザは、果たしてどうなっているんだろうか? ついさっき自宅の方へ歩いていくエリザの姿が遠目に見えたので、交代はしたと思うのだけど。
数分ほど歩いて店へ到着したシノは、窓からこっそりと様子を伺ってみた。
「――――はい、それではこちらが報酬ですね。ありがとう御座いました!」
いつも通りしっかりとこなしているようで、特に問題はないようだ。二日酔いっぽさもない。むしろ二日酔いだったら、エリザが大事をとって一日中交代している筈だ。
とりあえず安心したシノは、改めて店内へと足を進めていった。
「おはよう、ローザ! 昨日はよく眠れた?」
「お、おはよう御座います! ……はい、おかげ様で」
「若いんだから、あんまり無理しちゃ駄目だよー」
「あはは……き、気を付けます」
一応、酔って寝てしまっていたことぐらいは覚えているみたいだ。まぁ、その後のことはすっかり忘れてしまっているようだけれども。
「お母さん、とても喜んでましたよ! シノさんと久々に語り合えたって」
「相変わらずあの人のペースに呑まれっぱなしだったけどねー。ローザの昔の話とか特に」
「そうですよねー……って、えっ? 私の……話……?」
エリザの押しが強いともいえる明るさと元気は、娘である彼女が一番よく知っていることだろう。その事には同意したのだが、その後に続いた自分の名前を聞いて思わず問い返す。
「私も当時気付かなかったんだけど、ローザが私のことをお姉ちゃんって呼ん――――」
「わっ、わーっ! それ以上言わないでください!! 忘れてくださぁぁぁぁい!!!」
シノが言いかけて瞬時にその出来事を思い出したのか、ローザが全力で口止めにかかる。顔は既に真っ赤になっており、普段の彼女からは考えられないほどの慌て様だ。
エリザから話を聞いた通り、やっぱり相当恥ずかしかったんだろうなぁ……と、内心苦笑するシノ。たまに先生のことをお母さんとか呼んでしまうアレに近い感じだろうか?
「お母さんも、シノさんになんてこと話してるんですかぁぁぁぁ……」
「私としては、ローザが妹になっても全然問題ないよっ」
「シノさんも、変に悪ノリしないでくださいっ!」
実際、ローザだったら物凄く頼られ甲斐のある妹になりそうだなぁ。と、世話焼きで面倒見もいい方であるシノは思う。既に普段のやり取りが姉妹っぽく見えるので、これはこれで良い気がするが。
先ほどローザが発した大声に気付いた周りが寄ってこようとしていたが、彼女はそれを「なんでもないですから!」と必死に押し留めていた。
やがて馬鹿話も終わって少し落ち着いたのか、二人はいつも通りの談笑へと戻る。
「ところで、シノさんに頼みたいことがあるんですけど……いいですか?」
「うんいいよ。もしかして依頼の話?」
「依頼というか、お店の個人的なことなんですけれど……」
村近くの森林にある泉では名水が採れることで有名なのだが、昨夜の百年祭の準備のためにかなり盛大に蓄えを消費してしまったらしい。
森林自体が村の外にあるため魔物も出るし、泉の水を採りに行く際には大概冒険者に依頼を出している。ただ、報酬が良いわけでもないので、いつも請け負ってくれるわけでもないようだ。
「わかった。祝ってもらったお礼も兼ねて、私が行ってくるよ」
「ありがとう御座います、シノさん! 夕食は御馳走しますので」
「よし行こう、すぐ行こうっ!」
ローザに夕食を作ってもらえるということで即座にやる気全開になるシノ。無報酬で請け負ってくれるとはいえ、彼女も大概現金である。ファウレス家の料理は百年経ってもシノの原動力だ。
「それじゃ、パパッと行って帰ってくるね」
「はい、お気を付けて!」
シノすぐに準備を終えると、足早に森の訪れを後にする。
ローザはそれを笑顔で見送った後、再び自分の仕事へと戻るのであった。
◇
村近くの森林にある泉へとやってきたシノは、さっそく水の採集に取り掛かろうとしていた。
直径五十メートルほどある泉は底が透けて見えるほど水が澄んでいて物凄く綺麗だ。周囲は木々の揺れる音だけが響いており、その静かさには癒しさえ感じさせる。
泉の前に立ったシノは何も持っていないようだが、果たしてどう採集するのかというと――――――
「――――――水流よ、舞いて集えっ!」
――――――とまぁ、こうやって魔法で水を集めてしまうのが一番簡単ということだ。
圧縮して持ち運んでしまえば、重さや大きさなどは殆ど関係ない。なんと便利なことだろうか。
泉から舞い上がった水は十センチ四方ほどまで圧縮され、持ってきた鞄へと仕舞い入れる。たったこれだけで終わるのだから、依頼の際に報酬が少なくなってしまうのも無理はない。
「よし! これでお仕舞いっと」
自分用の水筒にも水を汲んだシノは泉の恵みに一礼しておくと、その場を後にする。あとは持って帰って店の貯水槽で解放すれば、ローザからの依頼は完了だ。
まだ陽も大分高いし、戻ったら別の依頼がないか探してみるとしよう。そんなことを思いつつ数分ほど歩いていると、森林の入り口が見えてきた。
「夕食は何を作ってもらおうかなー……ん?」
既に夕食を御馳走してもらうことに思考が向いている中、シノは前方に何かを発見する。それはどうやら人のようで、黒を基調とした燕尾状のローブのような服を纏っていた。
逆光になっているので顔はよく見えないが、背格好からして十五、六歳ほどの少女だろうか? そして何より目についたのが、足取りが明らかにフラついていたことだ。
これはなんだか危なそうだと思ったシノはすぐに駆け寄ろうとしたものの、
「……えっ、ちょっ――――――――」
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