ワールドマテリアルズ~転生先は、自分が原作者の異世界でした。

依槻

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第一部

25:同居人との一夜

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 行き倒れかけの旅路から一転、シノの家に住むこととなった精霊の少女リエル。村長を含めた村の皆への紹介も無事に終わり、家へ戻った二人はとりあえず一息ついていた。

「ローザさんの言っていた通り、かなり大きな家ですねー」

 森の訪れや村長の家を除けば村の中ではかなり大きな家なので、リエルも驚いているようだ。改築でシノ好みに色々変えたりしているので、他の家と比べてもかなり異色といえる。
 そういえば、スピリティアにおける精霊たちの住まいはどうなっているのだろうか。秘境の秘密にツッコむことになるので今すぐには訊けないかもしれないが、いつか話してみたいものだ。

「住み始めた時はもうちょっと小さかったんだけど、百年も経つとさすがにね」

「そんなに長い間一人暮らしだと、やっぱり……」

「朝起きても誰もいないのは寂しいけれど、知らない間に慣れちゃった」

 今までずっと暮らしてきた中でそこまで深く考えたことはなかったが、誰かが一緒に住んでるっていうのは重要なんだろうなぁと改めて思う。
 しかし、そんな日々も今日でめでたく終わりだ。ねんがんの同居人が出来たのだから!

「でもこれからは、おはようやただいまを言う相手が出来たからねっ」

「は、はい! 精一杯頑張ります!」

「あはは、そんなに気を張らなくてもいいんだよ」

 とりあえずリエルには二階の空いている部屋を使ってもらうことになった。そもそも部屋は一階ぐらいしか使ってないのでまだ空いている部屋はある。
 あと二人くらいは増えても大丈夫だが、相変わらずその予定はないので今は考える必要はないだろう。

「それじゃあ、私はお風呂沸かしてくるね」

「あっ、シノさん。それなら私がやっておきます! 一通りの家事はこなせますので」

「なら……お願いしてもいいかな?」

 もしかするとリエルは精霊の中でも結構家庭的なタイプだったりするのだろうか。もっとも、彼女的には恩返しがしたいのかもしれないけれども。
 ともあれ、これならシノにとっても家に帰ってからあれこれ考える手間が減るのだし万々歳だ。
 いずれ大精霊へ至るために必要な徳……というには大げさかもしれないが、善いことを積んでおいて損などない。

(まぁ、大精霊になるとしても千年以上も後のことだろうけどね……)

 大精霊の世代交代には最低でもそれぐらいはかかるため、相当気の長い話だ。この村でそれを見ることができる人が自分くらいしかいないのがちょっと寂しくはあるけど。
 それからシノはその他の家事を色々と片付けにかかった。すると、

「シノさーん、お風呂が沸きましたよー」

「分かった。今行くよー」

 一階からリエルの声が聞こえ、急いでそちらへと向かった。シノ宅の浴室はかなり広く、まるで銭湯かのようだ。一階には自室、台所、浴室ぐらいしかないので必然的にどの部屋もそのぐらい広くなってしまうのだが。

「うん、二人になったぐらいじゃあやっぱりまだまだ広い!」

「まるで、街の宿にあるような広さですねー……」

 人間だった頃は足をギリギリ伸ばせるぐらいの広さしかなかったので、この家を貰ってからはその問題は綺麗サッパリ吹き飛んだ。ちなみに、広いので泳ごうとしたら思いっきり頭をぶつけたのは随分と昔のことである。
 一糸纏わぬ姿になった二人は、並んで湯舟に浸かりつつそんな感想を漏らす。特にリエルは長旅で疲れていたのか、癒しの表情を隠そうともしていない。

「ほんと、貴女は人間と変わりないよねー。肌もすっごく綺麗だし……」

「人の世界に溶け込むための姿ですからね。大精霊様の中にも、人と変わらない姿の方がいらっしゃるんですよ」

 確か、地水火風の大精霊の設定画を描いてるページもあの設定集にあったっけ。中でも水の大精霊アクアや風の大精霊シルフなどに関しては美女みたいに載せた気がする。
 いずれ実際に会える時がきたならば、自分の目でその姿を確かめてみたいものだ。

(それにしても……)

 湯舟に顔の半分まで浸かりながら、シノはチラッと横を見た。当然そこにはリエルがいるのだが視線は別の場所へと向いている。

(服着てた時はそこまでに見えなかったけど、着痩せするタイプなのかな)

 シノの体系はスレンダー寄りなのだが、リエルはどちらかというと逆だ。湯舟から上半分ほどが見えているに対して、彼女はなんとなく負けた気がしていた。
 こればっかりは誰が修行しようと、簡単にどうにかなるものではないから残念である。

「ん、どうしましたか? シノさん」

「いや、別になんでもない……」

 視線に気づいたリエルは不思議そうな顔をしていたが、とりあえず濁しておこう。その後たっぷり小一時間ほど過ごして風呂場を出た二人は、シノの部屋へと戻る。
 シノは白いワンピースの寝間着で、リエルは家にあった黒チェック柄の寝間着だ。彼女は出会った時に着ていた服しか持っていなかったので、近いうちに服も揃えてあげたほうがいいだろう。
 部屋のソファに並んで座った二人は、再び一息ついていた。

「こうしていると、半日前までは放浪していたのが未だに信じられません」

「これも何かの縁なのかなー。依頼がなかったらそもそも泉に行ってなかったんだし」

「まさに、運命の出会いというものでしょうか?」

「運命の出会いというか、運命の相手ならもう百年以上見つかってないんだけどね……」

「そ、それはご傷心痛み入ります……」

 一緒に住む相手が見つかったのだし、そういう縁談はまだまだ先でいいかもしれない。いざ相手が出来たとしてもシノの性格上、リエルに遠慮してしまいそうだ。

「まぁ、明日からはいつも通りの日常ということで! 修行で手伝えることがあれば私に言ってね。出来る限り力になるよ」

「はい、よろしくお願いします!」

「とりあえず今日はもう寝よっか。おやすみ、リエル」

「そうですね。おやすみなさい、シノさん!」

 ぺこりとお辞儀をした後にリエルが部屋から出ていき、気配が遠ざかる。
 明日からはただただ暇してるだけの時間はなくなりそうだけれども、それはそれで良いことなので、シノとしても楽しみなことに間違いはない。
 精霊の修行というのがどういうものかはあまりよく知らないが、そこはリエルを見ていれば何となく手伝い方は掴めてくるだろう。

「それじゃあ、ベッドにダーイブッ」

 色々なことはまた明日考えることにして、シノも眠りにつくことにした。大きなベッドがボフッと音を立てた後に彼女の身体が軽く沈み込む。
 魔結晶で灯している明かりを消すと部屋は静寂と暗闇に包まれ、すぐに寝息が聞こえてきた。

 こうして、同居人が増えたシノ宅の初日は静かに過ぎていくのであった。
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