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第二部
68:明日への一歩
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一生に一度だってお目にかかることは出来ないであろう英雄の称号を授かったシノ。自分が設定を作った世界で英雄と呼ばれるようになってしまうなんて、まるで主人公か何かのようだ。
これも大精霊セラフが言っていた「運命に導かれた」結果なのだろうか?
「十億グランなんて大金、今まで見たこともないよ……」
英雄勲章と共に褒賞金も受け取ったのだが、それはもう驚くべき額だった。まさに一生遊んで暮らせるというものである。
金額が金額なのでその使い道に悩んでいるシノを見て、セリアはやれやれと肩を竦めていた。
「それだけあれば、冒険者やらなくても当分の間は大丈夫じゃないの?」
「確かにそうだけど……私が好きでやってるようなものだから、これからも続けるつもりだよ」
「そうですよ! お金のためだけに冒険者をやっているわけじゃないんですから」
シノにとってはあくまで仕事の一つなため、これからも教師との兼業で続けていくつもりだ。今日はもう特に予定などないのだが、冒険者ギルドから何故かお呼びがかかっていたので戻ってみると――――――――
「それじゃあ、新たな英雄の誕生とその勝利を祝って――――――」
「――――――乾杯ーっ!!!」
シノ達のために冒険者の皆が祝勝会を盛大に開いてくれ、その日はそれだけで過ぎていってしまった。人数だけの規模でいえば、自分が以前開いてもらった百年祭を余裕で超えていただろう。
人数もさることながら、これが王都本場の祝い事かと感心してしまった。全員が全員、祝勝ムードを楽しんでいたようでなによりである。
そして大盛り上がりのまま宴の時はあっという間に過ぎた翌日。王都の南地区にはシノ、リエル、セリア、ステラの四人が集まっていた。ただ、先日のように依頼に出掛けるという感じではなさそうだ。
「――――――私はそろそろ、旅に戻ろうと思うわ。今までお世話になったわね」
そんな中、ステラはそう切り出すと王都を去る事を告げる。思えばもう十日以上は留まっていたのだから、旅の冒険者としては次に向かう頃合いということだろう。世界を揺るがす災厄と戦ったことも、旅をする彼女にとっての良い武勇となるかもしれない。
あまり崇められたりするのが好きではないステラは、そこまで語りたがらないかもしれないが。
「ステラさん、道中どうかお気を付けて。またどこかで会いましょう」
「ええ、約束するわ。これからは、旅の途中でシノさんの噂も聞くことになりそうね」
「そ、それはなんだか恥ずかしい気もしますね……」
「なーに今更なこと言ってんのよ! 英雄ならもうちょっと胸を張りなさいよ」
英雄になったことに対して実感がないのか、まだ若干恥ずかしそうにしているシノの対してセリアの言葉が飛んだ。彼女ならば向こう百年ぐらいはそれをネタにして威張りそうなので妙に説得力がある。
「ステラさん。旅先でのご活躍、期待していますよ! シノさんの良きライバルとして!」
「あら。なら私は対抗するために、魔王でも倒して武勲をあげないといけないわね」
「あ、あははは……魔王ねぇ……」
何故かライバル同士にされてしまい、思わずシノは苦笑した。
もちろん魔王――――――というか魔族もこの世界にはもちろん存在しているのだが、今は敵対どころかむしろ友好関係だったはずなので、倒すなんてことにはまずならないと思う。
リエルと同じく、ステラの活躍を願っているのはシノも同じだ。旅を続けるのは大変だろうし、いずれは堂々と顔を隠さずに歩ける日が来て欲しいと思っている。
「それじゃあ、またいつか」
ステラはそう言うと踵を返してその場を去ろうとしたが、背を向けた後に何かを小さく呟いた。
「――――――シノさん。あなたはあの時、覚悟を決めることができたのね。次は、私も……」
シノ達にはよく聞こえていなかったようで首を傾げたが、彼女は振り返ることはせずに手を振ると、そのまま港の雑踏に紛れて見えなくなってしまう。
何か思うところがあったのかもしれないが、追いかけて聞き返すこともできないのでその真意はわからないままだ。
「さ、それじゃあ私達もそろそろ行きましょ。ガキんちょ共に約束だってしちゃったしね」
「自慢する気満々ですね……昨日はあんなに慎ましそうにしていたのに」
「ふふん、なんとでも言いなさい!」
「根本的なところは、出会った頃から変わってないなぁ……」
相変わらずなセリアの様子を見て、二人は苦笑する。だが、ここで挙げた功績は事実なので、大精霊に至るまでの彼女達の輝かしい第一歩ともいえるだろう。
「リエルも故郷出て修行するなんて面倒なことやってるんだから、早いとこ半人前から脱するように頑張りなさいよね」
「当然です! シノさんの傍で学ぶことはまだまだありますからね」
「なんだかそうやってるとあんたって、シノの助手か何かみたいね……」
実際、同居人というよりかは助手っぽいかもしれない。まんざらでもなさそうなリエルの表情を見て、セリアはため息交じりに肩を竦めた。
それにしても彼女が激励をするとは、村に押しかけてきて小馬鹿にしていた頃よりも随分と丸くなったものだ。そういう意味では、故郷から追いかけてきたのは結果的に良かったかもしれない。
「――――――よし帰ろう! 私達の村へ!」
「はい! 行きましょう!」
「さぁ、英雄の凱旋よ!」
グランディアの都を背に三人は出航待ちになっている船へとすぐさま乗り込んだ。その数十分後、大きな汽笛の音を何度も響かせた船が港を離れ始める。
かなり久々となった長い冒険もこれで終了。少しずつ遠ざかっていく王都の景色を眺めていると名残惜しさも感じるが、また来ることはできるのだ。その時はまた新しい驚きと発見があることに期待しよう。
――――――それから約三日後。無事に船はクラド村の港へと到着した。
久々にこの地方の土を踏んだシノ達は大きく息を吸い込み、身体全体で帰った来たことを実感する。まだ一ヶ月も経っていないのだが、なんだか一年ぐらい王都方面へ行っていたような感じだ。
「んー……やっぱり故郷の空気が一番だね!」
「私にとっては第二の故郷ともいえますからねー」
「故郷ねぇ……私はまだそういう感じじゃないかも」
「まだまだ村での生活は始まったばかりだよセリア! まずは百年住んでみないと」
「さすがにそんな長くはいないわよ! 私にはイフリート様のお傍にいる役目があるんだからね」
「ことある毎に付き添われてるあの方はどう思ってるんでしょうかね……」
故郷の空気を感じながら港を抜けると街道を歩き、ほどなくしてクラド村へと到着した。ここもやはり変わってなどいない。出掛けた時のまま、のどかで平和な雰囲気に包まれている。
まだ雪が降り続く昼下がり。シノ達は村の中を小走りで駆け抜け、ある場所――――――村の中央付近にあり、この村で一番人が集うあの建物を目指した。
"森の訪れ"と書かれた看板の前に立った三人は顔を見合わせて笑うと、ドアに手をかけて一気に開け放ってみせる。
そして告げられるのは、長旅から帰ってからの第一声。
「――――――ただいま、みんな!!!」
「――――――ただいま戻りました、皆さん!!!」
「――――――皆、今戻ったわよ!!!」
そんな彼女達を迎えた小さな村は、また新たな日常をこれから歩み始めるのであった。
これも大精霊セラフが言っていた「運命に導かれた」結果なのだろうか?
「十億グランなんて大金、今まで見たこともないよ……」
英雄勲章と共に褒賞金も受け取ったのだが、それはもう驚くべき額だった。まさに一生遊んで暮らせるというものである。
金額が金額なのでその使い道に悩んでいるシノを見て、セリアはやれやれと肩を竦めていた。
「それだけあれば、冒険者やらなくても当分の間は大丈夫じゃないの?」
「確かにそうだけど……私が好きでやってるようなものだから、これからも続けるつもりだよ」
「そうですよ! お金のためだけに冒険者をやっているわけじゃないんですから」
シノにとってはあくまで仕事の一つなため、これからも教師との兼業で続けていくつもりだ。今日はもう特に予定などないのだが、冒険者ギルドから何故かお呼びがかかっていたので戻ってみると――――――――
「それじゃあ、新たな英雄の誕生とその勝利を祝って――――――」
「――――――乾杯ーっ!!!」
シノ達のために冒険者の皆が祝勝会を盛大に開いてくれ、その日はそれだけで過ぎていってしまった。人数だけの規模でいえば、自分が以前開いてもらった百年祭を余裕で超えていただろう。
人数もさることながら、これが王都本場の祝い事かと感心してしまった。全員が全員、祝勝ムードを楽しんでいたようでなによりである。
そして大盛り上がりのまま宴の時はあっという間に過ぎた翌日。王都の南地区にはシノ、リエル、セリア、ステラの四人が集まっていた。ただ、先日のように依頼に出掛けるという感じではなさそうだ。
「――――――私はそろそろ、旅に戻ろうと思うわ。今までお世話になったわね」
そんな中、ステラはそう切り出すと王都を去る事を告げる。思えばもう十日以上は留まっていたのだから、旅の冒険者としては次に向かう頃合いということだろう。世界を揺るがす災厄と戦ったことも、旅をする彼女にとっての良い武勇となるかもしれない。
あまり崇められたりするのが好きではないステラは、そこまで語りたがらないかもしれないが。
「ステラさん、道中どうかお気を付けて。またどこかで会いましょう」
「ええ、約束するわ。これからは、旅の途中でシノさんの噂も聞くことになりそうね」
「そ、それはなんだか恥ずかしい気もしますね……」
「なーに今更なこと言ってんのよ! 英雄ならもうちょっと胸を張りなさいよ」
英雄になったことに対して実感がないのか、まだ若干恥ずかしそうにしているシノの対してセリアの言葉が飛んだ。彼女ならば向こう百年ぐらいはそれをネタにして威張りそうなので妙に説得力がある。
「ステラさん。旅先でのご活躍、期待していますよ! シノさんの良きライバルとして!」
「あら。なら私は対抗するために、魔王でも倒して武勲をあげないといけないわね」
「あ、あははは……魔王ねぇ……」
何故かライバル同士にされてしまい、思わずシノは苦笑した。
もちろん魔王――――――というか魔族もこの世界にはもちろん存在しているのだが、今は敵対どころかむしろ友好関係だったはずなので、倒すなんてことにはまずならないと思う。
リエルと同じく、ステラの活躍を願っているのはシノも同じだ。旅を続けるのは大変だろうし、いずれは堂々と顔を隠さずに歩ける日が来て欲しいと思っている。
「それじゃあ、またいつか」
ステラはそう言うと踵を返してその場を去ろうとしたが、背を向けた後に何かを小さく呟いた。
「――――――シノさん。あなたはあの時、覚悟を決めることができたのね。次は、私も……」
シノ達にはよく聞こえていなかったようで首を傾げたが、彼女は振り返ることはせずに手を振ると、そのまま港の雑踏に紛れて見えなくなってしまう。
何か思うところがあったのかもしれないが、追いかけて聞き返すこともできないのでその真意はわからないままだ。
「さ、それじゃあ私達もそろそろ行きましょ。ガキんちょ共に約束だってしちゃったしね」
「自慢する気満々ですね……昨日はあんなに慎ましそうにしていたのに」
「ふふん、なんとでも言いなさい!」
「根本的なところは、出会った頃から変わってないなぁ……」
相変わらずなセリアの様子を見て、二人は苦笑する。だが、ここで挙げた功績は事実なので、大精霊に至るまでの彼女達の輝かしい第一歩ともいえるだろう。
「リエルも故郷出て修行するなんて面倒なことやってるんだから、早いとこ半人前から脱するように頑張りなさいよね」
「当然です! シノさんの傍で学ぶことはまだまだありますからね」
「なんだかそうやってるとあんたって、シノの助手か何かみたいね……」
実際、同居人というよりかは助手っぽいかもしれない。まんざらでもなさそうなリエルの表情を見て、セリアはため息交じりに肩を竦めた。
それにしても彼女が激励をするとは、村に押しかけてきて小馬鹿にしていた頃よりも随分と丸くなったものだ。そういう意味では、故郷から追いかけてきたのは結果的に良かったかもしれない。
「――――――よし帰ろう! 私達の村へ!」
「はい! 行きましょう!」
「さぁ、英雄の凱旋よ!」
グランディアの都を背に三人は出航待ちになっている船へとすぐさま乗り込んだ。その数十分後、大きな汽笛の音を何度も響かせた船が港を離れ始める。
かなり久々となった長い冒険もこれで終了。少しずつ遠ざかっていく王都の景色を眺めていると名残惜しさも感じるが、また来ることはできるのだ。その時はまた新しい驚きと発見があることに期待しよう。
――――――それから約三日後。無事に船はクラド村の港へと到着した。
久々にこの地方の土を踏んだシノ達は大きく息を吸い込み、身体全体で帰った来たことを実感する。まだ一ヶ月も経っていないのだが、なんだか一年ぐらい王都方面へ行っていたような感じだ。
「んー……やっぱり故郷の空気が一番だね!」
「私にとっては第二の故郷ともいえますからねー」
「故郷ねぇ……私はまだそういう感じじゃないかも」
「まだまだ村での生活は始まったばかりだよセリア! まずは百年住んでみないと」
「さすがにそんな長くはいないわよ! 私にはイフリート様のお傍にいる役目があるんだからね」
「ことある毎に付き添われてるあの方はどう思ってるんでしょうかね……」
故郷の空気を感じながら港を抜けると街道を歩き、ほどなくしてクラド村へと到着した。ここもやはり変わってなどいない。出掛けた時のまま、のどかで平和な雰囲気に包まれている。
まだ雪が降り続く昼下がり。シノ達は村の中を小走りで駆け抜け、ある場所――――――村の中央付近にあり、この村で一番人が集うあの建物を目指した。
"森の訪れ"と書かれた看板の前に立った三人は顔を見合わせて笑うと、ドアに手をかけて一気に開け放ってみせる。
そして告げられるのは、長旅から帰ってからの第一声。
「――――――ただいま、みんな!!!」
「――――――ただいま戻りました、皆さん!!!」
「――――――皆、今戻ったわよ!!!」
そんな彼女達を迎えた小さな村は、また新たな日常をこれから歩み始めるのであった。
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