君を必ず救い出すと約束したから~レスキューイン・シルバーマリン

ユキトシ時雨

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ミッション1 覚醒の生物因子! 助けを呼ぶ声に応えて見せろ!! 

第6話 反響 ECHO(2/2)

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 鋼助が跳ね起きると同時に、船体が大きく揺れた。

 少しの波で揺れ動くほど〈こんぺき〉は脆い作りはしていない。何か巨大な質量の塊にぶつかったような衝撃だった。

「きゃっ⁉」

 揺れに弄ばれる姉崎を、鋼助は咄嗟に抱き止める。

「ッッ……! 大丈夫ですか、ドクター!」

「え……えぇ。おかげで助かったわ……けど、鋼助はんこそ大丈夫なん。さっきの痛がり方、尋常じゃないで……」

 額に手を添えたなら、まだ刺すような痛みが残っている。

 それにあの声も……

「ドクターですか? 俺に『助けて』って呼びかけたのは?」

「……何のことや?」

「……いえ。何でもありません」

 それでも今、最も優先すべきは事態の把握と、姉崎の安全確保だ。

「ドクター! それに新人くんも! 二人とも怪我はない!」

 医務室の扉を蹴破るように、蛍が現れる。彼女の持ち場は甲板だったはず。それが額から血を滲ませて、息を切らしながら駆け込んできたんだ。

「先輩こそ、どうしたんです、その傷は⁉」

「私のコレはちょっと油断しただけ……けど、よかった二人とも怪我がなくて。私は二人に外の報告と指示を出しに来たの。今、甲板には」

 蛍の言葉を遮って、また船内を大きく揺らされた。加えて、今度は船全体から軋むような悲鳴を上げる。外では、明らかに尋常ならざる事態が起こっていた。

「甲板で何が起こってるんですか……?」

「いい、新人くん。落ち着いて聞いてね……いま、この船は巨大なハイドラに捕まっているの」

 異常が発生したのは、ほんの数分前のことだった。

 既に〈みずかみ〉周辺には、第一戦闘隊の保有する大型駆逐艦〈あかつき〉が防衛線を敷き、迫るハイドラを待ち構えていた。

 しかし、ハイドラは〈あかつき〉との接触を寸前にして水底深くまで潜航、防衛線を掻い潜ったのだ。

「しかも何を思ったか、防衛線を突破したハイドラは、真っ直ぐ私たちの船に向かって来た。それでロクな武装もない〈こんぺき〉は見事に捕まっちゃったわけよ。この揺れだってそう。あのバケモノが何度も私たちの船に鋏を叩きつけたせいで」

 蛍は舌打ち混じりに吐いて捨てる。

〈こんぺき〉の船体は二〇〇メートル。それをここまで大きく揺らすのなら、ハイドラのサイズはどれだけ楽観的に見積もろうとも五〇メートルはあるのだろう。

「とにかく私たちは、なんとかして取り付いたハイドラの野郎を引き剥がさなきゃならないの。このまま放っておいたなら、いくら大型救助艦と言えど、長くは持たない」

「だったら、俺も!」

 蛍は次に鋼助が何を言うかを察したのだろう。

「ダメ。絶対にダメ。新人くんはドクター姉崎と一緒に待機。破れた船殻の隙間から海水が入ってくる恐れもあるから、ドクターには救命胴衣も着せること。分かったわね!」

 最後の「分かったわね!」には鋼助に釘を刺す意味もあるのだろう。

「けど蛍ちゃん。せめて、その傷の応急措置くらい」

「構いません。見かけほど深くはないですし、事態は一刻を争うんです」

 姉崎の申出も拒否し、彼女は隊服のポケットに忍ばせた止血布を患部に巻き付けた。

「ッ……!」

 踵を返し、再び甲板に駆けあがろうとする横顔は、表情こそ引き締められている。それでも、隠しきれない焦燥が彼女の顔には滲んでいた。


 ふと、額から血を流した蛍の姿が、記憶の中の誰かと重なり合う。必ず助けるから────そう約束をして、果たすことのできなかった悔しさは、今になっても忘れることがはできやしない。


「鋼助はん……」

 鋼助の腕を、姉崎は強く掴んだ。

「その顔で何を考えてるかくらい、ウチにも分かるで」

「俺も……俺も甲板に上がらせてください! 俺も先輩たちを放ってはおけませんッ!」

「ダメや。蛍ちゃんに待機って言われたばっかやろ。それに因子を持たない鋼助はんは、ハッキリ言って足手まといや!」

 それくらい分かっている。蛍や姉崎の言うことが正論であることも、自分が他の隊員足手まといにしかならないことも。

 それでも自分一人がジッとなんてしていられない。

「すみません、ドクター。俺行きますッ!」

「あっ、ちょっ⁉」

 静止する姉崎の手を振り解き、鋼助も甲板に続く階段を早足で駆け上がった。
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