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第二章 大魔道書『神々の終焉讃歌録』
27 初めての決断
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アレンたちはシルヴァの知らない何かを隠している可能性がある。
そんな疑わしき問題が表面に出てきたところで、それを踏まえてシルヴァは考えていた。
カレンの顔色を思い出してみるも、死体のように青白くはなかったはずだ。しかし、シアンが言うには心臓が動いていない。
これをどう解釈するか。例えば、アレンがカレンをシルヴァの持つ『支配する能力』のようなもので操っていたりするのだろうか。
いや、その支配するような魔法があるのなら、襲撃者を撃退するのにシルヴァたちの手を借りる必要はない。そもそも支配し操る必要がないだろう。
実はカレンは死んでいて、それを禁術か何かで蘇らせたのだろうか。
だが、『禁術』というのは本当に希少であり、言葉は大きく広まっているが、その実態はまるで謎だ。軽々しく思考に出てくる『禁術』という単語は現実においてそう軽くはない。
希少、といえば。
シルヴァはアレンの持っていた魔導書を思い出した。
あの魔導書が関わっているのはまず間違いないのではないか。そういえば、アレンの言うことを信じるなら、あの魔導書には世界に一つしかない魔法の術式を記録してあるはずだ。その魔道書の肝心の内容は、シルヴァたちに知らされていない。
それが死ぬハズの人を延命する、もしくは息絶えた人を蘇生させる魔法だとしたら、物事としてはしっくりくる。
しかし――、
「……」
何故か腑に落ちない。それはミスリードな気がする。
シルヴァは手を顎に当てた。
「――っ! シルヴァ」
「ん?」
シアンの獣耳がピクン、とはねる。
同時に、弾かれるようにシアンはシルヴァへ向いた。。
「鎧の音がする。近くに人がいるみたい。……これって」
十中八九、カレンを狙った襲撃者の仲間だろう。
それを聞いたシルヴァは、一旦思考を切り替えた。
「なるほど。……そうだね、じゃ、行こうか。どの方向?」
シアンの提案を受けて、シルヴァはすぐに判断を下す。
その判断を聞いたシアンは獣耳を倒しながら、少し心配そうに言った。
「カレン達に知らせないの?」
「……今は、ね。少し、彼ら抜きでやっておきたいこともあるし」
「……そう」
シルヴァの言葉に、シアンは悲しげにうなずいたのだった。
シアンが感知した音は、全て北の方向から聞こえたようだ。その音に従い、シルヴァ達は林の北へと向かっていた。
「人数は? そいつらの道筋を予測できる?」
「うん。……二人一組で動いてるのかな。北から一斉に南に歩いているみたい。そのまま歩いて来るとすると、結界に入っちゃう組みが二つある」
「……そうか」
シアンの言葉を聞くに、どうやら襲撃者たちはこの林を隅から隅へと探しつくす行動に出たようだ。シアンがいなかったら、この行動によってアレン達の家が見つかっていただろう。
しかし、結界に入る軌道の組が二つあるとすると、少し厳しいかもしれない。
この状況において一番まずいことは、結界に気づかれ、襲撃者たち全体にその情報が回ってしまうことだ。結界を張ってあると知られてしまうことは、間接的にその中に目的のものがあると分かってしまう。鍵がかかった宝箱には宝が入っているとすぐ分かるようなものだ。
ここでの最善の行動としては、結界に気づかれない内に無力化し、捕らえること。
シルヴァはシアンに問う。
「結界に入る二つの組みの歩調はどのくらい違う?」
「……同じぐらい。ほとんど同時に結界に接触すると思う」
「……うーん。そうかあ。その二組間の距離は? 僕が同時に襲える距離?」
「無理。結構離れてるみたい」
となると、どちらか一組には気づかれてしまうということになる。シルヴァは走りながら忌々しそうに親指の爪を噛んだ。
そして、シルヴァは並走しているシアンの横顔を見つめる。
「……」
シルヴァはまだ迷っていた。抵抗があった。彼女の勇気は認める。しかし……。
「……いや」
もうその議論は終わったのだ。迷う余地はない。
シルヴァはシアンに言う。
「片方は僕がやる。だから」
シアンがシルヴァの方を見た。シルヴァはシアンの青い瞳をじっくり見つめながら、言葉を吐き出す。
「片方はシアンに頼みたい。……いける?」
「――!」
シアンの瞳が大きく見開いた。大きく開かれた青い瞳がシルヴァの顔を映している。
それから、シルヴァは唇を緩ませて、
「うん!」
大きくうなずいたのだった。
そんな疑わしき問題が表面に出てきたところで、それを踏まえてシルヴァは考えていた。
カレンの顔色を思い出してみるも、死体のように青白くはなかったはずだ。しかし、シアンが言うには心臓が動いていない。
これをどう解釈するか。例えば、アレンがカレンをシルヴァの持つ『支配する能力』のようなもので操っていたりするのだろうか。
いや、その支配するような魔法があるのなら、襲撃者を撃退するのにシルヴァたちの手を借りる必要はない。そもそも支配し操る必要がないだろう。
実はカレンは死んでいて、それを禁術か何かで蘇らせたのだろうか。
だが、『禁術』というのは本当に希少であり、言葉は大きく広まっているが、その実態はまるで謎だ。軽々しく思考に出てくる『禁術』という単語は現実においてそう軽くはない。
希少、といえば。
シルヴァはアレンの持っていた魔導書を思い出した。
あの魔導書が関わっているのはまず間違いないのではないか。そういえば、アレンの言うことを信じるなら、あの魔導書には世界に一つしかない魔法の術式を記録してあるはずだ。その魔道書の肝心の内容は、シルヴァたちに知らされていない。
それが死ぬハズの人を延命する、もしくは息絶えた人を蘇生させる魔法だとしたら、物事としてはしっくりくる。
しかし――、
「……」
何故か腑に落ちない。それはミスリードな気がする。
シルヴァは手を顎に当てた。
「――っ! シルヴァ」
「ん?」
シアンの獣耳がピクン、とはねる。
同時に、弾かれるようにシアンはシルヴァへ向いた。。
「鎧の音がする。近くに人がいるみたい。……これって」
十中八九、カレンを狙った襲撃者の仲間だろう。
それを聞いたシルヴァは、一旦思考を切り替えた。
「なるほど。……そうだね、じゃ、行こうか。どの方向?」
シアンの提案を受けて、シルヴァはすぐに判断を下す。
その判断を聞いたシアンは獣耳を倒しながら、少し心配そうに言った。
「カレン達に知らせないの?」
「……今は、ね。少し、彼ら抜きでやっておきたいこともあるし」
「……そう」
シルヴァの言葉に、シアンは悲しげにうなずいたのだった。
シアンが感知した音は、全て北の方向から聞こえたようだ。その音に従い、シルヴァ達は林の北へと向かっていた。
「人数は? そいつらの道筋を予測できる?」
「うん。……二人一組で動いてるのかな。北から一斉に南に歩いているみたい。そのまま歩いて来るとすると、結界に入っちゃう組みが二つある」
「……そうか」
シアンの言葉を聞くに、どうやら襲撃者たちはこの林を隅から隅へと探しつくす行動に出たようだ。シアンがいなかったら、この行動によってアレン達の家が見つかっていただろう。
しかし、結界に入る軌道の組が二つあるとすると、少し厳しいかもしれない。
この状況において一番まずいことは、結界に気づかれ、襲撃者たち全体にその情報が回ってしまうことだ。結界を張ってあると知られてしまうことは、間接的にその中に目的のものがあると分かってしまう。鍵がかかった宝箱には宝が入っているとすぐ分かるようなものだ。
ここでの最善の行動としては、結界に気づかれない内に無力化し、捕らえること。
シルヴァはシアンに問う。
「結界に入る二つの組みの歩調はどのくらい違う?」
「……同じぐらい。ほとんど同時に結界に接触すると思う」
「……うーん。そうかあ。その二組間の距離は? 僕が同時に襲える距離?」
「無理。結構離れてるみたい」
となると、どちらか一組には気づかれてしまうということになる。シルヴァは走りながら忌々しそうに親指の爪を噛んだ。
そして、シルヴァは並走しているシアンの横顔を見つめる。
「……」
シルヴァはまだ迷っていた。抵抗があった。彼女の勇気は認める。しかし……。
「……いや」
もうその議論は終わったのだ。迷う余地はない。
シルヴァはシアンに言う。
「片方は僕がやる。だから」
シアンがシルヴァの方を見た。シルヴァはシアンの青い瞳をじっくり見つめながら、言葉を吐き出す。
「片方はシアンに頼みたい。……いける?」
「――!」
シアンの瞳が大きく見開いた。大きく開かれた青い瞳がシルヴァの顔を映している。
それから、シルヴァは唇を緩ませて、
「うん!」
大きくうなずいたのだった。
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