傀儡使いと獣耳少女の世界遍歴

トンボ

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第二章 大魔道書『神々の終焉讃歌録』

30 尋問

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「い、言っておくが俺は雇われただけで、ボスについて深く知っているわけじゃ」

「はあ……知ってるよそんなこと。いいから、早く話して。手足折るよ?」

 震える白髪の男の弁解ともとれる言葉に、シルヴァはため息をついて急かす。
 男は一回唾を飲み込むと、恐怖で乾いた口を動かして話し始めた。

「ボスの名前は、ハーヴァン。年は聞いてないが、見た目からして三十ぐらいで、深い緑色の髪の男だ」

「ハーヴァン……知らないな。シアンは知ってる?」

「……えっ?」

 シルヴァがシアンに問うも、彼女は他のことを考えていたのか、きょとんとした瞳でシルヴァを見る。しかしすぐに調子を戻し、シルヴァの質問に答えた。

「ううん、知らない」

「……」

 彼女が何に気を取られていたのか少し気になるが、とりあえずそこは置いておく。
 シルヴァは男へ聞いた。

「精霊を使役していたのは、そのハーヴィンであってる?」

「……見ていたのか。ああ、そうだ。ボスが俺ら部下に精霊を与えてる」

 男の返答に、シルヴァは考えを少し巡らせる。

 アレンが言うには、確か精霊を使役することは簡単ではないはずだ。つまり、そのハーヴィンという男はアレンの言葉を借りると、『腕利き』ということになる。

 アレンは、家をほぼ完全に隠せる結界を張ったほどの男だ。その彼が精霊を使役できるという情報だけで『腕利き』と評したのだから、恐らく精霊の使役は力だけでどうにかなるものではない。

 ここは慎重に、そして迅速にコマを進めた方が良いな。

 シルヴァは男へとさらに問う。

「なら、ハーヴィンの目的はなんだ? どうしてカレンを襲った?」

「……ボスの目的はその女ではない。アレンという男だ」

「うん。じゃあ、なんでアレンを狙ってるの?」

「それについては俺達には聞かされていない……。ほ、本当だ!」

 必死になってシルヴァへ訴える白髪の男。彼の頬には汗がにじんでおり、瞳も大きく見開いて、見るからに『必死』という形相だ。本当に知らないらしい。

「うーん。あとひとつ、聞いておこうかな」

 シルヴァの鋭い視線が男を貫く。その威圧に男はぴくりと肩を震わせた。

 そして、シルヴァは問う。

「アレンという男について、貴方はどんなことを知ってて、どんな印象を持ってる?」

「あ、アレンのことだと……? お前はアレンの味方じゃ……」

「はあ。折る」

「すまん! 言うからそれはやめてくれ!」

「……」

 ちょっとシルヴぁが軽く脅しただけで、白髪の男はかなり慌てふためく。
 その様子もしっかりと観察していたシルヴァ。シルヴァはその言動から、彼は虚偽の情報を吐く余裕がないと判断し、そのまま彼の言葉を待つ。

「俺からしてアレンは、名のある冒険者たちの一人、だった。かなり前に冒険者業から足を洗ったようだが、この仕事に就く奴は普通に知ってるぐらいに有名な奴だ」

「ふーん。で、ハーヴィンはアレンについて何か言ってたか?」

「ボスが……? ……いや、俺達には何も……。ただ」

「ただ?」

「アレンを憎んでるとか、そういうのはない気がするな。俺たちにも、余裕があればアレンを生け捕りにしろ、と言っていた」

 とりあえず、この発言から分かったことは、アレンが犯罪者だとかそういう線は消えたということ。
 そして、襲撃者のかしらであるハーヴィンは、アレンという個人に対しての恨みで動いているわけではないということ。

 これらの情報より、シルヴァたちが悪の片棒を担いでいるわけではなさそうだ。シルヴァはちょっと安心する。

「よし。まあ今はこのくらいかな。ご苦労さん」

「なら――ッ!」

「まだ、解放はしないけどね」

 ひとまず、アレンがいないところで聞きたいことは一通り聞いた。だが、まだ解放するわけにはいかない。故に、シルヴァは再び白髪の男を『支配』の能力で完全に操ったのだ。
 結果、白髪の男は再び話すことを封じられた。

 ふう、と軽く息を吐いたシルヴァはシアンへ言う。

「聞きたいことは聞けた。だからアレンのところに、こいつらを連れて戻るよ」

「う、うん」

 シルヴァが腕をかざすと同時に、白髪を含めた四人の男が一斉に立ち上がり、綺麗に整列する。
 その四人と共に、シルヴァとシアンはアレン宅へ向かったのだった。
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