31 / 119
第二章 大魔道書『神々の終焉讃歌録』
29 代償は親指だけ?
しおりを挟む
「それで、捕まえた人たちはどうするの?」
結界の境界線のすぐ内側。シアンはシルヴァに聞いた。
シルヴァは自分とシアンで捕まえた、シルヴァの『支配』の能力で組み伏せている計四人の雇われ兵を見る。
今、彼らは話すことすらできず、体は正座して腕を頭を後ろに回す状態で固定されていた。とりあえず兜は脱がしておいた。かぶっらままだと、声がくぐもって聞きたいことが聞こえにくいからだ。
「アレンに送り届ける……の前に、聞きたいことを聞いちゃおう」
「聞きたいことって」
「うん。今の状況からして、残念ながらアレンはちょっと怪しいからね。アレンがいないときだからこそだ」
シルヴァはそう言うと、四人のうち一番左にいる白髪の中年男を指さした。
「……貴方だ。今、貴方に喋れるだけの自由を与えた」
「――っ! くっ……!」
シルヴァに指定された男は、彼の言葉を聞いて自分の口が動くことに気づく。そしてバツの悪そうに舌打ちをした。
「聞かせてもらうよ。何故、貴方たちは……いや、貴方の雇い主か。そいつはなんで、カレンを狙うように指示したんだ?」
「……」
シルヴァの質問に、その白髪の男は答えようともせず、沈黙をまといながらシルヴァを睨んだ。その視線を気にすることなく、シルヴァは白髪の男を見つめ続ける。
周囲が環境音に包まれる。シルヴァが催促をすることもなく、白髪の男も答えるような様子を見せない。
それに痺れをきらしたのか、シアンは言った。
「……言わないと思うな、この人。別の人に変えない?」
「いいや、喋らせるよ。無理やりにでも」
その直後、四人の右腕が頭上へと上がる。もちろん、彼らが自分で上げたわけではない。シルヴァの能力で無理やりやらせたのだ。
「何をするの?」
シアンは不安そうにシルヴェへ問う。シルヴァは彼女の顔も見ることなく、ただ淡々と答えた。
「大丈夫。――臭いは残さないし、服も汚さない」
直後、その四人の上げた指先に変化が起こり始めた。細かくいえば、四人の親指に。
親指が、少しずつ反っていく。最初は自力でもできるような角度だが、それはそこで止まる気配はない。
ゆっくりと、だがしっかりと、親指は反り続けて、関節が許容する角度を超えて曲がっていく。
「あがァああああ……!」
四人の内、白髪の男だけから悲鳴が上がった。他の三人も言葉を発せられる身なら、そうしていただろう。しかし、今はシルヴァの能力により、嗚咽一つ漏らせない。加えて、表情一つ動かせない状態で、痛みだけが身に染みていた。
しばらくの間、嗚咽交じりのかすれかすれな悲鳴が、途切れ途切れ林の中に響き渡る。白髪の男は顔中に汗を流し、顔色も青白く変わっていった。
その痛々しい状況を目にしたシアンは、必死に自分の獣耳を両腕で抑えた。
半面、シルヴァは冷徹な視線で表情ひとつ変えず、それを見ている。
ついに、四人の親指の爪が、手の甲へとついた。骨はもう折れている。
それから少し間をおいて、シルヴァは口を開いた。
「さあ、どうしてカレンを狙ったか、言う気になった?」
「はぁ……はぁ……。く……き、貴様……!」
「うーん。次は中指と小指、同時にいこうか」
「なっ……!」
反発する白髪男を見たシルヴァは、わざとらしく腕を組んで考える素振りをしてみせる。
その様子に、白髪の男は青白く汗で冷え切った顔を、さらに悲痛に歪ませた。ここで彼は気づいたのだ。
この男を敵に回した時点で勝てるわけがなかった、と。
それを知ってか知らずか、シルヴァは畳みかけるように言う。
「貴方が言わない限り、まあ連帯責任ってやつかな、お仲間さんも痛い目に遭うよ。早くゲロっちゃいな。僕はとしては三本同時に折ってもいいし、なんなら手の指足の指に限らず、腕とか脚、背中の骨をボキボキにもできるんだけどなぁ」
「わ、分かった! 話す! だからもう、それはやめてくれ……!」
「いいね。じゃ、話してよ」
シルヴァの冷たい視線を受けながら、白髪の男はポツポツと話し始めた。
結界の境界線のすぐ内側。シアンはシルヴァに聞いた。
シルヴァは自分とシアンで捕まえた、シルヴァの『支配』の能力で組み伏せている計四人の雇われ兵を見る。
今、彼らは話すことすらできず、体は正座して腕を頭を後ろに回す状態で固定されていた。とりあえず兜は脱がしておいた。かぶっらままだと、声がくぐもって聞きたいことが聞こえにくいからだ。
「アレンに送り届ける……の前に、聞きたいことを聞いちゃおう」
「聞きたいことって」
「うん。今の状況からして、残念ながらアレンはちょっと怪しいからね。アレンがいないときだからこそだ」
シルヴァはそう言うと、四人のうち一番左にいる白髪の中年男を指さした。
「……貴方だ。今、貴方に喋れるだけの自由を与えた」
「――っ! くっ……!」
シルヴァに指定された男は、彼の言葉を聞いて自分の口が動くことに気づく。そしてバツの悪そうに舌打ちをした。
「聞かせてもらうよ。何故、貴方たちは……いや、貴方の雇い主か。そいつはなんで、カレンを狙うように指示したんだ?」
「……」
シルヴァの質問に、その白髪の男は答えようともせず、沈黙をまといながらシルヴァを睨んだ。その視線を気にすることなく、シルヴァは白髪の男を見つめ続ける。
周囲が環境音に包まれる。シルヴァが催促をすることもなく、白髪の男も答えるような様子を見せない。
それに痺れをきらしたのか、シアンは言った。
「……言わないと思うな、この人。別の人に変えない?」
「いいや、喋らせるよ。無理やりにでも」
その直後、四人の右腕が頭上へと上がる。もちろん、彼らが自分で上げたわけではない。シルヴァの能力で無理やりやらせたのだ。
「何をするの?」
シアンは不安そうにシルヴェへ問う。シルヴァは彼女の顔も見ることなく、ただ淡々と答えた。
「大丈夫。――臭いは残さないし、服も汚さない」
直後、その四人の上げた指先に変化が起こり始めた。細かくいえば、四人の親指に。
親指が、少しずつ反っていく。最初は自力でもできるような角度だが、それはそこで止まる気配はない。
ゆっくりと、だがしっかりと、親指は反り続けて、関節が許容する角度を超えて曲がっていく。
「あがァああああ……!」
四人の内、白髪の男だけから悲鳴が上がった。他の三人も言葉を発せられる身なら、そうしていただろう。しかし、今はシルヴァの能力により、嗚咽一つ漏らせない。加えて、表情一つ動かせない状態で、痛みだけが身に染みていた。
しばらくの間、嗚咽交じりのかすれかすれな悲鳴が、途切れ途切れ林の中に響き渡る。白髪の男は顔中に汗を流し、顔色も青白く変わっていった。
その痛々しい状況を目にしたシアンは、必死に自分の獣耳を両腕で抑えた。
半面、シルヴァは冷徹な視線で表情ひとつ変えず、それを見ている。
ついに、四人の親指の爪が、手の甲へとついた。骨はもう折れている。
それから少し間をおいて、シルヴァは口を開いた。
「さあ、どうしてカレンを狙ったか、言う気になった?」
「はぁ……はぁ……。く……き、貴様……!」
「うーん。次は中指と小指、同時にいこうか」
「なっ……!」
反発する白髪男を見たシルヴァは、わざとらしく腕を組んで考える素振りをしてみせる。
その様子に、白髪の男は青白く汗で冷え切った顔を、さらに悲痛に歪ませた。ここで彼は気づいたのだ。
この男を敵に回した時点で勝てるわけがなかった、と。
それを知ってか知らずか、シルヴァは畳みかけるように言う。
「貴方が言わない限り、まあ連帯責任ってやつかな、お仲間さんも痛い目に遭うよ。早くゲロっちゃいな。僕はとしては三本同時に折ってもいいし、なんなら手の指足の指に限らず、腕とか脚、背中の骨をボキボキにもできるんだけどなぁ」
「わ、分かった! 話す! だからもう、それはやめてくれ……!」
「いいね。じゃ、話してよ」
シルヴァの冷たい視線を受けながら、白髪の男はポツポツと話し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。
剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。
彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。
「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。
これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。
【カクヨムでも掲載しています】
表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる