21 / 93
異世界帰りへ③ 英雄は○○を好みます
リル⑥ 磨いた結果
しおりを挟む
リルはヒロイン養成学校で日本料理の習得を求められたことに、不満を言う。
「いやいや、日本に行ったら普通だっての。そういう目的の学校なんだから仕方ないだろ」
「この国では謎なのよ! ミノとかショウフとかキリンとか」
「ホルモンと水商売と動物になってんぞ。味噌、醤油、味醂だ」
「存在しないもので作る料理の訓練なんて、完全なカオスだったんだからね!」
だろうな。
俺だって何度も再現を試みたが全戦全敗だ。やはりその土地のものはその土地の料理が一番合う。
しかし俺は、まさかそこまでガチで取り組んでるとも思わず、気軽に口に出してしまっていた。
『日本にはこんな料理があってな』
『こんな感じで作るんだけど』
『これがまた旨いんだ』
……というような言葉を御用聞きのような人間に言うことで故郷を懐かしんで、寂しさを発散したんだ。
「――にしても、王族なのに驕らずしっかり料理を覚えるなんて、リルって結構努力家なんだな」
「そ、そんなことない……わよっ」
おっと、グイーンと好感度が上がった。この瞬間が気持ちいーっ。人に好かれるのが目に見えてわかる瞬間ってとんでもない快楽だ。
上がり分は十パーセントぐらいかな。
努力家認定が効くと覚えておこう。
人間は行動を認めてもらいたいもので、それが時間や労力を費やしたものなら尚更となる。
「一度食ってみたいよ」
「……この国の料理しか、まともに作れないわよ?」
「もちろん。俺だってこの国の料理は好きだ。……日本の料理を無理矢理作らされてるなんて、知らなかったんだよ。ごめん。悪かった」
あとはまあ、素直に非を認めて謝ることも好感度アップには大切だ。
本音を言えば『お前の祖父ちゃんが無理矢理強制召喚したことがそもそもの原因だ』という気持ちもあるが、ここでそれを出してはならない。
……本当に、彼女に罪はないだろうし。
「ふんっ。何よ今さら…………。わかればいいのよ」
言葉は強気だが表情は違う。
どう振舞って良いのかわからない……といったところか。
「いつか食わせてくれよ。――と、それにしても身の回りの世話とか、誰かがやってくれないのか?」
「私は王族と言っても、妾の子だから……。あまりよく思われていないのよ。それに私の世話をするってことは、侍女にとっては自らの位の低さを物語るわ。罰ゲームやらされてるみたいに嫌々傍にいられるぐらいなら、自分で全部やった方がマシってこと」
妾の子……ね。
どうやら彼女が王族でありながらヒロイン養成学校に入学した理由は、その辺りにありそうだな。
好感度五十パーセント弱。
今の関係で直接詳細を聞き出すのは時期尚早か。
内情を打ち明けてくれただけでも儲け物だろう。
「そっか。じゃあ俺に手伝えることがあったら、何でも言ってくれよ」
「え……?」
「俺には王族とか妾の子とか、関係ないからな。どうせ隣に住んでるんだ。協力し合ったほうがいいだろ?」
「そりゃっ、……そう、ね。……うん。じゃあ、困ったらお願いする」
「おう」
嬉しそうにはにかまれると、さすがにドキッとしてしまうな。可愛さなら文句の付けようが無いんだから、仕方ないか。
そして、努力家というところは本心から認めたい。
カオスな料理要求にだって、本気で応えようとしたからこんなに不満が出るのだろう。
……ほんと、こいつがネトラレ願望なんて持っていなければ、何の問題もなかったのに。
「あのっ」
「どうした?」
「騒がしくて、ごめんね」
俺は一言「気にするな」と言って、慣れ親しんだ営業スマイルを顔に貼りつけ、彼女の前から去った。
思わず欠伸が出る。
リルとの会話が退屈だったわけではない。
単純に今日の予定が狂いに狂って、挙げ句、日本への帰還が一気に遠退いたから精神的な疲労が大きい。
しかしまあ、これで今日のところはリルとマノンの好感度を理由に死ぬようなことはないだろう。
夜はゆっくり寝られそうだ。
「いやいや、日本に行ったら普通だっての。そういう目的の学校なんだから仕方ないだろ」
「この国では謎なのよ! ミノとかショウフとかキリンとか」
「ホルモンと水商売と動物になってんぞ。味噌、醤油、味醂だ」
「存在しないもので作る料理の訓練なんて、完全なカオスだったんだからね!」
だろうな。
俺だって何度も再現を試みたが全戦全敗だ。やはりその土地のものはその土地の料理が一番合う。
しかし俺は、まさかそこまでガチで取り組んでるとも思わず、気軽に口に出してしまっていた。
『日本にはこんな料理があってな』
『こんな感じで作るんだけど』
『これがまた旨いんだ』
……というような言葉を御用聞きのような人間に言うことで故郷を懐かしんで、寂しさを発散したんだ。
「――にしても、王族なのに驕らずしっかり料理を覚えるなんて、リルって結構努力家なんだな」
「そ、そんなことない……わよっ」
おっと、グイーンと好感度が上がった。この瞬間が気持ちいーっ。人に好かれるのが目に見えてわかる瞬間ってとんでもない快楽だ。
上がり分は十パーセントぐらいかな。
努力家認定が効くと覚えておこう。
人間は行動を認めてもらいたいもので、それが時間や労力を費やしたものなら尚更となる。
「一度食ってみたいよ」
「……この国の料理しか、まともに作れないわよ?」
「もちろん。俺だってこの国の料理は好きだ。……日本の料理を無理矢理作らされてるなんて、知らなかったんだよ。ごめん。悪かった」
あとはまあ、素直に非を認めて謝ることも好感度アップには大切だ。
本音を言えば『お前の祖父ちゃんが無理矢理強制召喚したことがそもそもの原因だ』という気持ちもあるが、ここでそれを出してはならない。
……本当に、彼女に罪はないだろうし。
「ふんっ。何よ今さら…………。わかればいいのよ」
言葉は強気だが表情は違う。
どう振舞って良いのかわからない……といったところか。
「いつか食わせてくれよ。――と、それにしても身の回りの世話とか、誰かがやってくれないのか?」
「私は王族と言っても、妾の子だから……。あまりよく思われていないのよ。それに私の世話をするってことは、侍女にとっては自らの位の低さを物語るわ。罰ゲームやらされてるみたいに嫌々傍にいられるぐらいなら、自分で全部やった方がマシってこと」
妾の子……ね。
どうやら彼女が王族でありながらヒロイン養成学校に入学した理由は、その辺りにありそうだな。
好感度五十パーセント弱。
今の関係で直接詳細を聞き出すのは時期尚早か。
内情を打ち明けてくれただけでも儲け物だろう。
「そっか。じゃあ俺に手伝えることがあったら、何でも言ってくれよ」
「え……?」
「俺には王族とか妾の子とか、関係ないからな。どうせ隣に住んでるんだ。協力し合ったほうがいいだろ?」
「そりゃっ、……そう、ね。……うん。じゃあ、困ったらお願いする」
「おう」
嬉しそうにはにかまれると、さすがにドキッとしてしまうな。可愛さなら文句の付けようが無いんだから、仕方ないか。
そして、努力家というところは本心から認めたい。
カオスな料理要求にだって、本気で応えようとしたからこんなに不満が出るのだろう。
……ほんと、こいつがネトラレ願望なんて持っていなければ、何の問題もなかったのに。
「あのっ」
「どうした?」
「騒がしくて、ごめんね」
俺は一言「気にするな」と言って、慣れ親しんだ営業スマイルを顔に貼りつけ、彼女の前から去った。
思わず欠伸が出る。
リルとの会話が退屈だったわけではない。
単純に今日の予定が狂いに狂って、挙げ句、日本への帰還が一気に遠退いたから精神的な疲労が大きい。
しかしまあ、これで今日のところはリルとマノンの好感度を理由に死ぬようなことはないだろう。
夜はゆっくり寝られそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる