異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

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王位継承編⑤ 過去と、赦し

リル⑳ 寝取った人

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 リルの父親は、こんしやであった女性をって子供をもうけた。
 その女性こそがリルのお母さんであり、産まれた子供がリル。

 しかしリルには、母親のぜんについて情報があたえられていない。現実的に考えて、子供にそんな話を聞かせないというのは無難な選択だろう。
 そういうわけで祖父に当たる国王にたずねてみたわけだけれど、あくまで父方の祖父であるから、むすよめの前夫情報なんてくわしくは知らないらしい。
 名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれないが、忘れた、と。
 それでも情報を辿たどる道筋だけは示してくれた。


「詳しく知っているとすれば、ルート家の人間じゃろう。教皇のアマデオならばおくしている可能性もある」

「ジニ家とルート家。どっちも王族の中でも特に名高いようだけど、当代同士は仲が良かったのか?」

「そういうわけではない。ルート家は特殊な立場でもあるし、の」

「まあ、宗教絡みの王族なんて考えるだけでも面倒くさそうだ」

「しかしオメロは王族外の女性、それも既婚者をめとったわけじゃ。これは様々な意味で罪深いとされ、ワシがかばうにも限界があった。そこでオメロは、教会でざんをすることによってゆるしを得ようとした」

「神の子とされる王族が神様にゆるしをうなんてこともあるのか……。単純なように思えていたけれど、内情は複雑なんだな」

「オメロの地位を守るだけならば、その必要は無い。しかし息子は『いつか妻と子供を王族にむかえる』と言って聞かなかった。ワシは表向き賛成をしたが、その実、胸中はそれ一色とも言えぬ。王族の中はほとんどが否定派。それ相応のつぐないが必要だったということじゃのう」


 少し、気にかかった言葉がある。


「今、『いつか・・・妻と子供を』って言わなかったか?」

「最初は反対派の圧力によって、王族としてむかれるなんて到底不可能じゃったから、の。下手をすれば母子共に殺されかねぬ話じゃ。オメロも安易な決断はできなかった」

「それなら、王族になるまで二人はどこで……」


 リルの顔を見るが、ふるふると首をって「私は何も――」と口にした。
 当事者でもあるリルが知らないならば、他から得られる情報というのは――。


「リル、さんとかさんはいないのか?」

「お父さんのほうにたくさんいるけれど……。その」

「ああ、無理するなよ。言いにくいなら、言わなくてもいいぞ」

「……ううん。ちゃんと言う。――――叔父や叔母は、お父さんが『ジニ家をよごした』と言ってえんを切ってきたの。母がびようおかされたときも、くなるまでずっといやがらせが続いて…………。だから私だけになってからは、特に――、うん…………。ひど、かった」


 泣きそうなほど明確に気落ちしたリルを見て、「だから無理するなって言っただろ」とつぶやく。
 そろそろ付き合いも長くなってきて、今の発言が『父親に会うために必要だから』とか、ましてや『話したいから』ではなくて、ただ『責任感が口を開かせた』だけのことだと理解できた。

 前にリルは、母を亡くしたのは七さいごろの話だと言っていた。
 びようしようせる母親と、幼いリル。
 本来は王族でない母親と、めかけの子とかのろいの子と言われてしまうリル。そういえばオメロさんは本妻と別れたんだったか。

 母子は敵だらけの城内でどんな日々を過ごしたのか……。
 おくさんが亡くなってしまったなら、オメロさんは父親として最後までむすめを守ってしかるべきだろう。
 これはヤマさんに続いて苦情案件だな。身勝手が過ぎる。


「なあ、じいさん。どうしてオメロさんが『対価』だったんだ? 言い方がおかしくなるかもしれないけれど、平民でも人間に変わりはないだろ。この国が王族を差し出すなんて、よほどのことだぞ」

「国の命運をたくしたのじゃ。この上なく深刻な案件と言えるじゃろう」

「そうだけどよ。なにも自分の息子を――」

「まずワシが『最大限に価値の高い人間』を希望した。そしてオメロが『全てのだいしようとして、娘を王族として保護すること』を望み、こういうことになった」

「……なるほど、ね」


 苦情案件だけれど、人にはそれぞれ事情があるわけで。


「…………実を言うと、の。オメロは大病をわずらっていたそうじゃ。えいゆうしようかんしき中に明かされて、さすがのワシもまどったわい。引き返せぬところまでだまっておったのはきっと、言えば対価としての価値がなくなると考えたのじゃろう。――まったく、だれに似たんじゃかのう、あのバカ息子は」

「黙ってドデカいことを進めちまうところなんか、思いっきり爺さん似じゃねえか」


 どのみち娘を残して死ぬぐらいなら……ってことか。
 ますますおこれないな。
 だが――。
 俺はリルに向かって問う。


「今の話、リルには知らされていなかったのか?」


 彼女の口から父の大病を聞かされたことはない。


「……お母さんを亡くしてから数年で、お父さんも亡くすなんて。もし知っていたら、その後の生活に私はえられなかったかもしれない」

「娘をおもって『しつそう』ということにした――か」


 絶対にもどってこない死と、いつかもしかしたらという希望のある失踪なら、失踪のほうがまだマシなのかもしれない。
 当事者になったことがないから、わからないけれど……。でも、うちの両親は当事者か。俺が急にいなくなって、どう思っているのだろうか。
 ……オメロさんだって、失踪のほうがマシだと確信を持てていたわけではないのかもしれない。
 召喚そのもののせいを含めて、なにもかもが大きな賭けだった――。そう考えたほうが自然だ。


「でも、ひどんでいる姿をなんげつも見ていたし、少しずつせていく体を重ね着でかくしているところを見たことがあるの。うすうすかんいてはいた……わ」

「そっか。娘に病を隠して身を犠牲に……。おやさんは、愛情の深い人だったんだな」


 そりゃ寝取られをこうていするわ……。
 自身の生まれだけではなく、娘のために自らをせいにした父親を否定したくは、なかろう。


「まあ、とにかく教会へ行こうぜ。教皇……、リディアの親父さんに会ってこよう」

「――――うんっ。そうだね」


 ただ気落ちすることを思い出させるだけの結果に、ならなきゃ良いけれど。
 どうなることだろうか。
 こればかりはマノンの力でもどうにもできない。

 ……でも、もし最初から、オメロさんが死ぬほどの病気持ちだと知っていたら。俺は今回の動きを起こさずに、そっとしておいたかもしれない。
 れんらくえたことだって、日本で病死したという可能性がある。
 ATMのように異世界からきんかいを取り寄せられるなら、向こう側からわざわざ連絡を絶つ必要も無いだろう。

 おれは少しずつ、自分の行動をこうかいし始めていた。
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